更新日:2026.08.07

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「メールで届いた領収書は、印刷して保存すればいいの?」
このような疑問を抱く経理担当者は少なくありません。2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化され、経費精算の現場でも「正しい保存方法」が問われるようになりました。
ただし、電子帳簿保存法のすべてが義務化されたわけではありません。書類を紙で受け取ったか、電子データで受け取ったかによって、対応すべき内容が変わります。この違いを押さえないまま運用すると、思わぬ法令違反につながるおそれがあります。
本記事では、経費精算で電子帳簿保存法の対象となる書類について、概要や保存方法、電子化期限、注意点も交えて解説します。
はじめに結論からお伝えすると、経費精算で電子帳簿保存法の対象となるのは、「経費精算書」と「領収書(レシートを含む)」の2種類です。
ここで注意したいのが、電子帳簿保存法そのものが丸ごと義務化されたわけではないという点です。義務化されたのは3つの保存区分のうち「電子取引データ保存」だけであり、紙をデータ化する「スキャナ保存」は任意のままです。この前提を取り違えると、対応の優先順位を見誤ってしまいます。
そして、同じ書類でも受け取り方(紙か電子か)によって保存方法が枝分かれします。まずは対象となる2書類の役割を確認し、続いて保存方法を整理していきましょう。

経費精算書は、従業員が立て替えた費用を精算するために用いる書類です。経費の内訳を明確にし、申請内容の妥当性を裏づける役割があります。会社が負担すべき事務用品の購入費や、交通費・交際費などを従業員が一時的に支払った場面で使われます。
企業で使われる経費精算書は、用途に応じて次のように分かれます。
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 仮払経費精算書 | 先に概算で支給した金額の精算に使う |
| 出張旅費精算書 | 出張時の交通費・宿泊費・日当などを精算する |
| 交通費精算書・旅費精算書 | 日常的な移動にかかった交通費を精算する |
| 立替経費精算書 | 従業員が立て替えた諸費用を精算する |
書類ごとに役割が異なるため、用途に応じて使い分けることが大切です。
領収書は、本来は会社が負担すべき費用を従業員が立て替えた事実を証明する書類です。不正な申請や、代金の二重払い・過払いを防ぐために提出が求められます。
提出する領収書には、次の項目が記載されている必要があります。
領収書を紛失した場合は、発行元へ再発行を依頼します。レシートでの代用も可能ですが、その場合も領収書と同じ項目が記載されていることが条件となります。
対象書類が実務のどの場面で登場するのか、仕訳で確認しておきましょう。従業員が交通費3,300円を立て替え、後日、現金で精算したケースです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 3,300 | 現金 | 3,300 |
この仕訳を裏づける証憑こそが、経費精算書と領収書です。つまり、「どう記帳するか」だけでなく「その証憑をどう保存するか」までが電子帳簿保存法で問われるというわけです。
保存方法を正しく選ぶには、電子帳簿保存法の「区分」を理解しておく必要があります。区分ごとに保存要件が異なり、混同すると法令違反と判断されるおそれがあるためです。
電子帳簿保存法は、次の3区分で構成されています。経費精算に深く関わるのは「スキャナ保存」と「電子取引データ保存」の2つです。
| 区分 | 対象 | 義務/任意 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・決算書類 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受領した領収書・請求書など | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メール添付PDF・EC領収書など電子でやり取りした書類 | 義務(2024年1月〜) |
ポイントは、「電子取引データ保存は義務、スキャナ保存は任意」という温度差です。紙の領収書を無理にデータ化しなくても違法ではありませんが、電子で受け取った書類を紙に印刷して原本扱いすることは認められません。
まずは自社の優先順位を整理することが第一歩です。
メールやクラウドサービス、ECサイトなどを通じて受け取った経費精算書・領収書は、電子データのまま保存することが義務です。従来認められていた「印刷して紙で保存し、元データを削除する」という運用は、原則として認められなくなりました。
電子取引データの保存では、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの柱を満たす必要があります。
真実性の確保とは、保存したデータが後から改ざんされていないことを担保する仕組みです。次のいずれかを満たせば要件を充足できます。
このうちもっとも低コストなのが「事務処理規程」を定める方法です。国税庁がひな形を公開しており、自社の実情に合わせて整えるだけで、追加費用をかけずに改ざん防止要件を満たせます。
「高価なシステムがなければ対応できない」という思い込みで先送りにする必要はありません。
可視性の確保とは、保存したデータを必要なときにすぐ確認・出力できる状態にしておくことです。ディスプレイやプリンタを備え付けたうえで、次の3項目で検索できるようにします。
専用システムがなくても、ファイル名を「20240131_330000_○○商店」のように「日付_金額_取引先」で統一すれば、フォルダ内検索で対応できます。件数が多い場合はExcelの索引簿で管理する方法もあります。
なお、基準期間の売上高が5,000万円以下などの一定要件を満たす小規模事業者は、検索機能の確保が不要になる特例があります。中小企業にとっては負担を大きく減らせるポイントなので、自社が該当するか確認しておきましょう。
紙で受領した経費精算書・領収書は、そのまま紙で保存しても、要件を満たしてスキャナ保存しても構いません(スキャナ保存は任意)。
スキャナで読み取るほか、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像を保存する方法もあります。適切にスキャナ保存すれば、読み取り後の原本は破棄できます。
要件は多岐にわたりますが、領収書のような重要書類では、まず以下を押さえておくことが重要です。
そのうえで、書類の重要度によって求められる水準が変わります。差分を表で確認しましょう。
| 項目 | 重要書類(領収書・契約書など) | 一般書類(見積書・注文書など) |
|---|---|---|
| 解像度 | 200dpi以上(256階調以上) | 200dpi以上(256階調以上) |
| カラー | フルカラー必須 | グレースケール可 |
| 入力期限 | 最長2か月+おおむね7営業日以内 | 事務処理規程を備え付ければ期限なし(適時入力可) |
※経費精算に使う領収書は、精算書とあわせて帳簿代用書類として扱う場合、一般書類の「適時入力」の対象外となり、重要書類として最長2か月+おおむね7営業日以内の入力が必要です。
参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係 Ⅰ通則【制度の概要等】・Ⅱ適用要件【基本的事項】
スキャナ保存の入力期限は、しばしば「2か月7営業日」と略されますが、正確には「最長2か月とおおむね7営業日以内」です。「おおむね」が付く点に注意してください。
また、この最長期限が使えるのは、社内で事務処理規程(業務処理サイクル方式)を定めている場合に限られます。規程がなければ「作成・受領からおおむね7営業日以内」に短縮されるため、混同しないようにしましょう。
さらに、要件には「速やかに」と明記されています。2か月+おおむね7営業日はあくまで最長であり、受領後はできるだけ早く電子化するのが原則です。
保存方法を理解したうえで、運用時の注意点も押さえておきましょう。これらを見落とすと、書類の改ざんや不正を疑われるおそれがあります。
スキャナ保存の後で、データの読み取り不備が見つかることがあります。画像が不鮮明だったり、必要な項目の文字が切れて読めなかったりするケースです。
こうしたトラブルに備え、スキャン後も一定期間は紙の原本を残しておくことをおすすめします。正確に電子化できていることを確認してから、原本を破棄するようにしましょう。
2022年1月の改正で要件は大きく緩和されましたが、その一方で取り扱いに不備があった場合の罰則は強化されています。保存場所が分散していたり、管理が特定の担当者に依存していたりすると、抜け漏れのリスクが高まります。
申請漏れや保存漏れを防ぐには、データ管理のルールを社内マニュアルとして整備することが有効です。属人化を解消し、誰が対応しても同じ品質で保存できる状態を目指しましょう。
電子帳簿保存法で保存したデータにも、法定の保存期間が定められています。経費精算書や領収書は重要書類にあたるため、事業者の区分ごとに次のとおり整理できます。
| 区分 | 保存期間の考え方 |
|---|---|
| 法人 | 原則7年。欠損金がある事業年度は10年。会社法上は10年のため、全書類10年保存が最も安全 |
| 個人事業主(青色) | 帳簿・決算書類は7年。請求書・見積書などは5年(所得が一定額以下の場合)。ただし消費税の課税事業者は7年 |
| 個人事業主(白色) |
収入・必要経費を記載した法定帳簿は7年。任意帳簿・決算書類・請求書・領収書などは5年。消費税の課税事業者は請求書等を7年
|
参考:国税庁 No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度/個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
保存形式が電子データか紙かにかかわらず、保存期間は守らなければなりません。起算日は「確定申告書の提出期限の翌日」である点も押さえておきましょう。保存期間内は、税務署からの問い合わせにいつでも応じられるよう備えておくことが大切です。
「まだ電子取引の保存に対応できていない」という企業のために、押さえておきたいのが猶予措置と罰則です。
2024年1月以降も、システム整備の遅れや人手・資金不足など「相当の理由」があると税務署長が認めた事業者には猶予措置が設けられています。この場合、改ざん防止や検索の要件対応は不要になりますが、電子データそのものの保存は必須です。まったく保存していなければ違反となります。
ただし、「知らなかった」「対応する予定がない」といった理由は「相当の理由」には該当しないと考えられます。猶予措置に甘えず、計画的に対応を進めることが重要です。
要件どおりに保存していない場合、青色申告の承認取消や、隠蔽・仮装があった際の重加算税の加重(10%上乗せ)といったリスクがあるので注意しましょう。
最後に、実務でよく寄せられる質問を紹介します。
経費精算書を電子化する際は、領収書もあわせて電子化します。
領収書は、精算の完了や経費内容を証明し、不正申請を防ぐために必要だからです。取引の事実を裏づける証憑として、提出と保管が求められます。
紙のまま保存するか、スキャナ保存するかを選べます。
スキャナ保存を選ぶ場合は、定められた要件を満たし、受領から最長2か月とおおむね7営業日以内(事務処理規程がある場合)に電子化する必要があります。
基本的に領収書の提出が必要です。とくにホテル代やタクシー代は、現地で領収書を受け取っておきましょう。
ただし、電車移動の交通費は経路から金額を確認できるため、領収書を求められないこともあります。
本記事では、経費精算で電子帳簿保存法の対象となる書類について、区分・保存方法・電子化期限・注意点を解説しました。
対象となるのは経費精算書と領収書の2種類です。電子で受け取った書類は「電子取引データ保存(義務)」、紙の書類は「スキャナ保存(任意)」と、受け取り方で対応が分かれます。紙をスキャナ保存する場合の電子化期限は、事務処理規程があれば最長2か月とおおむね7営業日以内です。
保存期間の遵守とデータ管理の仕組み化は、監査や税務調査への耐性を高める土台になります。本記事の要件を踏まえ、自社に合った運用を整えていきましょう。