更新日:2025.06.24
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インボイス制度が開始される2023年10月1日以降の取引では、仕入税額控除を適用するためにインボイス(適格請求書)の発行が必要です。しかし、インボイス制度に登録した前後で請求書の様式が変更されるため、発行すべき請求書の判断に悩む方は少なくありません。
とくに、インボイス制度が導入される前後の取引では、従来の区分請求書とインボイスのどちらを発行すべきかを慎重に判断することが求められます。
誤った請求書を発行・交付しないためには、インボイスを発行すべきかの基準を把握することが重要です。事前に変更点を理解していれば、状況に応じて正しい請求書を発行できます。
本記事では、10月に発行する9月分の請求書にはインボイス(適格請求書)の保存が必要であるかについて、制度開始後の変更点とあわせて解説します。
インボイス制度に登録すると、発行する請求書が従来の区分請求書からインボイス(適格請求書)へと様式が変わります。そのため、インボイスを発行する際には適用要件に沿った記載事項を追加しなければなりません。
請求書の様式でミスを起こさないためには、登録後の変更点を理解することが重要です。ポイントをおさえておけば、ミスを起こさずインボイス制度に対応できます。
ここでは、インボイス制度の基本的な知識や登録後の変更点を解説します。
インボイス制度の仕入税額控除の対象は、取引先から発行されたインボイス(適格請求書)を保存している場合のみです。
この「仕入税額控除」とは、売上時に受け取った消費税額から仕入時に支払った消費税額を差し引いて納付する仕組みです。インボイスが発行されない取引は、原則として仕入税額控除の対象外となります。
そのため、インボイスの発行がない場合、買手は売上時に受け取った消費税額をそのまま納付しなければなりません。
事業者が仕入税額控除を適用する場合、現行の区分請求書は2023年10月1日のインボイス制度導入後にインボイス(適格請求書)へと変更されます。請求書がインボイスとして認められるためには、要件で定められた記載項目を満たさなければなりません。
インボイスを発行する際には、区分請求書の項目にくわえて以下の記載が必要です。
また、インボイスの発行は、インボイス制度に登録した適格請求書発行事業者のみしかできません。適格請求書発行事業者ではない事業者がインボイスを交付することは禁止されており、罰則を受けるおそれがあります。
インボイス制度に対応するためにインボイス(適格請求書)を発行する際は、課税資産の譲渡がどのタイミングでおこなわれたかが基準となります。
インボイス制度に登録して最初の発行では、請求書の締め日によって様式が決まります。とくに、請求書の締め日が月末でない場合には注意しなければなりません。
誤った様式の請求書を発行しないために、ケースごとの要点をおさえることが重要です。
ここでは、インボイス制度の登録日以前の取引に関する請求書を発行する場合の対応を解説します。
売上の譲渡が2023年9月30日までにおこなわれた場合、インボイス(適格請求書)を発行する必要はありません。
請求書の発行日が10月1日以降であっても、従来の区分請求書を保存することで取引先の課税事業者は仕入税額控除を適用できます。
請求書の締め日が、9月21日~10月20日のように月末でない場合は注意が必要です。
売手は10月1日~20日の取引に対して、インボイス(適格請求書)の発行を求められます。一方、9月21日~30日までの取引に関しては現行の区分請求書の発行で問題ありません。
対応策は請求書を2枚に分けるか、1枚に期間を区切って記載するかの2種類です。このような対応によって、買手は10月1日前後の課税仕入も仕入税額控除の適用対象となります。
また、インボイスの要件を満たせば、9月分と10月分の請求書を1枚にまとめて発行することも可能です。
インボイス制度の開始前にインボイスを発行しても問題ないため、準備が整った段階で切り替えるようにしましょう。
売手は出荷基準で買手は検収基準のように、買手と売手で売上・仕入の計上基準が異なる場合があります。これは、課税資産の譲渡日が9月30日以前であるとみなされるためです。
たとえば、売手が9月30日以前に出荷・売上計上する場合です。このような場合は買手が10月3日に検収・仕入計上しても、買手は現行の区分請求書で仕入税額控除を適用できます。
2023年10月1日のインボイス制度開始に間に合わず、月の途中でインボイス制度に登録する場合、取引内容によってインボイス(適格請求書)の扱いが異なります。
そのため、自社で取り扱う商材ごとに適切な請求書を発行することが必要です。商材にあわせた対応を理解していれば、誤った請求書を発行せずに済みます。
ここでは、インボイス制度への登録日が月の途中である事業者が、請求書を発行する場合の対応を解説します。
棚卸資産の譲渡時期は、原則として引渡のあった日です。引渡日は、業種や契約内容などによって異なる解釈される可能性があります。引渡日の考え方は契約内容にもとづいて妥当な日のなかから、事業者が引渡日としている日に設定することが一般的です。
そのため、インボイス(適格請求書)は、制度への登録日以後に棚卸資産の譲渡をおこなったものに対して交付されます。
役務提供の譲渡時期は、原則として役務のすべての提供が完了した日です。そのため、インボイス(適格請求書)は、制度への登録日以後の役務のすべての提供が完了したものに対して交付されます。
たとえば、保守点検のように継続的な役務提供で月ごとに請求する場合、月の途中でインボイス制度に登録しても、その月の請求全額に対してインボイスを交付しなければなりません。
また、消費税の計算は日割りでおこなわず、請求全額を課税売上として申告します。
資産の貸付けの譲渡時期は、原則として契約または慣習によって支払を受けるべき日です。インボイス(適格請求書)は、制度への登録以後の支払を受けるべきものに対して交付されます。
月の途中でインボイス制度に登録して課税事業者となっても、その月分の使用料を月末に支払う場合は全額に対してインボイスを交付し、消費税の計算は日割りせず全額を課税売上としなければなりません。
前受けで支払を受ける場合は、譲渡時期が資産の譲渡をおこなった時期となり、制度への登録日前後の取引を厳密に区分することが必要です。
また、制度への登録日前に請求書を交付している場合は、登録日以降のインボイスを別途交付します。
本記事では、10月に発行する9月分の請求書にはインボイス(適格請求書)の保存が必要であるかについて、制度開始後の変更点とあわせて解説しました。
インボイス制度の開始以前の取引であれば、制度開始後に請求書を発行した場合でもインボイスの保存は必要ありません。たとえば、9月分の請求書を10月に発行する場合は、従来の区分請求書で仕入税額控除を適用できます。
ただし、インボイス制度開始後に月の途中で登録した場合は注意が必要です。取引内容によってインボイスの扱いが異なるため、判断基準を理解しておかなければなりません。
誤った請求書を発行しないために、本記事を参考にして発行すべき請求書の判断基準を把握しましょう。