更新日:2025.06.26
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電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や取引書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。中小企業や小規模事業者が対応する際には、新規で対応したITツールの導入が必要となる場面も少なくありません。
しかし、導入費用が高額になることもあり、費用面の不安から対応を見送るケースも見受けられます。
そのような場合は、経済産業省が支援する「IT導入補助金」を活用することで、ITツール導入時のコストを抑えることが可能です。ただし、申請には定められた手続きがあるため、流れや注意点を把握しておく必要があります。
本記事では、電子帳簿保存法はIT導入補助金の対象になるのかについて、また申請する際の流れなどを解説します。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の業務効率化やDX化を目的に、ITツール導入を支援する制度です。業種や規模に応じて対象が限定されており、企業の資本金や従業員数などが要件に含まれています。
中小企業の対象者は以下のとおりです。なお、対象かは資本金と従業員人数のどちらかが下記以下の場合に当てはまります。資本金の記載がない業種は、従業員数が規定を下回っている場合が対象です。
業種・組織形態 |
資本金 |
従業員数 |
製造業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
サービス業 |
5,000万円 |
100人 |
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
ゴム製品製造業 |
3億円 |
900人 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
その他の業種(上記以外) |
3億円 |
300人 |
医療法人・社会福祉法人 |
- |
300人 |
学校法人 |
- |
300人 |
商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所 |
- |
100人 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定する中小企業団体 |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
財団法人(一般・公益) |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
特定非営利法人 |
- |
主たる業種に記載の従業員規模 |
次に、小規模事業者の対象者は下記の通りです。
業種・組織形態 |
従業員数 |
①商業・サービス業 |
5人以下 |
②サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
③製造業その他 |
20人以下 |
電子帳簿保存法は、インボイス対応類型とセキュリティ対策推進枠の対象になります。枠は併用できないため、自社が必要な補助金を選びましょう。
インボイス対応類型は、インボイス制度や改正電子帳簿保存法など、企業間取引のデジタル化を推進することを目的とした補助枠です。
対象となる費用は、会計ソフトや受発注ソフト、ECソフトなどのITツールの導入費用に加え、POSレジやタブレットなどのハードウェア購入費も含まれます。IT導入補助金には、ハードウェアの購入が対象にならない枠もあるため、自社のITツールを一新したい企業に向いています。
セキュリティ対策推進枠は、企業のIT活用において不可欠なセキュリティ強化を目的とした補助枠です。近年はITの普及からサイバー攻撃も増加しているものの、制度を利用することで自社のデータが流出するリスクを減らせます。
電子帳簿保存法では、データで取引情報を保存するため、セキュリティの強化は極めて重要です。補助金を活用できるタイミングで、セキュリティツールの導入や運用の見直しを進めましょう。
IT導入補助金を活用して電子帳簿保存法に対応する場合、申請にはGビズIDプライムの取得や解決するべき課題の明確化など、事前準備が必要です。正しい流れを理解していなければ、必要な準備が足りておらず、申請できない可能性があります。
ここでは、電子帳簿保存法でIT補助金を申請する際の4ステップを解説します。
IT導入補助金の申請には「GビズIDプライム」の取得が必須となっています。GビズIDとは、複数の行政サービスに共通して使用できる、法人・個人事業主向けの認証システムです。
取得することで、IT導入補助金の申請以外にも、事業継続力強化計画の認定申請や社会保険手続きなどがインターネット上から可能になります。
IDの申込み後は、発行されるまでに2週間程度かかるため、補助金の申請スケジュールにあわせて取得しておきましょう。
電子帳簿保存法への対応内容は企業によって異なり、導入するITツールもさまざまです。そのため、必要なITツールを選定する目的として、既存の業務フローを洗い出し、課題点を明確にしておかなければなりません。
ITツールを導入する理由が明確であれば、必要な機能を備えたツールを選びやすくなり、補助金の審査でも説得力のある計画書を作成できます。
IT導入補助金は、経済産業省に登録された「IT導入支援事業者」と共同で申請する必要があります。支援事業者を選ぶことで、ツールの提案から申請書作成、導入支援までのサポートを受けられます。
1件のIT導入補助金を申請するにあたり、共同できる支援事業者は1社のみです。複数の事業者を比較検討し、自社の課題にあった企業を選定しましょう。
IT導入補助金の交付申請は、IT導入支援事業者との共同でおこないます。
おもな流れは以下の通りです。
IT導入補助金は便利な制度ですが、活用する際には利用できるITツールが限られている、審査に通らない可能性があるなどの注意点があります。事前に注意点を理解しておかなければ、準備しても申請が却下されてしまうおそれもあるでしょう。
IT導入補助金の審査に通らなければ、導入したツールの費用は自社で負担せねばなりません。
ここからは、電子帳簿保存法でIT導入補助金を活用する際の注意点を解説します。
IT導入補助金の対象となるツールは、あらかじめ登録されたITツールに限られています。導入したいソフトウェアやハードウェアが対象外の場合、補助金を利用できません。
使用したいツールが補助金の対象かどうかは、IT導入補助金の公式ホームページで検索できます。事前に確認し、補助対象であることを確認してから選定を進めましょう。
参考:IT導入補助金2025「ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む)」
IT導入補助金は審査制であり、申請すれば必ず採択されるわけではありません。2024年の通過率は約70%前後で、申請の時期や内容によって結果が左右されます。
とくに予算の集中する年末や締切間際の申請は通りにくい傾向があるため、余裕を持ったスケジュールで申請することが大切です。
IT導入補助金は年間を通して、複数回に分けて申請期間が設けられています。申請時期によって受付中の枠が異なるため、自社が申請を希望する枠のスケジュールを確認しておきましょう。
2025年6月時点では、第3次募集までの情報が公開されています。第4次募集以降のスケジュールは、順次更新される見込みです。
本記事では、電子帳簿保存法はIT導入補助金の対象になるのかについて、また申請する際の流れなどを解説しました。
電子帳簿保存法でIT導入補助金を利用する際は、「インボイス対応類型」と「セキュリティ対策推進枠」の2つから選べます。これらの制度を活用することで、自社の負担を軽減しながら、電子帳簿保存法への対応を進められます。
補助金の申請には、GビズIDの取得や支援事業者との連携など、定められた手続きがあり、採択されるためにも漏れがないよう対応しなければなりません。
どのような流れでIT導入補助金を申請すればいいかわからなくなった際は、本記事を参考に手順を進めましょう。