更新日:2025.01.30
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インボイス制度では、インボイス(適格請求書)の保存にまつわるルールが定められています。具体的には、発行・受領したインボイスの保存方法や期間に関する規定などを設けています。
インボイスの保存は、仕入税額控除の適用を受けるためには必要不可欠な要件です。ただ、保存に関して細かなルールも存在していることから、適切に対応しないと控除が認められないなどの影響が生じる可能性があり、注意が必要です。
本記事では、インボイスの保存義務について、インボイス制度のルールや作業負担軽減のポイントとあわせて解説します。
インボイス(適格請求書)を保存するには、インボイス制度と電子帳簿保存法の2つのルールを守らなければなりません。これらのルールを守らないとインボイス制度を利用できなかったり、データ保存のやり直しを求められたりする可能性があります。
ここでは、インボイスの保存にまつわる2つのルールについて、解説します。
インボイス制度とは、売り手がインボイスを発行して買い手に正確な適用税率や消費税を伝えることで、消費税の透明性を高めるための制度です。インボイス制度を利用すると、以下のようなメリットがあります。
ただし、インボイス制度を利用するためには、売り手・買い手ともにインボイスを7年間保存しなければなりません。また、インボイスには登録番号や適用税率、消費税額などの法定の記載事項を漏れなく記載する必要があります。
電子帳簿保存法は、税務関係の帳簿や書類の電子データでの保存ルールを定めた法律であり、以下の3つの区分があります。
電子帳簿保存法に則って電子保存をおこなうと、保管スペースの削減や経理業務の効率化、テレワーク時の書類確認が可能になるなどのメリットがあります。
なお、電子帳簿保存法の要件を満たすためには専門的な知識が必要であり、税理士や専門家への相談がおすすめです。自社での対応が難しい場合は、要件を満たした各種サービスの利用を検討しましょう。
インボイス制度を利用するためには、インボイス(適格請求書)を保存しなければなりません。保存義務を守ることで税務調査での指摘リスクを低減できたり、仕入税額控除が適用できたりなどのメリットがあります。
一方で、保存義務を守らないと仕入税額控除が利用できないことや、税務調査で指摘を受けることなどのリスクがあるため、適切な対応が重要です。
ここでは、インボイスの保存義務に関する2つのルールについて、解説します。
インボイスは、法人・個人事業主ともに7年間の保存が必要です。ただし、赤字や災害による損失が生じた事業年度に発行されたインボイスは、10年間保存しなければなりません。
インボイスの保存開始時期は、インボイスが発行された事業年度の末日の翌日から2か月が経過した日から起算します。3月決算の会社で2024年1月にインボイスが発行されたと仮定すると、保存期間は以下のとおりです。
インボイスの保存期間は、発行からすぐに7年間カウントするわけではないため、保存期間の計算を間違えないように、インボイスの保存開始時期を把握しておく必要があります。
インボイスの保存形式は、紙とデータ保存の2種類です。電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法にもとづいて真実性の確保と可視性の確保の2つの要件を満たす必要があります。
2024年1月1日以降は、電子取引データは電子保存が義務化され、紙での保存は認められなくなりました。したがって、電子帳簿保存法に対応したシステムの選択や、保存ルールを明確化して社内体制を整備するなどの適切な対応が必要です。
インボイスが電子帳簿保存法に対応するためには、真実性の確保と可視性の確保の2つのポイントがあります。これら2つのポイントをおさえることで、法令に遵守した税務対応や、リスク管理などが可能です。
一方で、これらのポイントをおさえないとデータの保存のやり直しを求められるだけではなく、インボイス制度が利用できない可能性もあります。
ここでは、インボイスで電子帳簿保存法に対応するための2つのポイントについて、解説します。
真実性の確保は、データの改ざんや消去を防止して、保存データの信頼性を確保するための要件です。真実性を確保するためのおもな対応は、以下のとおりです。
真実性を確保することで、税務調査での否認リスク低減や、データを証拠資料としての利用だけではなく、トラブル発生時に容易に証明ができるメリットがあります。ただし、システムを選択する際には将来の法改正への対応が可能かを確認したり、規程に沿った運用を徹底したりする必要があります。
可視性の確保は、保存したデータをいつでも閲覧・確認できる状態を維持するための要件です。可視性を確保するためのおもな対応は、以下のとおりです。
可視性を確保することで、業務効率の向上や税務調査への迅速な対応、テレワーク時のデータアクセスが可能になるなどのメリットがあります。ただし、システム環境の整備や検索速度・精度の確認、アクセス権限の設定などの対応が必要です。
インボイス制度に対応した保存作業の負担を減らすには、電子帳簿保存サービスや請求書の受領代行サービスの利用がおすすめです。
代表的なサービスとその特徴は、以下のとおりです。
サービス |
特徴 |
楽々クラウド電子帳簿保存サービス (NTTファイナンス) |
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TOKIUMインボイス |
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奉行クラウド経理DX Suite |
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「Misoca」+「スマート証憑管理」 |
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ここで紹介したサービスは規模や予算に応じて選択できるため、インボイス制度対応の負担を大きく軽減できます。これらのサービスを利用することで、業務の効率化だけではなく、法令対応の負担も軽減できます。
本記事では、インボイスの保存義務について、インボイス制度のルールや作業負担軽減のポイントとあわせて解説しました。
インボイス(適格請求書)の保存には、保存期間や保存方法などの要件を満たす必要があります。また、売り手は発行したインボイスの写しの保存も求められるため、確実な保管体制の構築が重要です。
インボイスの保存業務を効率的におこなうためには、電子帳簿保存法に対応した専用サービスの導入を検討するのもひとつの方法です。自社の業務規模や既存のシステムとの連携状況を考慮しながら、最適な保存方法を選択しましょう。