更新日:2026.09.30

ー 目次 ー
電子帳簿保存法を調べていると、古い資料では「第10条」、現在の資料では「第7条」と書かれており、「どちらを確認すればよいのか」と迷うことがあります。
結論からいうと、2021年以前の電子帳簿保存法第10条に置かれていた「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」に関する規定は、2022年1月1日施行の改正後、現在の第7条に置かれています。
そのため、メール添付のPDF、クラウド請求書、ECサイトの領収書など、電子取引でやり取りした取引情報の保存ルールを確認するときは、現在は第7条を確認するのが基本です。
また、2024年1月1日以降は、対象となる電子取引について、紙へ印刷して保存するだけではなく、電子データ自体を保存する必要があります。
この記事では、旧第10条と現在の第7条の関係、第4条との違い、2026年時点で必要な電子取引データの保存方法、検索要件や猶予措置まで整理します。
現在の電子帳簿保存法では、電子取引に関する規定は第7条「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」に置かれています。
一方、2021年以前の電子帳簿保存法では、電子取引に関する規定が第10条に置かれていました。
2021年度税制改正に伴う条文整理により、2022年1月1日から条文番号が変更されたためです。
| 確認したい内容 | 現在確認する条文・保存区分 |
|---|---|
| 電子取引で授受した請求書・領収書等のデータ保存 | 第7条(旧第10条) |
| PC等で最初から電子的に作成した国税関係帳簿の電子保存 | 第4条第1項 |
| PC等で最初から電子的に作成した国税関係書類の電子保存 | 第4条第2項 |
| 紙で受領・作成した書類のスキャナ保存 | 第4条第3項 |
古い資料に「第10条」と書かれていても、それだけで誤りとは限りません。2021年以前の制度を説明している資料では当時の条文番号として第10条が使われています。現在の実務を確認するときは、第7条と最新の国税庁資料を確認しましょう。
条文番号が第10条から第7条へ変わっただけではありません。
2021年度税制改正では、電子取引データの保存方法についても大きな見直しが行われました。
旧制度では、電子取引で受け取った取引情報について、一定の条件のもとで電子データを出力した書面による保存も認められていました。
改正後は電子取引データそのものを保存することが原則となり、2022年1月1日に制度が施行されました。その後、2023年12月31日までは宥恕措置が設けられ、2024年1月1日以降は現在の電子取引データ保存ルールへの対応が必要となっています。
| 時期 | 電子取引の条文 | 主な扱い |
|---|---|---|
| 2021年以前 | 第10条 | 旧制度では電子取引データを出力した書面で保存できる取扱いがあった |
| 2022年1月以降 | 第7条 | 電子取引データ自体の保存を原則とする制度へ改正 |
| 2022年1月〜2023年12月 | 第7条 | 一定の事情がある場合の宥恕措置により出力書面による対応も認められた |
| 2024年1月以降 | 第7条 | 電子取引データ自体の保存が必要。一定の事業者には猶予措置あり |
電子帳簿保存法の第4条と第7条は、どちらも電子データの保存に関係します。
大きな違いは、対象となる帳簿・書類が「どのように作成・授受されたか」と、電子保存が任意なのか必要なのかという点です。
| 保存区分・条文 | 主な対象 | 電子保存 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 第4条第1・2項 |
会計ソフト等で最初から電子的に作成した仕訳帳・総勘定元帳・決算関係書類・自社作成の請求書控え等 | 任意 |
| スキャナ保存 第4条第3項 |
紙で受領・作成した請求書、領収書、契約書など | 任意 |
| 電子取引データ保存 第7条 |
メール添付PDF、クラウド請求書、ECサイトの領収書、EDI等、電子データとして授受した取引情報 | 必要 |
「電子帳簿保存法のすべてが義務化された」わけではありません。紙で受け取った書類のスキャナ保存などは任意です。義務として特に注意したいのが、第7条に基づく電子取引データの保存です。
電子取引は、メール添付の請求書だけではありません。
取引情報を紙ではなく電子データで授受した場合、幅広い取引が対象になります。
メールに添付されたPDFの請求書・領収書を受け取る
クラウド請求書サービスから請求書をダウンロードする
AmazonなどのECサイトから領収書・請求書をダウンロードする
EDIシステムで注文書・請求データ等をやり取りする
クレジットカード、交通系サービス、ネットバンキング等のWeb明細を利用する
自社から注文書・請求書等を電子データで取引先へ送る
2024年1月1日以降に行う電子取引について、所得税・法人税等で帳簿・書類の保存義務がある事業者は、電子取引の取引情報に係る電子データを保存する必要があります。
PDFを紙に印刷して社内ファイルへ保管すること自体は禁止されていません。
ただし、紙へ印刷したからといって、元のPDF・電子データを削除してよいわけではありません。
電子取引でPDF請求書を受領した場合
PDFを保存 + 必要に応じて印刷 → 問題なし
PDFを削除 + 印刷した紙だけを保存 → 原則不可
電子取引データを保存するときは、データの改ざんを防止し、必要なときに内容を確認・検索できる状態にしておきます。
| 要件 | 主な対応例 |
|---|---|
| 改ざん防止 | タイムスタンプが付与されたデータを受領する、タイムスタンプを付与する、訂正・削除履歴が残る/訂正・削除できないシステムを利用する、訂正・削除防止の事務処理規程を定めて運用する等 |
| 見読可能性 | 税務調査等で指定されたデータを速やかに画面表示・出力できるよう、ディスプレイやプリンタ等を備え付ける |
| 検索機能 | 原則として「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」で検索できるようにする |
電子帳簿保存法への対応に、有料の専用システムが必須というわけではありません。
取引件数が少ない事業者であれば、たとえば次のような規則的なファイル名を付け、フォルダや索引簿を利用して管理する方法も考えられます。
20260831_110000_株式会社○○.pdf
すべての事業者が高度な検索システムを用意しなければならないわけではありません。
税務職員からの電子データのダウンロードの求めに応じられる場合は、日付・金額の範囲指定や、複数の記録項目を組み合わせる検索機能が不要になります。
さらに、一定の条件を満たす事業者は、検索機能そのものが不要になる場合があります。
| 条件 | 検索要件 |
|---|---|
| 電子データのダウンロードの求めに応じられる | 範囲指定検索・組み合わせ検索が不要 |
| 基準期間の売上高が5,000万円以下で、ダウンロードの求めに応じられる | 検索機能の確保が不要 |
| 電子データを出力した書面を日付・取引先ごとに整理して提示・提出でき、ダウンロードの求めにも応じられる | 検索機能の確保が不要 |
2024年1月以降も、保存時の要件に従った対応が難しい事業者に対する猶予措置が設けられています。
所轄税務署長が、保存要件に従えなかったことについて「相当の理由」があると認め、税務調査等で求められた際に電子取引データとその出力書面を提示・提出できる場合は、改ざん防止や検索機能などの保存時の要件に従わず電子データを保存することが認められます。
猶予措置を利用するための事前申請は必要ありません。
猶予措置でも電子データ自体の保存は必要です。印刷した紙だけを残して元データを削除することは認められていません。
まずは、自社が扱う帳簿・書類・電子データを分類します。
電子帳簿等保存:最初から電子的に作成している帳簿・書類
スキャナ保存:紙で受領・作成した書類をスキャンして保存
電子取引データ保存:電子データとして授受した取引情報
特にメール、クラウドサービス、ECサイト、Web明細などで取引情報を授受していないかを洗い出しましょう。
電子請求書や領収書が担当者のメールボックスや個人PCに散在していると、退職やPC交換時にデータを失うおそれがあります。
共有フォルダ、クラウドストレージ、会計システム、請求書管理システムなど、社内の保存先を統一しましょう。
電子取引データの改ざん防止について、タイムスタンプ、システムの訂正削除履歴、事務処理規程など、どの方法を利用するかを決めます。
検索方法も、システムの検索機能、規則的なファイル名、索引簿などから自社の取引量に合う方法を選びます。
紙で受け取った請求書や領収書について、スキャナ保存を行うかどうかは任意です。
第7条の電子取引データ保存とは分けて考え、紙の保管スペース削減や検索性向上などのメリットを踏まえて導入を検討しましょう。
旧第10条から現在の第7条への条文整理だけでなく、2022年1月施行の改正では電子帳簿保存法全体の要件も大きく見直されました。
| 主な改正 | 内容 |
|---|---|
| 事前承認制度の廃止 | 電子帳簿等保存やスキャナ保存を始める際に必要だった税務署長の事前承認制度を廃止 |
| スキャナ保存のタイムスタンプ要件を緩和 | 入力・タイムスタンプ付与期限を最長約2か月+おおむね7営業日以内へ緩和。一定のシステムを利用する場合はタイムスタンプ自体を省略できる |
| 適正事務処理要件の廃止 | スキャナ保存における相互けん制、定期検査等の要件を廃止し、スキャン後の紙原本を廃棄しやすくなった |
| 重加算税の加重措置 | スキャナ保存データ・電子取引データに関連して一定の隠蔽・仮装があった場合、通常の重加算税に10%を加重する措置を整備 |
| 優良な電子帳簿に係る軽減措置 | 一定の要件を満たす優良な電子帳簿について、所定の届出等を行うことで対象となる申告漏れに係る過少申告加算税を5%軽減 |
「事前承認制度が廃止された」ことと、「電子帳簿保存法に関する届出がすべて不要になった」ことは別です。優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置など、現在も届出が必要な制度があります。
必ずしも間違いではありません。
2021年以前の電子帳簿保存法では、電子取引に関する規定が第10条に置かれていました。
過去の制度を説明している資料であれば、第10条という表記は当時の条文番号として正しいものです。
現在の電子取引データ保存について確認する場合は、現行法第7条と最新の国税庁資料を確認してください。
いいえ。
2024年1月以降の電子取引では、対象となる電子データ自体を保存する必要があります。
紙へ印刷して追加で保存することはできますが、原則として電子データの保存に代えることはできません。
はい。
所得税法等で帳簿・書類の保存義務があり、電子取引を行っている個人事業主も対象です。
法人だけを対象とした制度ではありません。
いいえ。
紙で受け取った領収書・請求書等について、電子帳簿保存法のスキャナ保存を利用するかどうかは任意です。
電子取引で電子データとして受け取った書類の保存義務とは分けて考えてください。
必須ではありません。
規則的なファイル名やフォルダ、索引簿、事務処理規程などを利用し、必要な保存要件を満たせる場合は、専用システムを使わずに対応することもできます。
一方、取引件数が多い場合や複数担当者で管理する場合は、検索・権限管理・訂正削除履歴等をシステムで管理した方が運用しやすくなることがあります。
電子帳簿保存法の旧第10条に置かれていた電子取引に関する規定は、2022年1月施行の改正後、現在の第7条に置かれています。
そのため、古い資料で「電子帳簿保存法第10条」と書かれている場合は、現在の制度を確認するときには第7条と最新の国税庁資料を参照しましょう。
また、現在の電子帳簿保存法では、第4条が電子帳簿等保存・スキャナ保存、第7条が電子取引データ保存に関する規定という違いがあります。
電子帳簿等保存やスキャナ保存は任意ですが、2024年1月以降に電子取引で授受した対象データは、原則として電子データ自体を保存する必要があります。
まずは自社の帳簿・書類を「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つに整理し、第7条の対象となる電子取引について、保存場所、改ざん防止、検索方法を決めて運用しましょう。
保存要件への対応が難しい場合でも、一定の条件を満たせば猶予措置を利用できる場合があります。ただし、その場合も元の電子取引データを削除せず保存しておく必要があります。