更新日:2024.08.26
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企業の経済活動を支える上で、経理業務は必要不可欠なものです。しかし、その業務内容は多岐にわたり、正確性が求められるため、担当者にとっては負担が大きいと感じられることも少なくありません。特に、経理業務の経験が浅い方や、これから経理業務に携わる方は、具体的な業務内容や効率化の方法について疑問を抱えているかもしれません。
そこでこの記事では、経理業務の内容や流れをわかりやすく解説し、業務効率化のための具体的な手法を紹介します。経理業務の全体像を把握し、適切な対策を講じることで、業務の負担を軽減し、より正確かつ効率的に業務を遂行できるようになるでしょう。
経理業務とは、企業のお金の流れを管理する「会計業務」の一部です。企業の財務状況を記録・計算・整理し、経営判断に役立つ情報を提供する役割を担います。
この記事では、経理業務の全体像をわかりやすく解説します。具体的な業務内容や、財務・会計との違いを理解することで、経理業務の重要性を再認識できるでしょう。
業務内容としては、以下のような幅広い業務が含まれます。
これらの業務を通して、企業の財務状況を正確に把握し、経営の意思決定をサポートします。
企業における経理業務と会計業務には、どのような違いがあるのでしょうか。経理業務は会計業務の一部です。会計業務とは、会社の資金(お金)の流れを記録・計算し、赤字や債務超過に陥らないよう管理していく仕事です。
ここまでは経理業務にも含まれますが、さらに会計業務ではお金の流れを分析し、会社の今後の経営方針を決めたり、対外的に財務状況を報告したりする仕事があります。
企業の会計業務は、大きく「管理会計」と「財務会計」に分けられます。それぞれの違いについて解説しましょう。
管理会計 | ・事業活動の売上、利益、コストを分析して、今後の会社の経営方針を決める ・事業計画を策定するうえで、管理会計業務が大きな根拠になる |
財務会計 | ・株主総会、投資家、融資を受けている金融機関などの利害関係者(ステークホルダー)を対象として、会社の財務状況を明らかにする |
経理業務を効率化し、出納管理や売掛金・買掛金の管理をきちんと行うことが、続く管理業務の精度にもつながってきます。経理業務も管理業務も、会社のお金の流れを管理するという意味で、企業活動の重要な柱となる仕事です。
経理の仕事とは、会社のお金の動きを把握し、きちんと管理する仕事です。出納管理、経費精算、売掛金や買掛金の管理など、経理業務は事業活動における重要な柱です。
経理業務を効率化するには、経理の仕事内容を整理し、改善すべきポイントを見つけ出す必要があります。この記事では、経理の代表的な仕事内容や、経理業務を効率化するための基本知識について、わかりやすく解説します。
経理の代表的な業務の1つが「出納管理」です。事業活動には、現金や預金の出入りがつきものです。企業は税金や保険料の支払い、手形や小切手の銀行引き落としに備えて、一定の現金や預金(キャッシュ)を保有しています。
また、商品やサービスが売れた場合は、売上金が銀行口座に入金されます。社員に対し、経費や交通費の精算をするときは、その場で現金でのやりとりが発生する場合もあります。
出納管理とは、「現金や預金が毎月どれくらい出入りしたか」「どの勘定科目で、いくらのお金がいつ出入りしたか」を管理する業務です。現金や預金の出入り(出納)が発生したら、そのやりとりを1つずつ伝票に起票し、「出納帳」などの帳簿に記帳していくのが出納管理の仕事です。
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経理業務の1つ「経費精算」とは、会社が事業活動を営むうえで必要な経費を、社員に立て替えてもらったときに発生する仕事です。
経費の代表例として、たとえば営業活動の交通費・出張費・旅費や、日々の仕事に必要な消耗品費などが挙げられます。
こうした経費を一時的に立て替えてもらった場合、経理部門はまず経費の内容や妥当性をチェックしなければなりません。旅費交通費、消耗品費、接待交際費など、経費として計上できる勘定科目には限りがあるからです。
経費精算業務にあたっては、社員に経費精算書と領収書(またはレシート)の提出を求め、以上の3点を確認しましょう。内容に問題がない場合は、経費の種類ごとに仕訳を行い、「経費仕訳帳」などの帳簿に記帳したうえで、立て替え払いしてもらった分を社員に払い戻します。
社員の数が増えれば増えるほど、仕分けが必要な経費が増えるため、経理部門のなかでも負担が大きな業務です。
商品の販売や仕入れといった掛取引が行われた場合、すぐにキャッシュが手元に入るわけではありません。製品やサービスの代金は原則後払いで、決められた期日に入出金が行われます。
このとき、商品の対価として受け取るお金を「売掛金」、支払うお金を「買掛金」といいます。「売掛金や買掛金の金額はいくらか」「いつまでに入出金が行われるか」を管理するのも、経理の大切な仕事です。
たとえば、売掛金の回収が遅れると、月々の支払いに必要なキャッシュが不足し、帳簿上は黒字であるのにもかかわらず倒産してしまう「黒字倒産」を起こしかねません。
また、買掛先に対し、期日通りに買掛金を支払わなければ、企業間の信用問題に発展する恐れもあります。そのため経理部門は掛取引の請求書や領収書を集計・管理して、売掛金や買掛金をきちんと管理する必要があります。
経理業務は、企業の財務状況を記録・管理し、経営判断に役立つ情報を提供する重要な役割を担っています。しかし、その業務内容は多岐にわたり、煩雑になりがちです。
この記事では、経理業務の流れを「日次業務」「月次業務」「年次決算業務」の3つに分類し、具体的な業務内容をわかりやすく解説します。業務の流れを理解し、効率化を図ることで、経理業務の負担を軽減し、より戦略的な業務に集中できる環境を構築できるでしょう。
業務区分 | 業務内容 |
日次業務 |
現金の出納管理、売掛金・買掛金の管理、経費精算の処理、伝票の起票と入力
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月次業務 |
試算表の作成、月次決算の処理、請求書発行と入金確認、支払処理
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年次決算業務 |
決算整理仕訳の入力、本決算の処理、税務申告書の作成と提出、有価証券報告書の作成と提出(上場企業の場合)
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日次業務は、日常的に発生する取引を処理する業務です。
具体的な業務内容は以下の通りです。
これらの業務は、毎日発生するため、正確かつ迅速な処理が求められます。
月次業務は、毎月の締め作業として行われる業務です。
具体的な業務内容は以下の通りです。
これらの業務は、正確な月次決算を行うために欠かせません。
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年次決算業務は、事業年度の終了後に行われる業務です。
具体的な業務内容は以下の通りです。
これらの業務は、企業の1年間の業績をまとめ、株主や投資家などに報告するために必要です。
経理の仕事をする際は、次の3つのポイントに注意しましょう。
経理業務は決算業務や年末調整など、1年を通じて決まった仕事があります。
年間スケジュールの一例(3月決算の場合)
4月 | 年次決算 |
5月 | |
6月 | 株主総会、税務申告 |
7月 | 賞与計算、労働保険の年度更新、社会保険料の定時決定 |
11月 | 中間税務申告 |
12月 | 賞与計算、年末調整 |
1月 | 給与支払報告書、償却資産申告書、法定調書の提出 |
3月 | 決算準備、実地棚卸 |
以上のスケジュールは、3月決算の企業の場合の経理業務の流れです。年間スケジュールを理解し、余裕を持って日々の業務に当たることが大切です。
経理業務では、売掛金や買掛金の入出金、経費の精算など、お金が動くたびに伝票・請求書が発生します。取引の記録を日付順に残すために「仕訳帳」を作成したり、勘定科目別に取引をまとめるために「総勘定元帳」を作成したりします。
また、決算の時期が近づくと、貸借対照表や損益計算書などの決算書の作成業務もあります。経理業務を効率化し、事業のお金の流れを正確に把握するためには、伝票や請求書をはじめとした書類の「整理整頓」が欠かせません。
もし伝票や請求書の整理整頓まで現場の手が回らない場合は、経費精算システムや会計ソフトなどのITツールの導入や、経理業務のアウトソーシングがおすすめです。
経理業務では、日々さまざまな種類の印鑑を取り扱います。
代表印(実印) | ・重要な契約書や、税務申告書をはじめとした法的文書に使う |
銀行届出印(銀行印) | ・銀行口座の開設、預金の入出金など、金融機関が関わる経理業務に使う |
角印(社印) | ・請求書、見積書、領収書などの社外文書を作成する際に使う |
ゴム印(角判) | ・契約書の署名や封筒の差出人の代わりに使う |
とくに代表印や角印は、法的文書や契約書の作成にも使われる重要な印鑑です。代表印は社長や取締役のみ、角印は部長や課長クラスの役職者のみに限定するなど、経理業務に関わる印鑑の取り扱いには十分注意する必要があります。
経理業務は、手作業で行うことが多い業務ですが、近年では様々な手法を用いて効率化が進んでいます。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。
ITツールを活用することで、業務の自動化やペーパーレス化が進み、時間短縮やミスの削減を実現できます。
例えば、会計ソフトを導入すれば、伝票処理や帳簿作成、決算業務などを効率化できます。また、オンラインバンキングや経費精算システムなどを活用すれば、入出金管理や経費精算業務を効率化できます。
業務プロセスを見直し、無駄な作業を削減したり、手順を改善したりすることで、業務効率を向上させることができます。
例えば、紙ベースで行っていた業務を電子化したり、承認フローを見直したりすることで、業務のスピードアップやミスの削減につながります。
従業員のスキルアップや、専門性の高い業務を外注することで、業務効率化を図ることも可能です。
例えば、経理担当者のスキルアップ研修を実施したり、税務申告や監査対応などの専門性の高い業務を税理士や会計士に外注したりすることで、業務の質向上や時間短縮につながります。
ここまで、経理部門の代表的な業務や、経理業務と会計業務の違い、経理の仕事をするときのポイントを解説してきました。経理業務を効率化するためには、経理の仕事内容についてよく知る必要があります。
経理の仕事には基本のサイクルがあるため、年間スケジュールを把握することが大切です。
また、経理の仕事では、伝票や請求書など大量の書類が発生します。伝票や請求書を日々きちんと整理整頓することで、経理業務のミスを減らし、業務効率化につながります。