更新日:2025.06.26
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電子帳簿保存法の改正により、インターネットバンキングで受け取る「口座振替のお知らせ」の保存方法が大きく変わりました。従来は紙に印刷して保存が一般的でしたが、2024年1月からは電子データのままの保存が法律で義務付けられています。
この改正は口座振替のお知らせだけではなく、ネットバンキング明細やATM明細、給与明細、さらには0円の請求書まで幅広い書類が対象です。保存ルールも複雑化しており、適切に対応しないと税務調査で問題となるリスクがあります。
本記事では、口座振替のお知らせをはじめとする各種電子データの保存ルールについて、紙と電子それぞれの保存要件もあわせて解説します。
インターネットバンキングを利用した際の「口座振替のお知らせ」は、電子取引に該当するため電子保存が義務化されています。電子取引とは、オンラインで授受される請求書・領収書や支払書、口座振替の通知メールなどのデータのことです。
とくに、EDI取引として扱われる振込などを実施した際の「取引年月日」「金額」「振込先名」などが記載されたデータの保存が必要です。ただし、紙で郵送されてくる口座振替通知は紙のまま保存しても問題ありません。
インターネットバンキングを利用している場合は、振込や口座振替をおこなった際の画面や明細をPDFやスクリーンショットで保存しておく必要があります。
電子帳簿保存法の対象となる書類は、口座振替のお知らせだけではありません。保存が必須となるおもな書類は、以下のとおりです。
これらの保存対象書類は、法人は原則7年、個人事業主は5年間保存する必要があります。
ここでは、口座振替のお知らせ以外で保存対象となる書類の判断基準について解説します。
金銭の授受に関する以下の書類は、電子取引データとして保存しなければなりません。
電子帳簿保存法では「電子取引」として授受されたデータは電子保存が必須です。書類の種類を問わず、金銭の授受に関するデータで業務上保存が必要なものは対象です。
手書きの口座振替依頼書のような、紙媒体で作成され、かつ紙のまま受け渡しされる書類は、基本的に電子帳簿保存法の「電子取引」の対象にはなりません。
電子帳簿保存法で「電子取引」として扱われるのは、データとして電子的に授受された取引情報です。
一方で、その紙の書類をスキャンしてPDF化し、それをメールによる送付や、クラウドサービスにアップロードして共有する場合は、電子化されたデータは電子取引として保存義務の対象です。
電子帳簿保存法に対応するうえで、知っておくべきルールがいくつかあります。これらのルールを理解していないと、法令違反や取引先とのトラブルなどのリスクが生じる可能性があります。
基本ルールをおさえておくことで、書類の適切な保存と法令への対応が可能です。とくに、電子取引データの保存義務と紙書類の取り扱い、そして保存要件の3つが重要です。
ここでは、電子帳簿保存法で知っておくべき基本ルールについて解説します。
2022年の法改正により、電子取引データは電子保存が義務化されました。2024年1月以降は完全に義務化され、紙での保存は原則認められていません。
ただし、以下のような場合は例外的な対応が認められています。
電子取引データに関しては、所轄税務署長が相当の理由と認める場合や売上が5,000万円以下の事業者は、電子取引データを保存しておくだけで問題ありません。ただし、データのダウンロードの求めや、データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じられるようにするため電子取引データを消さずに保存する必要があります。
紙の書類の場合は、「紙の書類のまま保存」もしくは「スキャンしてデータ化して保存」のどちらかから保存方法が選択可能です。ただし、スキャンして保存する場合は以下のスキャナ保存の要件にしたがって保存する必要があります。
これらの要件を満たさない場合は、スキャナ保存として認められない可能性があるため、要件を十分に確認してから紙書類のデジタル化を実施することが重要です。
電子帳簿保存法にもとづいて電子取引データを保存する際には、「真実性の確保」と「可視性の確保」の保存要件を満たす必要があります。
それぞれの保存要件の対応措置は、以下のとおりです。
保存要件 |
対応措置 |
真実性の確保 |
以下のいずれかをおこなうこと |
可視性の確保 |
・パソコンなどの電子計算機・プログラム・ディスプレイ・プリンタおよびこれらの操作マニュアルを保存場所に備付ける |
これらの要件を満たすためには、専用のシステムを導入するか、適切な事務処理規程を定めて運用する必要があります。とくに中小企業や個人事業主の場合は、専用のシステム導入が不要な事務処理規程の策定・運用が選択肢となることが多いです。
インターネットバンキングなどでやり取りされる銀行の取引明細は、電子帳簿保存法の「電子取引データ」に該当し、2024年1月1日以降は電子での保存が義務付けられています。従来の紙の通帳は電子取引データではありませんが、オンラインで取得するデータは電子保存が必須です。
この義務化に対応しつつ経理業務を効率化するためには、専用のサービスやシステムの利用がおすすめです。サービス・システム利用には、以下のようなメリットがあります。
サービス・システムを選ぶ際は、自社の規模や業務フローにあったものを選ぶことがポイントです。
本記事では、口座振替のお知らせをはじめとする各種電子データの保存ルールについて、紙と電子それぞれの保存要件もあわせて解説しました。
「電子帳簿保存法」にもとづいて電子データで受け取った明細は、電子データのまま保存が義務となっています。口座振替通知書やATM明細、給与明細なども、適切に保存すれば税務リスクの低減が可能です。
正しい保存方法で、印紙代や保管スペースのコスト削減などのメリットも期待できます。さらに、電子保存は業務効率化やペーパーレス化、検索性向上にも貢献し、経理業務の大幅な改善につながります。
法令遵守と業務効率化を両立させるためにも、この機会に電子帳簿保存法への対応を進めましょう。