更新日:2025.03.28
ー 目次 ー
ビジネス環境が激しく変化する現代において、企業は常に変化に対応し、競争力を維持・向上させる必要があります。そのための有効な手段の一つとして、近年ますます注目を集めているのが「アウトソーシング」です。
アウトソーシングは、単なる業務の外注ではなく、企業のコアコンピタンスに集中し、経営資源を最適化するための戦略的な選択肢です。専門性の高い外部リソースを活用することで、業務効率化やコスト削減はもちろん、新たな価値創造やイノベーションの促進にも繋がります。
しかし、アウトソーシングを成功させるためには、その意味や種類、派遣との違い、そしてメリット・デメリットを十分に理解することが不可欠です。本記事では、アウトソーシングの基本から応用までを網羅的に解説し、企業の成長戦略を力強くサポートします。アウトソーシングの導入を検討している方はもちろん、企業の経営戦略に関わる全ての方にとって、有益な情報を提供します。
アウトソーシングとは、企業内で行っていた業務の一部を外部の企業へ委託することです。たとえば、確定申告に関する業務を外部の税理士事務所に依頼することや、製品開発に必要な部品の製造を外部の工場に依頼することなどは、アウトソーシングといえるでしょう。アウトソーシングは、経理や開発の分野だけでなく、物流や人事など多くの場面で活用されています。
アウトソーシングの大きな目的は、コストの削減や業務の効率化を図ることです。社員を雇うと、給与や賞与、福利厚生費などがかかってしまいますが、アウトソーシングを活用すればこれらの費用を削減できます。専門知識をもった外部企業のほうがスピーディーに対応できるケースも多いでしょう。
アウトソーシングを活用する企業が増えている背景として、少子高齢化や労働人口の減少が挙げられます。労働力不足を補うためにアウトソーシングを利用し、社内の人的資源を有効活用している企業も多いでしょう。
企業向けのサービスを提供する企業が増えたことも、アウトソーシングを加速させる理由のひとつです。人事管理や生産管理に関するサービスも増えてきたため、今後もさまざまな場面でアウトソーシングを行う企業は増加していくと予想されます。
アウトソーシングを行うことには、企業の競争力を強化できる、人件費や教育費を削減できる、業務を効率化できる、といったメリットがあります。ここでは、アウトソーシングの5つのメリットを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
企業の競争力を素早く強化できることは、アウトソーシングを行うメリットのひとつです。企業の競争力を高めるためには、優秀な人材の確保や教育が欠かせません。ただ、社員の育成には、それなりのコストと時間がかかります。変化が激しい時代において、社員が一人前になるまでのんびりと教育をしていると、ライバル企業に差をつけられてしまうケースも多いでしょう。
そこでアウトソーシングを行い、外部の優秀な人材に業務の一部を委託し、スピーディーに競争力をアップさせようとする企業が増えているのです。もちろん、企業として継続的に発展していくためには、社員の育成も必要です。
ただ、すべての業務について、社内で人材を育てる必要はありません。自社にとって中心となる業務やコアとなる開発技術については人材を育成しつつ、その他の事務作業はアウトソーシングするなど、内部と外部の人的資源をうまく活用することで効率的に競争力を高められるでしょう。
人件費を削減できることも、アウトソーシングの大きなメリットです。あらゆる業務に対して、それを担当する社員を雇うと、当然ながら多額の人件費がかかってしまいます。人件費には、給料やボーナスだけでなく、福利厚生費や退職金なども含まれます。必要に応じて社宅の費用や交通費などを支給する場合もあるでしょう。
社員を雇うことで発生する費用は、人件費だけではありません。自社の仕事を覚えてもらうための教育費や、スキルアップしてもらうための研修費も発生します。パソコンやスマートフォンを支給するための費用や、制服や名刺などを作成するための費用が必要となる場合もあるでしょう。
業種によっても異なりますが、社員を1人雇うだけで、さまざまな費用が発生するのです。社員が担当する必要のない業務の場合は、アウトソーシングを活用して人件費や研修費などのコストを削減することが大切です。
業務を効率化できることも、アウトソーシングの大きなメリットといえるでしょう。社内業務の一部を委託する外部企業は、その道のプロです。深い知識と多くの経験をもとに、スピーディーかつ丁寧に、品質のよい仕事をしてくれるでしょう。社内で行うと数人がかりで2〜3日かかるような作業でも、アウトソーシングを行えば1日で終わるケースもあります。
アウトソーシングを受ける外部企業は、その業務に特化して、常に新しい技術や法律、システムなどを勉強して取り入れています。専門分野に特化することで仕事を効率化し、質を高めているのです。アウトソーシングを活用するときには委託費用もかかりますが、その分、業務を大幅に効率化でき、大きな経費削減効果を得られるケースも多いでしょう。
アウトソーシングにより、煩雑な事務作業や経理業務などを外部企業に委託すれば、自社のコア業務に集中できます。新商品や新サービスの企画、新規クライアントの開拓、経営戦略の立案、といった重要な業務に集中することで、利益アップや企業の成長につながるでしょう。
とくに変化の早いIT業界などにおいては、コア業務に人的資源を集中しておかなければライバル企業と戦えません。人数の少ないベンチャー企業や中小企業にとっても、アウトソーシングは重要です。経理や事務についてはアウトソーシングを行い、その分の人件費をコア業務に当てるほうが、競争力の強化につながります。
組織をスリム化できることも、アウトソーシングのメリットです。アウトソーシングを行えば、雇うべき社員の数を減らせるだけでなく、企業内にある部や課などが不要となるケースもあるでしょう。組織がスリムになれば、組織運営や意思決定もスムーズに進みます。人件費の削減が期待できるだけでなく、設備投資にかかる費用や、広いオフィスを借りるための家賃も節約できるでしょう。
とくに歴史のある大企業などは、知らず知らずのうちに組織が大きくなりすぎている場合もあります。それぞれの部署の業務内容を見直し、必要に応じてアウトソーシングを検討するとよいでしょう。
アウトソーシングには、メリットだけではなくデメリットもあるため注意しなければなりません。ここでは、社内にノウハウが蓄積されにくい、顧客情報や社内機密が流出する可能性もある、といったデメリットについて解説しますので順番に確認していきましょう。
社内にノウハウが蓄積されにくいことや、社員が経験を積む機会が減ることは、アウトソーシングのデメリットといえるでしょう。アウトソーシングを利用すれば業務を効率化できる一方で、その業務に関する知識や経験は蓄積できません。
自社にとって重要な業務をアウトソーシングしてしまうと、社内の人材が育たず、企業の長期的な成長を妨げてしまう可能性もあります。アウトソーシングする業務と自社で行うべき業務を、しっかりと選別することが大切です。
顧客情報や社内機密などが流出するリスクがあることも、アウトソーシングのデメリットのひとつです。委託する業務によっても異なりますが、さまざまな情報をアウトソーシング先の企業へ提供するケースも多いでしょう。
重要な情報が漏洩すると、企業の社会的信用を失ってしまうため十分注意しなければなりません。情報漏洩を防ぐため、提供する個人情報をしっかりと選別することや、委託先と情報管理についてのルールを定めておくことなどが重要です。
業務の一部をアウトソーシングする際は、当然、費用がかかります。アウトソーシングによって発生する費用としては、委託先への手数料やシステム利用料などが挙げられます。金額は委託先によって異なるため、契約前に確認しておくことが大切です。
前述のとおり、アウトソーシングによって人件費や教育費などの削減は期待できますが、それより多くのコストが発生してしまうと意味がありません。また、すでに社内で効率的に行っていた業務をアウトソーシングすると、逆に効率が悪くなってしまいます。無駄な費用を発生させないよう、アウトソーシングする業務の選別やコスト検証をしっかりと行いましょう。
アウトソーシングをする場合は、社内の業務プロセスや人材配置などを再構築しなければなりません。アウトソーシングをする業務を担当していた社員を別の部署に異動させたり、部署の統合や廃止を検討したりするケースもあるでしょう。
業務の流れが変更になる可能性もあります。書類の提出先や経費の申請方法などが変わる場合もあるため、関係する社員全員にしっかりと周知しておくことが重要です。
アウトソーシングと同様、外部のリソースを活用する方法として人材派遣がありますが、両者の内容は大きく異なります。ここでは、アウトソーシングと人材派遣の違いを2つのポイントで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
アウトソーシングと人材派遣では、利用する外部リソースが異なります。アウトソーシングにおいては、社内業務の一部を丸ごと委託するため、その業務を遂行するために必要な人材やシステムといったさまざまな外部リソースを利用しているといえます。
一方の人材派遣においては、派遣会社から人材を派遣してもらうため、基本的には人的リソースのみを利用しているといえるでしょう。
アウトソーシングと人材派遣では、業務の管理方法も異なります。アウトソーシングにおいては、業務を丸ごと委託し、委託先の企業にて進捗を管理してもらえるため、基本的には細かく指示を出したり、管理したりする必要はありません。もちろん定期的な連絡や報告を受けることは必要ですが、普段の業務管理は委託先に任せておけます。
一方の人材派遣の場合は、自社にて、派遣社員に対して指示を出したり、業務の進捗を管理したりすることが必要です。
アウトソーシングには、さまざまな種類があります。ここでは、代表的なものとして、業務プロセス委託(BPO)、情報システム委託(ITO)、知的業務委託(KPO)について簡単に解説します。
業務プロセス委託(BPO:Business Process Outsourcing)とは、経理や人事、総務といった業務を丸ごと委託する方法です。委託先や契約内容によっても異なりますが、ほぼすべての業務をアウトソーシングできるため、その業務を担当する部署を社内に設置する必要がなくなる場合もあります。その分、重要な業務に社内の人的リソースを集中させたり、人件費を削減できたりするでしょう。
情報システム委託(ITO:Information Technology Outsourcing)とは、その名のとおり、情報技術に関する業務を委託することです。社内システムやサーバーの管理や運用、メンテナンスなどを委託するケースが多いでしょう。個別性の低い定型的なシステムや、変化の激しい情報セキュリティシステムなどを委託するのが一般的です。
知的業務委託(KPO:Knowledge Process Outsourcing)とは、データの収集や分析、技術開発や企画設計といった知的な業務を委託することです。比較的単純な作業を委託する業務プロセス委託とは異なり、専門的な知識や臨機応変な判断を求められる業務を委託するのが大きな特徴といえるでしょう。
ここでは、アウトソーシングの成功事例について紹介します。アウトソーシングの利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
東海大学は、ひとつのキャンパスにシステムを集約していたため、東日本大震災後の計画停電の時期に、全国のキャンパスでシステムを利用できない事態が発生しました。
そこで、富士通データセンターへ大学システムの管理や運用を委託し、リスクを分散したのです。この対策により、情報システム課の負担は減り、コア業務をこなす時間も増えました。[注1]
[注1]
FUJITSU:データセンターサービス導入事例「学校法人東海大学様」
外資系保険会社であるChubb損害保険株式会社では、保険のバックオフィス事務業務をアウトソーシングしました。主な目的は、ベテラン社員が属人的に行っていた業務の解消や、社員がコア業務に集中できる環境作りです。
アウトソーシングを行うことでマニュアル整備が進み、属人的な運営体制は解消されました。コア業務に集中できる時間が増え、社員の残業時間が減ったことも、アウトソーシングの大きな効果といえるでしょう。[注2]
[注2]
PASONA:BPOインタビュー:Chubb損害保険株式会社
今回は、アウトソーシングの概要やメリット・デメリットなどを紹介しました。アウトソーシングを利用して社内業務の一部を委託することで、人件費や研修費などのコストを削減できる、業務を効率化できる、社内の人的リソースをコア業務に集中できる、といったメリットを得られます。
ただし、社内にノウハウが蓄積されにくい、情報漏洩のリスクがある、業務プロセスを再構築する必要がある、といったデメリットもあるため、アウトソーシングする際は十分注意しましょう。
アウトソーシングする業務について、しっかりと選別することも大切です。すでに効率化できている業務や、社内で行うべき経営判断などを、外部に委託する必要はありません。定型的な作業やマニュアル化しやすい業務ほど、アウトソーシングしやすいといえるでしょう。まずは社内の現状を把握して、外部に委託すべき業務を洗い出すことが重要です。そのうえで、信頼できる委託先を探して、契約を結びましょう。