更新日:2024.10.04
ー 目次 ー
インボイス制度に対応する際に、適格請求書や適格返還請求書の内容を間違えてしまった場合、どう対応すべきかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
インボイス制度には「修正インボイス」が存在し、ミスがある際の対処方法が決まっています。また、交付した請求書に誤りがあった場合に、修正インボイスの発行が義務付けられており、交付側・受領側で、それぞれ対応すべきことや保管が必要な請求書も異なります。
そこで本記事では、修正インボイスの対応方法や注意点、保管方法などについて解説します。インボイス制度に対応する必要がある経理担当者や事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
これまで請求書の記載方式は「区分記載請求書等保存方式」でしたが、2023年10月から「適格請求書等保村方式」に変更されます。この適格請求書等保存方式が適用される制度を「インボイス制度」と呼び、インボイスとは適格請求書を指します。
適格請求書は適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)でなければ発行できず、仕入税額控除を受けるためには登録が必要です。課税事業者であれば、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出することで、インボイスへの対応が可能です。
免税事業者の場合は、まずは課税事業者に転換するかを決めなければいけません。課税事業者になる場合は、消費税の負担が増えることも考慮する必要があります。取引先と相談の上、課税事業者及び適格請求書発行事業者になる必要があるかを検討しましょう。
修正インボイスとは、発行した適格請求書及び適格返還請求書にミスがある場合、内容を変更した旨を明らかにするための書類です。請求書を作成する際に、ヒューマンエラーを100%なくすのは難しいことです。そのため、適格請求書を発行した後に、誤りに気づいた場合でも訂正できる仕組みになっています。
基本的には売り手側が買い手側に適格請求書を発行するため、修正インボイスも売り手側が対応します。修正インボイスでミスを明確にすることで、買い手側が仕入税額控除を適用可能です。
ただし、適格請求書を発行する事業者は修正インボイスを作成しなければいけないことや、受け取った側の取引先も複数の請求書が存在すると混乱を招いてしまうため、事前に確認フローなどを構築して対策をしておきましょう。
また、ツールを活用して請求書を作成する際は、事前に記載要件や項目を設定しておくことをおすすめします。
修正インボイスと適格返還請求書を混同してしまうケースがありますが、それぞれ別の書類です。修正インボイスは、必要事項を記載していなかった場合やミスがあった際に発行するものです。適格返還請求書は、商品の返品や値引きを実施した場合など、代金を返還する必要があるときに使用されます。このように、修正インボイスと適格返還請求書には、発行する場面の明確な違いがあります。
また、適格返還請求書は1万円未満の取引では発行が免除されますが、修正インボイスが免除になるケースはありません。発行していない場合は、仕入額控除が適用されなくなりますので、注意が必要です。
修正インボイスと適格返還請求書の違いを理解し、どんな場面で何が必要かをわきまえて、インボイス制度に対応できるようにしましょう。
適格請求書を発行する際に、フローの構築や対策をしていても、ミスが発生してしまう可能性があるかと思います。そのため、修正インボイスにどのように対応すべきかを、押さえておく必要があります。
ここでは、国税庁のインボイス制度に関するQ&Aを参考に、2パターンの修正インボイスの対応方法について解説していきます。
適格請求書の誤り事項を正しい記載内容に修正して、再発行します。元の適格請求書と混同しないように、請求書の名前を「修正版」や「修正済」とし、変更後の修正インボイスであることを明記します。
再発行が完了したら取引先に提出し、内容を改めて確認してもらいましょう。修正インボイスを受け取る側であれば、変更点を把握しておくことが重要です。何度もやり取りが発生してしまうと、手間がかかるだけではなく、正しい請求書の把握が難しくなります。また、適格請求書は保存も義務とされているため、受け取る側も保管方法を予め決めておくことが必要です。
もう1つは、ミスがあった適格請求書そのものに、修正がある旨を記載する方法です。この場合、適格請求書を再作成する必要はありません。記載方法の例は、次のとおりです。
例)◯年◯月◯日付4月分請求書について、下記のとおり誤りがあったため、修正いたします。
・正:売上額110,000円、消費税額等11,000円
・誤:売上額100,000円、消費税額等10,000円
該当の適格請求書に修正があること、正しい項目と誤りがある項目をそれぞれわかるように明記します。
修正が完了したら、適格請求書に直接修正をするケースでも、取引先へ再交付します。この場合、記載内容が少し煩雑になる可能性があるため、共有する際にも修正内容がわかるように伝えましょう。
適格請求書や適格返還請求書にミスが発覚した場合、修正インボイスで訂正する必要があります。ただし、修正インボイスを発行する際、注意したい点が3つあります。
以下でそれぞれ詳しく解説しますので、紹介した事項を踏まえた上で対応を進めましょう。
区分記載請求書等保存方式では、当月のミスを翌月の請求で値引き調整するなどの対応ができていました。インボイス制度開始後は、修正インボイスを発行して対処する必要があります。この場合「誤りがあった箇所を修正して再交付する方法」「発行した適格請求書に直接修正する方法」2つのうち、どちらを実施しても問題ありません。
適格請求書のミスの他に、値引きや返品があり代金を返還しなければいけない場合は、適格返還請求書の発行も必要になります。
適格請求書を受領した側がミスに気づいた場合、お互いが合意の上でも修正を加えることはできません。あくまでも、修正インボイスは発行した事業者が調整するものであり、ズレなどが生じるのを防ぐためです。
この場合、受領側はすみやかに交付側に連絡し、修正インボイスの対応をしてもらいましょう。修正インボイスを発行してもらった後は、内容がきちんと変更されていることを確認し、適格請求書を保存してください。電子データや書類で一度受け取った元の適格請求書と間違わないよう、管理することもポイントです。
修正インボイスを発行した側に限りますが、修正前・修正後の請求書の写しを両方保存しておく必要があります。元の適格請求書と、修正インボイスの違いを明確にするためです。修正前の適格請求書を廃棄してしまい、変更点が不明瞭になってしまうと、仕入税額控除が受けられなくなる可能性があるため、注意しましょう。
取引先に修正インボイスを発行した際は、請求が二重になってしまわないよう、再発行した旨を伝えておくと安心です。
インボイス制度には、仕入税額控除を受けるために定められている義務要件があります。仕入税額控除とは、売上額から仕入税額を控除し、消費税の負担を軽減するものです。
義務要件の内容には、適格請求書・適格返還請求書の発行や保存の他にも、修正インボイスの対応も含まれています。これらに対応しなければ、仕入税額控除は受けられなくなってしまうため、すべて満たす必要があります。
4つの義務要件の内容について、それぞれ解説していきます。
出典:国税庁「適格請求書保存方式の概要」
適格請求書発行事業者として作成した、適格請求書を発行します。記載項目が決められているため、全ての項目を記載して、取引先に提出する必要があります。1つでも項目が抜けている場合、修正インボイスの発行が必要になるため注意しましょう。
適格返還請求書は代金の値引きや割引、インセンティブを支払う際に発行します。適格返還請求書も適格請求書と同様に、記載項目に抜け漏れがある場合は、修正インボイスの発行が必要になります。
修正した適格請求書は、修正インボイスのことを指します。適格請求書及び適格返還請求書にミスが発覚した場合に、修正インボイスで対処します。
適格請求書及び適格返還請求書を発行した事業者側は、発行した請求書のコピーを保存します。請求書の受領側は、原本のみの保管で問題ありません。保存期間はどちらも7年間になっており、長期間の保存が必要です。
インボイス制度とは、適格請求書保存方式に変更される制度です。インボイス制度の義務要件として、修正インボイスの発行が定められています。
適格請求書及び適格返還請求書にミスがある際に、請求書を発行した事業者側が修正インボイスで対処する必要があります。加えて、請求書の交付側は修正前と修正後の書類や電子データを保存し、変更点がわかるように対応することが求められます。
修正インボイスの発行手順や注意点を理解した上で、請求書の作成時にミスが出ないよう事前に確認フローなどを構築しておきましょう。