更新日:2026.10.30

ー 目次 ー
インボイス制度に反対の声がある主な理由は、免税事業者が登録した場合の納税負担、未登録のまま取引を続ける際の価格交渉への不安、請求書の確認や保存に伴う事務負担です。
影響の大きさは、売手・買手の立場や消費税の計算方法によって変わります。
本記事では、制度の仕組みを踏まえて反対意見の背景を説明するとともに、政党が公表している政策や、現在・今後の負担軽減措置について整理します。
制度の確認日は2026年10月21日です。
インボイス制度は、2023年10月1日から始まった消費税の仕入税額控除の方式です。
売手が買手へ適用税率や消費税額を伝え、買手が仕入税額を計算するために用います。
一般課税では、売上げに係る消費税額から、仕入れなどに係る消費税額を差し引いて納付税額を計算します。
この控除には、原則として、一定事項を記載した帳簿とインボイス等の保存が必要です。
インボイスを発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録した事業者です。
登録は任意ですが、免税事業者が登録すると課税事業者としての申告・納税が必要になります。取引先の要望と税負担を合わせて判断することが大切です。
買手が消費者や免税事業者の場合、仕入税額控除を行わないため、一般課税の企業と同じ問題は生じません。
簡易課税を適用する買手も、実際の仕入税額を積み上げる方法で納付税額を計算するわけではありません。
| 主な立場 | 制度による確認事項 |
|---|---|
| 免税事業者の売手 | 登録した場合の納税・事務負担と、取引先からの要望 |
| 一般課税の買手 | 登録番号、請求書の記載事項、控除の例外や経過措置 |
| 簡易課税を適用する買手 | 仕入先のインボイスの有無によらず、みなし仕入率等で税額を計算 |
| 消費者向け取引が中心の売手 | 顧客構成、法人取引の有無、登録の必要性 |
なお、簡易課税でも、所得税・法人税などのための帳簿書類の保存義務は別にあります。
消費税の計算方法と、日常の書類管理を分けて確認します。
免税事業者は、一定の要件の下で消費税の納税義務が免除されています。
インボイス発行事業者として登録すると、売上規模だけで免税を続けることはできず、消費税の申告と納付に対応する必要があります。
販売価格を上げられなければ、新たに発生する納税負担や事務コストを事業収入から賄うことになります。
仕入れの少ないサービス業と、商品の仕入れが多い事業では消費税額の計算に影響する要素も異なるため、負担は一律ではありません。
消費税の納付税額は利益だけで決まるものではありません。資金繰りを考える際は、売上額に加えて課税仕入れの内容や利用できる特例を確認し、申告時の支払いを見込む必要があります。
一般課税の買手は、未登録事業者からの仕入れについて、原則どおりの全額控除ができない場合があります。
そのため、売手には、値下げを求められるのではないか、取引先を変更されるのではないかという懸念が生じます。
ただし、未登録事業者との取引が禁止されているわけではありません。
一定の経過措置や少額特例もあり、買手が控除できる金額を確認せずに「消費税分がすべて損になる」と判断することはできません。
例|2026年10月に税込110,000円・税率10%の取引を行った場合
消費税相当額:10,000円
70%控除の対象額:7,000円
控除できない部分:3,000円
上記は、買手の課税売上割合を100%とし、70%控除の経過措置を適用する架空の例です。
控除できない3,000円と、請求額110,000円の10%である11,000円は異なります。
また、この計算例は、値下げしてよい金額を示すものではありません。
買手は、登録番号や税率ごとの金額を確認し、不足している情報があれば売手へ問い合わせます。
売手も、必要事項を備えた請求書の作成や訂正、問い合わせへの対応が必要になります。
取引先が多い企業では、登録状況と経過措置の区分を管理する作業が増えます。
担当者が少ない小規模事業者では、その作業を経営者自身が担うこともあります。
制度に反対する理由は、納税額だけではありません。請求書の発行・確認・修正・保存など、継続的な事務負担も主な論点の一つです。
政党の主張を確認するときは、発表時点と対象資料を確認します。
以下は公表資料の例であり、すべての政党を網羅した一覧や、現在の法律の説明ではありません。
| 公表主体・資料 | 資料で示された主張 |
|---|---|
| 立憲民主党税制調査会・2026年度税制改正提言(2025年12月5日) | インボイス制度の廃止を求め、実現まで負担軽減措置を延長する提言 |
| 国民民主党・政策2026 | 消費税の一律5%とインボイス制度の廃止を掲げる |
| 日本共産党・2026年総選挙政策 | 小規模事業者・フリーランスへの影響を挙げ、制度廃止を掲げる |
これらの資料では、税負担と事務負担への対応が論点になっています。
一方、国税庁は、複数税率に対応して正確に消費税を納めるための制度としてインボイスを説明しています。
制度の目的と事業者が感じる負担の両方を把握することで、議論の対象を整理できます。
2026年10月21日時点では、国税庁はインボイス制度の運用と、2026年度改正後の負担軽減措置を案内しています。
本記事で確認した公式資料から、制度全体の廃止が決まったとはいえません。
政党が廃止を主張したこと、法案を提出したこと、法律が成立して施行されることは、それぞれ別の段階です。将来廃止される可能性を推測して、登録・請求書管理・申告対応を止める判断は避けましょう。
制度変更の情報を確認する際は、成立済みの改正なのか、いつから適用されるか、自社のどの取引・課税期間が対象かを確認します。
2026年度の経過措置の見直しも、対象期間を確認して会計処理へ反映する必要があります。
2割特例は、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者について、一定の条件の下で納付税額を売上税額の2割とする措置です。
適用期間は2023年10月1日〜2026年9月30日を含む課税期間です。
「2026年9月30日の翌日から、すべての事業者が2割特例を使えなくなる」という意味ではありません。たとえば、要件を満たす個人事業者の2026年分や、2026年9月30日を含む法人の課税期間について、適用の可否を確認します。
2027年分・2028年分には、一定の個人事業者について、納付税額を売上税額の3割とする特例が設けられました。
法人は対象外です。
基準期間となる適用年の2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合など、登録と関係なく課税事業者になるケースも対象になりません。
特定期間の売上高等や、高額な資産の取得に伴う制限も確認が必要です。
2割特例・3割特例は、納付税額を計算するための措置です。商品の10%・8%という適用税率が2割・3割になるわけではありません。
免税事業者などからの課税仕入れについて、所定の帳簿・請求書等を保存すれば、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。
| 対象となる課税仕入れの時期 | 控除割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
2031年10月1日以降は、この経過措置による控除はなくなります。
2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同一の未登録事業者からの対象仕入れについて、年間または事業年度の税込合計額が1億円を超える場合、その超過部分は対象外です。
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみで控除できる少額特例を利用できます。
対象期間は2023年10月1日〜2029年9月30日です。
税込1万円未満の課税仕入れが対象
判定は一回の取引単位で行う
1万円ちょうどの取引は対象外
少額特例は買手の保存に関する特例なので、登録事業者である売手のインボイス交付義務が一律になくなるものではありません。
税込1万円未満の売上げに係る対価の返還等は、返還インボイスの交付義務が免除されます。
この措置には適用期限がなく、売手の規模要件もありません。
買手側の少額特例とは、対象となる行為も要件も異なります。
請求時の振込手数料相当額を売上値引きとして扱う場合なども、取引の実態と金額を確認します。
書類の交付が免除されても、返品・値引きに伴う売上や税額の処理まで不要になるわけではありません。
売手は、主要な取引先がインボイスを必要としているか、登録後の納税額と事務コストがどの程度になるか、価格へ反映できるかを整理します。
簡易課税・2割特例・3割特例は、適用条件と税額を比較して判断します。
買手は、仕入先が未登録であることだけを理由に、消費税相当額を一律に差し引かないようにします。
経過措置や自社の課税方式を確認し、価格の見直しが必要なら双方で協議します。
取引上、優越的な地位にある買手が、一方的に著しく低い価格を設定したり、登録しなければ値下げ・取引停止を行うと通告したりする行為は、独占禁止法等で問題になるおそれがあります。
取適法やフリーランス法の対象取引では、それぞれの規制も確認が必要です。
インボイス制度への反対意見には、納税負担、取引条件への影響、事務負担という複数の理由があります。
影響は事業者ごとに異なるため、反対意見の背景を一つの理由だけで説明することはできません。
自社の対応では、現行制度と成立済みの改正内容を基に、登録の必要性、利用できる特例、取引先との協議事項を整理します。
制度の廃止を求める主張と、実際の業務で適用されるルールを区別し、自社に必要な対応を検討しましょう。