更新日:2024.07.05
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近年、業務のペーパーレス化や脱ハンコを実現するため、請求書をPDFや電子データで発行する企業も増加しています。しかし、電子請求書を発行することや、それをメールに添付して送付することに法的な問題はないか不安を抱える方もいるでしょう。
本記事では請求書をPDF等の電子データの形式で送付する方法や、電子請求書の保存方法について解説していきます。
そもそも、取引における請求書の発行には法的義務がありません。そのため、発行する請求書をどの媒体で作成するか、またどのような方法で送付するかについては、取引参加者の任意で決めることが可能です。仮に請求書を用いない取引であったとしても、双方の合意があればその取引は真正に成立したとみなされます。
しかしながら、実際の取引では税務処理の関係から請求書を発行することが一般的です。請求書には発行や送付に関する法的規定はありませんが、一方で税務関連書類として適切な書式であること、また取引相手に配慮した内容であることが求められます。
なお、区分記載請求書発行は任意であり、取引の当事者間で合意があれば従来の請求書書式で発行しても構いません。
また、2023年10月にインボイス制度が適用されると、ここまでの7項目に加えて下記の2項目、計9項目の記載が義務化されます。(※)
インボイス制度の正式名称は適格請求書等保存方式 です。(※)インボイスとは消費税の複数税率に対応した請求書の書式(適格請求書)であり、インボイス制度下では適格請求書であることが仕入税額控除の要件となります。
なお、自社でインボイスを発行するためには、事前に税務署へ申請して適格事業者としての認可を取得しなければなりません。企業は、インボイス制度が施行されるまでに適格事業者としての認定を取得しておきましょう。
※出典:国税庁. 「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(入手日付2023-07-13).
※出典2:国税庁. 「No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた」.
(入手日付2023-07-13)
しかし、押印には書類の信用性を向上させるといった一定の効果も期待できます。また、企業によっては社内の規定で請求書への押印を必須としている場合もあるため、法的義務はなくとも押印をしておくことが望ましいでしょう。
なお、電子データの請求書へ押印する場合、電子印を使用する他、簡易的に印影の画像データを貼り付けるといった方法もあります。
請求書を始め、企業に保存が義務付けられる書類の多くは電子帳簿保存法により電子データ保存が認められています。ただし、データ保存した書類が有効と認められるためにはさまざまな要件があり、企業はそれらを遵守しなければなりません。ここでは請求書を電子データ保存する方法を解説します。
電子取引データ保存は2024年1月より完全に義務化されます。2023年12月31日までは電子データの請求書を紙媒体に印刷して原本保存する方法も認められていますが、2024年以降はやり取りした請求書の電子データそのものを原本として保存する措置を取らなければなりません(※)
電子帳簿保存法では、書類の電子取引データ保存を実施するに当たり、真実性の要件と可視性の要件を満たすことと規定しています。(※)
【真実性の要件】※以下の内いずれかの要件を満たす※出典:国税庁.「電子取引データの保存方法をご確認ください」, (入手日付2023-07-13).
※出典:国税庁. 「電子帳簿保存法が改正されました」,(入手日付2023-07-13).
請求書等のスキャナ保存は、2022年に施行された電子帳簿保存法の改正によりタイムスタンプ等の要件が大きく緩和されました。現在ではスキャナ保存の実施に当たり税務署の事前承認等も不要となっています。ペーパーレス化を推進するためにも、請求書をはじめとする取引関連書類のスキャナ保存に取り組んでみましょう。
電子帳簿保存法の改正内容やタイムスタンプについては、こちらの記事でも解説しています。
・関連記事:「いまさら聞けない、電子帳簿保存改正のポイント」
一方、書類を電子データ化することで、紙媒体の書類を原本として保管する必要はなくなります。業務のペーパーレス化により、保管コストの他、印刷コストや郵送コストといった諸経費の削減も可能です。
電子帳簿保存法の規定が守られていない場合、青色申告の承認が取り消されてしまう可能性もあります。また、データを改ざんする等の悪質なケースでは、法人税の重課税等の罰則が科せられます。税務署からの指摘を受けないよう、電子帳簿保存法が規定する書類のデータ保存要件を正確に把握しておくことが重要です。
なお、電子帳簿保存法については以下の記事でも詳しく解説しています。
・関連記事「中小企業が知っておきたい電子帳簿保存法についての基礎知識と対策」
請求書は取引相手に金銭の支払いをお願いするための書類であり、書類の送付にあたっては相手への配慮も大切です。ビジネスのペーパーレス化が進んでいるとはいえ、従来の紙媒体ベースでの書類管理を主としている企業も少なくありません。
紙媒体の請求書から電子データ形式の請求書への切り替えを実施する場合は、取引先に対して事前の周知を行いましょう。また、取引先の都合も考慮し、請求書の電子化への対応が難しい場合は従来の紙媒体での請求書を送付するなど、柔軟な対応が必要です。