更新日:2026.09.30

ー 目次 ー
インボイス制度に対応した請求書(適格請求書)には、登録番号や税率ごとの消費税額など、法律で定められた記載事項があります。
結論からいうと、適格請求書の法定記載事項は6項目です。支払期日や振込先、請求書番号、数量・単価などは請求実務ではよく使いますが、適格請求書としての必須項目ではありません。
この記事では、2026年時点の制度に基づき、インボイス対応の請求書に必要な項目、書き方、消費税額の端数処理、発行・保存時の注意点を記載例とともに解説します。
インボイス(適格請求書)とは、売手が買手に対して、適用税率や消費税額等を正確に伝えるための請求書・納品書・領収書などです。
法律で定められた記載事項を満たしていれば、書類の名称が「請求書」である必要はありません。
本則課税で消費税を申告する買手が仕入税額控除を受けるには、原則として一定事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が必要です。
また、適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られます。
買手自身が適格請求書発行事業者であることは、仕入税額控除の一般的な要件ではありません。登録が必要なのは、適格請求書を交付する売手側です。
通常の適格請求書には、次の6つの事項を記載します。
| No. | 法定記載事項 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 適格請求書発行事業者の氏名または名称・登録番号 | 登録番号は「T+13桁」 |
| 2 | 課税資産の譲渡等を行った年月日 | 一定期間の取引をまとめて記載することも可能 |
| 3 | 取引内容 | 軽減税率対象品目を含む場合はその旨も記載する |
| 4 | 税率ごとに区分して合計した税抜価額または税込価額・適用税率 | 8%・10%など税率ごとに分けて合計する |
| 5 | 税率ごとに区分した消費税額等 | 端数処理は1つの適格請求書につき税率ごとに1回 |
| 6 | 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 買手の会社名・氏名などを記載する |
請求書番号、発行日、支払期日、振込先、数量、単価、担当者名、住所などは、取引管理や支払いのために記載することが多い項目です。
ただし、これらは上記6項目とは別の「任意項目」です。
実務では、法定記載事項と支払いに必要な情報を分けて配置すると、発行側・受領側とも確認しやすくなります。
請求書
請求書番号:2026-0831-001
発行日:2026年8月31日
〇〇株式会社 御中【必須⑥】
株式会社△△【必須①】
登録番号:T1234567890123【必須①】
東京都〇〇区〇〇1-2-3
取引年月日:2026年8月31日【必須②】
| 取引内容 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 商品A ※【必須③】 | 1 | 10,000円 | 10,000円 |
| サービスB【必須③】 | 1 | 20,000円 | 20,000円 |
8%対象 10,800円(税込)/適用税率8%【必須④】
10%対象 22,000円(税込)/適用税率10%【必須④】
8%対象消費税額 800円【必須⑤】
10%対象消費税額 2,000円【必須⑤】
ご請求額 32,800円
支払期日:2026年9月30日【任意】
振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通 1234567【任意】
※は軽減税率(8%)対象品目
適格請求書には、適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号を記載します。
登録番号は「T」から始まる13桁の数字です。法人の場合は法人番号を基礎とした番号となり、法人番号を持たない個人事業者等には別の13桁の番号が割り振られます。
住所は取引実務上記載するのが一般的ですが、適格請求書の法定記載事項そのものではありません。
商品を販売した日やサービスを提供した日など、課税資産の譲渡等を行った年月日を記載します。
ただし、毎月の取引をまとめて月次請求する場合などは、課税期間の範囲内で一定期間内の取引についてまとめて適格請求書を作成することもできます。
複数取引をまとめる場合でも、必ずしも明細ごとにすべての取引年月日を列挙しなければならないわけではありません。対象期間を明確にする方法も認められています。
何の商品・サービスを提供したのかが分かるように取引内容を記載します。
8%の軽減税率対象品目が含まれる場合は、「※は軽減税率対象」など、対象品目であることを確認できる表示が必要です。
数量や単価は請求内容を確認しやすくするために有用ですが、それ自体が適格請求書の法定記載事項として必須というわけではありません。
8%対象と10%対象の取引が混在する場合は、それぞれの税率ごとに税抜価額または税込価額を合計し、適用税率を記載します。
複数税率の商品・サービスをまとめて一つの金額だけで記載しないようにしてください。
| 税率 | 対価の額 | 適用税率 |
|---|---|---|
| 軽減税率対象 | 10,800円(税込) | 8% |
| 標準税率対象 | 22,000円(税込) | 10% |
適用税率ごとに消費税額等を記載します。
消費税額等に1円未満の端数が生じる場合、端数処理は1つの適格請求書につき、税率ごとに1回行います。
たとえば10%対象の商品が複数ある場合、各商品について個別に消費税額を計算して端数処理し、その税額を単純に合計して適格請求書の消費税額とする方法は認められていません。
税率ごとの合計額に基づいて消費税額を計算し、税率ごとに1回だけ端数処理します。
1円未満の端数について、切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを採用するかは事業者が決められます。請求書発行システムを利用する場合は、税率ごとに1回の端数処理となる設定か確認しておきましょう。
通常の適格請求書では、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称を記載します。
法人であれば会社名、個人事業者であれば氏名・名称など、取引先を特定できる表記にします。
なお、後述する適格簡易請求書では、受領者の氏名・名称を省略できます。
「インボイス対応の請求書」と聞くと、支払期日や振込先まで法律上必須と思われることがありますが、これらは適格請求書の法定記載事項ではありません。
| よく記載する項目 | インボイスの法定必須項目? |
|---|---|
| 支払期日 | いいえ |
| 振込先 | いいえ |
| 請求書番号 | いいえ |
| 発行日 | 取引年月日とは別の項目。発行日それ自体は必須ではない |
| 数量・単価 | いいえ |
| 住所 | いいえ |
| 登録番号 | はい |
| 税率別の対価額・適用税率 | はい |
| 税率別の消費税額等 | はい |
ただし、支払期日や振込先などは請求・入金管理に欠かせない情報です。
「法定必須ではない=記載しなくてよい」と考えるのではなく、自社の請求業務に必要な任意項目としてテンプレートへ含めておくとよいでしょう。
適格請求書の6つの記載事項は、必ず1枚の書類だけにすべて記載する必要はありません。
請求書と納品書など、複数の書類について相互の関連性が明確であり、書類全体を見れば必要事項を確認できる場合は、それらを合わせて適格請求書として扱えます。
| 書類 | 記載する内容の例 |
|---|---|
| 納品書 | 取引年月日、商品・サービスの内容、軽減税率対象品目である旨など |
| 月次請求書 | 登録番号、税率ごとの対価の合計額・適用税率、税率ごとの消費税額等など |
この場合は、請求書番号や納品書番号などを利用して、どの書類同士が対応しているのか確認できるようにしておきます。
小売業、飲食店業、タクシー業など、不特定多数の者に対して課税資産の譲渡等を行う一定の事業者は、「適格簡易請求書(簡易インボイス)」を交付できます。
適格簡易請求書では、通常の適格請求書より記載事項が簡略化されています。
| 項目 | 通常の適格請求書 | 適格簡易請求書 |
|---|---|---|
| 書類を受け取る事業者の氏名・名称 | 必要 | 不要 |
| 適用税率 | 必要 | 消費税額等とのいずれか一方で可 |
| 消費税額等 | 必要 | 適用税率とのいずれか一方で可 |
コンビニエンスストアや飲食店などのレシートが、簡易インボイスとして利用される代表的な例です。
適格請求書を交付できるのは、適格請求書発行事業者として登録を受けた事業者だけです。
一方、仕入税額控除を受ける買手自身まで適格請求書発行事業者へ登録しなければならないわけではありません。
本則課税で仕入税額控除を受ける買手は、原則として必要事項を記載した帳簿と適格請求書等を保存します。
簡易課税制度や、適用要件を満たす2割特例・3割特例など、実際の仕入税額を積み上げない計算方法では、消費税額の計算上、個々の仕入先のインボイスを保存する必要はありません。
発行した適格請求書に誤りがあると判明した場合、売手は修正した適格請求書等を交付します。
買手が受領した適格請求書へ、売手の関与なく自分だけで追記・修正して仕入税額控除を受けることは原則として認められていません。
ただし、現在は次のような方法も認められています。
売手から修正した適格請求書を交付してもらう
当初の適格請求書との関連性を明確にした修正書類を売手から交付してもらう
買手が修正事項を記載した仕入明細書等を作成し、売手の確認を受けて保存する
発行側・受領側のどちらで誤りを見つけた場合も、相手方と内容を確認し、適正な証憑を保存できる状態にしましょう。
本則課税で仕入税額控除を受ける買手は、原則として帳簿と適格請求書等を保存します。
また、適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書の写し、または提供した適格請求書に係る電磁的記録を保存しなければなりません。
消費税法上の保存期間は、その受領・交付等の日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から原則7年間です。
電子メールやクラウドサービスなどで請求書を電子的に授受した場合は、電子帳簿保存法の電子取引データ保存にも対応する必要があります。
適格請求書発行事業者ではない免税事業者等から行った課税仕入れについては、原則として適格請求書による全額の仕入税額控除はできません。
ただし、制度移行のための経過措置が設けられています。
令和8年度税制改正により、2026年10月以降の控除割合と適用期間が次のように見直されました。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 0% |
さらに、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、一のインボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円を超える場合、超えた部分について経過措置を適用できません。
インボイス制度では、登録番号、税率別の対価の額、税率別の消費税額等、端数処理など、請求書作成時に確認する項目が増えています。
請求件数が多い場合は、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応した請求書発行・受領システムを利用すると、入力ミスや保存漏れを減らしやすくなります。
システムを選ぶ際は、単に適格請求書を作成できるかだけでなく、次のような機能も確認しましょう。
登録番号を取引先情報へ登録・管理できるか
税率ごとの金額・消費税額を自動計算できるか
税率ごとに1回の端数処理へ対応しているか
修正履歴や請求書の再発行履歴を管理できるか
電子取引データを電子帳簿保存法に沿って保存できるか
会計システムや入金管理と連携できるか
大量の請求書発行・郵送をまとめて効率化
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支払期日は適格請求書の法定記載事項ではありません。
ただし、請求・入金管理のため実務上は記載しておくのが一般的です。
住所は適格請求書の法定記載事項ではありません。
発行者の氏名または名称と登録番号など、法律で定められた6項目を満たしていれば、住所がないことだけを理由に適格請求書として認められないわけではありません。
できます。
複数の書類に記載された事項を合わせて必要事項を満たし、書類同士の関連性を明確に確認できれば、複数書類全体で適格請求書の要件を満たせます。
仕入税額控除を受けるためだけに、買手自身が適格請求書発行事業者へ登録する必要はありません。
適格請求書を交付する売手側には登録が必要です。
買手側は、本則課税で仕入税額控除を受ける場合、原則として適格請求書等と一定事項を記載した帳簿を保存します。
買手が売手の確認なく、受領した請求書へ自分だけで登録番号等を追記・修正することは原則として認められていません。
売手へ修正インボイスの交付を依頼するのが基本です。
一方、買手が修正事項を記載した仕入明細書等を作成し、その内容について売手の確認を受ける方法も認められています。
インボイス対応の請求書で最も重要なのは、適格請求書の6つの法定記載事項を漏れなく満たすことです。
発行者の氏名・名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等、買手の氏名・名称を確認しましょう。
一方、支払期日、振込先、請求書番号、数量・単価、発行者の住所などは、請求業務を円滑にするための任意項目です。法定記載事項と実務上必要な項目を分けてテンプレート化すると、記載漏れや誤解を防ぎやすくなります。
適格請求書は1枚の書類だけで要件を満たす必要はなく、相互の関連性が明確な請求書・納品書等を組み合わせることもできます。
また、2026年10月からはインボイス未登録事業者からの課税仕入れに係る経過措置が70%控除へ移行します。2028年10月から50%、2030年10月から30%へ縮小し、2031年10月以降は経過措置による控除ができなくなります。
請求書の様式だけでなく、取引先の登録状況、自社が本則課税・簡易課税等のどの方法で申告しているかも含めて、インボイス対応の運用を整えておきましょう。