更新日:2023.07.25
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近年は働き方改革や新型コロナウイルス感染対策の影響で、在宅勤務を始めとしたテレワークを導入する企業が増えてきています。しかし、テレワークの導入率は職種によって差があり、特に経理は他の部門に比べて低い傾向があります。なぜ経理部門のテレワークはなかなか普及しないのでしょうか。
本記事では、経理のテレワーク普及が進まない理由や、経理のテレワークを推進するメリット、テレワーク導入に必要なことについて解説します。
総務省の発表によると、民間企業におけるテレワークの実施状況は平均38.4%となっており、大企業に限定すると7割弱を占めています。(※)
一方で経理部門のテレワーク普及はなかなか進まず、全国の経理担当者1,000人を対象に実施したアンケート調査によると、「在宅勤務を希望しても全くできない」と回答した人は約56%、働き方が以前と「変わらない」と回答した人は80%以上だったそうです。(※)
経理のテレワーク普及率が伸び悩む主な理由を4つ紹介します。
※出典:総務省「令和3年版 情報通信白書((1)テレワークの実施状況)」
※出典:日本の経理をもっと自由に。「1000人に聞いた経理に関する調査2021」
経理で取り扱う請求書や領収書などの書類は、紙媒体で発行されるイメージが根強いです。紙の書類は一般的にオフィスで管理するため、経理業務は必然的に社内で行わなければならず、出社せざるを得ない状態となっています。
経理部門の請求業務については、以下の記事も参考にしてください。
【請求業務を効率化する方法!業務の課題点に合わせて解決策を解説】
https://media.invoice.ne.jp/column/accounting-operations/optimization.html
2020年、政府は押印作業を廃止する脱ハンコを推進する声明を発表しました。(※)しかし、企業によっては長らくハンコ文化が定着していたため、脱ハンコできていないケースもあるようです。特に経理で取り扱っている請求書や経費申請の稟議書、経費精算書などは、担当者や上司の承認印が必要とされることがあります。実際、担当者や上司からハンコをもらうためだけに出社している経理担当者もいるようです。
※出典:金融庁「押印手続の見直しに向けた取組について」
テレワークを導入するには、従業員の自宅にパソコンやインターネットなどのICT環境を整える必要があります。業務に利用するパソコンは会社が支給するケースが多く、オフィス用とは別にパソコンを購入・リースする費用を捻出しなければなりません。
また、オフィスとの連絡用やデータのやり取り用に、コミュニケーションツールやクラウドサービスなどを導入しなければならず、新たなコストが発生します。テレワークの実施によって従業員の交通費が削減できる一方、初期導入費がネックでテレワークの普及が進まないケースもあるようです。
経理は業務上、自社の機密情報や、取引先および顧客の個人情報などを多く取り扱っています。テレワークの導入にともない、紙の書類を従業員の自宅に持ち帰った場合、紛失や盗難に遭うリスクが高くなる点も考慮しなければなりません。
もし情報が漏えいしてしまった場合、取引先や顧客に実害が及ぶ可能性があるのはもちろん、会社としてのイメージダウンにもつながり、社会的な信用を失う可能性があります。書類を電子化した場合も同様で、データを記録したUSBメモリの紛失リスクや、不正アクセスなどのリスクを考慮すると、なかなかテレワーク導入に踏み切れないケースもあるようです。
経理で在宅勤務を始めとしたテレワークが普及しない理由は複数あります。そのため、企業によっては導入を断念してしまうところもあるようです。しかし、経理部門にテレワークを導入した場合に得られるメリットはたくさんあります。経営の課題になっている労働生産性や経費、ヒューマンエラーなどの解決にも役立つでしょう。
ここでは、経理がテレワークを導入した場合に期待できるメリットを4つ紹介します。
経理にテレワークを導入するにあたってペーパーレス化を推進すると、経理業務にかかるコストを節約できます。例えば、書類の印刷にかかっていた用紙代やインク代、取引先に書類を送る郵送費などはペーパーレス化によって丸ごとカットすることが可能です。さらに、経理担当者の出社が不要になれば、通勤費の節約にもつながります。
請求書処理のコスト削減に関する事例などは、以下の記事でご確認ください。
【~ ケーススタディ ~ 業務効率から見えたコスト削減!】
https://media.invoice.ne.jp/column/case/case_study_d.html
テレワークのために、経費精算システムや請求書のおまとめサービスなどを利用すると、それまで手動で行ってきた業務の多くを自動化できます。また、ペーパーレス化が推進すると、書類の印刷やファイリングなどの手間も不要になるため、業務時間の短縮にもつながるでしょう。
慢性的な人手不足が課題となっている企業も、便利なシステムやサービスの導入によって一人当たりの労働生産性がアップすれば、今いる人材だけで効率的に業務を回せるようになります。
生産性の解決につながる事例は、以下の記事でもまとめています。
【~ ケーススタディ ~ 多店舗展開の企業必見!○○がスムーズに!?】
https://media.invoice.ne.jp/column/case/case_study_it.html
紙の書類を手書きまたは手入力で作成すると、記入漏れや入力ミスなどのヒューマンエラーが起こりやすくなります。特に経理は会社のお金を取り扱う関係上、ささいなエラーが大きな損害につながりかねません。システムやサービスの導入によってデータ入力を自動化すれば、ヒューマンエラーの発生率が低下し、正確かつスピーディに業務をこなせるようになります。
テレワークが当たり前になりつつある現代において、いまだに出社を余儀なくされる職場環境は、従業員にストレスや不満を抱かれる原因となります。不平や不満が募ると、「テレワークで働きたいから」「経理担当だけ出社しなければならないのは不公平だから」といった理由で離職につながる可能性もあるでしょう。経理でテレワークを導入すれば、従業員の満足度が向上し、離職率の低下に役立ちます。
経理でテレワークを導入する際に必要なことは大きく分けて3つあります。3つ一気に実現するのは難しいため、一つずつ確実に準備をこなしていきましょう。
まずは、テレワークを行うために必要なICT環境を整えます。テレワークを行うときは、まずパソコンとインターネット環境の2つが必要です。業務に使用するパソコンは、会社側が支給する方法と、従業員の私物を利用する方法の2パターンがあります。
会社側で支給する場合、業務用パソコンを購入またはリースし、初期設定やインターネット環境の整備を済ませた上で支給する必要があります。その際、従業員ごとにIDを交付し、誰がどのパソコンをテレワークに利用しているか管理することが大切です。
従業員の私物パソコンを利用する場合は、業務に必要なスペックを満たしているか、セキュリティソフトはインストールされているかなどを確認しなければなりません。また、従業員がパソコンを所有していない場合は、補助金などを支給して購入をサポートするなどの措置も検討する必要があります。インターネット環境についても同様です。従業員の自宅に回線が引かれていない場合は、導入サポートなどを行う必要があります。
テレワーク期間中に何度も出社することのないよう、経理業務に必要な書類はペーパーレス化します。なお、国税関連の書類(請求書や領収書など)は電子帳簿保存法に則って管理しなければならないため、同法に対応したシステムやツールを導入する必要があります。また、押印業務を省略できるよう、電子署名や電子印鑑などのサービスやツールの導入も検討しましょう。
テレワークで作成した書類データをオフィスに提出する際、都度メールなどに添付していると手間と時間がかかります。クラウドサービスを導入すれば、作成したデータをリアルタイムで共有できるため、特定の個人宛にファイルを送信する必要はありません。社内で情報を共有できれば、テレワーク中でも経理業務が見える化されるため、業務が滞りなく進んでいるか、請求漏れなどのミスが発生していないか、といった状況もチェックしやすくなります。
また、上記3つの他、内閣府が公表している各府省における内部手続の見直し事例(※)なども参考にするとよいでしょう。
※出典:内閣府「地方公共団体における押印見直しマニュアル(参考資料集)」p23〜34
経理でテレワークを導入するにあたって、特に気を付けたいポイントや留意すべき課題を2つ紹介します。
経理は同じ部門・部署の担当者だけでなく、営業や販売など他部門とのやり取りも多い部署です。したがって、経理にテレワークを導入する際は、部門や部署をまたいで社内の人間とまんべんなくコミュニケーションを取れる手段を確保することが大切です。また、提出された書類などを適切に処理していくため、社内コミュニケーションの取り方も工夫しましょう。
例えば、経理業務をスムーズに進めるためには、書類の請求漏れや支払いミスなどのトラブルが起きた際、なるべく早い段階で関係者に確認する必要があります。しかし、チャットツールやWeb会議システムなどで連絡する場合は、どうしても多少のタイムラグが生じる可能性があります。確認が遅くなれば遅くなるほど、経理業務が滞ってしまうこともあるでしょう。
経理がテレワークを導入する場合は、Web会議を定時で開催して定期的にコミュニケーションを取る機会を設けるなどして、情報共有する機会を増やすのがおすすめです。
ペーパーレス化を推進すれば、テレワーク時に書類の原本を紛失・盗難するリスクは軽減されます。しかし、電子データのやり取りにインターネットを利用すると、不正アクセスやクラッキングなどの被害に遭うリスクがあります。
経理では機密情報や個人情報など重要なデータを取り扱うことが多いため、テレワーク時のセキュリティ対策は念入りに行いましょう。具体的には、業務で使うパソコンにアンチウイルスソフトをインストールする。セキュリティ性の高いシステムやツール、サービスを利用するなどです。特にシステムやツール、サービスに関しては、アクセス権限の付与や二段階認証などを使えるものを選ぶことをおすすめします。
経理は、紙業務が多い、脱ハンコが進んでいない、導入コストがかかるなどの理由から、なかなかテレワークが進まない職種と言われています。経理にテレワークを導入すれば、コスト削減や労働生産性の向上などさまざまなメリットがあるため、ICT環境の整備やペーパーレス化、クラウドサービスの導入などを進め、経理のテレワークを推進してみましょう。
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