更新日:2024.12.24
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インボイス制度の開始にともない、法人化を検討する個人事業主が増加しています。要因として個人事業主より法人化したほうが課税事業者になった際に、経費として計上できる範囲が広がるため節税になることが挙げられます。
しかし、法人化を検討する際に、事業に合った会社形態がわからず悩む事業者も少なくありません。結論、法人化の際におすすめなのが「合同会社」です。合同会社には、コストが抑えられることや経営者の意思決定の速度など、優れている特徴があります。
この記事では、合同会社が法人化に適している理由と、インボイス制度の注意点を解説します。
インボイス制度とは、消費税に関する請求書の記載や保存などの対応方法を定めたルールで「適格請求書保存方式」で作成した請求書を交付する方法です。この方式では、取引内容や消費税率・消費税額などの要件が記載された「適格請求書(インボイス)」を発行し、保存が求められます。
適格請求書は税務署に適格請求書事業者として、登録番号を付与された事業者のみ発行可能です。
関連記事:インボイス制度とは?対応するための必要な準備について簡単に解説
合同会社とは、事業の出資者と経営者が同一になる会社形態です。合同会社に似た名称の会社形態として挙げられるのは、以下の3つです。それぞれ異なる特徴を持っています。
合同会社の特徴としてランニングコストが抑えられることや、経営者の意思決定の速度などがあります。
※1:事業の倒産で借金が発生してしまった場合、全額を返済する責任がある社員
※2:事業の倒産で借金が発生してしまった場合、出資した金額を限度として返済する責任がある社員
参考:東京商工リサーチ「2023年の「合同会社」の新設法人、初の4万社超 他の法人格にはないメリットとインボイス制度が寄与か」
個人事業主から法人化するときには、合同会社がおすすめです。合同会社は、迅速な意思決定や、利益配分や組織設計などの柔軟さが大きな特徴です。
合同会社のメリットを知ることで、法人化のときに事業にあった最適な会社形態を選ぶ検討材料になるでしょう。
ここでは、インボイス制度による法人化で合同会社を選ぶメリットを5つ紹介します。
株式会社を設立する際に必要となる法定費用は、相場として20万以上します。一方、合同会社の場合は6万円程度まで抑えられるため、大幅にコストを削減することが可能です。
また、株式会社は毎年の決算期に官報掲載費として7.5万円ほどを支払いますが、合同会社では義務がないため、事業運営のランニングコストが抑えられます。
合同会社を運営していくなかで事業が成長し、さらなる拡大を目指すときに、株式会社に移行が可能です。最初は合同会社で設立し、事業の様子を見ながら段階的にステップアップを検討するとリスクを抑えられるでしょう。
一方で、株式会社で法人設立した場合、後から合同会社への変更が難しくなります。株式会社の場合は、出資する人と経営者が異なるため株主総会の意向に沿わないといけないためです。
合同会社の場合は出資者と経営者が同一なため、会社の意思決定権を持っている人が社内にいます。その結果、事業として意思決定するときのスピードが早くなります。
一方、株主会社の場合、重要事項の決定には株主総会の承認が必要です。株主総会を開催するには、出資者のスケジュール調整や会場手配などによる工数が発生するため、スピード感を持った意思決定が難しい傾向にあります。
合同会社には役員の任期に関する規定がないため、10〜20年続けていても役員の情報が変わらない限り修正の必要はありません。
一方、株式会社の場合は会社法322条に基づき、役員の任期を原則2年と定めています。しかし、非公開会社は任期を最長10年に延長可能です。しかし、どちらも役員に期限が設けられています。任期が終了すると、役員の再配置の手続きや重任登記などの作業が必要になるため、相応のコストが発生します。
参考: e-Gov法令検索「会社法」
合同会社の利益分配は出資比率に基づきますが、定款の修正によって利益割合を柔軟に変更可能です。たとえば出資額が少ない場合でも事業に対して、知識や技術を使用して多大な貢献してもらえている場合は、出資者に対して分配割合を高く調節できます。
一方、株式会社での利益分配は、原則として出資比率に基づいて同一の割合にしなければなりません。
原則、法人を設立すると最初の2年間は免税事業者になるため、消費税の納税が免除になります。しかし、免税事業者としての条件に満たしていない場合は、法人設立初年度から課税事業者として消費税を支払う義務が発生します。
法人後に免税事業者として運営したい事業者は、条件を理解しておくことが大切です。
ここでは、法人化してから免税事業者になる条件および注意点を解説します。
以下の条件に該当する場合、法人設立の初年度から課税事業者として扱われます。自社が該当しないか事前に確認しましょう。
なお、個人事業主として課税売上高が1,000万円を超えていても、法人設立後に換算されないため課税事業者の判定には影響しません。
参考:国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」
法人化すると、原則として2年間は免税事業者として消費税の支払いを免除できます。しかし、取引先からの要請により適格請求書の発行が必要となり、インボイスに登録する必要があるかもしれません。
インボイスに登録し、適格請求書発行事業者になると法人設立の初年度でも、課税事業者になるため2年間の免税期間が無効です。
免税事業者で継続も可能ですが、免税期間は取引先からの消費税請求ができなくなるため、事業の状況に合わせて登録するか検討しましょう。
法人化するタイミングとして以下の2つが挙げられます。
現在では登記をオンラインで対応しているため、申請してから最短1日ほどで法人化の手続きが完了します。しかし、準備期間を含めると数か月かかるでしょう。合同会社を設立させるために必要な手順は以下のとおりです。
利益が600万を超えて800万円が見えてきたり、取引先が増えてきたりしたタイミングで税理士や弁護士に相談すると良いスタートダッシュが切れるでしょう。
本記事では、合同会社が法人化に適している理由と、インボイス制度の注意点を解説しました。
合同会社は、設立や運営にかかるコストを削減や、迅速に意思決定できるなど多くの利点があります。課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年から課税事業者になるため、免税事業者として延長したい場合は、法人化がおすすめです。
しかし、事業によってはインボイス制度の登録が必要になり、法人化初年度から課税事業者として扱われるケースもあります。事業の状況に合わせて合同会社の設立やインボイス制度の活用を検討しましょう。