更新日:2024.12.26
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インボイス制度がはじまり、請求書にまつわるルールが大幅に変更されました。
この制度によって、請求書のフォーマット変更や適格請求書の保存などの対応が必要となり、経理でやることが増える可能性があります。また、インボイス制度の対応を誤れば、消費税の過大・過少申告となり、罰金の支払いのリスクにつながるかもしれません。
したがって、インボイス制度下で経理がやることをきちんと理解する必要があります。
本記事では、インボイスで経理がやることについて、業務への影響と対応時の注意点に触れながら解説します。
インボイス制度とは、2023年10月1日から開始された事業者に適切な消費税額を納付してもらうための制度です。このインボイス制度の施行にともなって、変更される経理業務がいくつかあります。
ここでは、インボイス制度によって変わる経理業務について、解説します。
インボイス制度では、従来の区分記載請求書等保存方式から、「適格請求書等保存方式」に変更されます。変更後の方式では、以下の3つの項目が新たに追加されます。
これらの項目を満たしていなければ、インボイス(適格請求書)として扱えないため注意が必要です。
インボイス制度では、取引先から交付されたインボイス(適格請求書)を、書面の場合はその写し、電子データの場合はデータを帳簿とともに保存しなければなりません。インボイスの保存期間は、取引した年の課税期間の末日の翌日から2か月経過した日から、さらに7年間です。
なお、電子データを保存する場合は、電子帳保存法の要件を満たさなければなりません。
2019年10月1日からの増税にともない、軽減税率制度が開始されたため、標準税率(10%)と軽減税率(8%)の複数税率となりました。インボイス制度では、インボイスの記載や計算を定めており、税率ごとに算出して合計の消費税額を計算しなければなりません。
また、この際の端数処理は、1つのインボイス(適格請求書)につき、税率ごとに1回しかおこなえません。
インボイス制度は取引をおこなう両者がインボイス(適格請求書)発行事業者でなければなりません。そのため、取引先がインボイス制度に登録しているかどうかの確認は大切なポイントです。なお、確認する方法としては以下のものが挙げられます。
インボイス制度の影響で、経理がやるべきこともいくつか変化してきました。既存の経理業務とあわせて、変更された対応事項を理解しておかないとトラブルが生じる可能性があるため、注意が必要です。
ここでは、インボイス制度で経理がやるべきことについて、解説します。
インボイス制度を利用するためには、事前に税務署長に登録申請をおこなって、適格請求書発行事業者の登録を受けなければなりません。登録申請にはe-Taxが使えて、登録が完了すると「T+法人番号」または「T+13桁の番号」の登録番号が通知されます。
なお、登録を受けた事業者は課税事業者となるため、消費税の申告・納税が必要です。また、取引先から求められた場合は適格請求書の発行が義務づけられます。
インボイス制度では、取引先がインボイス(適格請求書)発行事業者かどうかを「適格請求書発行事業者公表サイト」などで確認をする必要があります。また、登録状況は事業者の選択で変更される可能性があるため、定期的に最新の登録状況を確認して、自社の取引先リストで正しい情報を管理しましょう。
経過措置とは、免税事業者から仕入れをおこなった場合でも仕入税額控除が受けられる措置です。2029年までの経過措置期間中は、免税事業者からの仕入があった場合に、仕入税額に対してどれくらいの割合が控除対象になるのかを考慮しなければなりません。
期間中の控除の割合は、以下のとおりです。
インボイス制度に対応したシステムを導入することで、経理業務がより効率化します。制度へ対応するためには、以下の機能が必要です。
また、電子インボイスを扱う場合は、電子帳簿保存法に準じた保存機能も必要です。自社の取引形態や業務フローに合わせてシステムの選定や更新をおこないましょう。
インボイス制度の開始で、請求書の保存方式が適格請求書等保存方式に変更されました。
適格請求書として認められるためには、以下の項目を追加する必要があります。
請求書のフォーマットにこれらの項目を含んでいれば、その様式や書類の種類は問われません。
インボイス制度における経理業務には、いくつか注意点があります。この注意点を把握しておかないと、制度を活用できなかったり、取引先との間にトラブルが発生したりする可能性があります。
ここでは、インボイス制度における経理の業務対応時の注意点について、解説します。
インボイス制度では、仕訳前に「インボイスかそうでないか」を判別する必要があります。従来の請求書に加えて新たに追加された項目が書いてあるかを確認して、取引先が適格請求書発行事業者に登録されているかも確認しましょう。
取引先がインボイス発行事業者に登録しているかどうかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。登録番号を入力すると、事業者の登録状況を即座に確認でき、取引の仕入税額控除が可能かを判断できます。
インボイス制度では、消費税額の計算方法が異なります。従来は商品やサービスごとに端数処理ができましたが、これからは1枚の適格請求書につき、税率ごとに1回しか端数処理ができません。
そのため、請求書の消費税額計算が正しいかを念入りにチェックしましょう。
インボイス制度では、取引に関する書類(証憑)ごとに以下の消費税区分を正確に分類する必要があります。
正確な分類のために、経理システムを活用して効率的に対応しましょう。
インボイス制度では、取引に関する書類の保管対象を念入りに判断しなければなりません。以下の取引の場合は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が受けられます。
これら以外の取引は、適切に適格請求書を保管しましょう。
インボイス制度では、帳簿と適格請求書を7年間保存する必要があります。電子データの場合は、容量に余裕のあるサーバーや専用のクラウドストレージ、会計システム内での保存が効果的です。
データの誤った削除を防ぐためのセキュリティ対策もしておきましょう。
インボイス制度では、税額の計算方法を「割戻し計算」と「積上げ計算」から選べます。業種ごとに、納付する消費税が減額されたり事務負担が軽減されたりなどの有利となる計算方法が異なるため、従来の計算方法を見直して、自社に最適な方法を検討しましょう。
また、正確な計算のためにシステムを対応させるのも重要です。
本記事では、インボイスで経理がやることについて、業務への影響と対応時の注意点に触れながら解説しました。
インボイス制度がはじまって、経理は対応した請求書の確認や管理、経過措置への対応が求められるようになりました。より複雑になった経理業務をミスなく効率的に進めるために、インボイス制度に対応した会計ソフトや請求書作成サービスなどのシステム・サービスの活用を検討しましょう。