更新日:2026.08.31

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インボイス(適格請求書)は、売り手が買い手に対して適用税率と消費税額を正確に伝えるための書類です。買い手はこれを保存することで、仕入税額控除を受けられます。
決まっているのは書式ではなく、記載しなければならない6つの事項です。この6つを満たしていれば、請求書でも納品書でも領収書でもインボイスになります。
この記事では、6つの記載要件と書き方を記載例つきで整理し、簡易インボイス・返還インボイス・修正インボイスの使い分けまで解説します。
インボイスを発行できるのは、税務署の登録を受けた適格請求書発行事業者に限られます。登録すると「T」から始まる13桁の登録番号が付され、これをインボイスに記載します。
登録番号は、法人の場合は「T+法人番号」です。個人事業者などにはマイナンバーとは関係のない13桁の数字が付されます。マイナンバーが使われることはありません。
インボイスに決まった様式はありません。手書きでも、WordやExcelで作ったものでも、必要な記載事項がそろっていればインボイスとして有効です。
逆に、立派な体裁の請求書でも記載事項が欠けていればインボイスになりません。判断されるのは形式ではなく中身です。
1枚の書類にすべての記載事項を入れる必要はありません。納品書と請求書のように、複数の書類を合わせて1つのインボイスとすることが認められています。
この場合、書類同士の関連が明らかである必要があります。請求書に納品書番号を記載するなど、対応関係がわかるようにしておいてください。
適格請求書に記載しなければならない事項は次の6つです。
| 記載事項 | 内容 | 不備が起きやすい点 |
|---|---|---|
| ①発行者の氏名または名称および登録番号 | 自社の正式名称と、Tから始まる13桁の登録番号 | 登録番号の桁数違い、旧社名のまま |
| ②取引年月日 | 商品を引き渡した日、役務の提供を行った日 | 請求書の発行日だけを書いている |
| ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) | 品名やサービス内容。軽減税率対象があればその旨 | 「品代」など内容が特定できない記載 |
| ④税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率 | 10%対象と8%対象を分けた合計額と税率 | 税率ごとの区分をしていない |
| ⑤税率ごとに区分した消費税額等 | 10%分と8%分の消費税額 | 明細行ごとに端数処理して合計している |
| ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 取引先の正式名称 | 「上様」など特定できない記載 |
自社情報の欄に、社名・住所・電話番号と並べて記載します。位置に決まりはありませんが、買い手が確認しやすい場所に置いてください。
登録番号は、税務署から届いた登録通知書に記載されています。国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトでも確認できます。
軽減税率8%の対象となる品目がある場合、その旨がわかるように記載する必要があります。品名の横に「※」などの記号を付け、欄外に「※は軽減税率対象」と注記する方法が一般的です。
税率の列を設けて品目ごとに8%か10%かを表示する方法でもかまいません。買い手が見て区別できることが要件です。
もっとも間違えやすいのがここです。税率ごとに区分した消費税額等に1円未満の端数が生じる場合、端数処理は一の適格請求書につき税率ごとに1回と決められています。
明細行ごとに消費税額を計算して端数処理し、それを合計する方法は認められません。10%対象の合計額を先に出し、その合計に対して1回だけ消費税を計算します。
切り捨て、切り上げ、四捨五入のどれを使うかは自由ですが、社内で統一してください。取引先との請求額が1円合わないという問い合わせは、この処理の違いから生じていることがあります。
請求書の形でインボイスを作る場合の記載例です。番号は前章の記載要件に対応しています。
| 欄 | 記載内容 | 要件 |
|---|---|---|
| 宛名 | 株式会社〇〇 御中 | ⑥ |
| 発行日 | 2026年8月31日 | 任意 |
| 請求書番号 | INV-2026-0831 | 任意 |
| 発行者 | △△株式会社 東京都千代田区〇〇1-1-1 TEL 03-0000-0000 |
① |
| 登録番号 | T1234567890123 | ① |
明細部分は次のように組みます。
| 取引年月日 | 品名 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年8月5日 | 事務用品 | 10 | 500円 | 5,000円 |
| 2026年8月12日 | 飲料 ※ | 20 | 150円 | 3,000円 |
| 2026年8月20日 | 制作費 | 1 | 50,000円 | 50,000円 |
※は軽減税率対象
合計欄で税率ごとに区分します。ここが④と⑤にあたります。
| 区分 | 対価の額(税抜) | 消費税額 | 税込合計 |
|---|---|---|---|
| 10%対象 | 55,000円 | 5,500円 | 60,500円 |
| 8%対象 | 3,000円 | 240円 | 3,240円 |
| 合計 | 58,000円 | 5,740円 | 63,740円 |
取引年月日を明細の各行に入れているため②を満たしています。まとめ請求の場合は「2026年8月分」と締め期間を記載する方法でもかまいません。
次の項目は法律上の記載事項ではありませんが、入れておくと入金の遅れや問い合わせを減らせます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支払期限 | 契約で定めた支払条件にもとづく日付。なお、取適法(中小受託取引適正化法)の対象となる取引では、代金の支払期日は給付を受領した日から60日以内に定める必要がある |
| 振込先情報 | 金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義 |
| 請求書番号 | 問い合わせや修正インボイスの交付時に取引を特定しやすくなる |
| 源泉徴収税額 | 源泉徴収の対象となる報酬を請求する場合 |
押印については、請求書への押印を義務づける法令はありません。インボイスの記載事項にも含まれていないため、社印がなくても有効です。
インボイスには通常のもの以外に3種類あります。場面ごとに使い分けます。
| 種類 | 使う場面 | ポイント |
|---|---|---|
| インボイス(適格請求書) | 通常の取引 | 6つの記載事項が必要 |
| 簡易インボイス(適格簡易請求書) | 不特定多数の相手に販売する業種 | 宛名を省略でき、適用税率か消費税額のどちらかの記載でよい |
| 返還インボイス(適格返還請求書) | 返品、値引き、割戻しなど対価の返還等を行ったとき | 税込1万円未満なら交付義務が免除される |
| 修正インボイス | 交付したインボイスに誤りがあったとき | 売り手が交付する義務がある。買い手が自分で直すことはできない |
小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業など、不特定多数の相手に販売やサービス提供を行う業種は、簡易インボイスを交付できます。
通常のインボイスとの違いは2点です。書類の交付を受ける事業者の氏名または名称を省略できること、適用税率と消費税額等のどちらか一方の記載でよいことです。
該当しない業種は簡易インボイスを交付できません。自社が対象になるかは、事業の性質から判断します。
返品や値引き、割戻し、販売奨励金の支払いなど、売上げに係る対価の返還等を行った場合に交付します。
ただし、対価の返還等の金額が税込1万円未満であれば交付義務は免除されます。売り手が振込手数料を負担して売上値引きとして処理する場合は、通常この免除に該当します。
交付したインボイスに誤りがあった場合、修正したインボイスを交付する義務があります。方法は2つです。
1つは、すべての記載事項を書き直したものを再交付する方法。もう1つは、当初のインボイスとの関連を明らかにしたうえで、誤った箇所と正しい内容だけを示した書類を追加で交付する方法です。
受け取った側が自分で修正することは認められていません。誤りに気づいたら、売り手に修正インボイスの交付を依頼してください。
事業の性質上インボイスの交付が難しい取引については、交付義務が免除されています。
| 取引 | 条件 |
|---|---|
| 公共交通機関による旅客の運送 | 船舶、バス、鉄道で税込3万円未満のもの |
| 自動販売機・自動サービス機による販売 | 税込3万円未満のもの |
| 郵便切手を貼って郵便ポストに差し出す郵便サービス | — |
| 出荷者等が卸売市場で行う生鮮食料品等の販売 | 受託者が委託を受けて行うもの |
| 農協・漁協・森林組合等に委託して行う農林水産物の販売 | 無条件委託方式かつ共同計算方式によるもの |
これらの取引では、買い手は一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます。
適格請求書発行事業者は、取引先から求められたときにインボイスを交付する義務があります。あわせて、交付したインボイスの写しを保存しなければなりません。
保存期間は、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です。電子データで送った場合は、電子帳簿保存法にもとづきデータのまま保存する必要があります。
買い手は、受け取ったインボイスと一定の事項を記載した帳簿を保存することが仕入税額控除の要件になります。保存がなければ、消費税を実際に支払っていても控除できません。
インボイス発行事業者以外からの仕入れについては、2031年9月30日までは経過措置により一定割合を控除できます。控除割合は2026年9月30日までが80%、2026年10月1日以後は70%で、その後50%、30%と段階的に下がります。
受け取った請求書の登録番号が有効かどうかは、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。番号を入力すると、氏名または名称と登録年月日が表示されます。
取引開始時に一度確認するだけでなく、登録が取り消されている可能性もあるため、継続的な取引先については定期的に確認する運用が安全です。
登録番号がない、税率ごとの区分がないといった請求書を受け取った場合、そのままでは仕入税額控除に使えません。
相手が登録事業者であれば、修正インボイスの交付を依頼してください。買い手が自分で書き足すことは認められていません。ただし、買い手が作成した仕入明細書に売り手の確認を受ける方法であれば、仕入税額控除に使えます。
相手が登録していない事業者であれば、経過措置の対象として処理します。帳簿にその旨を記載したうえで、支払った消費税の一定割合を控除します。
登録を受けていない事業者が、インボイスと誤認されるおそれのある書類を交付することは禁止されています。架空の登録番号や他人の登録番号を記載する行為が該当します。
登録事業者が偽りの記載をしたインボイスを交付することも同様に禁止されています。違反した場合、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。
登録していない場合は、登録番号の欄を設けないでください。消費税額を記載すること自体は問題ありませんが、番号らしきものを書くと類似書類等に該当するおそれがあります。
なります。書類の名称は問われません。記載事項を満たしていれば、領収書でもレシートでも納品書でもインボイスとして扱えます。小売業や飲食店業であれば、簡易インボイスの要件で足ります。
認められます。6つの記載事項がそろっていれば、手書きでも有効です。
請求すること自体は禁止されていません。ただし、その請求書はインボイスにならないため、買い手は原則として仕入税額控除ができません。登録番号を記載することはできません。
問題ありません。記載事項を満たした電磁的記録を提供する方法も認められています。この場合、発行側も受領側も電子帳簿保存法にもとづいてデータのまま保存する必要があります。
インボイスに書式の決まりはありません。押さえるべきは6つの記載事項で、これを満たしていれば請求書でも領収書でも有効です。
実務でつまずきやすいのは、消費税額の端数処理を1枚につき税率ごとに1回にそろえる点と、取引年月日を発行日と混同しない点です。テンプレートを一度整備してしまえば、以後の負担は大きく変わりません。
簡易インボイス、返還インボイス、修正インボイスは、それぞれ使う場面が決まっています。自社の取引でどれが必要になるかを確認したうえで、様式を用意しておいてください。