更新日:2026.10.06

ー 目次 ー
商品やサービスの提供を受ける前に支払うお金を前払金といいます。企業間取引では頻繁に用いられるものですが、会計処理上の扱いに悩む方も少なくありません。
本記事では、前払金の意味や勘定科目、資産として計上される理由、前払費用・仮払金との違い、具体的な仕訳例などをわかりやすく解説します。本記事を読んで、前払金を正しく理解し、迷わず仕訳できる状態を目指しましょう。
前払金とは、商品や単発のサービスの提供を受ける前に、代金の一部または全部を先払いした際に使う勘定科目です。たとえば、商品の仕入れにあたって手付金を支払った場合や、ホテルの予約料金を事前に支払った場合などが該当します。
なお、前払金は「前渡金」と呼ばれることもあります。企業によっては、商品などの仕入れに対する前払いを「前渡金」、その他の前払いを「前払金」と区分する場合があります。ただし、両者を明確に分けずに使用するケースもあるため、自社の勘定科目や会計方針を確認しましょう。
前払金に関する勘定科目は、以下のように代金を先に支払う買い手側と、先に受け取る売り手側とで使い分けます。
商品やサービスを受け取る前に代金を先払いした際は、前払金として資産に計上します。その後、商品やサービスの引き渡しを受けた時点で前払金を減らし、仕入高などの費用に振り替えるのが基本的な流れです。
なお、手付金や内金として支払った場合も、勘定科目としてはどちらも前払金で処理します。
商品やサービスを提供する側が、提供前に代金の一部または全部を受け取ったときは、前受金という勘定科目で処理し、負債(流動負債)に計上します。前受金は、将来商品やサービスを引き渡す義務を表すためです。
その後、商品やサービスを引き渡した時点で前受金を減らし、売上高などへ振り替えます。
前払金は、支払った時点では費用にせず、資産として計上します。代金を先に支払っていても、まだ商品やサービスの提供を受けておらず、将来その提供を受ける権利が残っているためです。
その後、商品やサービスの提供を受けた時点で、取引内容に応じた勘定科目へ振り替えます。たとえば、商品を仕入れた場合は仕入高、サービスの提供を受けた場合は該当する費用、固定資産を取得した場合は建物や機械装置などの資産として処理します。
このように、前払金は支払い時点では将来受け取る商品やサービスに対応する資産として扱い、実際に取引が完了した時点で適切な勘定科目へ振り替えるのが基本です。
前払金ともっとも混同されやすいのが前払費用です。両者の違いは、継続的にサービスの提供を受けるかどうかにあります。
前払金は、商品や単発のサービスに対して、一時的に先立って支払うお金です。一方、前払費用は、継続的な契約にもとづくサービスのまだ提供されていない部分に対して、あらかじめ支払う費用を指します。火災保険料や家賃、ソフトウェアの年間利用料などが代表例です。
また、前払金と前払費用は計上するタイミングにも違いがあります。前払金は、商品やサービスの提供を受けた時点で、その全額を仕入高などの費用に振り替えます。
一方、前払費用は、契約期間の経過に応じて少しずつ費用に振り替えるのが特徴です。決算時点でまだ提供を受けていない期間分は、前払費用として資産に残し、翌期以降に繰り延べます。
前払金と仮払金の違いは、支払い時点で用途や金額が決まっているかどうかです。
前払金は、支払う相手・内容・金額があらかじめ明確になっています。一方、仮払金は、支払いの内容や金額がまだ確定していない段階で、一時的に処理するための勘定科目です。具体的には、出張前に概算で渡す旅費などが該当します。
ここでは、前払金の仕訳例を以下の3パターンに分けて解説します。
10万円の商品を仕入れるケースを想定し、具体的にどのような仕訳になるのか詳しくみていきましょう。
10万円の商品代金を、全額現金で前払いした場合の仕訳は以下のようになります。
【支払い時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
前払金 |
100,000円 |
現金 |
100,000円 |
前払いした時点では、前払金という資産が増え、その分の現金が減ります。まだ商品を受け取っていないため、この時点では仕入高(費用)は計上しません。
商品を受け取ると、資産として持っていた前払金がなくなり、仕入高として計上されます。
【受取時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
仕入高 |
100,000円 |
前払金 |
100,000円 |
10万円の商品に対して手付金3万円を先に払い、残額7万円を納品時に現金払いした場合、仕訳は以下のようになります。
【支払い時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
前払金 |
30,000円 |
現金 |
30,000円 |
まずは、先に支払った3万円のみを前払金として計上します。この時点で残額は計上しません。
商品を受け取ったため、商品代金10万円の全額を仕入高(費用)として計上します。内訳は、前払い済みの前払金3万円と、納品時に支払う現金7万円という整理です。
【受取時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
仕入高 |
100,000円 |
前払金 |
30,000円 |
|
|
|
現金 |
70,000円 |
10万円の商品に対して3万円分を前払いし、残額7万円を掛け払いにした場合の仕訳は以下のとおりです。
【支払い時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
前払金 |
30,000円 |
現金 |
30,000円 |
支払い時は、先に払った金額を前払金として計上します。
商品の受取時は、商品代金10万円の全額を仕入高(費用)として計上します。そして内訳は、前払い済みの前払金3万円と、後日支払う買掛金7万円となります。
【受取時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
仕入高 |
100,000円 |
前払金 |
30,000円 |
|
|
|
買掛金 |
70,000円 |
次に、実務でよくある3つのケースについて、前払金の仕訳例をみていきましょう。
不動産などの固定資産を購入する際の手付金は、前払金で処理し、引き渡し時に建物などの固定資産に振り替えます。
ここでは、土地を含まず500万円の事業用建物のみを購入し、手付金50万円を先に支払うケースをみていきましょう。
購入が完了した時点で、建物として資産計上することになります。そして、建物500万円のうち、先に支払った前払金50万円と、引き渡し時に支払う450万円を合わせて計上します。
【支払い時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
前払金 |
500,000円 |
普通預金 |
500,000円 |
【引き渡し時】
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借方 |
貸方 |
||
|
建物 |
5,000,000円 |
前払金 |
500,000円 |
|
|
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普通預金 |
4,500,000円 |
なお、自社で建物を新築する場合は、前払金ではなく建設仮勘定で処理する点に注意してください。
出張の宿泊費を事前に支払った場合も、前払金で処理します。ここでは、ホテル代2万円を予約時に支払うケースをみていきましょう。
宿泊というサービスを受けたことで、資産として計上していた前払金が、旅費交通費(費用)に振り替わります。
【支払い時】
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借方 |
貸方 |
||
|
前払金 |
20,000円 |
普通預金 |
20,000円 |
【宿泊時】
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借方 |
貸方 |
||
|
旅費交通費 |
20,000円 |
前払金 |
20,000円 |
代金を受け取る側は、前受金という勘定科目を使います。前受金は、あとで商品やサービスを引き渡す義務を表すため、負債に計上します。
ここでは、売価10万円の商品について、手付金3万円を先に受け取り、残額7万円は引き渡し時に受け取るケースをみていきましょう。
【受取時】
|
借方 |
貸方 |
||
|
現金 |
30,000円 |
前受金 |
30,000円 |
商品を引き渡したタイミングで、売価10万円の全額を売上高として計上します。そして、その内訳は、先に受け取っていた前受金3万円と、引き渡し時に受け取る現金7万円という整理です。
【引き渡し時】
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借方 |
貸方 |
||
|
前受金 |
30,000円 |
売上高 |
100,000円 |
|
現金 |
70,000円 |
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前払金を支払った時点では、消費税の計算にまだ含めません。消費税は、実際に商品やサービスの提供を受けた時点で発生すると考えるためです。
したがって、仕入税額控除の対象となるのは、実際に商品やサービスの提供を受けた日が含まれる課税期間です。たとえば3月に前払いし、4月に納品された場合、その仕入れにかかる消費税を控除できるのは、4月を含む課税期間になります。
なお、前払費用に認められる「短期前払費用の特例」は継続的な役務提供が対象であり、前払金には適用されません。
また、仕入税額控除の適用には、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要です。前払いの場合も、仕入税額控除を受けるために必要な帳簿・適格請求書等を保存しましょう。
最後に、前払金の勘定科目に関してよくある質問に回答します。
前払金と前払費用の使い分けは、支払い対象となるサービスに継続性があるかどうかで決まります。
単発の商品購入やサービス利用であれば、前払金を使うのが基本です。一方、家賃や保険料のように継続的な契約にもとづくサービスの先払いであれば、前払費用を使います。
建設仮勘定は、建物や機械などの有形固定資産を建設・製作している途中で、その取得のために支出した金額を一時的に計上する勘定科目です。
たとえば、自社建物の新築工事に支払った着手金や中間金、製作を依頼している機械にかかる支出などを建設仮勘定で処理する場合があります。完成・引き渡し後は、建物や機械装置などの固定資産勘定へ振り替えます。
一方、完成済みの機械などを購入する契約で、引き渡し前に代金の一部を支払った場合は、前払金として処理することがあります。固定資産の取得に関する前払いが、すべて建設仮勘定になるわけではない点に注意しましょう。
前払金とは、商品や単発のサービスの提供前に支払う代金のことで、将来受け取る権利があることから、資産として計上します。
継続的なサービスに対する先払いである「前払費用」、金額や用途が未確定の「仮払金」とは、それぞれ性質が異なるため、支払いの内容に応じて正しい勘定科目を選ぶことが大切です。
前払金をはじめとした経理・決算処理を効率化したい方は、以下の資料もご確認ください。