更新日:2026.08.31

ー 目次 ー
紙の請求書や領収書が増え、「スキャンして原本を捨ててもよいのか」「電子帳簿保存法の要件が複雑で分からない」と悩む経理担当者も多いでしょう。
結論から言えば、紙で受け取った契約書・納品書・請求書・領収書などは、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たせば、画像データで保存し、紙の原本を廃棄できます。スキャナ保存の利用は任意であり、紙のまま保存することも可能です。
また、2022年から税務署長の事前承認は不要になり、タイムスタンプも一定のシステムを利用すれば省略できます。この記事では、2026年8月時点のルールに基づき、対象書類、重要書類・一般書類の違い、保存要件、導入手順、原本廃棄までを整理します。
電子帳簿保存法には「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3区分があります。このうちスキャナ保存は、紙で受領・作成した国税関係書類をスマートフォンやスキャナで読み取り、紙の代わりに電子データで保存する制度です。
| 書類の受け取り方・作り方 | 保存方法 | 義務・任意 |
|---|---|---|
| 紙で受け取った請求書・領収書等 | 紙のまま保存、または要件を満たしてスキャナ保存 | スキャナ保存は任意 |
| メール添付PDF・Web・クラウド等で受け取った書類 | 受け取った電子データを電子取引の要件に沿って保存 | 電子データ保存が必要 |
| 会計ソフト等で一貫して作成した帳簿・書類 | 電子帳簿等保存の要件に沿ってデータ保存 | 任意 |
つまり、紙の請求書をスキャンしないからといって電子帳簿保存法違反になるわけではありません。一方、最初から電子データで受け取ったPDFを印刷して紙だけ保存する方法は「スキャナ保存」ではなく、電子取引データ保存のルールに反するおそれがあります。
スキャナ保存の対象になるのは、所得税法・法人税法などで保存が必要とされる国税関係書類のうち、決算関係書類を除く書類です。代表例は次のとおりです。
契約書
納品書
請求書
領収書
見積書
注文書・検収書
自社が手書き等で作成し、取引先へ紙で交付した上記書類の写し
仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿、貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類は、紙をスキャンした画像を原本に代えて保存する「スキャナ保存」の対象ではありません。これらをデータで保存する場合は、電子帳簿等保存のルールを確認します。
スキャナ保存の対象書類は、資金や物の流れに直結・連動する「重要書類」と、それ以外の「一般書類」に分けられます。この区分で、入力期限やカラー要件などが変わります。
| 区分 | 代表例 | 主な違い |
|---|---|---|
| 重要書類 | 契約書、納品書、請求書、領収書など | 入力期間の制限あり。原則フルカラー。帳簿との相互関連性の確保が必要 |
| 一般書類 | 見積書、注文書、検収書など | 適時入力も可能。グレースケールでの保存が可能 |
分類に迷った場合は「資金や物の流れに直結する書類か」を基準にしつつ、国税庁のスキャナ保存Q&A・パンフレットで確認しましょう。
スキャナ保存では、画像を読み取るだけでは足りません。真実性と可視性を確保するため、書類区分に応じて次の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 重要書類 | 一般書類 |
|---|---|---|
| 入力期間 | 作成・受領後おおむね7営業日以内、または業務処理サイクル最長2か月+おおむね7営業日以内 | 入力期間の制限なく適時入力する方式も可 |
| 解像度 | 200dpi以上 | 200dpi以上 |
| 階調 | 原則フルカラー(RGB各256階調以上) | グレースケール(256階調以上)も可 |
| タイムスタンプ等 | 入力期間内に付与。ただし一定の履歴管理システム等で代替可 | 同左 |
| 帳簿との相互関連性 | 必要 | 原則不要 |
| 見読可能性 | ディスプレイ・プリンタ等で明瞭に表示・出力できること | 同左 |
| 検索機能 | 取引年月日その他の日付・取引金額・取引先等で検索できること | 同左 |
重要書類は、受領・作成後、速やかに入力する「早期入力方式」ならおおむね7営業日以内にスキャンします。社内の事務処理規程を定めた「業務処理サイクル方式」では、通常の業務処理期間(最長2か月)を経過した後、おおむね7営業日以内まで入力できます。
一方、一般書類は、入力期間の制限なく適時に入力する方式も認められています。
スキャン時の解像度は200dpi以上が必要です。重要書類は原則として赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像で読み取ります。一般書類は、白から黒まで256階調以上のグレースケールでも保存できます。
2024年1月からは、解像度・階調・書類の大きさに関する「情報を別途保存する要件」は廃止されましたが、読み取るときに200dpi以上などの基準を満たす必要がある点は変わっていません。
旧制度のイメージから「スキャンしたら必ずタイムスタンプ」と考えがちですが、現在は一律必須ではありません。タイムスタンプを利用する場合は、入力期間内に付与します。業務処理サイクル方式なら最長2か月+おおむね7営業日以内が目安です。
訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムを利用し、そのシステムで入力期間内に保存したことを確認できる場合は、タイムスタンプの付与に代えることができます。
保存データは、書類の種類に応じた主要な項目で検索できる状態にします。たとえば領収書なら領収年月日・領収金額・取引先名称、請求書なら請求年月日・請求金額・取引先名称が主要項目です。
基本的には、日付や金額の範囲指定、複数項目を組み合わせた検索も求められます。ただし、税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、範囲指定と複数項目の組み合わせ検索を省略できます。
スキャナ保存した書類と、それに対応する帳簿の記録が確認できるよう、伝票番号や一連番号などで関連付けます。2024年1月以後は、この相互関連性の確保を求める対象が重要書類に限定され、一般書類については負担が軽減されました。
2022年1月以後にスキャナ保存を開始する場合、税務署長の事前承認は不要です。旧記事にあるような「届出書を提出し、税務署の確認後に開始する」という手続きは、現在の通常のスキャナ保存には必要ありません。
ただし、過去に紙で保存している重要書類を後からスキャナ保存へ切り替える「過去分重要書類」の取扱いでは、適用届出書が関係するケースがあります。通常の新規運用と過去分の電子化は分けて確認してください。
スキャナ保存に使う機器は専用スキャナに限られません。スマートフォンやデジタルカメラも利用できます。重要なのは機器の種類ではなく、200dpi相当以上の解像度など、保存要件を満たす画像を作成できることです。
スマホで撮影する場合は、斜め撮影、影、反射、ピンぼけ、書類の端の欠けに注意します。アプリにOCR機能があると検索情報の入力を効率化できますが、OCR自体は法律上の必須要件ではありません。
スキャナ保存の要件を満たして電子データを保存できていれば、原則として読み取り後の紙原本は廃棄できます。これがスキャナ保存を導入する大きなメリットです。
ただし、スキャン直後に機械的に捨てるのではなく、画像が鮮明か、ページの欠落がないか、保存先に正しく登録されたか、必要な検索情報やタイムスタンプ等の要件を満たしているかを確認してから廃棄する運用にすると安全です。
また、税法とは別の法律や契約上の理由で原本保存が必要な書類がある場合は、電子帳簿保存法の要件を満たしていても原本を残す必要があります。
1|紙で受領・作成している書類を洗い出し、スキャナ保存する対象を決める
2|契約書・請求書・領収書等の重要書類と、見積書・注文書・検収書等の一般書類に分類する
3|200dpi、階調、入力期限、タイムスタンプまたは履歴管理、検索機能などを満たせる保存方法を決める
4|受領→スキャン→内容確認→保存→原本廃棄までの社内フローと担当者を決める
5|テスト運用を行い、検索・出力・税務調査時のデータ提供まで確認して本番運用を開始する
市販システムを選ぶ際は、JIIMAの「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」も参考になります。認証ソフトの利用は必須ではありませんが、製品の要件適合性を確認する手掛かりになります。
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| 紙原本を廃棄でき、保管スペースを削減できる | 書類区分ごとに入力期限やカラー要件が異なる |
| 検索・共有しやすくなり、経費精算や監査対応を効率化できる | 要件を満たさず紙を廃棄すると、保存義務を果たしていないと判断されるリスクがある |
| スマホでも対応でき、テレワークや外出先からの精算と相性がよい | システム導入後も、入力漏れ・スキャン不良・検索情報の誤りを防ぐ運用が必要 |
いいえ。スキャナ保存は任意です。紙で受け取った請求書や領収書は、紙のまま保存することもできます。ただし、電子メールやWebなどで電子データとして受け取った取引情報は、電子取引データ保存のルールに従ってデータのまま保存する必要があります。
電子帳簿保存法では、スキャナ保存のファイル形式を「PDFのみ」などと限定していません。PDFやJPEG等でも、解像度・階調・見読可能性・検索機能など必要な保存要件を満たせる形式であれば保存できます。
できます。訂正・削除履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムを利用し、入力期間内に保存したことを確認できる場合は、タイムスタンプに代えることができます。
要件を満たした保存が完了していれば原則として廃棄できますが、画像の欠落・不鮮明、保存失敗などを確認する前に捨てるのは避けましょう。社内で確認工程を定め、保存完了を確認してから廃棄する運用を推奨します。
紙で受け取った適格請求書(インボイス)も、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たせば電子データで保存できます。消費税の仕入税額控除に必要な記載事項が読み取れる状態で保存することが重要です。
最初からPDF等で受け取ったインボイスは、スキャナ保存ではなく電子取引データ保存の対象です。
電子帳簿保存法のスキャナ保存は、紙で受領・作成した請求書や領収書などを、一定の要件のもとで電子データに置き換える任意制度です。要件を満たして保存すれば、紙の原本を廃棄でき、保管スペースや検索の手間を減らせます。
2026年時点では税務署への事前承認は不要で、タイムスタンプも一定の履歴管理システムで代替できます。一方、重要書類と一般書類では入力期限やカラー要件が異なるため、自社が扱う書類を分類してから運用設計することが大切です。
まずは紙で受け取っている書類を洗い出し、「紙保存を続けるもの」「スキャナ保存へ切り替えるもの」を決めたうえで、要件に沿ったシンプルな運用を整えましょう。