更新日:2024.10.04
ー 目次 ー
簡易インボイスの正式名称は「適格簡易請求書」といい、通常の適格請求書よりも記載項目が簡易的なレシート形式のものを指します。
この発行が認められているのは一部の業種のみであるため、インボイスへの対応を検討している事業者や請求書を受け取る側の事業者は注意が必要です。
本記事では、国税庁が公表している簡易インボイスを交付できる業種のリストと定義、記載項目の具体例を解説します。
後半では病院やホテル、ゴルフ場などの線引きが難しい業種についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
▼この記事で解説する内容
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適格簡易請求書、通称「簡易インボイス」は、2023年10月1日から開始されたインボイス制度に対応した新しい請求書です。
従来の請求書よりも記載項目が少なく、小売店や飲食店など、不特定多数の顧客を相手にする事業者が発行できます。
簡易インボイスは、消費税の仕入税額控除を受けるために必要な書類の一つです。 買い手は、簡易インボイスに記載された情報を基に、仕入税額控除の適用を受けることができます。
簡易インボイスが認められているのは基本的には6つの業種ですが、定義を満たしていれば6つの業種以外も認められる場合があります。ここでは、その例外も含めて詳しく解説します。簡易インボイスを交付できる事業は、次の6つが基本です。
上記6つの事業では、通常の適格請求書よりも簡易的な形式で記載した書類が認められます。
様式は請求書、納品書、領収書、レシートのいずれでも問題なく、手書き領収書の発行も可能です。
ただし、駐車場業は「不特定多数の者に対するもの」に限ると示されています。この部分が、簡易インボイスを交付できる業種の定義と関係しているので、次の見出しで詳しく解説します。
簡易インボイスが認められる7つ目の事業として、国税庁は次の定義を提示しています。
その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業 |
国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き 2022」
不特定多数を相手とする事業は、売手が買手の氏名や名称を確認せずに取引をおこなうことを指します。つまり、契約書などによって売買の相手を特定できる場合は対象外ということになります。
スーパーなどの小売店や飲食店、タクシー業では基本的に不特定多数の客が対象であるためこれに該当します。もう少しわかりやすく説明すると以下の2点に集約することができます。
それぞれの特徴について詳細に解説していきます。
簡易インボイスが発行可能な業種は、不特定多数の顧客を相手にするという特徴があります。
これは、事前に決めた条件を満たせば、誰でも同じように商品やサービスを購入できる業種を指します。
例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、年齢や職業などに関係なく、誰でも商品を購入することができます。
簡易インボイスが発行可能な業種は、誰が買っても同じものを売るという特徴もあります。
これは、顧客ごとに商品やサービスの内容が変わらない業種を指します。
例えば、自動販売機では、誰でも同じ価格で同じ飲み物を購入することができます。
駐車場業が簡易インボイスの対象となるのは、コインパーキング等の不特定多数向けの事業に限られます。
賃貸借契約が存在し、広く一般を対象とした事業とはいえない月極駐車場は対象外となり、簡易インボイスは発行できないため注意しましょう。
なお、ECサイトや予約システム、ポイントアプリ等で顧客の氏名を知ることができる場合でも、小売業や旅行業など、業務の性質が広く一般に向けたものであれば対象となります。
この考え方を基にすると、6つの事業に記載されていない事業でも対象となる可能性があるのです。
適格請求書(インボイス)と適格簡易請求書(簡易インボイス)の記載項目の違いを表にまとめました。
インボイス |
簡易インボイス |
① 適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号 |
① 適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号 |
② 取引した年月日 |
② 取引した年月日 |
③ 取引内容・品名 |
③ 取引内容・品名 |
④税率ごとに区分した合計金額と税率 |
④税率ごとに区分した合計金額 |
⑤税率ごとに区分した消費税額 |
⑤税率ごとに区分した消費税額または適用税率 |
⑥請求書を受領する相手の氏名または名称 |
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簡易インボイスでは、請求書を受領する相手の氏名または名称の記載が不要です。また、税率ごとに区分した記載の方法もインボイスと比べると簡易化されています。
請求書・領収書・レシートを発行する側はもちろん確認が必要ですが、受け取る側としても注意が必要です。
取引相手が簡易インボイスの対象事業であることを確認したうえで、上記の項目に照らして適正な書類になっているかを確認しましょう。
ここでは簡易インボイスの業種に関して、よくある質問に回答します。
▼ポイント
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病院は性質としては不特定多数に対する事業といえますが、保険診療の場合はそもそも課税売上がないので、インボイスに登録する必要がありません。
つまり、適格請求書自体を発行する必要がないということです。
例外としては、企業内診療の定期契約や美容外科などの自由診療が主体の病院があげられます。これらは課税売上になるので、インボイス登録をすれば不特定多数に対する事業として簡易インボイスの発行がみとめられます。
ホテルは旅行業とみなすことができ、ゴルフ場も不特定多数に対する取引であれば簡易インボイスの対象となります。
なお、ホテルやゴルフ場がインボイスに対応した場合の変化として、機械印字の領収書のみを発行し、手書き領収書を廃止するケースが多くみられます。
出張や接待で利用する人は、自社の経費精算のルールに照らして問題ないかを、あらかじめ確認しましょう。
簡易インボイスでは取引相手の名称を記載しなくてもよいため、経費精算のルールに社名の記載が必須事項として示されている場合には、精算できない可能性があります。
業種の指定はありませんが、インボイス交付の義務がない取引はあります。インボイス交付の義務がない取引は、次のとおりです。
これらの事業では適格請求書を発行することが難しいため、発行義務が免除されています。
簡易インボイスを発行できるのは6つの業種と不特定多数に対する事業のみです。
6つの事業に該当している場合でも、広く一般に向けた取引とはいえない契約等は対象外になるため注意しましょう。
また、インボイスは発行する側だけでなく、受け取る側も注意が必要です。
不備があれば税務・会計上で問題があるほか、自社のルールによっては経費精算できない場合があります。
簡易インボイスを発行できる事業および自社ルールを確認しておきましょう。