更新日:2025.08.25
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2023年10月に始まったインボイス制度。
経理担当者にとっては、毎月届く請求書が適格請求書かどうかを確認する作業が発生し、負担が増えています。
なかでも手間がかかるのが、水道光熱費の請求書です。事業所の数が多ければ多いほど通数が増え、提供事業者ごとに発行形式が異なることも多いため、確認作業が煩雑になりやすく、業務の負担となっています。
本記事では、月間約10万枚の水道光熱費の請求書を受領している株式会社インボイスが、実際の請求書データをもとに分析した調査レポート「水道光熱費の請求書は今後、全て適格請求書になるのか調査」から、主な調査結果を抜粋してご紹介します。
約4,700社の提供事業者から届いた請求書の実態を明らかにしながら、今後の対応方針や、業務負荷を軽減するためのヒントを探っていきます。
水道光熱費の請求書は、届いたからといってそのまま適格請求書として使えるとは限りません。
調査によると、約4,700社の提供事業者のうち、料金請求書をそのままインボイスとして発行しているのは全体の79%でした。残りの21%では、別途インボイスを取得する必要があるという結果でした。
一方で、実際の請求書ベースで状況を確認すると、インボイスの割合は変わってきます。
月間約10万枚にのぼる水道光熱費の請求書のうち、インボイスとして扱えるものは48%ほどという結果となりました。つまり、半数以上はそのままでは仕入税額控除の対象にならないということです。
この差は、契約内容の違いにより、同じ事業者でも対応が分かれていることが背景にあります。
あるプランではインボイスが自動発行される一方で、別のプランでは申請が必要だったり、会員サイトからダウンロードする必要があるなど、発行方法はさまざまです。
契約ごとに発行のルールが異なるため、毎月届く請求書を一つひとつ確認するしかない、というのが経理現場の実態なのです。
【提供事業者別】
【月間枚数別】
では、今後すべての水道光熱費の請求書がインボイス対応になる日は来るのでしょうか。
結論から言えば、その可能性はあまり高くないと考えられます。
インボイス制度が始まった2023年10月時点では、提供事業者の約半数しか適格請求書を発行していませんでした。その後、12月末までに対応率は79%まで増加しましたが、11月から12月にかけての伸びはわずか2%にとどまっています。すでに方針を定めた事業者が多く、今後さらに対応が進む可能性は低いと見られています。
また、電気・ガス・水道といった種別ごとに見ても、11月から12月にかけてはすべての種別で伸び率が鈍化していることが分かりました。
さらに、電気料金については、ガスや水道に比べて適格請求書として発行する割合が低い事も覚えておきましょう。
【(11月〜12月)提供事業者別】
【提供種別】
具体例として、東京電力エナジーパートナーの対応を見てみましょう。
同社のWebサイトでは、原則として会員向けWebサイトからのインボイス取得を案内していますが、「条件により書面での発行も可能」といった記載もあります。
実際に調査を行ったところ、43の電力プランのうち、インボイス対応となっているのは30プラン(約70%)でした。
つまり、同じ事業者であってもプランによって対応状況が異なり、利用している契約内容に応じて請求書ごとに確認が必要になるのです。
【電力プラン別】
拠点数が多い企業にとって、インボイス制度への対応はさらに大きな課題となります。
実際に、拠点数別の1ヶ月あたりの請求書受領枚数を見てみると、拠点数の増加に比例して請求書の通数も大きく増加していることがわかります。たとえば水道料金に注目すると、1〜9拠点の企業では月平均13.9通だったのに対し、100拠点以上では93.6通と、約6.7倍に増加していました。
さらに、拠点数別に見た取引事業者数(=請求書の発行元)も、請求書の通数と同様に拠点数に応じて増加傾向にあります。ただし、種別ごとに見ると傾向には違いがあります。電気料金については、拠点数が増えても取引先の数にはほとんど変化が見られません。一方で、ガスや水道では、拠点数が増えるほど取引事業者も増加する傾向があります。特に水道料金については、100拠点以上の企業で50を超える自治体との取引が発生していることがわかりました。
請求書は取引先ごとにレイアウトや記載内容が異なるため、取引事業者数が増えるほど、適格請求書かどうかを確認する作業にも時間がかかります。
そのため、インボイス制度対応のなかでも、この部分が特に業務負担の大きなポイントとなっています。
【拠点数別】
【拠点数別】
今回の調査結果から、水道光熱費のインボイス対応は、すでに多くの事業者で進んでいる一方で、実際に届く請求書のうち約半数は適格請求書ではないことが分かりました。
しかも、制度開始後の対応状況の伸びは鈍化しており、今後すべての請求書が自動的にインボイス化される可能性は高くないと見られます。
つまり、インボイス対応による作業負担は、今後も経理担当者にとって避けがたい課題となっていくと予想されます。
適格請求書以外の請求書が届いたときにどう対応すべきかを把握しておくこと、そして必要に応じて作業効率化につながるサービスを活用することが、業務負荷を軽減するうえで重要なポイントとなりそうです。
さらに、本コラムの元となった資料では、水道光熱費の対応において見落とされがちなポイントや注意点、業務改善のヒントも記載しています。
ぜひ、本資料をダウンロードのうえ、今後の請求業務の効率化にご活用ください。