更新日:2023.09.29
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法人税は金額が大きいため、使用する勘定科目や仕訳方法を理解しておきたいという方は多いのではないでしょうか。
原則的に、仕訳時の勘定科目は法律で定められていないので、自由に設定可能です。ただし、確定申告時や税務調査の際にわかりやすいものである必要があるため、仕訳するタイミングや処理方法によって、自社のルールを決めておくことが大切です。ツールを使用している場合は、事前に何を指す勘定科目なのかを把握しておきましょう。
本記事では、法人が納税する税金の種類から、ケース別の仕訳方法例、使用する勘定科目について具体的に解説します。企業の経理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
法人が納付する税金の種類には「法人税・法人住民税・法人事業税・消費税」と、主に4つです。名称が似ている法人税と法人住民税、法人事業税は、すべてをまとめて「法人税等」と呼ばれます。
それぞれ税金を納める対象が国や都道府県・地方などと異なり、支払う税額も変わります。以下でくわしく解説していきます。
法人税とは、1年の所得金額に課される税金のことです。個人にかかる「所得税」をイメージすると、どのような税金かわかりやすいでしょう。
法人税は国税にあたり、普通法人や協同組合などに課せられ、事業の所得に対して課税金額が決まります。所得の基本的な考え方は、売上収入から原価や損失をマイナスした金額ですが、企業の会計上の金額と一致するとは限りません。税務調整後に算出された金額が、課税対象となる所得になるため、あくまでも目安として考えてください。
法人住民税とは、事業所がある自治体に納める税金のことで、地方税にあたります。各都道府県と市町村に納付しますが、東京23区のみ「法人都民税」と呼ばれ、税率も異なります。納めた税金の使い道は、公的サービスに活用し、地域を営むうえで必要な費用が補填されているのです。
また、法人住民税には都道府県民税と市町村民税の2つがあり、どちらも納付しなければいけません。税額は「法人税割」と「均等割」の合計額で求めることができます。法人税割は、法人税額に定められた税率をかけて算出します。均等割は、企業の資本金や従業員数によって異なるため、自社が事務所を構えている地域の税務署や、役所のホームページなどで確認しましょう。
法人事業税とは、各都道府県に事業所を構えている場合に課される税金のことで、都道府県民税にあたります。公共法人は対象外となりますが、基本的にすべての法人に納税の義務があります。ただし、法人の所得が赤字になるケースでは、法人事業税を納める必要はありません。
また、法人住民税は「構成員として地域社会を守るための税金」で、法人事業税は「事業に対して課される税金」という違いがあります。どちらも都道府県民税にあたりますが、税金を納める目的が異なります。
法人事業税の税額は、所得に法人事業税率をかけて算出します。税率は業種や所得金額によって変わるため、事前に確認しておきましょう。
消費税とは、商品やサービスの消費に課される税金のことです。消費者が購入時に支払った消費税を、法人が納付する仕組みの間接税にあたります。厳密には消費税は国税と地方税に分かれていますが、納付する際はまとめて支払います。
消費税は、資本金が1,000万円以上、もしくは売上高が1,000万円を超えた翌々年度から課税対象になるので注意が必要です。また、売上高が一時的に1,000万円を超えた場合は、該当する年度に消費税を納付しなければなりません。課税対象であることを忘れて、納付が遅れないようにしましょう。
原則として、勘定科目は法律で定められていないため、自由に決めることができます。ただし、貸借科目と損益科目の大まかなカテゴリは、明確に分ける必要があります。
加えて、法人税は一時的に負債を計上したり、前払いとして税金を納付するなど様々なタイミングで仕訳を行わなければいけません。そのため、金銭の流れがわかるような勘定科目を、使用タイミングによって使い分けます。
ここでは、法人税・法人住民税・法人事業税を仕訳する際は「法人税等」の勘定科目を使用して解説していきます。その他に必要な勘定科目も、仕訳の具体例を用いて解説しますので、参考にしてください。
前提として、法人税額は決算時に正しい納税額が決まります。決算から2ヶ月以内に納税するよう定められていますが、期日までは未払いであることを、一時的に計上しておかなければいけません。そのため、納付する法人税等を算出後は「未払法人税等」として計上しておきます。
法人税確定時:法人税は500,000円であった。
借方 |
貸方 |
||
法人税等 |
500,000 |
未払法人税等 |
500,000 |
上記の通り、税金納付時には負債として計上していた「未払法人税等」を、削除する仕訳をします。
法人税支払い時:計上していた法人税を納付した。
借方 |
貸方 |
||
未払法人税等 |
500,000 |
当座預金 |
500,000 |
税金納付時には上記のとおり、仕訳をします。
そもそも中間申告とは、納付すべきおおよその税額を見積もり、年の途中で税金の一部を前払いで納めることです。中間申告の対象となるのは、前年度の法人税額が20万円以上の企業になります。
中間申告時のタイミングでは「仮払法人税等」の勘定科目を使用します。「仮払」とされているのは、確定申告前で税額が決定していないためです。
中間申告時:見積もった法人税額を中間申告で納付した。
借方 |
貸方 |
||
仮払法人税等 |
500,000 |
当座預金 |
500,000 |
また、中間申告時の納税額が多い場合、確定申告で税額が決定後に還付されます。
決算から2ヶ月以内に法人税の確定申告を行うため、決算時点では法人税を納めるケースはほとんどありません。万一、決算時に法人税を納める場合は「仮払法人税等」「未払法人税等」の勘定科目を使用し、仕訳していきます。
決算時:中間納付で500,000円支払い、残り500,000円を納付した。
借方 |
貸方 |
||
法人税等 |
1,000,000 |
仮払法人税等 未払法人税等 |
500,000 500,000 |
中間納付をした納税額分を「仮払法人税等」、残りの金額分を「未払法人税等」で仕訳します。業績悪化により仮払法人税等の金額が法人税等を上回る場合は、「未払法人税等」を「未収金」として計上します。
確定申告が完了したら、翌事業年度に法人税を納付します。そのため「未払法人税等」として負債を計上した分を、削除する仕訳をします。
確定申告時:法人税が500,000円に確定したため、納付した。
借方 |
貸方 |
||
未払法人税等 |
500,000 |
当座預金 |
500,000 |
また、中間申告で多く納税した場合、確定申告後に還付金として返済されます。還付された際は、以下の通り仕訳をします。
還付時:中間申告時の納税額が多すぎたため、100万円が還付された。
借方 |
貸方 |
||
当座預金 |
1,000,000 |
未収法人税等 |
1,000,000 |
「未収法人税等」の勘定科目を使用し、還付額を計上します。利息である還付加算金は、還付金とは別に仕訳する必要があります。還付加算金は「雑収入」として計上しましょう。
還付時:還付加算金が300,000円振り込まれた。
借方 |
貸方 |
||
当座預金 |
300,000 |
雑収入 |
300,000 |
消費税の勘定科目も、法律で定められてはいません。ただし、税抜処理と税込処理で対応が異なるため注意が必要です。
以下で、ケース別に解説していきます。
消費税の税抜処理の場合は、「仮受消費税」「仮払消費税」を使用して仕訳していきます。
「仮受消費税」とは消費者から預かった消費税のことで「仮払消費税」とは消費税の負担額のことを指します。
仕入時:30万円(税込33万円)の商品を仕入れた。消費税は10%とする。
借方 |
貸方 |
||
仕入 仮払消費税 |
300,000 30,000 |
当座預金 |
330,000 |
売上時:30万円(税込33万円)の商品を売り上げ、代金は掛けとした。消費税は10%とする。
借方 |
貸方 |
||
売掛金 |
330,000 |
仮受消費税 売上 |
30,000 300,000 |
消費税の税抜処理の場合は、仕訳がとてもシンプルです。消費税額分も含めて金額を記載するため、項目が少なく済みます。納税する際は「租税公課」の勘定科目を使用し、仕訳していきます。
仕入時:30万円(税込33万円)の商品を仕入れた。消費税は10%とする。
借方 |
貸方 |
||
仕入 |
330,000 |
当座預金 |
330,000 |
売上時:30万円(税込33万円)の商品を売り上げ、代金は掛けとした。消費税は10%とする。
借方 |
貸方 |
||
売掛金 |
330,000 |
売上 |
330,000 |
決算時:中間納付時に消費税10万円を納税した。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
租税公課 |
100,000 |
当座預金 |
100,000 |
法人税の勘定科目は納税するタイミングによって、仕訳方法が異なります。使用する勘定科目は法律で定められていないため、自由に決めることができます。ただし、一般的には「未払法人税等」「仮払法人税等」を使用して仕訳することが多く、項目としてもわかりやすいため、参考にしてください。
また、法人が支払う税金には消費税も含まれており、消費者が支払った税金を代わりに納める必要があります。消費税は税抜処理・税込処理どちらで仕訳するかによって、記載方法が異なります。
法人税等や消費税を仕訳をする際は、自社がどのような処理方式を採用しているかを踏まえた上で、申告方法を理解しておきましょう。