【クリックポスト利用者必見】郵便法改正とインボイス制度の影響とは

2023年10月に始まったインボイス制度や、2021年に施行された郵便法の改正により、事業者の請求書発行や郵便利用にさまざまな影響が出ています。特に「クリックポストとインボイスの関係性」や「非課税取引の扱い」については混乱が起きやすいポイントです。 本記事では、制度の基礎から経理処理の注意点、そして最新の法改正まで網羅的に解説します。

▼この記事でわかる内容

• クリックポストとインボイス制度の関係性
• なぜクリックポストはインボイス対象外なのか
• クリックポスト利用時の経費処理方法
• 郵便と宅配の税務上の違い
• インボイス制度における課税・非課税取引の整理

クリックポストとインボイスの関係性

クリックポストとインボイス制度には直接的な関係はありません。インボイス制度は課税事業者間の消費税取引に適用され、適格請求書（インボイス）の保存が求められます。

しかし、クリックポストは郵便法に基づく郵便サービスであり、消費税法上「非課税取引」として扱われます。そのため、そもそも消費税が課税されず、インボイス発行の対象外です。事業者が利用する際、インボイスが発行されないからといって経費計上できないわけではありません。

帳簿や証憑を適切に残していれば、税務上問題なく処理可能です。ただし、ヤマト運輸や佐川急便など宅配便の送料は課税対象となるため、インボイス発行の要否が発生します。郵便と宅配の違いを理解しておくことが、正確な経理処理に重要です。

2021年10月から施行された郵便法改正の概要と変更点

2021年10月（令和3年10月）より、郵便法が改正されました。法改正に伴い、日本郵便では一部サービスの見直しを実施。土曜配達の休止や配達日数の繰り下げなど、期限のある書類をやり取りする際に影響が及んでいるのではないでしょうか。 本章では、郵便法改正後に変更されたサービス内容を解説します。

土曜日配達が休止される

2021年10月2日より、普通郵便やゆうメールでの土曜日配達が廃止されました。特定記録などの郵便物も含まれます。なお、以下に関しては変更がなく、これまで通りの日数で配達されます。 ●ゆうパック ●ゆうパケット ●レターパックプラス ●レターパックライト ●クリックポスト ●速達 ●書留 ●簡易書留

一部の郵便物で配達日数が1日ほど繰り下げられる

土曜日配達の休止に加え、一部の内国郵便、電子郵便、国際郵便で配達日数が1日繰り下げられます。 具体的には、以下の配達日数が1日繰り下げられ、土曜・日曜・休日は配達を休止します。

配達日数の段階的繰り下げ

また、全体的な配達日数も段階的な繰り下げが決定しています。2021年10月～2022年1月までは土曜日配達の休止分が繰り下げられますが、2022年1月以降は、休日を挟まない場合でも配達日数が繰り下げられます。 例えば、2021年9月以前は翌日配達だった地域に宛てて、月曜日に郵便物を発送した場合、2021年10月〜12月までは通常通り翌日の火曜日に配達されるということです。 しかし、2022年1月からは配達日数が1日伸びて、水曜日に配達されるようになります。急ぎの配達物がある場合はなるべく早く発送するか、オプションサービスを活用しなければなりません。

速達郵便料金が1割引き下げられる

郵便法改正により不便さは増したものの速達料金が引き下げられたため、速達が利用しやすくなりました。 ▽改正前後の速達郵便料金 ●250gまで：290円→260円 ●1㎏：390円→350円 ●4㎏：660円→600円 なお、変更に伴い260円の普通切手が販売されています。

配達日指定郵便料金は土曜日指定分のみ210円に引き上げ

ただし、配達日指定郵便を利用する場合、土曜日を指定すると日曜日や休日と同額の210円が加算されるようになりました。 改正前は月曜日～金曜日と同じ32円と同額だったため、新たに土曜日指定で郵便物を発送する場合は注意が必要です。

2023年10月1日に導入されるインボイス制度の基本

郵便法改正に加えて、請求書に携わる企業が無視できないのがインボイス制度です。インボイス制度は2023年10月1日（令和5年10月1日）から施行されますが、メリットやデメリットが大きいのでしっかりチェックしておきましょう。

インボイス制度の概要

インボイス制度は、要件を満たした請求書で消費税を正しく計算して納付する制度です。 売り手側は取引相手（買い手）から求められた際はインボイス（適格請求書)を発行します。なお、売り手は登録事業者として申請する必要があります。インボイスは登録した事業者のみが発行できるので、注意が必要です。 また、買い手側は受け取ったインボイスを保存しておけば仕入税額控除が適用されます。 これまでは1年間の売上高が1,000万円未満の事業者は免税事業者として納税が免除されていました。しかし、改正後は免税事業者も正しく納税するようになり、さらに正しく納税している事業者と取引している企業は、その分の納税額が控除されるのが、インボイス制度の概要です。

インボイス（適格請求書）の条件

インボイス制度のインボイスとは、一定の条件を満たした適格請求書のことを指します。 具体的には、以下の条件を満たす請求書が、適格請求書として扱われます。 ●適格請求書発行事業者の氏名または名称、登録番号 ●取引年月日 ●取引内容 ●税率ごとに区分された対価の額と適用税率 ●税率ごとに区分した消費税額等 ●書類を受け取る事業者の氏名または名称 なお、条件を満たしていれば納品書や領収書、レシートなども適格請求書として扱われるのがポイントです。 ただし、以上の要件を満たしにくい以下のケースなどは、インボイスの発行なしでも、一定の条件を満たす帳簿を保存していれば仕入税額控除が受けられます。 ●公共交通機関を利用した際に発行される乗車券が3万円未満の場合 ●使用時に回収される入場券など ●適格請求書発行事業者以外の業者から古物を購入した場合 ●適格請求書発行事業者以外の業者から質物を取得した場合 ●自動販売機で3万円未満の商品を購入した場合 ●郵便ポストに投函する郵便物 ●従業員に支払う出張費や通勤手当

仕入税額控除とは

本章までに数回登場した仕入税額控除は、売り手側が支払った税額分を買い手の納税額から控除できる分を指します。たとえば、税別1,500円のある商品が消費者の手に届くまでに工場、加工所、販売店という流れを経ているとします。この場合、以下のとおり各工程において購入代金とそれに応じた消費税を支払い、最終的に消費者が支払う消費税は150円です。仕入税額控除では、最終的に消費者が支払う消費税を各工程で負担し、消費税が二重、三重で発生しないようにする仕組みです。 これまでは免税事業者からの仕入れであっても全額控除可能でした。ですがインボイス制度実施後は、 適格請求書発行事業者以外から仕入れた代金にかかる消費税は2029年10月には控除されなくなってしまいます。 それまでは控除の割合を引き下げる経過措置が設けられています。[注1] ・2023年5月〜2026年9月：免税事業者からの仕入れについては80％控除 ・2026年10月〜2029年9月：免税事業者からの仕入れについては50％控除 ・2029年10月〜：控除不可 [注1] インボイス制度実施に当たっての経過措置について 日本税理士連合会 https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/invoice/invoice15b.pdf

免税事業者とは

免税事業者の条件は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下かどうかです。法人、個人事業主で基準期間が以下のとおり異なります。 ・法人：前々事業年度の課税売上高 ・個人事業主：前々年の課税売上高

インボイス制度の導入で変わること

税収の面からするとメリットが多いインボイス制度ですが、年間の売上高が1,000万円未満の免税事業者にとっては、大きな打撃になるといわれています。 本章では、インボイス制度の導入で変わることを詳しく解説していきます。

【売り手側】適格請求書発行事業者に登録し適切なシステムを導入する

インボイス制度では、主に売り手側に対応が求められます。買い手としては仕入税額控除を受けられる、適格請求書発行事業者との取引を優先させることが増えるため、期限までに登録申請書を提出しておくのがおすすめです。 インボイス制度が施行される2023年10月1日から適格請求書発行事業者として認められるためには、遅くとも2023年3月31日までに申請する必要があります。 また、インボイスを発行するために請求書発行システムやフォーマットの見直しが必要になります。

【買い手側】インボイス制度に対応したシステムの導入

買い手側として仕入税額控除を受けるには、一定の事項を記載した帳簿および請求書等の保存が求められます。 従って、買い手側ではインボイス制度の要件を満たすシステムの導入が必要です。 帳簿の記載事項には以下を記載するため、現在使用しているシステムが適合していれば変更する必要はありません。 ●取引先の氏名または名称 ●取引年月日 ●取引内容 ●税率ごとに区分した取引金額

郵便法改正やインボイス制度に伴って請求書の発行には注意が必要

すでに施行されている郵便法改正や、2023年10月より新たに施行されるインボイス制度は、請求書を取り扱う事業者にとって無視できない法律です。 とくに、納税額に大きく関与するインボイス制度は施行前にしっかり内容を理解して、環境を整えておくことが大切です。 売り手側は適格請求書発行事業者の申請や請求書発行システムやフォーマットの見直しておきましょう。また、買い手側は現在使っているシステムが、インボイス制度に適合しているか確認しておくことをおすすめします。