更新日:2025.08.18
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「インボイス対応のために新しいソフトを入れたいけど、費用が...」とお悩みではありませんか?実は、最大450万円もの補助が受けられる制度が用意されており、うまく活用すれば会計ソフトやパソコンの導入費用を大きく抑えることができます。
本記事では、「IT導入補助金」と「小規模事業者持続化補助金」の違いや選び方、対象経費、申請の流れまで、わかりやすく丁寧にご紹介いたします。自社に合った補助金制度を見極めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応するため、多くの事業者様が会計ソフトの導入やシステムの改修などを迫られています。こうしたITツール導入の経済的負担を軽減するために、国が支援する補助金制度が用意されています。
インボイス制度への対応で活用できる代表的な補助金は、主に「IT導入補助金」と「小規模事業者持続化補助金」の2種類です。それぞれ目的や対象経費が異なるため、自社の状況に合わせて最適な補助金を選ぶことが重要です。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上のためにITツールを導入する際の経費の一部を補助する制度です。インボイス制度の開始に伴い、インボイス対応に特化した「インボイス枠」が設けられています。
この補助金は、会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトといったソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料、さらにはPCやタブレット、レジなどのハードウェア購入費も対象となる点が大きな特徴です。インボイス対応を機に、業務のデジタル化や効率化をまとめて進めたい事業者に向いています。
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓や業務効率化に取り組む際の経費の一部を支援する制度です。インボイス制度に対応するために免税事業者から課税事業者(適格請求書発行事業者)に転換する事業者に対して、補助上限額を通常枠より50万円上乗せする「インボイス特例」が設けられています。
ウェブサイト制作やチラシ作成といった販路開拓の取り組みとあわせて、インボイス対応の会計ソフトを導入する、といった使い方が可能です。幅広い経費が対象となるため、販路拡大を主目的としつつ、インボイス対応も行いたい小規模事業者に適しています。
「IT導入補助金」と「小規模事業者持続化補助金」は、目的や対象者が異なります。どちらを利用すべきか迷う場合は、以下の比較表を参考に、自社の目的や規模に合った補助金を選びましょう。
IT導入補助金(インボイス枠) |
小規模事業者持続化補助金(インボイス特例) |
|
主な目的 |
インボイス対応のITツール導入による業務効率化・生産性向上 |
販路開拓や生産性向上(インボイス転換事業者は補助上限を上乗せ) |
主な対象者 |
中小企業・小規模事業者 |
小規模事業者(インボイス特例は免税から課税への転換事業者が対象) |
主な対象経費 |
会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・タブレット・レジなど |
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、開発費など(販路開拓等に係る経費) |
ポイント |
ITツールの導入に特化しており、補助額が大きい。 |
販路開拓など幅広い経費が対象で、インボイス対応で補助額が上乗せされる。 |
会計ソフトやPCの購入など、インボイス対応のためのIT化が主な目的であれば「IT導入補助金」が第一候補となります。一方で、広告宣伝や店舗改装といった販路開拓の取り組みとあわせてインボイス対応も進めたい場合は、「小規模事業者持続化補助金」の活用を検討するとよいでしょう。
IT導入補助金は2023年のインボイス制度開始に伴い、インボイス対応に特化した「インボイス枠」が設けられました。この枠を活用することで、インボイス対応の会計ソフトや受発注システム、さらにはPCやタブレットなどのハードウェア購入費まで、幅広く補助を受けることが可能です。
※本記事で解説する内容はIT導入補助金2024の公募要領に基づいています。2025年の制度内容については、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
IT導入補助金の対象者は、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者です。インボイス枠は、事業者の状況や導入するITツールの機能に応じて「インボイス対応類型」と「電子取引類型」の2種類に分かれています。
インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトの導入を支援する類型です。小規模事業者は補助率が優遇されるほか、PCやタブレット、レジなどのハードウェア購入も補助対象となる点が大きな特徴です。
機能要件 |
補助率 |
補助額 |
会計・受発注・決済のうち1機能以上 |
中小企業:2/3以内 小規模事業者:3/4以内 |
5万円以上~50万円以下 |
会計・受発注・決済のうち2機能以上 |
中小企業:2/3以内 小規模事業者:3/4以内 |
50万円超~350万円以下 |
また、上記のソフトウェア導入と合わせて購入する場合、以下のハードウェアも補助対象となります。
ハードウェア |
補助率 |
補助上限額 |
PC・タブレット・プリンターなど |
1/2以内 |
10万円以下 |
POSレジ・券売機など |
1/2以内 |
20万円以下 |
インボイス対応の受発注システムを導入し、そのシステムを取引先が無料で利用できる場合に対象となる類型です。主に、発注側の企業が受注側の企業(中小企業・小規模事業者)のためにシステムを導入するケースを想定しており、大企業も申請可能です。
対象事業者 |
補助率 |
補助額 |
中小企業・小規模事業者など |
2/3以内 |
下限なし~350万円以下 |
その他の事業者など(大企業含む) |
1/2以内 |
IT導入補助金のインボイス枠では、インボイス制度への対応や業務効率化に繋がるソフトウェアやハードウェアが補助対象となります。
インボイス制度の要件を満たすソフトウェアの導入費用が対象です。パッケージソフトの購入費用のほか、クラウドサービスの利用料も最大2年分まで補助対象となります。
インボイス対応類型では、補助対象のソフトウェアと合わせて導入する場合に限り、以下のハードウェア購入費用も補助対象となります。ハードウェア単体での申請はできませんのでご注意ください。
IT導入補助金の申請は、事業者単独で行うのではなく、「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで進める必要があります。申請から補助金交付までの大まかな流れは以下の5ステップです。
はじめに、自社の課題解決に最適なITツールと、そのツールを取り扱うIT導入支援事業者を選定します。IT導入支援事業者とITツールは、IT導入補助金の公式サイトで検索できます。支援事業者によって提供できるサポートやツールが異なるため、複数の事業者と相談して慎重に選びましょう。
補助金の電子申請には、「gBizIDプライム」アカウントが必須です。gBizIDは、1つのIDとパスワードで様々な行政サービスにログインできる認証システムです。アカウントの発行には書類郵送を含め2〜3週間程度かかる場合があるため、申請を検討し始めたらすぐに取得手続きを進めることを強くおすすめします。
IT導入支援事業者と共同で事業計画を作成し、申請手続きを進めます。支援事業者から「申請マイページ」への招待メールが届いたら、必要情報を入力し、申請書類を添付して提出します。申請内容に不備がないか、支援事業者とよく確認しながら進めましょう。
事務局による審査を経て「交付決定」の通知を受けたら、ITツールの契約・導入・支払いを行います。必ず交付決定通知が届いた後に事業を開始してください。交付決定前に発注や支払いを行った経費は、補助金の対象外となってしまうため注意が必要です。
ITツールの導入と支払いが完了したら、実際に事業を行った証拠となる書類(契約書や請求書、支払いの証明など)を揃え、期限内に事業実績報告を行います。事務局が報告内容を確認し、補助金額が確定すると、指定の口座に補助金が振り込まれます。
小規模事業者持続化補助金には、インボイス制度への対応に取り組む事業者を対象とした「インボイス特例」が設けられています。
インボイス特例は、免税事業者からインボイス発行事業者に転換する小規模事業者に対して、補助上限額を一律50万円上乗せするものです。販路開拓の取り組みとあわせて、インボイス対応にかかる会計ソフトの導入や専門家への相談費用なども対象経費に含めることができるため、制度対応と事業成長を同時に目指す事業者にとって非常に有効な制度です。
申請にあたっては、地域の商工会議所または商工会の支援を受けながら経営計画書を作成し、審査を受ける必要があります。電子申請システム「jGrants」を利用した申請が推奨されています。
持続化補助金(インボイス特例)を利用できるのは、所定の要件を満たす小規模事業者です。対象者と補助額の詳細は以下の通りです。
項目 |
内容 |
対象者 |
以下の要件をすべて満たす小規模事業者
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補助上限額 |
最大250万円 (通常枠の上限額に、インボイス特例として50万円を上乗せ) ※申請する枠(通常枠、賃金引上げ枠、卒業枠など)によって補助上限額は変動します。インボイス特例は、各枠の補助上限額に一律で50万円が上乗せされる仕組みです。 |
補助率 |
原則 2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4) |
※公募回によって要件や補助上限額が変更される可能性があるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。
持続化補助金は、策定した経営計画に基づいて実施する販路開拓等の取り組みにかかる費用が補助対象となります。IT導入補助金がITツールに特化しているのに対し、より幅広い経費に活用できるのが特徴です。インボイス特例を利用する場合、これらの経費に加えて制度対応のための費用も計上できます。
上記は一例です。対象となる経費の詳細は公募要領で定められていますので、申請前に必ず確認し、販路開拓との関連性を明確に説明できるように準備することが重要です。
インボイス対応で活用できる補助金は、申請すれば必ず承認されるわけではありません。複雑な手続きや書類準備でつまずかないためにも、事前にポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、承認されるための3つの重要なポイントを解説します。
補助金には、それぞれ公募期間(申請受付期間)が定められています。この期間を過ぎてしまうと、いかなる理由があっても申請を受け付けてもらえません。IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金は、年に複数回の締切が設けられていますが、予算の上限に達した場合は早期に終了する可能性もあります。
必ず各補助金の公式サイトで最新の公募スケジュールを確認し、自社の準備状況と照らし合わせて申請計画を立てましょう。締切間際は申請が集中し、電子申請システムのサーバーが重くなることも想定されるため、余裕を持った手続きを心がけることが採択への第一歩です。
IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金の電子申請では、法人・個人事業主向けの共通認証システム「gBizID(ジービズアイディー)」の「プライムアカウント」が必須です。
このアカウントは、申請書類を郵送してから発行されるまで、通常2〜3週間程度の時間を要します。申請締切の直前に準備を始めると、アカウント発行が間に合わずに申請機会を逃してしまう恐れがあります。補助金の活用を少しでも検討しているなら、他の準備と並行して、まずはgBizIDプライムアカウントの取得手続きを済ませておきましょう。
補助金の申請書類は要件が細かく、事業計画の策定も必要になるため、自社だけでの対応に不安を感じる事業者様も少なくありません。そのような場合は、専門家や地域の支援機関に相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けることで、書類の不備を防ぎ、事業計画の質を高め、採択の可能性を大きく向上させることができます。
相談先によってサポート内容が異なるため、目的に合わせて適切な専門家を選びましょう。
相談先 |
主な相談内容 |
特徴 |
IT導入支援事業者 |
ITツールの選定、事業計画の策定支援、申請手続きの代行 |
IT導入補助金の申請に必須のパートナーです。ツールの専門知識が豊富で、申請から報告まで一貫したサポートを受けられます。 |
商工会議所・商工会 |
事業計画書の作成支援、経営相談 |
主に小規模事業者持続化補助金の申請で相談に乗ってもらえます。地域の事業者に寄り添ったアドバイスが期待できます。 |
中小企業診断士・行政書士 |
事業計画のブラッシュアップ、申請書類の作成代行 |
経営や法務の専門家として、客観的な視点から事業計画を評価し、説得力のある書類作成をサポートしてくれます。 |
インボイス制度に対応するにあたっては、費用面での不安を少しでも減らしたいところです。今回ご紹介した2つの補助金制度は、それぞれの事業形態や取り組みに合わせて活用できる、とても心強い支援策です。
「会計ソフトやレジの導入をしたい」「インボイス発行をきっかけに販路拡大も考えている」そんな事業者さまは、ぜひ早めに準備を進めてみてください。 gBizIDの取得や書類準備には時間がかかりますので、できることから少しずつ進めていきましょう。