更新日:2026.09.30

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クレジットカードで経費を支払ったとき、「カード会社の利用明細があれば仕入税額控除を受けられる」と考えている方もいるのではないでしょうか。
しかし、クレジットカード会社が発行する利用明細書は、原則としてインボイス制度上の「請求書等」には該当しません。
仕入税額控除を受けるためには、商品やサービスを実際に提供した店舗・販売元から、適格請求書または適格簡易請求書の要件を満たしたレシート・領収書等を受け取り、保存するのが基本です。
この記事では、カード会社の利用明細がインボイスにならない理由、保存すべき書類、インボイスがなくても控除できる特例、ETCの簡便な保存方法、カード会社に支払う年会費・手数料、加盟店側の消費税処理、法人カードの運用ルールまで解説します。
クレジットカード決済で受け取る書類のうち、仕入税額控除のためのインボイスとして利用できるものと、できないものを整理すると次のとおりです。
| 書類 | インボイスとして使えるか | 補足 |
|---|---|---|
| カード会社の利用明細書 (Web明細・郵送明細) |
原則使えない | 発行者が実際の商品・サービスを提供した加盟店ではないため |
| 決済端末から出るカード売上票・お客様控え | 通常は使えない | 登録番号や税率ごとの消費税額等など、必要事項が不足していることが一般的 |
| 店舗が発行するレシート・領収書 | 要件を満たせば使える | 小売業・飲食店業などでは適格簡易請求書として交付できる |
| ECサイト・サブスク等が発行する領収書・請求書 | 要件を満たせば使える | 販売元が適格請求書発行事業者で、必要事項が記載されていることを確認する |
| ETC利用照会サービスの利用証明書 | 使える | 適格簡易請求書として利用できる。多頻度利用には簡便な保存方法もある |
カードで払ったかどうかではなく、「誰が発行した書類なのか」を確認するのがポイントです。原則として、実際に商品・サービスを提供した店舗・販売元が交付した適格請求書等を保存します。
国税庁は、法人カードなどを利用した際にカード会社から交付される請求明細書について、消費税法上の「請求書等」には該当しないとしています。
理由は、クレジットカード会社が商品やサービスを提供した事業者ではないためです。
たとえば飲食店でカード決済をした場合、飲食サービスを提供したのは飲食店であり、カード会社ではありません。
カード会社の明細には、カードを利用した日付・加盟店名・金額などが表示されますが、加盟店自身が交付した適格請求書等ではありません。
原則的な保存関係
店舗・販売元のレシート/領収書等 → 仕入税額控除の根拠
カード会社の利用明細 → 支払状況やカード利用額の確認資料
したがって、カード決済を行った課税仕入れについて仕入税額控除を受ける場合は、加盟店から適格請求書等を受け取り、保存する必要があります。
小売業、飲食店業、タクシー業など、不特定多数の者に対して販売等を行う一定の事業者は、「適格簡易請求書」を交付できます。
適格簡易請求書では、通常の適格請求書と異なり、書類の交付を受ける事業者の氏名・名称を省略できます。
また、「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」は、どちらか一方の記載で足ります。
店舗のレシートについて、登録番号や取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額などの必要事項を満たしていれば、仕入税額控除に利用できます。
一方、コンサルティング会社や制作会社など、適格簡易請求書を交付できない事業者との取引では、通常の適格請求書の要件を満たす書類を受け取ります。
カード決済で加盟店の適格請求書等を保存していなくても、一定の特例に該当すれば、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる場合があります。
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者には「少額特例」があります。
2023年10月1日から2029年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れであれば、適格請求書等を保存しなくても、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できます。
決済方法は問われないため、クレジットカード決済でも適用できます。
1万円未満かどうかは、商品1点ごとではなく一回の取引全体の税込金額で判定します。たとえば5,000円の商品と6,000円の商品を同時に購入した場合、合計11,000円なので少額特例は使えません。
事業者の規模にかかわらず、一定の取引は適格請求書等の保存がなくても、一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられます。
| 取引 | 主な条件 |
|---|---|
| 鉄道・バス・船舶による旅客運送 | 一回の取引の税込価額が3万円未満 |
| 自動販売機・自動サービス機による販売等 | 税込3万円未満。機械装置だけで取引が完結するもの |
| 一定の郵便切手類を対価とする郵便・貨物サービス | 郵便ポストへの投函など一定の場合 |
| 従業員等へ支給する通常必要な出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当等 | 通常必要と認められる範囲であること |
クレジットカードで支払ったかどうかは、これらの特例の判定そのものには影響しません。
たとえば、公共交通機関特例の対象となる税込3万円未満の旅客運送をカードで購入した場合も、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できます。
「3万円以上の交通費=必ずインボイスが必要」とは限りません。会社が従業員へ支給する通常必要な出張旅費・通勤手当等については、金額にかかわらず別の帳簿のみ特例を利用できる場合があります。
ETCクレジットカードで高速道路料金を支払った場合、原則としてETC利用照会サービスから、通行料金確定後の「利用証明書」を取得・保存します。
利用証明書は適格簡易請求書の記載事項を満たす電子データとして利用できます。
一方、高速道路の利用回数が多く、すべての利用証明書を保存するのが困難な場合には、国税庁が簡便な保存方法を認めています。
個々の高速道路利用の内容を確認できるクレジットカード利用明細書
利用した高速道路会社等ごとに、任意の1取引分の利用証明書
この2つをあわせて保存すれば、すべての高速道路利用について仕入税額控除を行って差し支えないとされています。
また、ETC利用照会サービス上で利用証明書をいつでも確認・ダウンロードできる期間内に、同じ高速道路会社等を繰り返し利用している場合は、一定の条件のもと、結果として利用証明書のダウンロード自体が不要になる場合もあります。
ショッピングの利用代金とは異なり、クレジットカードの年会費やカード再発行手数料などは、カード会社自身が提供するサービスの対価です。
これらが課税取引に該当し、仕入税額控除を受ける場合は、カード会社が交付する適格請求書等を保存します。
カード会社によっては、会員向けWebサイト等から年会費・各種手数料に係るインボイスを取得する仕組みを設けています。
通常のショッピング利用についてはカード会社ではなく各加盟店がインボイスの発行者となるため、カード会社から取得する手数料のインボイスとは分けて管理してください。
クレジット利用者が信販会社等に支払う分割払いやリボルビング払いに係る手数料のうち、包括信用購入あっせん・個別信用購入あっせんに係る手数料や利子相当額は、消費税が非課税です。
非課税部分については仕入税額控除の対象となる消費税がないため、インボイスは不要です。
同じカード会社への支払いでも、年会費等の課税項目と、分割・リボ払い等の非課税項目で消費税区分が異なる点に注意してください。
クレジットカード加盟店が信販会社へ売上債権を譲渡し、債権額と実際の入金額との差額を加盟店手数料として負担する取引では、その差額は非課税取引となります。
国税庁の質疑応答事例でも、信販会社が加盟店から譲り受ける債権額と加盟店への支払額との差額について、消費税が非課税になると示されています。
この場合、仕入税額控除の対象となる消費税そのものがないため、加盟店側はその非課税手数料についてインボイスを必要としません。
すべてのキャッシュレス決済手数料が非課税になるわけではありません。
決済代行会社へのシステム利用料、決済処理サービス料、月額利用料など、役務提供の対価として支払う費用は課税取引となる場合があります。
同じ決済サービスの請求書の中に、非課税の費用と課税の費用が混在するケースもあるため、サービス名称だけで判断せず、契約書・加盟店規約・毎月の明細に記載された消費税区分を確認してください。
課税の手数料について本則課税で仕入税額控除を受ける場合は、決済事業者が交付する適格請求書等を保存します。
店舗がクレジットカード決済の顧客へ、レシートや領収書を交付することは可能です。
適格請求書発行事業者であり、適格簡易請求書を交付できる業種であれば、登録番号など必要事項を満たしたレシート・領収書を交付できます。
また、印紙税について、クレジット販売は店舗と顧客の間で直接金銭・有価証券を受領する取引ではないため、クレジットカード利用であることを領収書に明記している場合、その領収書は「金銭又は有価証券の受取書」には該当せず、収入印紙は不要です。
「クレジットカード利用」等の記載を忘れないことが重要です。カード決済であっても、その旨を領収書に記載していないと、印紙税法上の受取書に該当する場合があります。
法人カードを複数の従業員へ持たせている企業では、カードの利用明細だけを経理資料とするのではなく、加盟店のレシート・領収書等を回収する運用を整えることが重要です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ①回収 | カード決済時に加盟店のレシート・領収書等を受け取り、経費精算時に提出するルールを設ける |
| ②確認 | 登録番号、取引年月日、税率ごとの対価の額、消費税額等など、適格請求書・適格簡易請求書の要件を確認する |
| ③保存 | 紙で受け取った書類は紙または要件を満たしたスキャナ保存。メール・Web等で受け取ったPDF等は電子取引データとして保存する |
| ④特例判定 | 少額特例、公共交通機関特例、出張旅費等特例、ETCの簡便な保存方法などが使えるかを確認する |
| ⑤照合 | カード利用明細とレシート等を照合し、私的利用・未提出・二重計上などがないか確認する |
法人カードの利用では、店舗から受け取るレシート等と、カード会社の利用明細という2種類の資料が残ります。
レシートをもとに経費計上した後、カード会社からの口座引落しを再び費用として処理すると、同じ経費を二重に計上してしまいます。
一般的には、商品やサービスを購入した時点で費用と未払金を計上し、カード代金の口座引落し時には未払金を消し込みます。
たとえば、11,000円の消耗品を法人カードで購入した場合は、次のように処理できます。
| 日付 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品購入日 | 消耗品費 11,000円 (課税仕入れ10%) |
未払金 11,000円 |
| カード代金引落日 | 未払金 11,000円 | 普通預金 11,000円 |
消費税の課税仕入れの時期も、原則としてカード会社から代金が引き落とされた日ではなく、商品を購入した日や役務の提供を受けた日を基準に判断します。
そのため、決算日をまたいでカード代金が引き落とされる場合でも、商品購入・役務提供が前期に完了しているのであれば、原則として前期の取引として処理します。
まず、商品・サービスを提供した店舗や販売元へ、適格請求書等の要件を満たすレシート・領収書等を再度交付できるか確認しましょう。
クレジットカード決済では、店舗が顧客からその場で直接金銭を受領するわけではないため、「カード払いなら必ず領収書を再発行してもらえる」とは限りません。
再交付を受けられない場合でも、その取引が少額特例、公共交通機関特例、出張旅費等特例などに該当すれば、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できる場合があります。
いずれの特例にも該当せず、適格請求書等を取得できない場合は、原則としてその取引について適格請求書保存方式による全額の仕入税額控除は受けられません。
カード会社の利用明細は、支払先・日付・金額などを確認できるため、自社の経費精算や支出確認の資料として利用できる場合があります。
ただし、法人税・所得税上の必要経費・損金として認められるかどうかと、消費税の仕入税額控除を受けられるかどうかは別の問題です。
消費税については、カード会社の利用明細だけでは原則として仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たしません。
Webサイト、メール、クラウドサービスなどを通じて電子データで受領した請求書・領収書等は、電子帳簿保存法の電子取引データに該当します。
そのため、電子データで受け取ったインボイスは、原則として電子データのまま保存する必要があります。
ECサイトやサブスクリプションサービスの管理画面から取得したPDF、メール添付で受け取った領収書なども同様です。
紙へ印刷すること自体は可能ですが、印刷した紙だけを保存して元の電子取引データを削除する方法では、電子取引データ保存の要件を満たしません。
簡易課税制度や、適用要件を満たす2割特例・3割特例では、実際の課税仕入れに係る消費税額を積み上げて納付税額を計算しません。
そのため、消費税の仕入税額控除のために個々の仕入先のインボイスを保存する必要はありません。
ただし、法人税・所得税上の支出内容を確認する証憑や、自社の経費管理資料としてレシート・領収書等を保存する必要性は別途あります。
クレジットカード決済で仕入税額控除を受けるには、原則としてカード会社の利用明細ではなく、実際に商品・サービスを提供した店舗や販売元が交付した適格請求書・適格簡易請求書を保存します。
カード会社の利用明細は支払いの確認には役立ちますが、カード会社自身が加盟店の商品・サービスを提供したわけではないため、原則としてインボイスの代わりにはなりません。
ただし、一定規模以下の事業者が利用できる税込1万円未満の少額特例、3万円未満の公共交通機関特例、出張旅費等特例、ETCの簡便な保存方法など、インボイスを毎回保存しなくても仕入税額控除できるケースがあります。
また、カード会社との直接の取引である年会費等はカード会社のインボイスを確認し、分割・リボ払いの利子相当の手数料や一定の加盟店手数料は非課税として処理します。
法人カードを利用する企業では、「加盟店のレシート等を回収する」「インボイスの要件を確認する」「カード明細と照合する」「引落し時に二重計上しない」という流れを社内ルールとして整えておくと、経理処理を効率化できます。