更新日:2024.12.24
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消費税には複数の税率(標準税率・軽減税率)が存在するうえに、請求書に記載する際の方法として消費税を含む「内税」と、含まない「外税」の2種類があります。とくに、内税で表記した場合の消費税の計算方法はやや複雑で、戸惑う経理担当者も少なくありません。
請求書における消費税額を正確に計算できるようにするためにも、内税と外税それぞれの計算方法を理解しておくことが重要です。
本記事では、インボイス制度の内税表示について、外税との違いや計算方法をあわせて解説します。
内税と外税は商品やサービスの価格表示方式で、消費税を含めて表示するかどうかによって区別されます。
インボイス制度が導入された現在、事業者は顧客に対し、料金をわかりやすく伝えたり正確な税務処理をおこなったりする必要があるため、内税と外税の違いを正しく理解することが重要です。
ここでは、内税と外税の違いについて、基本的なポイントを整理しつつ解説します。
内税とは、表示価格に消費税が含まれる表示方式です。たとえば、商品価格が1,000円で消費税が100円の場合、「1,100円」と表示されていれば内税で表示されていることになります。
なお、国税庁は次のような表示方式などを内税での表示としています(※)。
(※)参考:国税庁「「総額表示」の義務付け」
関連記事:インボイス制度における内税の請求書の書き方とは?外税との違いも解説
外税とは、本体価格と消費税を別々に記載する表示方式です。この方法では、商品の本体価格が一目で確認でき、取引金額の内訳がわかりやすいという利点があるため、多くの請求書で採用されています。
なお、後述する「総額表示義務」に対応する際には、外税表示の価格にくわえて、税込金額をあわせて記載するなどの工夫が必要です。
「総額表示義務」とは、事業者が不特定かつ多数の消費者に対してあらかじめ提示する価格を表示する際に、税込価格で表示することを義務付けるものです(※1)。
これまで認められていた税抜価格表示は事業者にはいくつかのメリットがある一方で、消費者が実際の支払額を即座に把握しづらいという課題も抱えていました。この状況を改善するため、消費税法63条(※2)にもとづき、2021年4月1日から総額表示義務が施行されました。
なお、総額表示義務はインボイス制度とは異なるため、混同しないよう注意しましょう。
(※1)参考:国税庁「「総額表示」の義務付け」
(※2)参考:e-Gov 法令検索「消費税法 第六十三条」
総額表示義務は、事業者が不特定かつ多数の消費者に対してあらかじめ提示する価格に適用される制度であり、特定の相手に交付する請求書や領収書などはその対象には含まれません。そのため、請求書に税抜価格を記載するか、税込価格を記載するかは取引当事者間で選択できます。
ただし、インボイス制度では適格請求書(インボイス)を発行する際は正しい消費税額の記載が求められるため、内税で表示して消費税額を明確にすることが好ましいといえます。
インボイス制度では、請求書に記載する金額は内税表示が好ましいです。ただ、内税表示は義務ではないため、場合によっては外税表示を使うこともあるでしょう。
事業者としては両方の表示方式を扱うことが想定されるため、内税と外税で異なる計算式を理解し、正確な計算方法を身につけることが重要です。
ここでは、内税・外税それぞれの消費税の計算方法を解説します。
内税で表示されている請求金額から消費税額を計算する場合、「税込価格 ÷(1 + 消費税率)× 消費税率」を使います。
たとえば、商品価格が「15,000円(税込)」で適用税率が10%の場合、消費税額は「15,000円÷(1 + 0.1)×0.1」で求めることが可能です。
計算結果は「1,363.63636364円」となり、発生した小数点を四捨五入や切り捨てなどの任意のルールにしたがって処理しましょう。四捨五入する場合、消費税額は「1,364円」です。
なお、この場合の税抜価格は「15,000円 - 1,364円=13,636円」となります。
外税で表示されている請求金額から消費税額を計算する場合、「税抜価格 × 消費税率」で計算します。
たとえば、商品価格が「20,000円(税抜)」と表示されている場合、この金額には消費税が含まれていません。適用税率が10%の場合、消費税額は「20,000円 × 0.1 = 2,000円」で求められます。小数点が発生した場合は、四捨五入や切り捨てなど、任意のルールで処理しましょう。
なお、この場合の税込価格は「20,000円(税抜価格) + 2,000円(消費税額) = 22,000円」です。
インボイス制度における内税計算では、税込価格をもとに消費税額を算出する必要があります。計算ミスを防ぎ業務の効率化を図るためには、計算サイトやツール、アプリを活用する方法がおすすめです。
計算サイト |
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計算ツール |
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計算アプリ |
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インボイス制度では、消費税の計算に際して注意すべきポイントがあり、これらを正しく理解していないと、税務上のトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、インボイス制度における消費税計算の注意点を解説します。
端数処理には「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」の3つの方法があり、どの方法を採用するかは事業者の裁量に任されています。しかし、請求書内で端数処理の方法が統一されていない場合、会計書類の整合性が崩れ、請求金額に矛盾が生じたり、帳簿や記録の一貫性を損なったりする恐れがあります。
こうした問題を防ぐためには、社内ルールを統一し、すべての担当者が同じ端数処理をおこなうよう、明確なルールの設定が重要です。
また、端数処理の方法をあらかじめ取引相手と取り決めておくことで、スムーズな取引を維持できるでしょう。
ある取引先では内税表示の計算、別の取引先では外税表の計算を採用するように、計算方法に違いがあると、誤った金額が算出される可能性があります。また、複数の計算方法を採用すると、その分扱う計算式の数が増えるため、請求書作成や会計処理に余計な時間がかかるでしょう。
これらの問題を避けるため、マニュアルやシステムの整備をおこない、すべての取引先で計算方法を統一することが重要です。
本記事では、インボイス制度の内税表示について、外税との違いや計算方法をあわせて解説しました。
総額表示義務の施行によって、事業者が不特定かつ多数の消費者に対してあらかじめ提示する価格は、税込で表示する必要が生じました。インボイス制度においては明確なルールはない一方で、多くの事業者は内税表示の請求書を発行します。
必然的に内税に触れる機会が多くなるため、事業者は内税表示における消費税の計算方法を理解しておくことが重要です。その際、計算ツールやアプリを適切に取り入れることで、正確な税務処理を実現し、インボイス制度に対応したスムーズな事業運用ができます。