更新日:2025.08.22
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「DX」「業務効率化」「ペーパーレス」──
近年、経理業務を取り巻くキーワードは目まぐるしく変化しています。多くの企業が効率化を目指しツール導入を進めている一方で、システム導入後もデータ入力や称号などの手作業が多く残り、煩雑さが解消されていないという企業が多く見られます。
では、実際の課題はどこにあるのでしょうか?
このコラムでは、株式会社インボイスが2025年に実施した「請求処理における仕訳の実態に関するアンケート」(対象:約400名)をもとに、経理部門が抱える"根本的な課題"を読み解いていきます。
調査の結果、経理処理を社内で完結させている企業が9割以上にのぼることがわかりました。税理士事務所など外部サービスを活用している企業は少数にとどまっています。
一方で、体制を見ると「2~3名」あるいは「1名」で対応しているケースが過半数を占めており、多くの企業が限られた人数で経理業務を回している実態も明らかになりました。こうした少人数体制では、業務が特定の担当者に依存する構造になっているケースも少なくありません。
請求書仕訳の担当範囲についてのアンケートでは、「経費をメインで処理している」との回答が過半数を占めました。「経費と原価の両方」と合わせると、実に9割近くの企業が"経費"の処理を担っていることが分かりました。
一方、「原価のみを担当している」と答えた人はわずか5%にとどまっています。
つまり、多くの企業では経費処理に業務が偏っており、原価管理にまで手が回っていない可能性があります。管理会計やコスト管理の視点から見ると、原価管理への対応が後回しになっている可能性があり、管理会計上の課題となる恐れがあります。
請求書の入力方法について聞いたところ、57.1%の企業が現在も会計システムに「直接手入力」していると回答しました。経理のデジタル化が進んでいるように見える一方で、インポートやマスタ登録といった機能を活用している企業は、まだ一部にとどまっており、業務効率化の余地が大きく残されています。
直接入力が多い理由としては、業務の複雑さが挙げられます。例えば、費用負担部門の区分けや、内訳明細ごとの判断など、仕訳作業には"人の判断"が求められる場面が多く、完全な自動化が難しいのが現状です。
また、「前捌き(Excelでの下準備)」との併用も多く見られます。併用している理由として最も多かったのは、「データで受領する請求書があるため」で61.8%でした。取引先ごとにフォーマットや運用が異なるため、現場の負担は想像以上に大きいものとなっていそうです。
請求書で最も確認されている項目は「金額」「取引先名」「発行日」といった基本情報でした。
意外だったのは、「適格請求書の有無」について確認していると答えた人が約半数にとどまったことです。
インボイス制度など新制度対応が進む一方で、現場レベルでの"確認習慣"が追いついていない実態が見られます。法制度に対応するうえでも、「確認の抜け漏れを防ぐ仕組み」が今後求められるでしょう。
また、「支払依頼書付きの請求書を受け取っている」との回答も87件(25%)あり、運用形態の多様化が見受けられます。
仕訳入力方法を尋ねたところ、最も多かったのは「都度手入力」で38.9%でした。この傾向は、請求書の入力方法の調査結果と同様です。
次いで「前月分の取引からコピーして利用(取引先名)」が35.7%、「前月分の取引からコピーして利用(科目名)」が32.4%と続き、一定の企業では過去データの流用が効率化の手段として活用されています。
ここまでのアンケート結果から、いまだに多くの企業が直接入力を続けている実態が見えてきました。手作業が中心である以上、ヒューマンエラーのリスクは避けられません。では、そうしたミスを防ぐための確認体制は、どのように整備されているのでしょうか?
帳簿内容の確認について尋ねたところ、「上長確認」が59.1%で最多となり、半数以上の企業で人的チェックが行われていることがわかりました。次いで「チェックリストの運用」(47.1%)も半数近い割合を占めており、確認手順を標準化しようとする取り組みも見られます。
しかし、「わからない」と回答している企業も一定数見られ、チェックの徹底や制度には企業ごとに差があることが分かりました。帳簿確認はミスを防ぎ、業務の質を保つために欠かせない工程です。確認方法を整備し、現場でしっかりと機能させることが、今後の大きな課題となりそうです。
本調査から分かったのは、業務の属人化や、手作業を続けている現場の実態です。効率化のためにツールを導入しても、それが実際の現場で"使われていない"、あるいは"使いこなせない"というギャップが、多くの企業で起きています。
デジタル化が進む今、業務効率化を目的とした自動化ツールの導入を検討している企業も少なくないでしょう。しかし、本当に必要なのは、業務フローそのものを見直し、役割分担や確認体制、マニュアルの整備など、業務設計を見直すことといえます。
つまり、「仕組みの再設計」こそが、これからの経理部門の重要な課題となります。
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