更新日:2026.09.29

ー 目次 ー
2023年10月から始まったインボイス制度で、「領収書に登録番号は必要なのか?」と対応に迷っていませんか?
この記事では、なぜ登録番号が必要なのかという基本から、インボイスとして認められる領収書の正しい書き方、具体的な記載例、手書きの場合の注意点までを解説します。
さらに、1万円未満の取引で適用される少額特例など、登録番号がなくても仕入税額控除が認められるケースや、登録番号がない領収書を受け取った際の対処法、2026年10月以降の経過措置の扱いにも触れます。
2023年10月1日から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、領収書の取り扱いが変わりました。
結論からいうと、買い手側が消費税の「仕入税額控除」を受けるためには、原則として登録番号などの必要事項が記載された適格請求書等の保存が必要です。
登録番号が必要な最大の理由は、消費税の納税額を計算するうえで重要な「仕入税額控除」の適用要件となっているためです。
仕入税額控除とは、事業者が納める消費税額を計算する際に、売上にかかった消費税額から、仕入れや経費の支払いで負担した消費税額を差し引く仕組みを指します。
インボイス制度では、原則として「登録番号」などが記載された適格請求書等を保存することで仕入税額控除を受けます。そのため、登録番号が必要な取引にもかかわらず記載がない領収書では、買い手側が仕入税額控除を受けられない可能性があります。
| 項目 | インボイス制度導入前 (〜2023年9月30日) |
インボイス制度導入後 (2023年10月1日〜) |
|---|---|---|
| 保存が必要な書類 | 区分記載請求書等 | 適格請求書等が原則 |
| 書類の主な要件 | 発行者名、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額など | 登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額等などが追加 |
| 仕入税額控除 | 区分記載請求書等の保存で適用可能 | 適格請求書等の保存が原則必要 |
「登録番号がない領収書は経費として認められない」と誤解されることがありますが、これは間違いです。法人税や所得税の計算における経費・損金と、消費税の仕入税額控除は別の制度です。
登録番号の記載がない領収書でも、取引の事実を証明する書類として経費計上に利用できる場合があります。
「経費にできるか」と「消費税の仕入税額控除を受けられるか」は分けて考えることが重要です。登録番号がなくても経費計上は可能でも、仕入税額控除については特例や経過措置を除き制限されます。
領収書やレシートも、必要な記載事項を満たせば適格請求書または適格簡易請求書として利用できます。
ただし、両者では必要な項目が異なります。通常の適格請求書は6項目、適格簡易請求書は5項目です。
| 記載項目 | 適格請求書 | 適格簡易請求書 |
|---|---|---|
| 発行事業者の氏名または名称および登録番号 | 必要 | 必要 |
| 取引年月日 | 必要 | 必要 |
| 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨) | 必要 | 必要 |
| 税率ごとに区分した対価の額 | 必要+適用税率 | 必要 |
| 税率ごとに区分した消費税額等 | 必要 | 消費税額等または適用税率のいずれか |
| 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | 必要 | 不要 |
適格簡易請求書は、すべての事業者が自由に発行できるわけではありません。不特定かつ多数の者に対して販売等を行う事業者が対象です。
小売業
飲食店業
写真業
旅行業
タクシー業
駐車場業など、不特定かつ多数の者に取引する事業
登録番号の記載場所について、法律上の厳密な位置指定はありません。受け取った側が明確に認識できれば、領収書内のどの位置に記載しても問題ありません。
一般的には、発行者の氏名・名称や住所、電話番号の近くに配置すると分かりやすいでしょう。
領収書
日付:2026年1月15日
宛名:〇〇株式会社 様
品目:デザイン制作費
10%対象:55,000円(税込)
うち消費税額:5,000円
登録番号:T1234567890123
発行者:株式会社サンプルデザイン
住所:東京都〇〇区〇〇1-2-3
電話:03-0000-0000
市販の領収書用紙には登録番号の欄がない場合が多いため、ゴム印を作成したり、手書きで追記したりする方法があります。
はい。手書きであること自体に問題はありません。適格請求書または適格簡易請求書として必要な事項が正しく記載されていれば有効です。
ただし、手書きでは登録番号の書き間違いや、税率・消費税額などの記載漏れが起こりやすいため注意しましょう。記載内容に不備があると、買い手側が仕入税額控除を受けられない可能性があります。
請求書等の交付を受けることが困難な取引や、一定規模以下の事業者が行う少額取引などでは、登録番号入りの領収書を保存しなくても、一定の帳簿保存によって仕入税額控除が認められるケースがあります。
一定規模以下の事業者が行う税込1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくても、一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能です。
対象となるのは、次のいずれかに該当する事業者です。
基準期間における課税売上高が1億円以下
特定期間における課税売上高が5,000万円以下
適用期間は2023年10月1日から2029年9月30日までです。
1万円未満かどうかは、商品1点ごとではなく「一回の取引」の税込金額で判定します。たとえば5,000円の商品と7,000円の商品を同じ会計で購入した場合、合計12,000円となるため少額特例の対象外です。
税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、インボイスの交付義務が免除されています。そのため、買い手側も一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます。
対象となるのは、船舶、バス、鉄道、軌道による旅客の運送です。3万円未満かどうかは切符1枚ごとではなく、一回の取引の税込価額で判定します。
特急料金・急行料金・寝台料金は、旅客運送に直接付帯するため対象
タクシー、航空運賃、駅の入場料金などは公共交通機関特例の対象外
税込3万円未満の自動販売機や自動サービス機からの商品・サービスの購入についても、インボイスの交付義務が免除されます。
対象となるのは、代金の収受と商品・サービスの提供が、その機械だけで完結するものです。
| 該当する例 | 内容 |
|---|---|
| 飲料の自動販売機 | 缶・ペットボトル飲料などの購入 |
| コインロッカー | ロッカーの利用サービス |
| コインランドリー | 洗濯機・乾燥機の利用サービス |
| 金融機関のATM | ATMでの入出金・振込等に係る手数料 |
セルフレジのように単に精算だけを自動化しているものや、ネットバンキング、コインパーキングなどは自動販売機特例の対象とは限らないため注意してください。
従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などのうち、通常必要と認められる部分については、一定事項を記載した帳簿のみで仕入税額控除が認められます。これを出張旅費等特例といいます。
この特例には、概算で支給する旅費だけでなく、通常必要と認められる範囲の実費精算も含まれます。
一方、出張旅費等特例の対象にならない一般の立替経費については、原則として支払先が発行したインボイスの保存が必要です。そのインボイスの宛名が従業員名になっている場合などは、立替金精算書を併せて保存する対応が必要になることがあります。
免税事業者のままでは適格請求書発行事業者の登録番号を持ちません。免税事業者が適格請求書発行事業者として登録を受けると、原則として課税事業者となります。
そのため、インボイス未登録の免税事業者から受け取った領収書には登録番号がありません。原則として適格請求書による全額の仕入税額控除はできませんが、一定期間は経過措置によって仕入税額相当額の一部を控除できます。
| 期間(取引日で判定) | 控除可能な割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 控除不可 |
経過措置を利用する場合は、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書・領収書と、経過措置の対象であることが分かる帳簿の保存が必要です。
2026年10月1日を境に、インボイス未登録事業者から受け取る領収書の消費税処理が変わります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 控除割合を80%から70%へ変更 | 2026年9月30日までの対象取引は80%、10月1日以降は70%。課税仕入れを行った時期で判定する |
| 少額特例は継続 | 対象事業者の税込1万円未満の課税仕入れについては、2029年9月30日まで少額特例を利用できる |
| 会計ソフトの税区分を確認 | 「免税事業者等からの仕入れ80%控除」の設定を、対象時期に応じて70%控除へ切り替える |
| 帳簿の表示も見直す | 経過措置の対象取引であることが後から判別できる状態にする |
はい。必要な要件を満たしていれば、レシートも仕入税額控除に利用できます。
小売業や飲食店業、タクシー業など、不特定多数の顧客を対象とする一定の事業者が発行するレシートは、適格簡易請求書として交付できます。
適格簡易請求書では宛名が不要で、税率ごとの消費税額等または適用税率のどちらか一方を記載すればよい点が通常の適格請求書との主な違いです。
まず、その取引で登録番号入りのインボイス保存が必要なのかを確認してください。
発行者が適格請求書発行事業者で、単なる記載漏れなら修正・再交付を依頼する
発行者がインボイス未登録なら、経過措置の対象になるか確認する
少額特例や公共交通機関特例などに該当するなら、そもそも登録番号入りの領収書保存が不要な場合がある
買い手側が受け取った領収書へ登録番号を勝手に追記して、適格請求書にすることはできません。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。領収書に記載されている登録番号を入力すると、登録事業者の氏名・名称や登録年月日などを確認できます。
特に初めて取引する事業者や高額な取引では、番号が実在するかだけでなく、領収書の発行者名と公表情報が一致しているかまで確認すると安心です。
登録番号の記載漏れや誤りがあった場合、買い手側で修正せず、発行側が正しい内容に修正します。
交付した適格請求書等に誤りがあった場合は、修正した適格請求書等を交付します。元の書類との関係が分かる形で訂正する方法もあります。
登録番号などの必要事項に不備がある場合は、発行元へ修正を依頼します。受け取った側が自分で番号を書き加える対応は避けてください。
発行者自身が手書きで登録番号を記載して領収書を交付することは可能です。市販の領収書へ登録番号のゴム印を押す方法でも問題ありません。
一方、受領者が後から自分で登録番号を書き足して適格請求書にすることはできません。
買い手側が仕入税額控除を受けるためには、領収書に適格請求書発行事業者の登録番号が原則として必要です。
ただし、領収書が通常の適格請求書なのか適格簡易請求書なのかによって必要事項は異なります。通常の適格請求書は6項目、適格簡易請求書は5項目で、簡易インボイスでは宛名を省略でき、消費税額等または適用税率のどちらか一方の記載で足ります。
また、少額特例、公共交通機関特例、自動販売機特例、出張旅費等特例などでは、一定の条件を満たせば登録番号入りの領収書を保存しなくても仕入税額控除を受けられます。
インボイス未登録事業者からの仕入れについても、2031年9月30日までは経過措置があります。2026年10月からは控除割合が80%から70%へ変わるため、会計ソフトの税区分や帳簿記載もあわせて見直しましょう。