更新日:2023.10.23
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企業が活動する上で、請求書のやり取りは欠かせません。請求書は自社から顧客に発行するものもあれば、仕入先から受領するものもあります。中でも、受領した請求書は保管が必要です。ですが、いつまで保管しておけば良いのでしょうか。
本記事では、請求書の保管期間や保管方法などについて解説します。
法人税法において、法人は受領した請求書を7年保管することが義務付けられています。(※)この場合の7年とは事業年度の確定申告提出期限の翌日から起算して7年です。請求書を受領したタイミングから数えて7年ではないので注意しましょう。なお確定申告の提出期限は、事業年度が終了した翌日から2カ月以内です。
例えば、決算月が3月の企業であれば請求書の保管期間は次のとおりです。
(※)参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
赤字が発生した事業年度の請求書は10年保管する必要があります。(※)10年保管することで、翌年の利益から赤字部分を控除できる損金の繰越控除の適用が可能です。このことから、請求書は7年でなく10年保管しておくとよいでしょう。
(※)参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
受領した請求書は7年もしくは10年保管することが求められています。そのため、紛失することなく適切な保管が必要です。
請求書の保管方法として、次の3つが挙げられます。
紙で送られてきた請求書はそのまま紙で保管します。紙で保管する際は仕入れ先から送られてくる請求書と、自社が顧客に発行する請求書とを分けてファイリングすることで、それぞれを混同せずに管理できるでしょう。
受領した請求書と自社が発行した請求書を分けたら、それぞれを月別や取引先別に管理します。月別、取引先別の管理はそれぞれメリット、デメリットがあります。
管理方法 | メリット | デメリット |
月別 |
● 1カ月のお金の流れが把握しやすい ● 該当月に発行されたものをまとめるだけで良い |
● 取引先が多数いると該当の請求書を探し出すのに時間がかかる |
取引先別 | ● 取引先ごとのお金の流れが把握しやすい | ● 請求書を定期的に分類する負担がある |
請求書はマイクロフィルムでの保管も可能です。ただし、紙文書を撮影しマイクロフィルムで保管できるのは、保管期間の6年目と7年間の残り2年間のみになります。(※)また、マイクロフィルムで保管するには専用の機材が必要です。
(※)参考:国税庁「問1 電子帳簿保存法はどのような内容となっていますか。」
電子データで保管する場合、次の2パターンが考えられます。
紙の請求書を電子化して保管する方法は、電子帳簿保存法に従って保管しなければなりません。従来、電子帳簿保存法では紙の請求書を電子化する条件として、税務署長への承認申請や、不正防止のための社内規定を整えるといった適正事務処理要件などが設けられていました。しかし、2022年1月から改正電子帳簿保存法が施行されたことで要件が緩和され、スキャナ保存のハードルが下がっています。
電子帳簿保存法の改正は、PDFの他に電子請求書で送付された請求書の保管についても影響を及ぼすことが予想されます。これまでは電子請求書を受領した際は、紙に印刷して保管が認められていました。しかし、一定条件を満たしていない限り、原則2024年1月1日からはプリントアウトしての保管は認められず、電子データで保管する必要があります。(※)
電子帳簿保存法の改正についてはこちらで詳しく解説しています。
【2022年1月改正】電子帳簿保存法の変更点を分かりやすく解説|要件や対応のコツを紹介
(※)参考:財務省「令和5年度税制改正の大綱」
企業によっては、請求書を発行する際に自社の控えを発行しているかもしれません。特に紙の請求書は複写式になっている物もあるため、自社に請求書の控えが保管されていることが考えられます。
取引先に発行した請求書の控えも、受領した請求書と同様に保管義務が発生します。そのため、発行した請求書も適切に保管しましょう。(※)
ただし、請求書を発行する際に控えが必要なわけではありません。請求書の控えがなければ、当然控えの保管義務も発生はしません。
請求書の控えを発行するかどうかは、自社の入金管理の流れに応じて決定しましょう。請求書の控えを確認せずともシステムなどによって入金が管理できるのであれば、請求書の控えは不要と考えられます。このような仕組みが確立されていない場合、請求書の控えがないことで入金金額に食い違いが生じるといった入金トラブルに発展してしまうかもしれません。
請求書の目的や必要性については以下で詳しく紹介しているのでご確認ください。
請求書とは?必要な理由や確認すべきポイントを解説
(※)参考:国税庁「通則【制度の概要等】」
請求書の控えを保管する方法は請求書の原本と同様、紙か電子データで保管するのが一般的です。電子データで保管することで、省スペース化や印刷の手間を軽減できるといったメリットにつながります。
請求書の控えを保管する際は、入金の状態で管理する、請求書番号を付与するといった工夫を凝らしましょう。
送付した請求書の金額が正しく入金されているかを把握するために、入金待ちと入金済みに分けます。支払期日までは入金待ちの状態にしておき、入金が確認できたら入金済みに移動させることで入金確認の漏れを減らせます。また、請求書に番号を振ることで管理や保管がスムーズになるでしょう。
2023年10月からスタートするインボイス制度では、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合、適格請求書を発行しなければなりません。また、適格請求書の発行だけでなく適格請求書の控えを発行する義務もあります。適格請求の控えは従来の請求書と同様に7年間です。(※)
(※)参考:国税庁「5 適格請求書等の写しの保存 」
インボイス制度がスタートすると発行した適格請求書の控えの発行と保管が必要になります。また、インボイス制度は発行する企業側だけでなく、適格請求書を受領する側にも影響をもたらすことが予想されます。
例えば、インボイス制度では要件を満たした適格請求書でなければ、仕入税額控除を受けられません。そのため、受領した請求書が適格請求書としての要件を満たしているかを判断する必要があります。受領した請求書に次のような項目が記載されているかを確認します。
これまでの業務に上記のようなチェック項目が追加されるため、経理担当者の負担増加につながりかねません。また、記載内容に誤りがあった場合は、控えも合わせて修正しなければならないため、仕入れ先に修正の依頼が必要です。請求書の内容確認以外にも記載ミスが発生時に仕入れ先に修正依頼する手間も増えてしまいます。
インボイス制度についてはこちらで詳しく解説しています。
インボイス制度の目的は複数税率対応・益税解消のため|事業者が受ける影響や必要な対応を解説
受領した請求書は7年もしくは10年保管義務があるのに加えて、発行した請求書の控えがある場合は控えの保管も義務付けられています。また、インボイス制度によっても請求書についての業務負担の増加が予想されるでしょう。
このような請求書にまつわる業務負担は、一括請求サービスの導入で軽減が可能です。一括請求サービスとは通信費や公共料金などの請求書を一つにまとめて、一括で支払えるサービスです。
一括請求サービスであれば、バラバラに届いた請求書の開封や入力業務などを削減できるため、業務効率化につながります。また、一括請求サービスは支払い処理を一度にまとめられるため、振込作業も効率的に行えます。次項のようなメリットにつながるでしょう。
クラウド型の一括請求書サービスであれば、インターネット環境が整っていればどこからでも利用可能です。そのため電子請求書の発行を希望した場合、リモートワークであっても請求にまつわる業務を行えます。紙の請求書であれば出社しなければ確認できませんでしたが、一括請求サービスであればリモート先で請求書を確認可能です。
一括請求サービスを利用することで、受領する請求書の枚数が減ります。そのため、紙で保管する場合は保管スペースの削減が期待できます。また、電子請求書であれば保管スペースそのものをなくすことが可能です。
受領した請求書は7年もしくは10年間保管する義務があります。また、自社が発行した請求書の控えがあれば、同じく7年間保管しなければなりません。受領した請求書を保管する場合は紙か電子データとして保管しましょう。特にPDFをはじめとした電子請求書は、一定条件を満たしていない限り、2024年1月1日から電子データのみでしか保管できないので注意が必要です。(※)
(※)参考:財務省「令和5年度税制改正の大綱」
インボイス制度のスタートによって、保管をはじめ、請求書にまつわる業務はますます経理担当者の業務負担を増やす可能性があります。大変な請求書の管理業務は、一括請求サービスの利用がおすすめです。活用して、請求書の業務を効率化しましょう。