更新日:2023.03.07
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企業の利益は売上高 − 費用で求められるため、無駄なコストや経費の削減は、企業経営をする上で欠かせない取り組みの一つです。中でも、売上高の増減に関わらず発生する固定費は、変動費よりも把握しやすく、削減効果が大きいという特徴があります。
本記事では、固定費と変動費の違いや具体例を解説した後、固定費を削減する対策やポイント、メリット、注意点を解説します。
固定費の削減を考える前に、まずは企業で生じる代表的なコストの「固定費」と「変動費」の違いを確認します。
固定費とは、売上の増減に関係なく発生する費用のことです。例えば、事務所の賃料は会社が営業していないときでも、月割りで支払わなければいけません。
このように営業の有無と関係なく、それぞれある条件を満たしてさえいれば毎月支払うことになる費用が固定費です。
企業経営上発生する代表的な固定費は以下のとおりです。
労働の対価として従業員に支払う費用です。給与だけでなく、各種手当や賞与、法定福利費、通勤定期代なども人件費に含まれます。
電話やインターネットの通信費、電気代・水道代・ガス代などの水道光熱費も売上高によらず支払いが必要なため、固定費に分類されます。
ボールペンやコピー用紙など、使用期間1年未満、もしくは1年以上でも10万円以下の資産が消耗品費です。なお、製造経費の消耗品費は、変動費に分類されるケースもあるため、注意しましょう。
広告宣伝費も基本的には固定費です。ただし、一定の購入数に対して支給するノベルティの費用などは、変動費に分類されます。
家賃や地代も、毎月一定額の支払いが必要です。
減価償却や固定資産税なども毎年計上が必要な固定費です。一見、変動費と紛らわしいものもあるため「売上に応じて変動するかどうか」をポイントに判断しましょう。
変動費とは、販売量や生産量、受注量などに比例して増減する費用のことです。
単純な例として、ある商品の先月の販売数量が100個であれば、仕入値は100×単価です。一方、今月の販売数料が50個であれば、仕入値は50×単価となり「いくら売れたか」により、仕入値が変化します。
このように、売上などにより変化する費用が変動費です。
企業経営で発生する代表的な変動費は以下のとおりです。
特に、製造業では製造に関わる従業員(工員)に支払う給料(賃金)を変動費に分類するため注意しましょう。
経営上発生するコストのうち、固定費は変動費より把握しやすいため、削減方法も検討しやすくなります。ここでは、固定費別に削減に役立つ対策を紹介します。
人件費の削減では、作業労力や労働環境の改善が必要です。以下のように、残業時間の削減や業務効率化を進め、不要な費用を削減しましょう。
人件費の中には社会保険料など法律上削減できないものや、給与など雇用契約・労働基準法上削減が難しいものもあります。従業員のモチベーションを左右する部分でもあるため、まずは無駄な業務の削減から進めましょう。
現在は電力自由化などによりエネルギー会社を自由に選べる環境が整っています。そのため、変更によりお得なプランに乗り換えることも可能です。また、通信費も無料アプリなどを活用すれば、削減に効果的です。
法人向けプランは変更が複雑なものが多いものの毎月発生する費用のため、削減できれば大きな効果が期待できます。
一つひとつのコストは小さいものの、積み重なれば大きな出費となるのが製造経費の消耗品費です。まずは毎月どの程度消耗品費がかかっているか確認し、購入は許可制にするなどして、管理を徹底しましょう。
特に、紙でのやり取りが多い企業では、消耗品費がかさむだけでなく、業務の非効率にもつながります。経費精算システムや請求書発行システムなどを活用しペーパーレス化を進めましょう。
プロモーション活動は、商品やサービスの販売促進になくてはならない業務です。しかし、やみくもに資金を投入していては無駄なコストになってしまいます。まずは、その広告が効果を上げているか確認し、費用対効果が低いなら取り止めも必要です。
広告といっても新聞・テレビCM・インターネット広告など、複数のメディアがあるため、より低価格で効果の高い広告に変更しても良いでしょう。
事務所の移転が難しいなら家賃・地代の価格交渉を行う、移転ができるならより安価な物件に引っ越すと良いでしょう。
リモートワークを中心とした働き方に変更すれば、事務所の規模を削減し家賃を抑えることも可能です。
減価償却費とは、高価な機械設備・内装設備などを購入した際、代金を一括して経費に計上せず、1年ごとに分割して計上する方法です。減価償却費を削減するポイントは、以下のとおりです。
すでに減価償却費として計上した分の削減は難しくなります。そのため、削減のポイントは現在導入を考えている機械設備や内装設備です。もし、導入を検討している設備があれば、上記のポイントを踏まえた再検討をおすすめします。
経営上、固定費を削減する大きなメリットは利益の増加につながる点です。利益の計算方法を単純化すれば、「売上高 − 費用」で求められます。
利益を上げる方法は売上高を伸ばすか、経費を削減するかのどちらかです。しかし、経営上、売上高を伸ばすのは簡単なことではありません。
固定費は変動費と比較して把握しやすく、売上高に関わらず発生するため、削減した際の利益への影響は大きくなります。また、固定費の削減は売上高を上げる以上に取り組みやすい点もポイントです。
企業の固定費削減時のポイントは、現状を把握してどの程度削減するか目標を立てることです。また、従業員にコスト意識を持たせることも大切です。
まずは、毎月の固定費を把握しましょう。具体的な数値が分からないと、やみくもに削減を進めることとなってしまいます。
帳簿などの記録を確認すると把握しやすいでしょう。もし、光熱費や消耗品など、まとめて記録しているものがあれば細分化するのがおすすめです。
どのような固定費が発生しているか確認できたら、削減目標を設定しましょう。なお、目標は「毎月の経費に予算を立てる」「光熱費を〇%削減する」など、数値で確認できるものにします。
また、インターネット回線の変更など、大がかりな取り組みは、計画を立てることで実行に移しやすくなります。
固定費の削減は上層部で進めるだけでなく、従業員に現状や目標を共有しコスト意識を持たせることも重要です。
例えば水道光熱費、接待交際費、旅費交通費などは全従業員の心掛け次第で結果が変わってくる費用です。とはいえ、従業員に今すぐにコスト意識を持たせることは困難なため、少しずつでもコスト削減意識を定着させる必要があります。
企業の固定費削減では、従業員のモチベーションや生産性に影響がないかの確認も必要です。また、短期間で終わらせず長期にわたり継続しましょう。
ペーパーレス化のような新しい取り組みは、現場から不満の声が上がりやすい改革の一つです。固定費削減の結果、業務環境が大きく変化するときは、事前に導入ガイダンスなどをして理解を得られるようにしましょう。
また導入後の不満を聞き取るなど、アフターフォローを欠かさないことも働きやすい環境の構築には大切です。
固定費の中には、人件費や光熱費、消耗品費など、生産性に関わる費用も含まれます。極端な例では、夏場のエアコンを30度に設定して電気代を節約しても、生産性は大きく低下するでしょう。
固定費の削減でどのような影響があるかも事前に確認してください。
経費削減は一時的なものではなく、長期的に取り組み続けることが大切です。特に、固定費は削減に時間がかかるものや、料金プランのように常に見直しが必要なものも含まれます。
必要であれば担当者を配置するなどして、削減意識を持ち続けましょう。
固定費は変動費と異なり、売上の増減に関わらず発生する費用です。そのため、固定費の支払いが多ければ、売上が減少した場合に利益を圧迫してしまいます。
不要な固定費の削減は利益確保に直結するため、経営をする上で見逃せないポイントです。削減を実行する際は、長期的な視点を持ち続けましょう。