更新日:2024.12.24
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インボイス制度の導入により、仕入税額控除を受けるためには適格請求書(インボイス)が必要になりました。クレジットカード決済の場合でも、取引相手から適格請求書を発行してもらう必要があります。
インボイス制度のルールにしたがうためにも、インボイス制度におけるクレジットカード決済時のルールを正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、インボイス制度におけるクレジットカード決済に関する知識について、おさえておきたいポイントや注意点、よくある質問もあわせて解説します。
インボイス制度とは、事業者が消費税を正しく納められるように制定された制度です。
消費税の納税額は、売上時に受け取った消費税から仕入時に支払った消費税を差し引いて計算します。この仕組みを「仕入税額控除」と呼び、控除を受けるためには取引先から適格請求書(インボイス)を発行してもらい、それを保存する必要があります。
クレジットカード決済時に受け取る請求明細や利用明細は、消費税法30条9項で定められた請求書の要件を満たしていません(※1)。これらの書類はインボイス制度には対応していないため、注意が必要です。
原則として、インボイス制度に対応するためには、取引相手から適格請求書の要件を満たした請求書、納品書、または領収書を受け取る必要があります。
なかでも、店頭で発行される領収書は「適格簡易請求書(簡易インボイス)」として扱える(※2)ため、忘れずに受け取りましょう。
(※1)参考:e-Gov 法令検索「消費税法 第三十条 第9項」
(※2)参考:国税庁「インボイス制度開始後において特にご留意いただきたい事項」
クレジットカード決済で仕入れをおこなう場合は、インボイス制度のルールにしたがう必要があります。インボイス制度導入前の認識のままでいると、取引先とのトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
ここでは、インボイス制度におけるクレジットカード決済のポイントについて解説します。
少額特例とは、税込1万円未満の仕入れに適用される特例のことです。この特例を利用することで、適格請求書がなくても帳簿の保存だけでインボイス制度の要件を満たせます。
なお、決済手段は問われないため、クレジットカード決済時にも適用可能です。
ただし、この特例の利用は、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られます。
関連記事:1万円未満の取引では少額特例が適用される要件をわかりやすく解説|インボイス保存が不要になる?
インボイス制度が導入される前は、取得価格が3万円未満の仕入れについて、必要事項を記載した帳簿を保存するだけで仕入税額控除を受けられました。しかし、インボイス制度の導入により、取得価格が3万円未満の仕入れでも、取引相手が発行する適格請求書が必要になりました。
ETCを利用した際は、クレジットカードの利用明細とETC利用照会サービスでダウンロードした利用証明をあわせて保存すれば、簡易インボイスの必要事項を満たせ、インボイス制度の要件を満たせます。
参考:国税庁「インボイス制度開始後において特にご留意いただきたい事項」
取引先がクレジットカード会社であれば、同社から発行される適格請求書はインボイス制度のルールを満たしていることになります。たとえば、年会費や手数料が発生している場合、それらはクレジットカード会社への支払いとなるため、同社からの適格請求書で仕入税額控除を受けられます。
インボイス制度の導入により、クレジットカード決済に関するルールが変更されました。業務負担が増える場面が多いため、事前に内容を把握しておくことで、適切な対策を講じることが可能です。
ここでは、インボイス制度導入にともなうクレジットカード関連の注意点について解説します。
インボイス制度の導入により、3万円未満の決済についても適格請求書や適格簡易請求書の保存が求められるようになりました。これにより、従来は保存義務が免除されていた記録も必要となり、書類の保存回数が増加します。
その結果、決済を担当するスタッフや経理担当者の業務負担が増加することが予想されます。
適格請求書や適格簡易請求書には、記載すべき事項が明確に定められており、不備がある場合、仕入税額控除を受けられません。
インボイス制度のルールに則り、取引ごとに相手から発行される適格請求書の要件を1つずつ確認する必要があります。もし記載内容が要件を満たしていない場合、取引先に適格請求書の再発行を依頼しなければならず、経理担当者の業務負担が大きくなるでしょう。
適格請求書は、適格請求書発行事業者のみが発行可能です。そのためインボイス制度に対応するためには、取引先が適格請求書発行事業者として登録されているかどうかを確認しなければいけません。
なお、適格請求書発行事業者に登録しているか否かは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。
最後に、インボイス制度におけるクレジットカード決済に関する質問について解説します。
民法486条では、初回の領収書発行を請求する権利が認められている(※)ため、取引先に領収書の発行を依頼できます。ただし、領収書の再発行については法律で明確なルールが定められていないため、取引先が再発行に応じるかどうかは保証されていません。
領収書が受け取れない場合、インボイス制度に対応できず、仕入税額控除を受けられなくなります。したがって、領収書は決済時に必ず受け取るよう注意しましょう。
(※)参考:e-Gov 法令検索「民法 第四百八十六条」
クレジットカードの利用明細やレシートには、支払先、日付、金額、支払内容が明記されていれば経費として清算することは可能です。しかし、これらの書類は適格請求書の代わりにはならないため、仕入税額控除は受けられません。
インボイス制度に対応するためにも、取引の際には領収書を必ず受け取るようにしましょう。
本記事では、インボイス制度におけるクレジットカード決済に関する知識について、おさえておきたいポイントや注意点、よくある質問をあわせて紹介しました。
インボイス制度の導入により、クレジットカード決済を含む取引ルールは大きく変わりました。これらの変化に対応するためには、事前の準備と取引先との連携が重要です。
とくに、決済時の書類確認や保存業務は経理担当者にとって負担が増える部分です。しかし、ルールを正しく理解し、適切に対応することで、業務の効率化を図れるでしょう。