更新日:2024.11.28
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2023年10月1日より、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されました。この制度は、消費税の仕入税額控除の精度を高め、税収の安定化を図ることを目的としています。しかし、インボイス制度導入によって、企業の経理業務は複雑化し、対応に苦慮している事業者も多いのではないでしょうか?
本記事では、インボイス制度導入のメリット・デメリット、そして制度に対応するために必要なポイントをわかりやすく解説します。インボイス制度導入によって誰が得をするのか、どのような影響があるのかを理解することは、企業が適切な対応を検討する上で非常に重要です。
ぜひ本記事を参考に、インボイス制度への理解を深め、スムーズな対応を実現しましょう。
インボイス制度は、2023年10月1日から始まった、消費税の仕入税額控除の新しい制度です。正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。
従来の制度では、請求書に消費税額が記載されていれば、仕入税額控除を受けることができました。しかし、インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、以下の要件を満たした「適格請求書(インボイス)」を受け取る必要があります。
インボイス制度導入には、以下のようなメリットがあります。
インボイス制度を導入することで現行の区分記載請求書発行方式で感じるデメリットを払拭することができます。ここでは、インボイス制度を導入することで得られるメリットについて解説していきます。
電子インボイスを受領した場合、データ取り込み処理を行い、これらを支払データとして利用できるため、紙の請求書とは異なり、担当者による支払処理が必要ありません。
さらに、適格請求書を電子データで保存することで、請求書や領収書を保管するスペースも経費も必要としないため、ファイル名などで必要な情報をパソコン上で閲覧できます。また、タイムスタンプの付与やeシールによってデータ改ざんされるリスクを軽減させられます。
現在利用されている請求書では消費税率が混在しているため、確定申告や仕入税額控除を行う際にはそれぞれの税率に分けて消費税額を算出し直す必要がありました。
しかし、適格請求書では商品ごとの消費税率と消費税率ごとの消費税額が記載されるため、商品やサービスにかかった消費税額を正確に把握が可能となります。
インボイス制度では、消費税額と税率の明記が義務付けられているため、混合する税率の記載による税率の不正や人為的なミスの発生を大幅に軽減できます。
免税事業者が発行した請求書では、「仕入税額控除」を受けることができないため、取引先を他の適格請求書発行事業者に変更されるかもしれません。
しかし、適格請求書発行事業者の登録を行うことで、取引先から契約を継続される可能性が高まります。
インボイス制度は、消費税の仕入税額控除の精度を高め、税収の安定化を図ることを目的として導入されました。しかし、この制度によって、実際に得をするのは誰なのでしょうか?
主な受益者は以下の通りです。
立場 | 受益内容 |
---|---|
国・地方公共団体 | 消費税の不正還付が抑制され、税収が増加 |
適格請求書発行事業者 |
・取引先から優先的に取引してもらえる可能性が高まる ・消費税の還付手続きがスムーズになる</li></ul> |
消費者 | 消費税の税負担が公平になる</li><li>市場の健全化が促進される |
立場 | デメリット |
---|---|
免税事業者 | インボイスを発行できないため、取引先から取引を断られる可能性がある |
中小企業 | インボイス制度に対応するための事務負担が大きくなり、経営に影響が出る可能性がある |
インボイス制度は、導入によって様々な影響が生じることが予想されます。それぞれの立場の人が、制度の内容を理解し、適切な対応を行うことが重要です。
一方で、インボイス制度にも以下のようなデメリットがあります。
インボイス制度導入時に置ける注意点に留意し、インボイス制度施行開始まで経理体制を整えておくようにしましょう。
インボイス制度では、請求書の記載事項の追加、仕入税額控除を受けるための要件が変更されるので、経理担当者の業務が増えてしまいます。
インボイス制度導入による経理の複雑化は必然的に起こるので、事前にインボイス制度のセミナーに参加したり、企業で研修会を行なったりするなど、企業全体でインボイス制度の体制を整えるようにする必要があります。
インボイス制度の導入で、取引先が適格請求書発行事業者でなければ、仕入税額控除を受けることができません。そのため、消費税の控除額が減少してしまう可能性があります。また、適格請求書発行事業者になるには、課税事業者になる必要があります。
しかし、免税事業者が課税事業者になるには、今まで免除されていた消費税の納付義務が発生し、税負担が増えるため簡単に課税事業者になることは難しいとされています。
ただ、インボイス制度には経過措置があり、「適格請求書発行事業者以外(免税事業者)からの仕入も一定割合で控除できる」という内容が含まれています。経過措置期間10年間の期間があるものの、軽減税率が開始された2019年からカウントされるため、実際には2029年が経過措置終了予定となります。
インボイス制度を焦って導入するよりも一旦様子をみながら対策を行うようにしましょう。
免税事業者との取引では、適格請求書の発行ができず、仕入税額控除を受けられません。
そのため、不便に感じる取引先からは契約を打ち切られるリスクがあります。
免税事業者は経過措置を利用しながら状況を鑑みて課税事業者になるかを検討するべきだといえます。
インボイス制度の導入にあたって、不利益が生じないよう導入までに以下のことを準備しておきましょう。
インボイス制度を賢く利用するためにも、ぜひご覧ください。
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管轄の税務署宛に「適格請求書発行事業者登録申請書」を提出し、登録を済ませることでインボイスを発行できます。申請方法は「e-Taxによる電子申請」「書面を直接持参」「郵送」のいずれかで申請を行うようにしましょう。
申請受付は現在も行われています。今まではインボイス制度開始の2023年10月1日から適格請求書を発行するためには、2023年3月31日までに申請書を提出しておかなければなりませんでした。また、4月1日〜9月30日の提出でも「3月までの提出が困難な事情」を記載すれば、10月1日から適格請求書発行事業者として認められると定められていました。そのため、適格請求書を発行したい事業者は急いで申請書の提出準備をするか、事情を記載するかが求められていました。
しかし、令和5年度の税制改正大綱にて、事業者の準備状況に差があることなどを踏まえ、申請書に「困難な事情」の記載を求めず、4月以降の登録申請を可能とする緩和措置を講じました。事業者は以前より余裕を持ってインボイス制度対応への準備をすることができます。
課税事業者でないと適格請求書発行事業者登録を行うことができないため、仕入税額控除を受けたい免税事業者は課税事業者への登録を行う必要があります。
ただし、課税事業者になると免税されていた仕入税額を納税しなければならないので今よりも経費負担が大きくなることを前提に導入するようにしましょう。
現行の区分記載請求書から以下の3つの記載事項が追加されます。
これらのフォーマットを準備し、インボイスを発行できるよう準備しておきましょう。
インボイス制度導入で、経理業務はこれまでより複雑化になります。適格請求書受領後の処理の流れや保存方法等の業務フローを見直し、会社内で共有しておくようにしましょう。
インボイス制度に対応できる会計システムを新たに導入することで経理業務を効率化するようにしましょう。導入するにあたって、運用中の会計・請求書作成システムがインボイスに対応可能かどうかを確認しておくこと、電子帳簿保存方法の要件にも対応しているかを確認しておく必要があります。
インボイス制度を導入することで、請求書をデータで管理可能になるだけでなく、適切な消費税額を把握できるといったメリットを受けられます。導入によるコストはかかるものの、請求書のデータ改ざん・不正を防止できるので会社にとっても大きなメリットとなるでしょう。
2023年に10月に制度が開始されるものの、2029年までの経過措置を活用して適格請求書が発行できるよう社内の体制を整えていく必要があります。
今回の記事で解説したインボイス制度におけるメリットやデメリットを参考にインボイス制度導入の準備を行なっていきましょう。