更新日:2024.07.02
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現金出納帳は、企業の現金の入出金を記録するための帳簿です。具体的には、いつ、どこから(またはどこへ)、いくら現金が受領(または支払)されたのかを詳細に記録します。現金出納帳を運用することは、以下の理由から非常に重要です。
書き方が難しい印象があるかもしれませんが、基本的な内容を理解し、勘定科目に慣れれば、簡単に記帳できるようになるでしょう。また、現金出納帳には以下の項目を必ず記載するようにしましょう。
本記事では、現金出納帳の意味や書き方、注意点を詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
▼この記事でわかる内容
現金出納帳とは、企業の現金の入出金を記録するための帳簿です。具体的には、いつ、どこから(またはどこへ)、いくら現金が受領(または支払)されたのかを詳細に記録します。
現金出納帳の主な目的は以下の通りです。
目的 |
説明 |
現金管理 |
現金の入出金状況を把握し、帳簿上の残高と実際の現金残高を照合することで、現金の過不足を防ぎ、適切な管理を行う |
不正防止 |
現金の動きを記録に残すことで、不正な現金の支出や着服などを防止する効果が期待できる |
経営分析 |
現金の流れを分析することで、企業の財務状況や資金繰りの問題点を把握し、経営改善に役立てる |
現金出納帳は、法的には作成が義務付けられている帳簿ではありませんが、現金管理や不正防止の観点から、多くの企業で作成されています。また、会計ソフトを使用することで、簡単に現金出納帳を作成・管理することが可能です。
現金出納帳は、現金管理を効率化し、不正防止や税務申告に役立つだけでなく、事業の収支状況を把握し、経営判断の精度を高める上でも非常に重要な帳簿です。その理由として以下の4つが挙げられます。
それぞれ詳細に解説していきます。
現金は管理がずさんになりやすく、従業員による不正の温床になりやすいという側面があります。現金出納帳をつけることで、現金の入出金が克明に記録され、お金の流れが透明化されます。これにより、不正な現金の使用を早期に発見し、未然に防ぐことができます。また、従業員にとっても、不正行為への抑止力として働くでしょう。
現金出納帳をつけることで、日々の現金の増減だけでなく、いつ、何に、いくら使ったのか、または、いつ、どこから、いくら入ってきたのかを詳細に把握することができます。この情報は、資金繰りの計画や改善に役立ち、経営の安定化に繋がります。
例えば、特定の時期に支出が増える傾向があれば、事前に資金を確保したり、支出を抑える対策を検討したりすることができます。また、収入源を分析することで、より収益性の高い事業に注力するなどの戦略的な意思決定も可能になります。
現金出納帳は、現金の動きを記録する補助簿として機能します。総勘定元帳などの主要簿と現金出納帳の記録を定期的に照合することで、帳簿間の整合性を確認できます。これにより、記帳ミスや不正を早期に発見し、修正することができます。
帳簿間の整合性が取れていない場合、税務調査の際に問題となる可能性があります。現金出納帳を適切に活用することで、税務調査への準備もスムーズに進めることができます。
確定申告の際には、現金出納帳の記録が非常に重要になります。現金出納帳の記録をもとに、事業の収入と支出を正確に把握し、所得を計算することができます。税務調査が入った際にも、現金出納帳があれば、現金の動きを説明することができます。
現金出納帳を適切に作成・保管することで、税務申告の正確性を高め、税務調査にもスムーズに対応することができます。
職場にある全ての現金を経理担当者に管理させるのではなく、現金の一部を経理担当者に預けて、小口現金として管理している企業も少なくないでしょう。
このようなときに用いられるのが小口現金出納帳です。小口現金出納帳は、経理担当者が預かった小口現金を管理する目的で備えられています。
項目 |
現金出納帳 |
小口現金出納帳 |
目的 |
現金取引を記録し、帳簿上の残高と実際の残高の一致を確認するための帳簿 |
主に少額の現金取引(交通費、切手代、消耗品費など)を記録し、小口現金の管理を目的とする帳簿 |
扱う金額 |
比較的大きな金額の取引を扱う |
少額の現金取引を扱う |
記入頻度 |
毎日の現金取引を記録する |
小口現金の補充時や支出時に記録する |
管理者 |
通常、経理担当者が管理する |
各部署の担当者や庶務担当者が管理する場合が多い |
現金出納帳だけで管理する場合と比べると、責任の所在が明確になるので、より安全性が高まります。ただし、現金全体を管理する担当者と小口現金の担当者を別の人にしないと、あまり意味がありません。
現金の管理に人が多く必要になるので、多額の現金を保管する必要があるかどうかを含め、総合的に現金の管理方法を決める必要があると言えるでしょう。
なお、作成した現金出納帳は、ほかの商標類と合わせて最長7年の保存期間が定められています。確定申告が終わったら、直ちに捨てて良いわけではありませんので、破棄しないように注意してください。
現金出納帳の書き方には、一定の決まりがあります。最低限、記載しなければならない項目を理解することが、書き方を理解するための最初の一歩です。具体例を含め解説しますので、ここで理解しておくようにしましょう。
現金出納帳に必ず記載されていなければならない項目は、次の5つです。
項目 |
説明 |
日付 |
現金の支払いまたは入金があった日付 |
科目 |
入出金が行われた原因がわかる項目 (例: 売上代金、仕入代金、給料など) |
摘要 |
入出金に関する要点をメモする項目 (例: 取引先名、支払/入金内容など) |
収入または支出の金額 |
現金の受け取り、または支払いがあった金額 |
差引残高 |
現在の現金残高 |
たとえば、2020年11月1日に商品の仕入れで3万円の支払いが行われた場合は、科目が「仕入」になり、摘要欄に仕入先の名称や仕入れた商品名を書くことになります。仕入れる直前の現金残高が10万円で、そのほかの現金の入出金がなければ、差引残高は7万円になります。
なお、消費税の課税事業者の場合は、軽減税率対象の取引かどうかで、細かく区分して記載するなどの工夫が必要です。摘要欄に「8%」と税率を記載しておけば、見やすくなって間違いも減るでしょう。
個人事業主であっても、クレジットカードや銀行口座を事業用と生活用に区分する必要はありません。しかし、現金出納帳に記録を残す場合は、事業費と生活費を明確に区分する必要があります。
この際、現金出納帳で使用するのは、「事業主貸」と「事業主借」の2つの勘定科目です。たとえば、生活のためにスーパーで3,000円分の食品を購入した場合なら、仕訳は「(借方)事業主貸 3,000円 (貸方)現金 3,000円」です。現金出納帳に記載する場合も、出金の欄に3,000円、科目に「事業主貸」と期待しておけば大丈夫です。
同様に現金の入金があった場合は、「事業主借」の科目を使えばいいだけです。事業主貸と事業主借の科目を間違えなければ、生活費が混在していたとしても難しいことはないでしょう。
紙の帳簿で現金出納帳を付ける場合は、記入ミスの問題が生じます。「ミスをしたら消去すれば良い」と思うかもしれませんが、消して直すのはご法度なので注意が必要です。
現金出納帳の記帳で間違いがあった場合は、訂正したと分かるように記録に残すのが基本です。間違えた箇所に二重線を引いて、その近くに正しい金額や科目を記入する、というのが正しい書き方です。また、記入ミスがあった行全体に二重線を引いて、新しい行に正しく記入し直すのでも大丈夫です。
また、現金出納帳に記帳漏れがあり現金が合わなくなった場合は、一時的に「雑損失」や「雑収入」の科目を使います。その後、現金過不足の原因が判明した際に修正の記帳をする、というのが、記帳漏れがあった場合の正しい書き方になります。
現金出納帳の取り扱いでは、幾つかの注意点があります。記入ミスを消去してはいけないことは上で説明しましたので、それ以外の重要な注意点について紹介したいと思います。
まず、現金出納帳の取り扱いで最も重要になるのは、頻繁に記帳して、しっかりと現金残高を把握することです。現金出納帳の目的は、お金の流れを把握して、不正を予防することにあります。
常に現金の残高と現金出納帳の差引残高が一致していなければ、本来の役割を果たせないという意味です。未記帳の取引がたまると、現金が合わなくなり、非常に手間がかかります。お金をしっかり管理しようという意識も薄れてしまい、資金ショートのリスクも高くなるでしょう。
現金出納帳の記入をためても、良い事は1つもありません。まずは、毎日しっかりと現金出納帳の記入を行い、記帳する効果を体感するようにしましょう。
ある意味仕方のないことではありますが、税務調査が行われる際の調査官は、「不正が行われているのでは?」という意識になっています。怪しいと思われる部分については容赦なく質問してきますので、疑われない現金出納帳を作成することが大切です。
記入ミスを消してはいけないのはもちろん、鉛筆や消せるボールペンを使わないようにしないといけません。また、パソコンで現金出納帳をつける場合でも、出来る限り修正の記録が残る会計ソフトを用いるべきです。
表計算ソフトで現金出納帳を作成することも可能ですが、自由に修正できてしまうところに問題があります。取引の数が少ない小規模の事業者は、紙の現金出納帳を選び、規模が大きくなったら、しっかり管理できる会計ソフトを導入するのがいいと思います。
現金過不足が生じた場合は、雑収入や雑損失などの科目で残高を合わせるとともに、原因を特定することが大切です。
現金過不足が頻繁に生じていると、国税に管理体制が甘いと思われたり、不正が行われていると疑われたりします。従業員からも「管理が甘い」と思われてしまい、不正のリスクを引き上げることになります。
そのため、現金過不足が生じたら、その都度しっかりと原因を追求して、二度と起きないように対処することが大切です。しっかりと再発防止に努めて、ミスの起きにくい業務フローができれば、不正が起きにくく、国税調査官に疑われない企業に育っていきます。
最初は面倒に思うかもしれませんが、次第に再発防止に努めるのが当たり前になるので、しっかりと取り組むようにしましょう。
青色申告をして65万円、あるいは10万円控除を受けるには、現金出納帳が必要になることが多いです。基本的には、総勘定元帳と仕訳帳の主要簿の作成が求められていますが、現金出納帳や売掛帳などの補助簿も作成して管理を行います。
現金出納帳などの補助簿を作成しておけば、主要簿である仕訳帳や総勘定元帳の信頼性が高まります。税務調査が入った際の説明も要因になりますので、現金の移動が多い企業は、現金出納帳を備え付けた方が良いでしょう。
現金出納帳は、言葉は難しい印象がありますが、難しい処理をしているわけではありません。記帳で分からない部分が生じるとすれば、「何の勘定科目で処理するか?」という問題だけです。
取引の内容が頻繁に変更する業種は少ないと思いますので、次第に何の勘定科目を選ぶべきかが分かるようになり、簡単に処理できるようになるはずです。
ただし、記帳に慣れないうちは、少し面倒に感じることがあると思います。現金の残高とぴったり合うように記帳を続けていると、次第に楽しくなってきますので、その状態になるまでは頑張って続けてみてください。