更新日:2025.03.03
ー 目次 ー
インボイス制度は、売り手と買い手の双方が正確な消費税額を把握して、適正な申告と納税を実現するための制度です。この制度では、インボイス(適格請求書)の発行と保存が求められますが、電子データでの発行が必須ではありません。
インボイス制度の要件を満たしていれば、紙の請求書であってもインボイスとして利用できます。ただし、電子データとして発行する場合や、紙の請求書を電子保存する場合には、電子帳簿保存法に定められた要件にしたがう必要があります。
本記事では、紙と電子それぞれの発行方法や保存のルールについて、2024年からの制度変更もあわせて解説します。
インボイス制度は2023年10月から導入された制度です。インボイス制度を利用するためには、事前にインボイス発行事業者への登録や記載要件の確認など、いくつかの要件を満たす必要があります。
これらの要件を満たさないと、仕入税額控除を受けられないだけではなく、取引先との関係悪化につながる可能性もあります。したがって、インボイス制度を利用するためには要件を正しく把握しておくことが大切です。
ここでは、インボイス制度の基礎知識について解説します。
インボイス制度を利用するためには、インボイス(適格請求書)の発行と保存が必要です。買い手はインボイスを適切に保存することで、売上時に受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引けます(仕入税額控除)。
インボイス制度では、従来の記載方式に加えて、以下の3つの項目を記載する必要があります。
なお、インボイスを発行するためには、事前にインボイス発行事業者に登録しなければなりません。対象期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者は、インボイスが発行できないため、注意が必要です。
電子帳簿保存法とは、税法で保存が義務づけられている帳簿や書類を、電子データで保存する際のルールを定めた法律です。請求書や領収書、決算書などを電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件にしたがわなければなりません。
電子データの保存には、以下の3つの区分があります。
電子帳簿保存法にもとづいて電子データで交付されたインボイスを適切に保存しないと、インボイス制度の仕入税額控除が受けられなくなる可能性があります。
インボイス(適格請求書)は、必須の記載要件を満たしていれば、紙でも電子データでも発行形式は問われません。紙で発行した請求書であっても、登録番号や税率区分、消費税額などの必要事項が記載されていれば、インボイスとして利用できます。
ただし、紙で発行した請求書を後から電子保存に切り替える場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件にしたがう必要があります。スキャナで読み取る際の解像度やタイムスタンプの付与など、いくつかの要件を満たさなければなりません。
インボイス制度を利用するためには、インボイス(適格請求書)を適切に保存する必要があります。インボイスの保存期間は紙・電子データ、法人・個人を問わず7年間です。
不適切な保存方法では税務調査の際に問題となる可能性があり、最悪の場合には仕入税額控除が認められないこともあります。また、紙と電子データではそれぞれ保存方法が異なるため、自社の運用方法にあわせた適切な保存方法の選択が大切です。
ここでは、インボイスの保存に関するルールと注意点について解説します。
紙のインボイスは、原本での保存のほか、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件にしたがえば電子化して保存することも可能です。インボイスは法人・個人を問わず7年間の保存義務があるため、長期保存に耐えうる保管方法を検討しましょう。
保存する際には、以下の点に注意が必要です。
これらの保存ルールを守ることで、税務調査にも適切な対応ができ、インボイス制度を問題なく利用できます。
電子インボイスは「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件を満たす必要があります。
また、システムでの監視や事務処理規程の整備も必要です。電子インボイスの保存では、データの改ざん防止がとくに重要となるため、タイムスタンプの付与や電子署名の活用などの適切な措置を講じる必要があります。
さらに、バックアップの作成や定期的なデータの確認など、デジタルデータならではの管理体制も整備しましょう。
2023年度の税制改正で、電子帳簿保存制度が見直されて、電子帳簿保存法の内容が改正されました。改正後の要件や措置を把握しておかないと、法令違反となりインボイス制度が利用できなくなる可能性があります。
ここでは、2024年以降の電子取引データの保存のポイントについて解説します。
2024年1月1日以降は、電子取引データの保存が完全に義務化されます。メールやクラウドサービスなどで受け取った請求書などの電子取引データは、電子データのまま保存しなければなりません。
電子データの保存にあたっては、検索機能の確保や改ざん防止措置など、電子帳簿保存法で定められた要件にしたがう必要があります。紙に印刷して保存のみは原則として認められないため、電子取引データの保存に対応した体制を整えることが重要です。
電子データの保存要件を満たすためには、取引年月日や取引先、取引金額などで検索できる機能の確保や、データの訂正や削除の履歴を残せるシステムの導入が必要です。また、保存している電子データは税務調査の際に提出を求められる可能性があるため、速やかに提出できる状態での保管も求められます。
2024年1月1日以降は、以下の要件を満たす場合、改ざん防止や検索機能などの保存時の要件は必要ありません。
また、対象期間の売上高が5,000万円以下、もしくは取引日付・取引先ごとに整理された書面を提示・提出できる場合は、検索機能要件が不要です。ただし、いずれの場合も電子データのダウンロード提供は必須です。
電子取引データのダウンロード提供は必須の要件で、税務調査の際に電子データを提出できない場合は、インボイス制度の仕入税額控除が認められなくなる可能性があります。
本記事では、紙と電子それぞれの発行方法や保存のルールについて、2024年からの制度変更もあわせて解説しました。
紙と電子データのどちらの請求書もインボイスとして利用できますが、それぞれの形式に応じた要件を満たす必要があります。とくに、税制改正で電子取引データの保存に関する要件や措置に変更があったため、対応した電子インボイスの適切な発行・保存が大切です。
インボイス制度への対応は企業の経理業務に大きな影響を与えるため、早めの準備と体制づくりを進めていきましょう。