更新日:2024.12.24
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インボイス制度が施行され、いままで手書き領収書を使用していた事業者の場合、記載するべき事項が増え、対応に悩む場合もあるでしょう。ほかにも、手書き領収書を適格請求書にするためには、事前の登録申請をおこない、発行後の控えを保管する方法も考える必要があります。
本記事では、インボイス制度施行後の手書き領収書の発行方法や注意点を解説します。発行後にトラブルが発覚しないよう、事前に確認するべき内容を理解しておきましょう。
インボイス制度では、必要な項目が記載されていれば手書き領収書も適格請求書(インボイス)として扱われます。さらに、手書き領収書を発行する機会が多い小売店や飲食店は、記載項目が簡略化された適格簡易請求書が発行できます。
適格簡易請求書では、適格請求書と比べて「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が不要になるうえ、「税率ごとに区分した消費税額 等」または「適用税率」のいずれか一方の記載で問題ありません。製品やサービスの税込金額が記載されていれば、税抜金額の記載が必要なくなり、手書きでも負担が少ない点が魅力です。
なお、適格簡易請求書の対象事業は以下のとおりです。
ただし、手書き領収書を使用する場合でも登録番号をはじめとした必須事項の記載を誤らないよう注意しましょう。
インボイス制度に対応した手書き領収書を発行するためには、事前に税務署へ適格請求書発行事業者の申請をおこない、領収書のテンプレートを変更しておく必要があります。手書き領収書を適格請求書として発行するときに焦らないよう、事前にやるべきことを確認しましょう。
ここでは、インボイス制度に対応した手書き領収書を発行する方法を解説します。
インボイス制度で適格請求書を発行するためには、税務署へ適格請求書発行事業者の申請が必要です。
申請は、適格請求書を発行したい日より15日前におこなう必要があります。たとえば、2024年2月16日から適用されたい場合は、2024年2月1日までに申請が必要です。
税務署へは郵送やe-Taxを利用すれば申請できるため、スムーズに申請できる方法を選んで、適格請求書発行事業者の登録をおこないましょう。
手書き領収書をインボイス制度に対応させるためには、以下の項目を加えたテンプレートを用意しましょう。
事業によっては適格簡易請求書への変更が可能ですが、対象事業にあてはまらない場合は手書き領収書でも必要項目を満たす必要があります。手書きで記載する場合は、ミスがないようなるべく必須項目を事前に記載できるテンプレートを作成しましょう。
インボイス制度では、手書き領収書でも適格請求書とした場合は控えの保存が義務付けられています。
保存方法に決まりはないため、発行時に2通用意したり、複写用紙を使用していたりすれば問題ありません。もしくは、まったく同じ内容でなくても、インボイスを交付した取引内容が確認できれば控えになります。
また、適格簡易請求書を発行した場合は、レジのジャーナルも写し扱いになります。
手書き領収書を適格請求書にするためには、記載事項を満たして正しい処理を実行する必要があります。発行後にミスに気付かないよう、事前に注意するポイントを理解しておきましょう。
ここでは、インボイス制度後に手書き領収書を発行する際の注意点を解説します。
手書き領収書を適格請求書にする際は、消費税が10%と8%の商品を別々に合計金額と税額を記載する必要があります。手書きする場合は消費税ごとの合計金額をわかりやすくして、記載が漏れないよう注意しましょう。
記載項目に不備がある場合、取引先が仕入税額控除を受けられなくなり、損をする可能性があります。複数の税率を扱う事業者が手書き領収書を発行する場合は、確認できる体制を整えておくと安心です。
インボイスに対応した手書き領収書を発行する場合は、端数処理を税率ごとにおこないましょう。
適格請求書が導入されるまでは、商品ごとの端数処理が可能でした。しかし、適格請求書導入後は端数処理が税率ごとに1回までと定められているため注意しましょう。なお、1円以下の端数は切り捨てが一般的です。
また、端数処理の回数は、適格請求書、適格簡易請求書でも変わりません。
適格請求書発行事業者は、取引先から適格請求書の発行を求められた場合には発行義務があります。適格請求書の発行方法は手書き領収書以外でも問題ないため、迅速な対応が難しい場合は電子領収書を検討しましょう。
ただし、電子領収書を発行する場合は事前に用意しておく必要があります。いままで手書き領収書しか扱っていなかった場合は、インボイス制度の登録申請をおこなったタイミングで用意しておきましょう。
手書き領収書でインボイスを交付する場合は、登録番号をはじめとした記載内容を誤らないよう注意が必要です。
万が一内容に誤りがあると、取引先が仕入税額控除を受けられず、再発行を求められる可能性があります。忙しいタイミングで求められてもミスなく発行するために、登録番号のスタンプを用意したり、事前に記載できる部分を記入したりしておく方法もおすすめです。
最後に、インボイス制度後の手書き領収書に関するよくある質問に回答します。
まず、インボイス制度によって手書き領収書が廃止されるわけではありません。必要な内容が記載されていれば、手書き領収書でもインボイスの交付は可能です。
ただし、一部事業者では対応が難しいことを理由に手書き領収書を廃止にしている企業もあります。すべての企業が手書き領収書の発行を廃止しているわけではないため、その点は注意しましょう。
手書き領収書でインボイスを交付する場合、登録番号がないと適格請求書の要件を満たせません。
このことから、取引先が適格請求書発行事業者の場合、仕入税額控除を受けるために登録番号が記載された手書き領収書の再発行を希望する可能性があります。適格簡易請求書発行事業者は適格請求書の発行を求められた場合拒否できないため、再発行しましょう。
手書き領収書でインボイスを交付する場合、税率の記載がないと適格請求書の要件を満たしません。手書き領収書には、代金が発生した商品やサービスの税率を記載しましょう。
なお、対象となる商品やサービスが10%のみであれば、軽減税率の対象品目がない旨を記載する必要はありません。一方で、手書き領収書に記載された品目が8%のみの場合は、軽減税率の対象であることの記載が必要です。
また、軽減税率の対象品目とそれ以外が混在している場合に税率の記載がないと、適格請求書の要件を満たさないため注意しましょう。
本記事では、インボイス制度施行後の手書き領収書の発行方法や注意点を解説しました。
インボイス制度施行後も、手書き領収書は問題なく発行できます。ただし、適格請求書にする場合は記載内容の漏れがないよう注意が必要です。
記載内容の漏れをなくすためには、手書き領収書を発行するスタッフへの教育の徹底や、事前に記載できる部分を記入しておくことがおすすめです。必要であれば、電子領収書を導入しておくことで、さらに業務軽減ができるでしょう。