更新日:2022.11.07
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産業界全体のDXが進む中、書類の保管方法についても法的な整備が進められています。中でも「電子帳簿保存法」はたびたび改正が加えられており、2022年1月から適用の改正では、タイムスタンプ要件の緩和等が決定しました。
これによりこれまで「電子保存のハードルが高い」と感じていた企業も、電子データによる保存を検討しやすくなるでしょう。
本記事では、電子帳簿保存法改正後のタイムスタンプ要件の変更やタイムスタンプの概要、さらには法改正後の電子保存のポイントを紹介します。
電子帳簿保存法の最新の改正は、2022年1月から適用になりました。これによりタイムスタンプが不要となるケースが出てきたといわれますが、どのような点がこれまでと異なるのでしょうか?
具体的に見ていきましょう。
[参照]JIIMA 公式サイト
https://www.jiima.or.jp/
【注1】総務省 国民のための情報セキュリティサイト
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/basic/structure/05.html
1.電子データのハッシュ値を取得
2.ハッシュ値を時刻認証局に送信
3.時刻認証局がハッシュ値に時刻情報を加えたタイムスタンプを発行
4.電子データと共にタイムスタンプを保管
ハッシュ値とは、電子データごとに異なる数値を持つ暗号のような数列です。
データを検証する際にハッシュ値が一致していれば、データの改ざんはなかったと証明できます。
基本的には、自社で作成した書類や帳簿は、全て電子保存の対象となります。
また、電子データを保存する外部記憶媒体について、法律の規定はありません。データ保存にどの媒体を活用するかは、データ保存義務者に任されています。
●税務署長の事前承認が不要
●優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置が整備
●最低限の要件を満たす電子帳簿も電子保存可能
これまでは、電子帳簿等を電子データで保存する場合は、所轄税務署への届出が必要でした。このたびの改正では、事前承認は不要と明記されています。
また国が「優良な電子帳簿」とする要件を満たした事業所については、過少申告加算税の軽減措置が取られます。これは、過少申告をした際に課せられる過少申告加算税について、通常10~15%のところが5%に低減される措置です。
一方優良な電子帳簿の条件を満たさない最低限の要件を満たす電子帳簿も、保存要件が大幅に軽減されました。新たに定められた保存要件は「関連書類および見読可能装置の備付け」と「ダウンロードの求めに応じること」の2点のみです。
●請求書
●見積書
●納品書
●領収書など
●タイムスタンプ要件の緩和
●ペナルティの明確化
●検索要件の緩和
スキャナ保存では、先述したタイムスタンプ要件の緩和が大きなポイントとなっています。
また、違法行為をした場合のペナルティについてもはっきりと明記されました。
スキャナ保存および電子取引の記録に関して隠蔽や仮装があった場合は、「通常課される重加算税の額に当該申告漏れ等に係る本税の10%に相当する金額を加算した金額」が課されることとなります。
これは、要件緩和に伴って電子保存の不正やミスが多発するのを防ぐのが目的です。
この他検索要件も緩和され、検索機能は「取引年月日その他の日付、取引金額および取引先」のみでよしとされています。
加えて、税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合は、検索機能を備えなくてもよいことになりました。
[参照]国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
このうちタイムスタンプは、「取引日時」「取引の事実」を担保しますが、取引した人までは保証できません。「誰が取引をしたのか」を記録として残すため、電子署名を使います。
●タイムスタンプ要件の緩和
●検索機能の緩和
●電子取引記録の仮装・隠蔽があった場合は10%の重加算税
●電子データでやり取りしたものは電子データでの保存が必須
タイムスタンプや検索機能・重加算税については、スキャナ保存の項目と同様です。
唯一異なるのは、「電子データでやり取りしたものは電子データでの保存が必須」という点です。
これまでは、電子契約で交わした契約書を紙に出力して保存することが認められていました。しかし法律改正後は、これが認められません。電子契約した契約書等は、全て電子データでの保存が必要となります。
今回の法改正で、担当者への負担は大幅に軽減されます。これまで電子保存に積極的になれなかった企業も、ぜひ導入を検討してください。
また今後社会のDXが進むとともに、ペーパーレス化は加速すると考えられます。企業間取引で不利にならないよう、早めに電子化への対応を検討しましょう。
新しい電子帳簿保存法の完全移行は2024年からですから、今から社内体制やシステムを整えれば、十分に間に合うはずです。