更新日:2023.10.20
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適格請求書は、請求額や税率を正確に記したビジネスにおいて欠かせない書類です。この書類は、支払いの請求や金銭の受け渡しにおいて重要な役割を果たすため、正確さと明確さが求められます。
適格請求書には、書くべき項目が決められており、これを満たしていない場合は、法的な問題が生じる可能性があります。必要な記載事項には請求金額や支払期日の他にも、発行日、請求先や発行者の氏名や住所、品名や数量、税率など、詳細な情報が含まれます。
本記事では、適格請求書の記載事項について詳しく解説します。ビジネスにおいて必要不可欠な適格請求書の作成について、より深く理解できるため、経理担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
適格請求書とは売り手が買い手に対して、正確な税率や消費税額を伝える書類のことです。発行者と受領者の間でのやり取りを正式に記録するために用いられます。
この書類には、取引の詳細や支払い期日などの情報が含まれています。一方、適格簡易請求書は、法定の記載事項を満たせば、インボイスの代わりに使用できる請求書です。簡易版フォーマットで作成できるため手軽に利用できます。ただし、支払い期日の記載がないため、支払いに関するトラブルが生じる可能性があります。
また、金額が50,000円以下の場合、適格簡易請求書を使用できます。一方、適格請求書には、取引の詳細や支払い期日が明記されているため、金額に関係なく利用が可能です。
適格請求書は、ビジネスにおいて必要不可欠な書類の一つであり、法的な問題を回避するためにも正確な記載が必要です。
インボイス制度は、売り手が買い手に要求された際に適格請求書の発行をしなければならない義務が発生する制度です。この書類の発行により、税金の動きを透明化し、事務処理の効率化や環境保護に貢献できます。また、買い手は受領することで仕入税額控除を受けられます。
この章では、インボイス制度の概要と、適格請求書等保存方式に対応するためのポイントについて解説します。適切な対応を行うことで、労力削減やコスト削減、事務作業の効率化、誤りの軽減などのメリットを享受できます。
インボイス制度とは、売り手が商品やサービスを購入した買い手から適格証明書を求められた際に、対応しなければならない義務が生じる制度のことをいいます。この書類は、国税庁により定められた規定に従い、特定の事項が書かれている請求書です。
適格請求書を渡すことで、買い手に対して明確に請求金額を開示し、スムーズな請求金額の支払いを促進できます。
インボイス制度が導入された背景には以下の2点があります。
2023年10月1日から開始を予定しているため、前もって準備を進めることをおすすめします。
インボイス導入により、売り手側も買い手側も一定の対応が必要となりました。それぞれの立場毎の対応のポイントについて説明します。
売り手は、求められた際には適格請求書を発行する義務があります。この請求書には、売り手の名称や住所、販売品目や数量、請求金額など特定の事項を記載する必要があります。請求書を交付する際には、国税庁のガイドラインに従い、電子データの保存や管理、適格請求書等保存方式の整備が必要です。
一方、買い手は、適格請求書が正しいかどうかを確認する必要があります。買い手は、請求書が国税庁のガイドラインに沿って適切に作成されているか、内容に誤りや漏れがないかを確認し、問題があれば返信することが求められます。また、仕入税額控除の適用には適格請求書の保存が不可欠なため、適切な管理体制を整えておきましょう。
売り手と買い手は、適格請求書を正確に作成し、電子データの保存や管理について合意することで、スムーズな取引が行われるようになります。
インボイス制度が始まると、事業者毎にさまざまな影響があります。そのため、自社はどのタイプに当てはまり、どのような対応をすべきか知っておくことで、スムーズな対応ができます。
この章では、以下の事業別にインボイス制度が与える影響と対応についてわかりやすく解説します。
原則課税方式の課税事業者は、売り手は買い手から適格請求書を求められた場合は対応に応じることが義務付けられています。この際に、電子で要求を受けたケースでは専用のシステムやツールを要します。そのため、事前にどのような準備があるかをまとめておくと良いでしょう。
買い手側は、請求書を受け取り保管しておくことで、仕入税額控除を受けられて負担税額を軽減できます。しかし、買い手が課税事業者にならない場合は、仕入税額控除を受けられないケースがあるため、制度が導入される前に現時点での取引先と過去の取引の精査をしておく方が良いでしょう。
書類に書かれている内容や金額などを基に自社の課税計算を行います。受領した書類に間違いがある際には計算にも影響が生じます。そのため、適格請求書の内容に細心の注意を払い、正確性を確保しましょう。
簡易課税制度の課税事業者の場合、インボイス制度の対象外のため適格請求書の受領は不要となります。加えて、みなし仕入率が適用されるため、免税事業者との取引であっても当書類の要求を受けません。
ただし、簡易課税制度の課税事業者から原則課税方式への移行の際には、本制度へ対応を要します。原則課税方式に移行すると、取引相手から支払われた金額に対して消費税が課されます。
注意すべき点として、消費税負担が増加する可能性があることが挙げられます。簡易課税制度では、消費税の免税や軽減税率の適用が受けられる場合がある一方で、原則課税方式ではそのような特例がなく消費税負担が増加する可能性があるため、事前に確認をすることが重要といえるでしょう。
免税事業者は消費税を支払わなくて良いため、インボイス制度の対象外となり、直接的な影響はありません。ただし、課税事業者との取引では、適格請求書を発行していない場合に、要求されるケースがあります。しかし、免税事業者は当書類への発行要求に対して応じられません。この書類がもらえない課税事業者は仕入税額控除を受けられず、減税の機会を逃すこととなります。結果として、取引相手や取引内容を見直すケースもあり得ます。
このようなケースを鑑みて、インボイス制度の導入に伴って免税事業者には6年間にわたって緩和措置が用意されています。この仕組みにより、消費税の8割を3年間、5割を更に3年間、仕入税額控除として受けられます。その間に、課税事業者へ移行する準備を進めましょう。
納税地を所轄している税務署長へ登録申請書を提出後、適格請求書発行事業者の登録を行う必要があります。また、令和5年度税制改正による適格請求書等保存方式の見直しがあるため、見直し事項についてもしっかり理解を深めて対応することをおすすめします。
適格請求書発行事業者について詳細を知りたい方はこちらの記事を参考にしてください
【必見】適格請求書発行事業者とは?令和5年度税制改正の内容や登録方法をわかりやすく解説
適格請求書には、販売者や請求先の情報、販売額、支払い方法、税率など記載すべき事項が多数あります。記載項目が正しく記載されていないと、取引先からの問い合わせやトラブルを招きかねません。
この章では、適格請求書の具体的な記載例を紹介します。実際に作成する際に、参考にしてみてください。
適格請求書は、売り手が消費税を含んだ金額や税額などを記載して買い手に渡す書類のことを指します。この請求書には、以下のような記載事項が必要です。
これらの記載事項は、税務署が指定しているフォーマットに則って、正確に書く必要があります。また、適格請求書には、請求書の発行が正当であることを示すためにも、発行者署名や捺印が必須となっています。
記載が不足している場合や不正確な場合、税務署から指摘や追徴課税の指示を受けることになります。そのため、正確な情報を記載することでトラブルを避け、スムーズな取引を行うためにも、適格請求書の記載事項には十分に注意する必要があります。
適格簡易請求書は、法定の記載事項を満たせば請求書の代わりに使用できる簡易版のインボイスです。簡単なフォーマットで交付が可能なため、手軽に利用できます
具体的な記載事項は以下の通りです。
適格簡易請求書を利用する時には、支払期限は翌月末となることが条件のため注意をしましょう。また、支払額が1万円以下の時には、消費税を含め明記する必要はありません。比較的簡易に作成できますが、不足がある時や支払期限が不明確な時に、取引先から問い合わせがあるなどトラブルの原因となってしまうため、記載事項を正確に記入するように注意しましょう。
適格請求書にはさまざまな記載項目があります。正確に書かれているか、記入漏れがないか細心の注意を払う必要があります。また、電子データで提供する適格請求書である電子インボイスを交付する際には専用のシステムを要するため、事前の確認をしておきましょう。
発行者の名称や住所、電話番号などの基本情報について間違っていないか確認しましょう。情報が正確に記載されているか念入りに確認します。課税事業者にはその取引先の所在地、免税事業者には法人番号を書くようにしましょう。
支払いをスムーズにするためにも、請求書番号、発行日、支払期限、支払方法などの項目を書いておくことは欠かせません。特に支払期限の記載には注意が必要で、請求書発行日から起算して10日以上後の日付にしておかなければなりません。支払方法については、現金、小切手、振込など、具体的な支払い方法を明確に記載するようにしましょう。
また、商品やサービスの名称、数量、単価、金額について書く上では、税抜価格や消費税額、税込価格を明示する必要があり、消費税率が変更された場合には合わせて記載内容を変更することが必要です。
加えて、請求書や納品書が複数枚にわたる場合は、記載事項が複数の書類全体で満たされていれば一枚の適格請求書として認められます。どの書類が記載要件を満たしているかしっかりと管理しておくようにしましょう。
以上のような点に注意して、正確かつ適切な適格請求書を作成することが重要です
売り手は買い手に対して、販売した商品やサービスに係る請求書を発行します。買い手は、この書類を保存しておくことで仕入税額控除を受けられます。
買い手が仕入税額控除を受けるためには、適格請求書や帳簿を保存することは必須条件となります。そのため、控除に係る書類の取り扱いと適用要件をしっかりと理解して適切な保管をしておく必要があります。
この章では、控除を受けるための適格請求書や帳簿を扱う上での注意点や保存についてわかりやすく説明します。
仕入税額控除を受けるためには、受領した請求書等を保存しておかなければなりません。この場合の請求書等は以下4点を含みます。
また、受領した書類は消費税の申告に必要なものであるため、法人であれば7年間の保存義務があります。保存期間中に税務署の確認や調査を受けた場合には提示しなければなりません。
会計帳簿の保管に加えて、帳簿のみの保管でも仮払消費税の控除を請求できる場合があります。帳簿留置による仮払消費税控除の申請要件は以下のとおりです。
会計帳簿、売掛金台帳、買掛金台帳などの会計帳簿は、法規に基づき10年間保管する必要があります。特に、帳簿には法人税や所得税の申告に使用する情報が含まれているため、しっかりと保管する必要があります。
また、令和5年の税制改正大綱により、令和5年10月1日から令和11年9月30日の期間は仕入税額控除に関する特別措置が設けられています。
課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、基準期間で国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められています。
参照元:令和5年度税制改正の大綱
インボイス制度が導入されるにあたって、売り手は買い手から適格請求書の要求を受けた際に対応しなければならなくなりました。この書類は買い手売り手の情報のほか、販売額や税率なども明記しているため、ビジネスの透明化に役立ちます。
また、買い手側はこの書類を保存しておくことで仕入税額控除を受けられる上に、書類の発行対応をすることは取引先との信頼関係を築くことにも繋がるため、適切な対応が求められます。
ただし、適格請求書を交付するには適格請求書発行事業者を登録しておく必要があるため、事前に登録をしてインボイス制度の開始をむかえましょう。