更新日:2025.12.02

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2023年10月から始まったインボイス制度。経過措置として認められている「80%仕入税額控除」も、2026年9月30日で終了し、10月からは50%へ縮小されます。控除率の変更を前に、今のうちに取引先ごとのインボイス登録状況や免税事業者との取引内容、現場ごとの制度対応状況を整理・確認しておく必要があります。しかし、実際に何をどう見直せばよいのか、漠然としている方も少なくありません。
本コラムでは、製造業の多拠点展開企業が今準備すべきポイントと、効率的な対応策を解説します。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となる制度です。インボイスには、発行事業者の登録番号や取引内容、税率ごとの消費税額など、法令で定められた項目の記載が求められます。
仕入先がインボイス発行事業者でない場合、原則として仕入税額控除ができなくなります。そのため、取引先がインボイス発行事業者かどうかの確認や、請求書の記載内容のチェックが重要となります。
現在は、インボイス未登録の免税事業者からの仕入れについて、仕入税額の80%を控除できますが、2026年10月からは50%に縮小されます。この変更により、免税事業者との取引が多い企業では、税負担が増加する可能性があります。
■猶予期間と控除割合
| 猶予期間 | 控除割合 |
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額の80% |
| 2026年10月1日~2029年9月30日 | 仕入税額の50% |
現在、免税事業者からインボイス登録を行った事業者や、今後インボイス登録を行う予定の割合を見ていきます。日本・東京商工会議所の調査によると、BtoB事業者の約8割がインボイス登録済で、未だに約2割が未登録のままのようです。
・制度導入前に免税事業者だった事業者の内、BtoB中心事業者のインボイス登録率:78.6%
・制度導入前に免税事業者だった事業者の内、BtoC中心事業者のインボイス登録率:24.6%
(出所:日本・東京商工会議所 中小企業におけるインボイス制度等に関する実態調査結果(2025年9月9日発表)
免税登録事業者の中で、今後も登録申請をしないB to B事業者の割合は半分程度がまだ残っているようです。
・今後も登録申請しないBtoB事業者:49.2%
・今後も登録申請しないBtoC事業者:72.7%
(出所:日本・東京商工会議所 中小企業におけるインボイス制度等に関する実態調査結果(2025年9月9日発表)
この状況が2026年10月を過ぎると、免税事業者の仕入れ税額控除が減額になり、仕入側にとってコスト負担の増加に直面してしまいます。そのため、今一度取引先事業者の見直しが必要です。特に、製造業は見直しすることを推奨します。
製造業は、全国に拠点を持ち、多数の仕入先や外注先と日常的に取引を行うため、インボイス制度対応が他業種以上に煩雑になりがちです。4つ特徴を挙げてみます。
製造業は工場や営業拠点が全国に分散し、取引先も多岐にわたるため、各拠点ごとにインボイス登録状況の把握や請求書の収集・管理が煩雑になりやすいです。
原材料や部品の仕入れ、外注加工など、免税事業者が混在しやすいため、取引先ごとにインボイス登録の有無を確認し、経過措置の適用可否を判断する必要があります。
仕入先ごとに請求書のフォーマットや記載内容が異なり、「適格請求書」の要件を満たしているかの確認作業が煩雑です。
各工場や支店で請求書処理が分散しやすく、現場ごとにインボイス制度の理解度や対応レベルに差が出やすいです。
免税事業者との取引が多い製造業では、今後の税額控除縮小に備え、「どの取引先がインボイス登録済みか」「免税事業者か」の棚卸が必要です。また、同時にやるべき重要事項として、インボイス制度の理解度のチェックもぜひ行ってください。
インボイス制度には例外や複雑なルールが多く、水道料金の検針票や電話料金の請求書など、経理担当者が誤認しやすいポイントが存在します。経理担当者の理解が不十分だと、誤った判断や不要な問い合わせが発生し、業務混乱の原因となります。
弊社が500人の経理担当者に実施したアンケートでは、以下のような項目で「十分に理解している」と答えた割合が低い結果となりました。
【調査レポートのダウンロードはこちら】経理担当者の8割が知らない インボイス制度の死角
免税事業者のインボイス登録状況を把握した上で、今後の税額控除縮小や登録事業者の割合を踏まえると、製造業においてはインボイス制度への対応がますます重要となります。しかし、全国に拠点を持つ製造業では、取引先や請求書の管理が複雑化しやすく、制度通りに正確な対応を行うには、多くの工数がかかるのが現状です。
インボイス制度への対応は、単なる事務作業の増加にとどまらず、現場ごとの運用や制度の差が業務効率に大きく影響します。特に製造業では、拠点ごとに異なる請求書の処理方法が存在し、全社で統一した対応が難しいという課題があります。ここからは、インボイス対応に工数が掛かり、コア業務の支障をきたさないために、インボイス制度対応を効率化するためのポイントを説明します。
効率化するポイントとしては、請求書処理とインボイス対応を平行して進めていくことです。順序立てて説明していきます。
インボイス制度対応のスキルや理解度にバラつきがあることを防ぐために、請求書の処理を決まった組織内で行うようにします。
WEB明細を貰えるように手配します。紙でしか受け取れないものはAI-OCRでスキャンしてデータ化します。データは一つのExcelやCSVに纏まった状態にしておきます。
データ化したものの中に、各請求が適格請求書の要件を満たしているかの判別ができる欄も設けるようにします。これによりインボイス対応も不要になります。
これらを実現するには、本部集約に運用を変えたりOCRの機械を導入するなどハードルが高く、届く請求書の種類全てを効率化する必要があり非現実的です。なので、まず、範囲を絞り、通信費と水道光熱費から進めてみることをおすすめします。理由は以下が挙げられます。
|
請求書=適格請求書でない場合がある |
適格請求書をWEBから別途ダウンロードする必要がある |
| 一通の請求書の複数の請求がある | 通信キャリアから届く請求書は、複数回線やサービスがまとめて記載されることが多く、部門別に分解する必要がある |
| 請求書フォーマットの違い | キャリアやサービスごとに請求書の形式が異なるため、標準化が難しい |
| 紙の請求書でしか届かない | サプライヤーの都合上、WEB明細の発行が不可の場合がある |
| 請求書フォーマットの違い | 特に水道は自治体ごとでフォーマットが異なる |
| 使用量を別途把握する必要 | 製造原価計算のために使用量も把握する必要がある |
それらを実現する方法として、外部委託も一つの手段として検討してみてはいかがでしょうか。インボイスの一括請求サービスは通信費と水道光熱費のインボイス制度対応を効率化するサービスを提供しています。
一括請求サービスを活用することで、製造業におけるインボイス制度対応を効率化することが可能です。通信費や水道光熱費の請求業務においては、以下のようなメリットがあります。
各工場や拠点から発生する通信費や水道光熱費の請求書をインボイスが一括受領し、立替払いを行ったうえで、月に一度まとめて請求処理を行います。これにより、拠点ごとに分散する請求業務が集約され、管理の手間やミスのリスクを軽減できます。
拠点別の請求データがExcelやCSV形式で提供されるため、各拠点の支払状況や請求内容を一目で把握できます。また、請求書は電子化されて届けられるため、紙ベースでの管理や手作業による入力作業が不要となり、デジタル化による業務効率化を実現します。
通信費については適格請求書として発行されるため、インボイス制度の要件を満たしており、税務対応も安心です。
水道光熱費は、各サプライヤーが適格請求書の要件を満たしているかどうかの判定結果がデータ上で明記されているため、個別に確認する手間を省くことができます。また、請求データには電気・ガス・水道の判別や使用量も記載しているので、原価計算に伴う製造間接費の把握もしやすくなります。
一括請求サービスを導入することで、インボイス制度対応の抜け漏れ防止や業務の効率化、コスト削減につながります。特に多拠点展開の製造業にとっては、全社的な経理業務の標準化と負担軽減へ寄与させていただきます。
はい。紙の請求書も弊社で受取り可能です。
受領した請求書は電子化され、保存や帳簿作成も統一フォーマットで簡素化されます。仕入税額控除に必要な「適格請求書の確認・判別」「保存」「帳簿作成」を率化できます。
お届けする請求データに「大阪工場」「生産管理」「PHS」の感じで3階層まで自由に名前の付与をできるので、部門別配賦にも役立てられます。
例:製造業向け3階層サンプル
多拠点・多取引先の製造業では、インボイス制度対応の対応が煩雑になりがちで、2026年10月から仕入税額控除が減額になることで、思わぬコスト増加の恐れがありますので今一度免税事業者の棚卸と理解度のチェックをぜひされてみてください。また、株式会社インボイスの一括請求サービスを活用することで、インボイス制度対応の抜け漏れ防止・コスト削減が可能となります。ぜひ、検討ください。
通信費の請求書なら「Gi通信」
水道光熱費の請求書なら「One Voice公共」