更新日:2026.08.31

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「インボイスがない支払いは経費にできない」と思っていませんか。結論から言えば、インボイスがなくても、事業に必要な支出であることを説明できれば、法人税や所得税の計算上は経費(損金・必要経費)として計上できます。
インボイスの有無が直接影響するのは、主に消費税の「仕入税額控除」です。さらに、少額特例や公共交通機関特例、出張旅費等特例など、インボイスを保存しなくても仕入税額控除できるケースがあります。
この記事では、2026年8月時点の制度に基づき、「経費にできるか」と「仕入税額控除できるか」を分けて整理します。2026年10月から変わる免税事業者等からの仕入れの経過措置もあわせて確認しましょう。
まず押さえたいのは、「経費計上」と「仕入税額控除」は別のルールだという点です。インボイス制度は消費税の仕入税額控除に関する制度であり、インボイスがないことだけを理由に法人税・所得税上の経費計上が否定されるわけではありません。
| 判断すること | インボイスがない場合 |
|---|---|
| 法人税・所得税上の経費にできるか | 事業に必要な支出であり、取引の事実を説明できれば経費計上は可能 |
| 消費税の仕入税額控除ができるか | 一般課税では原則としてインボイス等の保存が必要。ただし各種特例あり |
| 簡易課税を使っている場合 | みなし仕入率で仕入控除税額を計算するため、個々の経費のインボイス有無は納付税額に直接影響しない |
| 免税事業者の場合 | 消費税の申告・仕入税額控除を行わないため、インボイスの有無による仕入税額控除の問題は生じない |
したがって、経費精算で最初に確認すべきなのは「インボイスがあるか」ではなく、「自社が一般課税で仕入税額控除を行う取引か」です。
一般課税の事業者が仕入税額控除を受けるには、原則として帳簿とインボイス(適格請求書・適格簡易請求書など)の保存が必要です。登録番号や適用税率、税率ごとの消費税額など必要事項を満たす書類を保存します。
免税事業者やインボイス未登録事業者からの課税仕入れは、原則としてインボイスを受け取れません。ただし、急激な負担増を避けるため、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。令和8年度税制改正で、2026年10月以降の割合と期間が見直されました。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
| 2031年10月1日以降 | 原則として経過措置による控除なし |
なお、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同一のインボイス未登録事業者等からの課税仕入れについて、年間または事業年度で1億円を超える部分にはこの経過措置を適用できない制限も設けられます。
参照:国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」
日々の経費精算で特に重要なのが少額特例です。一定規模以下の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスを保存しなくても、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できます。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 対象事業者 | 基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下 |
| 対象取引 | 1回の取引に係る税込金額が1万円未満の課税仕入れ |
| 対象期間 | 2023年10月1日~2029年9月30日 |
| 取引先 | インボイス発行事業者かどうかを問わない |
| 必要な保存 | 一定事項を記載した帳簿 |
たとえば、対象事業者が8,800円のタクシー代や5,500円の会議費を支払った場合、少額特例の要件を満たせば、相手がインボイス未登録でも帳簿のみで仕入税額控除できます。「タクシーや飲食店でインボイスがなければ必ず控除不可」と一律に判断しないことが大切です。
| 経費 | 原則 | インボイスなしで控除できる主なケース |
|---|---|---|
| 電車・バス等 | 原則はインボイス保存 | 税込3万円未満の公共交通機関特例。少額特例の対象になる場合もあり |
| タクシー | 原則はインボイス保存 | 少額特例の対象事業者で税込1万円未満なら帳簿のみで可 |
| 駐車場・コインパーキング | 原則はインボイス保存 | 少額特例の要件を満たす場合。自動サービス機特例に該当するかは設備・取引形態で判断 |
| 飲食代・接待交際費 | 原則は簡易インボイス等を保存 | 少額特例の要件を満たす税込1万円未満の課税仕入れ |
| 出張旅費・宿泊費・日当 | 支払い方により異なる | 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等は出張旅費等特例 |
| 郵便切手を使う郵便サービス | 原則は帳簿保存 | 郵便ポストへの投函等、郵便切手類のみを対価とする一定の郵便サービスは帳簿のみで可 |
船舶、バス、鉄道・軌道による旅客運送で、1回の取引が税込3万円未満の場合は「公共交通機関特例」の対象です。インボイスの保存は不要で、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除できます。タクシーや航空機はこの3万円未満の公共交通機関特例には含まれません。
タクシーは公共交通機関特例の対象外なので、一般課税では原則としてインボイスの保存が必要です。ただし、少額特例の対象事業者が税込1万円未満のタクシー代を支払った場合は、少額特例により帳簿のみで控除できる可能性があります。
飲食店や小売店では、宛名を省略できる適格簡易請求書(簡易インボイス)が使われることがあります。高額な会食ではインボイスの有無による税負担差が大きくなりやすいため、一般課税の事業者は受領したレシートの登録番号や税率ごとの記載を確認しましょう。税込1万円未満で少額特例の対象なら、インボイス保存を省略できます。
従業員が会社のために立て替えた支払いでも、実質的な買手が会社であることを明らかにできれば仕入税額控除の対象になります。インボイスの宛名が従業員名になっている場合は、会社と従業員の関係を示す立替金精算書等をインボイスと一緒に保存するのが基本です。
一方、従業員に支給する出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当のうち通常必要と認められる金額には、出張旅費等特例が適用できるため、インボイス保存は不要です。単なる「立替払い」と「出張旅費等特例」は分けて判断してください。
| 特例 | 主な対象 | 注意点 |
|---|---|---|
| 公共交通機関特例 | 税込3万円未満の船舶・バス・鉄道・軌道の旅客運送 | タクシー・航空機は対象外 |
| 自動販売機・自動サービス機特例 | 税込3万円未満の自販機、一定の自動サービス機等 | 帳簿に設備の所在地等の記載が必要となる場合あり |
| 郵便切手類特例 | 郵便切手類のみを対価とする一定の郵便サービス | 郵便ポストへの投函などが典型。窓口取引は別途確認 |
| 出張旅費等特例 | 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当 | 実費精算も対象になり得る。通常必要な範囲かを確認 |
| 少額特例 | 一定規模以下の事業者による税込1万円未満の課税仕入れ | 2029年9月30日まで。取引先の登録有無は問わない |
帳簿のみで仕入税額控除を受ける場合も、何も残さなくてよいわけではありません。通常の帳簿記載事項に加え、特例の対象であることが分かるように記載します。
課税仕入れの相手方の氏名または名称
取引年月日
取引内容(軽減税率対象であればその旨)
対価の額
帳簿のみ保存の特例に該当する旨(例:公共交通機関特例、出張旅費等特例、自動販売機特例など)
経費精算システムを使っている場合は、摘要欄や税区分で特例を選べるようにし、従業員が自己判断でバラバラの表記をしない運用にすると確認しやすくなります。
1|自社が一般課税か、簡易課税・免税事業者かを確認する
2|一般課税なら、取引が課税仕入れに該当するか確認する
3|インボイスまたは簡易インボイスを受け取れるか確認する
4|受け取れない場合は、少額特例・公共交通機関特例・出張旅費等特例などに該当しないか確認する
5|特例にも該当しない場合は、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用可否を確認する
6|帳簿・インボイス・立替金精算書など必要な証憑を保存し、税区分を正しく登録する
この順番にすると、「インボイスがない=経費精算NG」と早合点せず、法人税・所得税と消費税を分けて処理できます。
はい。事業に必要な支出であることを説明できれば、インボイスがないことだけを理由に法人税・所得税上の経費計上ができなくなるわけではありません。ただし、一般課税で仕入税額控除を受けるには、原則としてインボイス等の保存が必要です。
いいえ。少額特例を使えるのは、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。また、1商品ではなく「1回の取引」が税込1万円未満かどうかで判定します。
簡易課税では、実際の仕入税額ではなく業種ごとのみなし仕入率で仕入控除税額を計算するため、個々の経費のインボイス有無が消費税の納付税額に直接影響することはありません。ただし、法人税・所得税や電子帳簿保存法など別の保存義務は残るため、証憑自体を捨ててよいという意味ではありません。
原則として、インボイス等の保存が必要な取引では、紛失したままでは仕入税額控除が難しくなります。まずは店舗・取引先に再発行や再取得ができないか確認してください。少額特例や帳簿のみでよい特例に該当する取引なら、各特例の要件に従って処理します。
インボイスがなくても、事業に必要な支出であることを説明できれば、法人税・所得税上の経費として計上できます。インボイス制度で確認すべきなのは、「経費にできるか」ではなく、一般課税の事業者が「仕入税額控除できるか」です。
一般課税では原則としてインボイス等の保存が必要ですが、少額特例、公共交通機関特例、出張旅費等特例など、帳簿のみで控除できるケースがあります。また、免税事業者等からの仕入れについては、2026年10月から経過措置の控除割合が70%に変わります。
経費精算では、支払先や金額だけで一律に判断せず、「自社の課税方式」「取引の種類」「金額」「使える特例」の順に確認し、必要な証憑と帳簿記載をそろえましょう。