更新日:2026.09.29

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「インボイスに登録しないとどうなるのか」「登録しないままで仕事を続けられるのか」と不安に感じているフリーランスや個人事業主の方は多いのではないでしょうか。
結論からいうと、インボイスへの登録は任意であり、登録しないこと自体に罰則はありません。免税事業者の要件を満たしていれば、登録せずに免税事業者のまま事業を続けることもできます。
ただし、取引先との関係では不利益が生じる可能性があります。特に本則課税の課税事業者との取引では、相手側が仕入税額控除できる割合が段階的に下がるため、2026年10月以降は影響が徐々に大きくなります。
この記事では、インボイスに登録しない場合に何が起きるのか、登録しなくても影響が小さい人と登録を検討したほうがよい人の違い、登録した場合の納税額、2割特例終了後の3割特例、登録・取消しの手続きまで解説します。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への登録は任意で、登録しないことに対する罰則はありません。
原則として免税事業者の要件を満たしている事業者であれば、適格請求書発行事業者へ登録しない限り、免税事業者として消費税の申告・納税義務は生じません。
では、登録しないと何が起きるのでしょうか。主な影響を先にまとめます。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 登録番号入りの適格請求書を発行できない | 取引先は、あなたへの支払いに係る消費税について原則として全額の仕入税額控除ができない。経過措置により一定割合は控除可能 |
| 値下げや取引条件の見直しを求められる場合がある | 取引先側で控除できない消費税相当額がコストになるため、価格について協議を求められる可能性がある |
| 免税事業者のままなら自分の消費税納税は原則変わらない | 免税事業者の要件を満たしていれば消費税の申告・納税は不要。消費税相当額を価格に含めて請求すること自体は禁止されていない |
適格請求書発行事業者の登録は、自動的に行われるものではありません。事業者自身が登録申請を行って初めて登録されます。
そのため、免税事業者の要件を満たしている事業者であれば、登録しないことでそのまま免税事業者を続けることができます。
ただし、基準期間や特定期間の課税売上高などにより、登録の有無とは別に課税事業者となる場合があります。「売上1,000万円以下なら必ず免税」とは限らない点には注意してください。
取引先が一般消費者中心の場合は、相手が仕入税額控除を行わないため、インボイス登録の有無による取引上の影響は比較的小さくなります。
取引先が本則課税の課税事業者の場合、売上に係る消費税から、仕入れや外注費などに含まれる消費税を差し引いて納税額を計算します。これが仕入税額控除です。
原則として全額の仕入税額控除を受けるためには、登録番号などが記載された適格請求書等の保存が必要です。
あなたがインボイス未登録の場合、取引先はあなたへの支払いについて原則として全額を控除できません。ただし、経過措置によって一定割合は控除できます。
取引先が本則課税の課税事業者の場合、インボイス未登録事業者への支払いについて控除できない消費税相当額が取引先の負担になります。
そのため、取引価格について見直しの相談を受ける可能性があります。
たとえば税込110,000円、消費税相当額10,000円の仕事の場合、2026年10月1日以降に取引先が経過措置で控除できる割合は70%です。
税込110,000円の取引の場合
消費税相当額:10,000円
経過措置で控除できる額:7,000円
控除できない額:3,000円
この3,000円分について価格交渉を求められる可能性があります。
ただし、免税事業者であることだけを理由として一方的に価格を引き下げてよいわけではありません。取引条件については後述する独占禁止法、取適法、フリーランス法などにも注意が必要です。
同じ価格・同じ条件で発注できる事業者が複数いる場合、発注側が仕入税額控除できる登録事業者を選ぶ可能性があります。
既存の取引が未登録という理由だけで直ちに終了するとは限りませんが、新規発注や取引先の見直し時に登録状況を確認されるケースは考えられます。
取引先から登録番号の提示を求められている場合は、その取引先にとってインボイス登録がどの程度重要なのかを確認しておくと判断しやすくなります。
インボイス未登録事業者からの課税仕入れについて、取引先が控除できる割合は段階的に縮小します。
令和8年度税制改正により、当初予定されていた控除割合・期間が見直され、2031年9月30日まで経過措置が続くことになりました。
| 期間(取引日で判定) | 取引先が控除できる割合 | 税込11万円の取引で控除できない額 |
|---|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% | 2,000円 |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% | 3,000円 |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% | 5,000円 |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% | 7,000円 |
| 2031年10月1日以降 | 0% | 10,000円 |
現在は取引条件に影響がなくても、控除割合が下がるにつれて価格や発注先が見直される可能性があります。
登録による影響は、売上金額だけでなく「誰に売っているか」で大きく変わります。
| 取引先の状況 | 登録しない場合の影響 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 一般消費者が中心 | 小さい。消費者は仕入税額控除を行わない | 登録の必要性は比較的低い |
| 免税事業者や簡易課税、2割・3割特例を利用する事業者が中心 | 消費税の納付税額の計算上、個々の仕入先のインボイス有無による影響は比較的小さい | 登録の必要性は比較的低い |
| 本則課税の課税事業者が中心 | 大きい。控除できない分が相手側のコストになる | 登録を検討 |
| 取引先から登録番号の提示・登録の相談を受けている | 取引条件に影響する可能性がある | 登録時の納税額と取引条件を比較 |
| 項目 | 登録する | 登録しない |
|---|---|---|
| 取引先への影響 | 適格請求書を交付でき、取引先は原則として全額の仕入税額控除ができる | 経過措置の控除割合が段階的に下がるため、取引条件の見直しを相談される可能性がある |
| 消費税の納税 | 課税事業者として申告・納税が必要。要件を満たせば2割特例・3割特例・簡易課税などを利用できる | 免税事業者の要件を満たしていれば申告・納税不要 |
| 事務負担 | 適格請求書の発行・保存、消費税申告等の対応が必要 | 消費税申告の負担は増えないが、取引先から登録状況を確認される場合がある |
| 登録をやめる場合 | 取消届が必要。一定の場合は登録を取り消しても一定期間免税事業者に戻れない | 必要になった時点で登録申請できる |
| ポイント | 確認すること |
|---|---|
| 課税事業者になる要件に該当しているか | 基準期間・特定期間の課税売上高などを確認する。すでに課税事業者であれば、登録による新たな納税負担は免税事業者ほど大きくない |
| 本則課税の取引先が売上の何割を占めるか | 本則課税の取引先への売上割合が高いほど、未登録による取引上の影響が大きくなりやすい |
| 登録後の納税額と、未登録時の取引条件の差 | 登録した場合の消費税納税額と、未登録によって想定される値下げや取引減少の影響を比較する |
免税事業者がインボイス登録すると、課税事業者として消費税の申告・納税が必要になります。
ただし、インボイス制度を機に免税事業者から登録した小規模事業者には負担を軽減する特例があります。
免税事業者がインボイス登録によって課税事業者になった場合、一定の要件を満たせば、納付税額を売上税額の2割とする「2割特例」を利用できます。
この特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象です。
個人事業者の場合は、原則として2026年分の消費税申告が最後になります。
令和8年度税制改正により、小規模な個人事業者を対象とした「3割特例」が設けられました。
インボイス制度を機に免税事業者から登録して課税事業者になった個人事業者が一定の要件を満たす場合、2027年分と2028年分について納付税額を売上税額の3割とできます。
法人は3割特例の対象ではありません。
年間税込売上が5,500,000円、すべて標準税率10%のサービス売上で、売上税額が500,000円となるケースを例に比較します。
| 計算方法 | 対象・条件の例 | 納税額の目安 |
|---|---|---|
| 2割特例 | 対象となる課税期間で要件を満たす場合 | 100,000円 |
| 3割特例 | 個人事業者の2027年分・2028年分で要件を満たす場合 | 150,000円 |
| 簡易課税 第5種・みなし仕入率50% |
基準期間の課税売上高5,000万円以下などの要件を満たし、必要な届出をしている場合 | 250,000円 |
| 本則課税 | 実際の課税仕入れ等に係る消費税額を控除 | 実際の経費・仕入れによる |
この例では、2割特例なら100,000円、3割特例なら150,000円です。
ただし、本則課税が有利か簡易課税が有利かは、実際の経費構成や業種によって異なります。
簡易課税制度は、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。
ただし、2割特例または3割特例を適用した課税期間の翌課税期間から簡易課税へ移行する場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税を適用できる特例があります。
免税事業者が、インボイス制度の経過措置を利用して課税期間の途中から適格請求書発行事業者になった場合、登録を取り消せばすぐに免税事業者へ戻れるとは限りません。
2023年10月1日を含む課税期間以外の課税期間の途中から登録を受けた免税事業者は、原則として登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで、免税事業者に戻れません。
そのため、「一度登録して様子を見て、すぐ取り消す」という前提で判断するのは避けたほうがよいでしょう。
インボイス未登録を理由に取引先から値下げを求められたとしても、すべての要求に応じなければならないわけではありません。
価格を見直すこと自体は当事者間の協議で決めることができますが、取引上優越した立場にある事業者が、免税事業者であることだけを理由として一方的に著しく低い価格を押し付ける行為は、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に当たるおそれがあります。
また、2026年1月1日から施行されている取適法の対象取引では、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議や必要な説明をせず一方的に代金を決定する行為が禁止されています。
フリーランスへの一定期間以上の業務委託では、フリーランス法により報酬の減額や買いたたきなどが禁止される場合もあります。
値下げの理由や計算根拠を確認する
経過措置で相手が控除できる割合も踏まえて協議する
価格交渉の経緯はメールなどで残しておく
登録を決めた場合は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します。
提出方法はe-Taxまたは書面から選択できます。国税庁が公表している登録通知までの目安は、e-Taxが約1か月、書面が約1.5か月です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1.登録希望日を決める | 経過措置の対象となる免税事業者は、登録申請書に提出日から15日以後の日を登録希望日として記載できる |
| 2.登録申請書を提出する | e-Taxまたは書面で提出。個人事業者はe-Taxソフト(WEB版)をスマートフォン等から利用できる |
| 3.登録通知を確認する | 登録されると「T+13桁」の登録番号が通知される。e-Tax申請では電子通知を選択できる |
| 4.請求書の様式を変更する | 登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額等を記載できる様式へ変更する |
| 5.必要に応じて簡易課税の届出をする | 簡易課税制度を利用する場合は、適用時期と届出期限を確認して「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する |
登録通知までの期間は申請状況によって変動します。取引先から登録番号が必要となる時期が決まっている場合は、余裕を持って申請しましょう。
適格請求書発行事業者の登録を取り消したい場合は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。
翌課税期間の初日から登録の効力を失わせるには、その翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出する必要があります。
この日を過ぎると、登録が失効するのは翌々課税期間の初日からになります。
個人事業者や12月決算法人が翌年1月1日から登録を取り消す場合は、原則として12月17日までに届出が必要です。登録取消しに係るこの日付は、土日であっても翌月曜日へ延長されないため注意してください。
また、前述した「一定の場合は登録後2年間、免税事業者へ戻れない」というルールの対象者は、登録を取り消しただけではすぐに免税事業者になれません。
書けます。
免税事業者やインボイス未登録事業者が、消費税相当額を価格に含めて請求したり、請求書に消費税相当額を記載したりすることは禁止されていません。
ただし、適格請求書発行事業者ではないため、適格請求書として交付することはできず、登録番号も記載できません。
適格請求書発行事業者ではない事業者が、適格請求書と誤認されるおそれのある書類を交付することは禁止されています。
未登録なのに架空の登録番号や他社の登録番号を記載するなど、適格請求書と誤認されるおそれのある書類を交付すると罰則の対象になる可能性があります。
開業直後や副業だからという理由だけで登録が必須になるわけではありません。
取引先が一般消費者中心であれば、インボイス登録による取引上のメリットは小さい場合があります。
一方、本則課税の企業から業務委託を受ける場合は、取引先から登録状況を確認される可能性があります。取引先の構成と、登録した場合の納税額を比較して判断しましょう。
取引先が本則課税であれば、仕入税額控除の計算上、あなたが適格請求書発行事業者かどうかを把握する必要があります。
取引開始時や請求前に未登録であることを共有しておけば、取引先側も経過措置に対応した税区分を設定しやすくなります。
経過措置の適用に必要となるため、未登録事業者が発行する請求書でも、取引内容、取引年月日、税率ごとに区分した対価の額など、区分記載請求書等に相当する情報が分かる状態にしておきましょう。
インボイスに登録しなくても罰則はなく、免税事業者の要件を満たしていれば、そのまま免税事業者として事業を続けることができます。
一方で、本則課税の課税事業者との取引では、取引先が仕入税額控除できる割合が段階的に下がります。2026年10月からは70%、2028年10月から50%、2030年10月から30%となり、2031年10月以降は経過措置による控除ができなくなります。
登録するかどうかは、売上金額だけではなく、取引先が一般消費者なのか、本則課税の事業者なのか、登録した場合の消費税納税額はいくらなのかを整理して判断することが重要です。
免税事業者から登録する場合、2割特例終了後は、一定の個人事業者について2027年・2028年分に3割特例を利用できます。その後は簡易課税や本則課税も含めて、自分の事業に合う方法を検討しましょう。