更新日:2024.07.01
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2023年10月からスタートしたインボイス制度ですが、制度に対応した領収書の書き方がわからずお困りの事業者の方も多いのではないでしょうか。
インボイス制度では、金銭のやり取りの証明としてだけでなく、買手(受取側)が仕入税額控除を受けるための書類としても領収書が必要になります。そのため、売手(発行側)は正確な領収書を発行し、買手との信頼関係を築くことが重要です。
インボイス制度の「適格簡易請求書」に対応した領収書の書き方でおさえるべき項目は以下の通りです。
ただし、インボイス制度に対応した領収書を発行できるのは、飲食店などの特定の業種に限られる点に注意が必要です。今回の記事では、インボイス制度の「適格簡易請求書」に対応した領収書の書き方について、売手と買手の両方の視点から詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、インボイス制度への理解を深めてください。
▼この記事でわかる内容
インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれています。適格請求書は売手(発行側)が買手(受取側)に対し、正確な適用税率や消費税額等を伝える書類のことを指します。
買手から発行を求められた場合、売手は原則的に適格請求書を交付しなければいけません。また売手は、発行した請求書の写しを保存します。買手になった際には、仕入税額控除を受けるために売手である登録事業者から発行された適格請求書が必要です。また買手は、発行された請求書の帳簿および保存をおこないます。
適格請求書を交付するためには、納税地を所轄とする税務署長へ登録の申請が必要です。審査後に適格請求書発行事業者となり、登録番号や情報が記載された登録通知書が送られてくる仕組みです。登録番号は、以下の書類に記載されます。
インボイス制度に対応する書類は適格請求書だけでなく、適格簡易請求書もあります。次の章では適格簡易請求書について詳しく解説しているので、チェックしておきましょう。
適格簡易請求書は、書類の交付を受ける事業者の氏名の記載が不要など、適格請求書の記載事項を簡略化させた書類のことを指します。適格簡易請求書は適格請求書と同じく、仕入税額控除として適用できます。
インボイス制度を導入すると、適格簡易請求書に対応した領収書やレシートを発行する必要があります。適格簡易請求書のほうが、記載情報が少ない点から発行側の手間が省けるといったメリットがあります。
また買手も、適格請求書の発行を催促することなく、適格簡易請求書の要件を満たした領収書やレシートを保存するだけで問題ありません。双方にとってスムーズな取引となるため、適格簡易請求書の領収書の書き方について知っておきましょう。
「登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」が加えられていると、インボイス制度に対応した領収書となります。そこでこの章では、インボイス制度の「適格簡易請求書」に対応した領収書の書き方について以下の項目を解説します。
記入漏れやミスがあると、修正した領収書を再度発行しなければいけません。手書きの場合は特に注意が必要です。記載事項を一つひとつよく確認して、作成していきましょう。
領収書を発行した事業者の氏名または名称、登録番号を領収書に記載します。法人番号がある課税事業者の場合は「T(ローマ字)+法人番号(数字13桁)」、法人番号がない場合は「T(ローマ字)+13桁の固有番号」が登録番号です。
一度付番された登録番号は変更できません。13桁の数字にはマイナンバー(個人番号)は使用せず、法人番号とも重複しない事業者ごとの番号となります。なお、請求書等への表記に当たり、半角・全角は問いません。
【登録番号の記載例】
引用元:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
取引年月日は、基本的に支払いや受け取りがあった日付を書きます。西暦、和暦のどちらでも問題ありません。西暦や年号は「2023/5/1」「令和5年5月1日」など、書き方を統一し、正確に記入しましょう。
買手と取引した内容を記載します。レシートには明細が書かれていますが、領収書にはありません。具体的に何の支払いなのかがわかるよう、但し書きとして記載します。
記載する際は「お食事代として」「お土産代」などと書きましょう。軽減税率の対象品目にはわかりやすいよう「※」や「☆」といった記号を記載します。
税率ごとに区分して合計した対価の額を、税抜もしくは税込の金額で記載します。ポイントは、8%と10%の軽減税率に分けて合計金額を記載するところです。たとえば、税込の場合、軽減税率8%で5,000円の商品が2点(10,000円)と、税率10%で6,000円の商品が2点(12,000円)あった場合、記載は以下のようになります。
8%対象 |
計10,800円 |
10%対象 |
計13,200円 |
正しく記載しなければ、仕入税額控除の対象外となるので気を付けましょう。
税率ごとに区分した消費税額等または適用税率を記載します。適格簡易請求書の場合、消費税額と適用税率どちらか片方の記載、もしくは両方記載することもできます。記載例は以下のとおりです。
消費税額のみを記載した場合 |
|
2,160円(内消費税額160円) |
|
3,300円(内消費税額300円) |
適用税率のみを記載した場合 |
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8%対象 |
2,160円 |
10%対象 |
3,300円 |
消費税額と適用税率の両方を記載した場合 |
|
8%対象 |
2,160円(内消費税額160円) |
10%対象 |
3,300円(内消費税額300円) |
領収書を適格簡易請求書とするのに、消費税額と適用税率は重要な情報となります。計算や記載方法を間違えないようにしましょう。
適格簡易請求書を発行できるのは、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う小売業、飲食店業などの特定の業種です。
適格簡易請求書を発行できる業種は以下のとおりです。
引用元:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
上記の業種に該当していなければ、適格簡易請求書を発行できないため注意しましょう。
インボイス制度に対応した領収書の作成には、以下のようにいくつかポイントがあります。
トラブルを防ぐためにも、事前に本章の内容を把握しておきましょう。
インボイス制度における領収書は、3万円未満でも保存・発行が必要です。ただし、3万円未満の取引を行う以下のような事業の場合、適格請求書の交付義務が免除されます。
引用元:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
そのため、電車代や自動販売機の飲料代など領収書や請求書の受領が困難な場合は、3万円未満の取引でも発行する必要がありません。買手は帳簿だけで仕入税額控除を受けられます。
適格請求書に係る電磁的記録は、書面で適格請求書を交付する場合と対応は同じです。たとえば、電子メールやネット上などで行った、請求書や領収書に相当する書類(電子データ)を保存します。税務調査等の際に、提示・提供できるようにしておきましょう。受け取った場合だけでなく、送った場合にも保存が必要です。
2023年12月31日までに行う電子取引は、プリントアウトして保存する義務がありました。しかし電子帳簿保存法の改正により、2024年1月からは要件に従った電子データによる保存が可能となります。電子でやりとりした請求書や納品書などの書類を保存する際は「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」といった改ざんを防止するための措置をとっておきましょう。
記載事項を満たしていれば、複数の書類を合わせて1つの適格請求書にできます。たとえば、請求書と数枚の納品書がある場合、請求書に必要事項の一部を記載し、残りの項目を納品書に記載すれば適格請求書として認められます。
ただし、納品書番号を記載するなど、それぞれの書類の関連が明確でなければいけません。また、事務所の賃貸といった都度請求書や納品書が不必要な契約の場合、銀行が発行した振込金受取書といった書類が必要です。
インボイス制度では、適格請求書に記載する消費税額の計算方法が定められています。取引に係る税抜金額または税込金額を税率ごとに区分し、合計額に対して10%、8%の端数処理を行います。消費税額等の端数処理は「1つの適格請求書につき、税率の異なるごとにそれぞれ1回」行いましょう。端末処理の方法は「四捨五入」や「切上げ」など、任意の判断で選定できます。
切捨て注意すべきポイントは、個々の商品ごと(税抜金額)に消費税額を算出してから、それぞれを合算できない点です。「10%」「8%」の商品が混在する場合は、一度税率ごとに金額を合計した後、端数処理を行って消費税額を計算しましょう。
売手は、インボイス制度に対応した領収書の形式に変更する必要があります。新たに追加されたのは以下の3つです。
3万円未満の取引でも領収書を発行しないと、買手が仕入税額控除を受けられないので気を付けましょう。
また、適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写しおよび提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります。適格請求書の写しや電磁的記録については、課税期間末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地またはその取引に係る事務所で保存しなければいけません。誤りがあった場合は、修正した適格請求書を交付しましょう。
仕入税額控除を受けるには、適格請求書と適格簡易請求書に該当する領収書でなければいけません。
そのため、領収書が適格請求書と適格簡易請求書に「該当するか・しないか」といった仕分けが必要です。
その後、受け取った領収書に不備や誤りがないか確認します。「取引日時点で売手が適格請求書発行事業者になっているか」「消費税区分といった記載要件を満たしているか」などをチェックしましょう。売手が登録事業者かを確認したい場合、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べられます。
また、買手も売手と同じく、領収書を原則7年間保存する必要があります。ただし、買手が法人かつ赤字がある事業年度の場合は、最大10年間保管しなければいけません。
インボイス制度における領収書関連にはいくつかポイントがあり、発行側と受取側で対応が異なるため注意が必要です。記入漏れやミスによって大きなトラブルにつながるかもしれません。また、全て手作業で行うと時間やコスト、手間がかかってしまいます。
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