更新日:2024.12.27
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経理業務は紙の帳簿での作業から、PCで入力する会計ソフトの時代へと様変わりしています。会計ソフトを利用することで担当者の負担は軽減され、間違いも起こりにくくなります。効率化や省力化を目指して、どんなシステムがいいのかと悩んでいる方もいるでしょう。
多くの企業の経理部などで使われている株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)の「勘定奉行」は、国内の代表的な財務会計システムで「勘定奉行におまかせあれ」というキャッチコピーのCMで有名です。知名度だけでなく、全国の66万社で導入されている実績のある製品です。
OBCは、勘定奉行を中心に、給与や人事などのソフトウェアを「奉行」シリーズとして展開しており、企業に必要なさまざまな業務を網羅できるERP(統合基幹業務)システムを構築しています。
経理業務の初心者にとって、勘定奉行は導入しやすいと言われていますが、これから会計ソフトを導入しようと考えている方は、どこに着目すればよいのか分からないかもしれません。 そこで本記事では、勘定奉行の選び方や使い方について解説します。勘定奉行について知りたい方や勘定奉行を使う上でのメリット、デメリットについて知りたい方は参考にしてください。
奉行シリーズは、1993年から販売されているソフトウェアのシリーズで、勘定奉行はその中核製品です。顧客の声を製品に反映させながら、さまざまな業務に対応できる機能を磨き上げてきました。
特に直感的に操作できることを強みとしており、マニュアルを見なくてもほとんどの入力操作が可能です。また、自動仕訳機能によって、業務にあまり慣れていない方でも項目を選ぶだけで記帳が簡単にできるのも特徴です。
仕訳入力・自動起票で入力作業を最小限に抑えるほか、帳簿だけでなくカスタマイズされた会計レポートもボタンひとつで作成することができ、業務を大幅に自動化します。
また、多くのパートナー企業と提携して、きめ細かく充実したサポートを提供しているのも大きな特徴です。ユーザーにはソフト導入時から専任スタッフが付き、基本的な操作から業務にあわせた運用方法までをアドバイスします。また、その後も永年サポートが続きます。
加えて、制度改正やIT環境の変化などにも迅速に対応し、安心して利用できます。
会計ソフトを初めて導入する初心者の方は、ソフトを使いながら初歩的な機能を覚え、自社の運用したい方針を専任スタッフと一緒に構築していくのがおすすめです。
勘定奉行シリーズには「パッケージ型」と「クラウド型」があります。前者はPCにインストールして利用するソフトウェア製品で、後者はインターネット環境があれば利用できるサービスです。クラウドは専用のハードウェアが不要で、料金もサブスクリプション型であることなどから、近年急速に拡大しています。
また、パッケージ型には、1台のPCにインストールして使うスタンドアロン版と、データをサーバーに保存して複数のPCから利用する「NETWORK Edition(ネットワーク版)」があります。
一方、クラウド型はプログラム処理とデータ保存はすべてOBCが用意したサーバーで行われ、ユーザーは好きなPCやスマートフォンなどからアクセスして利用します。
また、それぞれに利用規模に応じた製品が用意されており、機能と価格体系が異なっています。中堅・中小企業までを対象とする勘定奉行には以下のようなものがあります。
パッケージ版
品製 |
勘定奉行11(中堅・中小企業向け) |
勘定奉行J11(小規模企業・個人事業主向け) |
価格・料金 |
250,000円から。NETWORK Editionは1,120,000円(3ライセンス)から |
40,000円/年(初年度登録費20,000円) |
機能 |
基本機能とその付加機能(ドリルダウン機能、独自の会計帳票作成など)のほか |
基本機能(帳簿入力、仕訳入力、決算・消費税申告書の印刷、Office連携など) |
クラウド版
「勘定奉行クラウド」(基本機能のシリーズのみ)
製品 |
iEシステム |
iJシステム |
iAシステム |
仕訳伝票明細件数 |
30,000まで |
100,000まで |
300,000まで |
料金(利用者、専門家各1ライセンス) |
年額60,000円から (初期費用不要) |
年額96,000円から (初期費用50,000円) |
年額160,000円から (初期費用50,000円) |
機能 |
・取引入力・自動起票 ・領収書入力 ・管理会計帳票 ・仕訳申請・承認 ・決算・消費税申告/納税 ・リモート共有 など |
同 |
同 |
勘定奉行は、企業の規模や業種、業務内容に合わせて選べるように、3つのシリーズが用意されています。それが以下の通りです。
勘定奉行i11は、中堅・中小企業向けのERPパッケージです。財務会計、販売管理、購買管理、在庫管理など、企業の基幹業務を幅広くサポートします。
勘定奉行i11の特徴は以下の通りです。
勘定奉行i11は、企業の成長に合わせて柔軟にシステムを拡張できるため、長期的な利用に適しています。また、法改正への対応やセキュリティ対策も万全であり、安心して利用できます。
勘定奉行クラウドは、クラウド型の会計ソフトです。インターネット環境があれば、いつでもどこでも利用できます。
勘定奉行クラウドの特徴は以下の通りです。
勘定奉行クラウドは、導入コストを抑えたい企業や、テレワークを導入している企業におすすめです。また、クラウドサービスのため、システムの運用管理の手間を軽減できます。
奉行J11シリーズは、大企業向けのERPパッケージです。グループ経営や海外拠点の管理など、複雑な業務に対応できます。
奉行J11シリーズの特徴は以下の通りです。
奉行J11シリーズは、グローバル展開している企業や、複雑な業務プロセスを持つ企業におすすめです。また、高度なセキュリティ機能により、企業の重要な情報を保護します。
勘定奉行を選ぶ際には、いくつかポイントがあります。以下のような点から検討していきましょう。
クラウド型とパッケージ型の大きな違いは、まず初期費用です。パッケージ型はユーザーが専用のハードウェアを用意し、購入したソフトウェアをインストールして利用します。また、パッケージ型では最初にソフト価格全額を支払うので、導入時の費用が高くなります。
一方で、手入力での入力方法が複数あるなど、運用方法に応じた設定や画面のカスタマイズがしやすいのがメリットです。
クラウド型は、インターネットにアクセスする環境さえあればすぐに利用でき、スマートフォンから記帳できるアプリも用意されています。また付属させる機能の多さに応じた料金体系なので、小さく始めて規模を拡大していく予定の企業に向いています。
初期費用をできるだけ抑えたい方はクラウド型、操作の自由度を求めている方はパッケージ型を選ぶのが良いでしょう。
勘定奉行の各製品を選ぶときには、事業規模も大きなポイントです。一般的に中堅・中小企業は「勘定奉行11」や「勘定奉行クラウド」、小規模企業であれば「勘定奉行J11」が推奨されています。
勘定奉行11や勘定奉行クラウドは会計の中上級者に便利な高度な機能が利用できます。一方、勘定奉行J11は初心者の操作しやすさなどを重点に設計されています。
ただし、顧問税理士が勘定奉行のソフトを使用している場合、互換性の観点から注意が必要です。税理士と同じものを使用したほうがやり取りもスムーズになるため、顧問税理士を置いている企業は、相談してから導入することをおすすめします。
前述のとおり、初期費用はパッケージ型で高く、クラウド型で安くなります。確かに最初はクラウド型のほうが導入しやすいのですが、年間で費用が発生し続けることも忘れてはいけません。
ある程度の規模の安定したビジネスで、カスタマイズの要求も高いとなると、パッケージ型で、より自社に合ったシステムを構築するほうが、最終的にお得になることも考えられます。
パッケージ型かクラウド型かの選択は、求める機能、初期費用とランニングコスト、ビジネスの規模や成長見込みなどから総合的に判断することをおすすめします。
勘定奉行は、企業の規模やニーズに合わせて選べる柔軟な料金プランが特徴です。ここでは、勘定奉行の料金体系について、導入形態、プラン、オプションの観点から詳しく解説します。
勘定奉行の料金は、主に以下の3つの要素で構成されます。
勘定奉行には、主に2つの導入形態があります。
導入形態 | 説明 |
---|---|
クラウド型 | インターネット経由で勘定奉行を利用する形態です。サーバーやソフトウェアの管理が不要で、初期費用を抑えられるメリットがあります。 |
オンプレミス型 | 自社のサーバーに勘定奉行をインストールして利用する形態です。自社で自由にカスタマイズできるメリットがありますが、サーバーやソフトウェアの管理が必要になります。 |
勘定奉行には、企業の規模や業種に合わせて選べる様々なプランがあります。
先に紹介した3種類の料金をまとめると以下のようになります。
システム | 初期費用 | 月額料金 | 年額料金 | 対象 |
---|---|---|---|---|
iEシステム | 無料 | 7,750円~ | 93,000円~ | 仕訳の自動化等で生産性向上したい方 |
iAシステム | 50,000円 | 19,500円~ | 234,000円~ | 仕訳の自動化等で生産性向上したい方 |
iBシステム | 60,000円 | 23,500円~ | 282,000円~ | 多角的に会計情報を分析したい方 |
勘定奉行は、導入から運用開始まで、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、勘定奉行をスムーズに使い始めるための手順を詳しく解説します。
勘定奉行を始めるまでの手順は、以下の通りです。
勘定奉行の初期設定では、企業情報や会計期間、勘定科目などの基本的な情報を登録します。これらの情報は、正確に入力することが重要です。入力ミスがあると、後々修正が必要になる場合があり、業務に支障をきたす可能性があります。
初期設定で行うことは、主に以下の通りです。
勘定奉行を導入する前に、既存の会計ソフトやExcelなどで管理していた会計データを勘定奉行に移行する必要があります。データ移行は、手動で行うこともできますが、データ量が多い場合は、専用のデータ移行ツールを利用すると便利です。
データ移行ツールを利用するメリットは、以下の通りです。
データ移行が完了したら、実際の業務を想定した運用テストを行います。運用テストでは、勘定奉行の各機能が正常に動作するか、データが正しく入力・処理されているかなどを確認します。運用テストで問題点が見つかった場合は、修正を行い、再度テストを行います。
運用テストは、本番環境と同様の環境で行うことが重要です。本番環境とは異なる環境でテストを行うと、本番環境で問題が発生する可能性があります。
運用テストで問題がなければ、勘定奉行を本稼働します。本稼働後は、定期的にデータのバックアップを取り、システムのアップデートを行うなど、適切な運用管理を行うことが重要です。
勘定奉行を本稼働する前に、従業員への研修を行うことも大切です。従業員が勘定奉行の使い方を理解していないと、業務に支障をきたす可能性があります。
勘定奉行の導入は、以下のような手順で行います。
利用にあたっては、購入したライセンスに沿った使い方をすることが大事です。
勘定奉行は、経理業務の効率化と正確性を向上させるための様々な機能を備えています。ここでは、勘定奉行が実装している代表的な機能について詳しく解説します。
勘定奉行は、日々の業務から決算、そして経営判断までをサポートする機能を幅広く提供しています。主な機能は以下の通りです。
勘定奉行は、日々の取引入力作業を効率化するための機能を豊富に備えています。例えば、銀行取引データやクレジットカード利用明細を自動で取り込み、仕訳を起票する機能があります。また、AIを活用して過去の取引データから仕訳を推測し、自動入力する機能も搭載されています。これにより、手入力によるミスを減らし、作業時間を大幅に短縮することができます。
勘定奉行は、会計帳簿や決算書、試算表、月次損益計算書など、様々な会計帳票を自動作成することができます。また、経営分析に役立つ分析帳票や、部門別やプロジェクト別の収益管理に役立つ管理会計帳票も作成可能です。これらの帳票は、ExcelやPDFなどの形式で出力できるため、社内での情報共有や経営会議での資料として活用できます。
勘定奉行は、決算や消費税申告に必要な書類の作成をサポートする機能も充実しています。決算整理仕訳の提案や、消費税申告書の作成、電子申告に対応しており、複雑な手続きをスムーズに進めることができます。また、納付書の作成や電子納税にも対応しているため、税務関連業務にかかる手間を大幅に削減できます。
勘定奉行は、標準機能に加えて、様々な拡張機能を追加することができます。例えば、販売管理システムや人事給与システムとの連携機能、電子請求書発行機能、ワークフロー機能などがあります。これらの拡張機能を利用することで、勘定奉行を自社の業務プロセスに合わせてカスタマイズし、より効率的な運用を実現できます。
勘定奉行は、会計帳票や請求書などの帳票を自動作成し、メールやクラウドストレージで共有することができます。これにより、紙の帳票を印刷・郵送する手間を省き、ペーパーレス化を推進できます。また、クラウド上で帳票を共有することで、社内外の関係者との情報共有もスムーズに行えます。
勘定奉行は、請求書や領収書などの証憑を電子データとして保管することができます。紙の証憑をスキャンして取り込むだけでなく、メールで受信したPDFファイルなども直接保管できます。証憑は、検索機能を使って簡単に探し出すことができ、監査や税務調査の際にもスムーズに対応できます。
勘定奉行は、電子帳簿保存法に対応しており、電子データとして保管した証憑にタイムスタンプを自動で付与することができます。また、スキャナ保存にも対応しているため、紙の証憑をスキャンして電子データとして保存することができます。これらの機能により、電子帳簿保存法に準拠した証憑管理を実現できます。
勘定奉行は、同じ奉行シリーズの他の製品と連携することができます。例えば、販売管理システムの「販売奉行」や人事給与システムの「給与奉行」と連携することで、データの一元管理や業務プロセスの自動化を実現できます。これにより、業務効率をさらに向上させることができます。
勘定奉行は、初心者が使うにあたっていくつかのメリットがあります。
勘定奉行は、作業負担を軽減し、ミスを減らすための機能を備えています。例えば、「ふせん機能」や「入力忘れお知らせ機能」といった入力作業を支援する機能は、会計初心者には親切なポイントです。
また、クラウド型では全バージョンに自動仕訳機能が付いているため、会計業務にかかる時間を短縮できます。
会計業務では、なにかと税理士の力を借りることがあります。こうした相談の際、クラウド型の勘定奉行はネットワーク経由でデータの共有が可能なので、正確なデータのやり取りが簡単にできるのがメリットです。
また、データ共有によって、入力間違いの発見や業績の確認もしやすくなります。
勘定奉行は国内のほぼ全ての金融機関と連携しており、約1,200の金融機関が提供しているインターネットバンキングなどのWebサービスに対応しています。
金融機関のWebサービスから入出金明細を取り込むことで、口座情報を一元化した状態で自動仕訳が可能です。セキュリティも複数の暗号化方式を採用し、取引データを安全に管理しています。
勘定奉行は優れた会計ソフトですが、いざ使おうとなると以下のような課題も出てきます。デメリットも把握した上で、自身が使うソフトとして適しているかを吟味しましょう。
「勘定奉行11」や「勘定奉行クラウド」は豊富な機能や充実したサポートを持つ半面、価格設定が他社製品よりも高めです。
クラウド型は初期費用が少ない分、パッケージ型よりも安価ですが、年額で利用料が発生します。継続的に利用すると、さらに高くなる可能性があります。
勘定奉行は豊富な機能を強みとしていますが、これらの多くは中小企業以上をターゲットにしたものです。小規模企業や個人事業主では不要なケースも多いので、そうした方は「勘定奉行J11」を検討するのが良いでしょう。
勘定奉行J11は小規模企業向けの会計ソフトで、最低限の機能のみを備えています。パッケージ型でありながら、料金は年間利用型なので初期費用も抑えられます。
勘定奉行は、直感的な操作と豊富な機能を追求した会計ソフトです。大企業や中小企業はもちろん、小規模企業や個人事業主まで、幅広いニーズに対応しています。特に会計初心者には、自動仕訳機能などで簿記の知識がなくても使える点が便利です。
また、勘定奉行は、大きく分けて「勘定奉行11」「勘定奉行クラウド」「勘定奉行J11」と3つのシリーズがあり、事業規模や価格・料金などから選択できます。初年度だけでみれば初期費用が要らないクラウド型が安くすみますが、使い方次第では、パッケージ型のほうがお得なケースもあります。
加えて、勘定奉行は初心者でも入力操作がしやすかったり、自動仕訳ができたりといった点が便利です。一方で、他社の会計ソフトよりも割高になる傾向もあり、豊富な機能が逆に使いづらい印象を与えるかもしれません。
自身のニーズと合わせて、費用対効果が見込める会計ソフトを選ぶようにしましょう。