更新日:2024.06.03
ー 目次 ー
建設業の請求書は、納品形式だけでなく人工代請求の形式もあるため、インボイス対応後の請求書の書き方に迷う経理の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インボイス(適格請求書)の必要事項だけでなく、「一式」などで記載する納品形式の請求書と「人工代」で記載する請求書の書き方も解説します。
値引きする場合や請求書にミスがあった場合の対処法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
▼この記事で解説する内容
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まずは、インボイスに対応した建設業者の請求書の書き方を、基本事項と納品形式に分けて解説します。あわせて、値引きする場合の書き方も具体的な計算を挙げながら紹介します。
▼ポイント
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適格請求書に国が指定するフォーマットはありません。次の6つの項目を記載していれば、適格請求書として発行できます。
適格請求書発行事業者の登録番号は、適格請求書発行事業者の登録通知書に記載されています。
登録通知書は、インボイス登録の申請が受理されていれば、国税庁から郵送または電子通知されているはずなので、確認しましょう。
登録通知書を紛失した場合には、法人の場合は国税庁法人番号公表サイトで検索、個人は国税局インボイス登録センターに電話で問い合わせましょう。
2〜5の項目は次の「請求書の書き方」で解説します。
6は取引先の正式名称です。
なお、1〜6の項目が満たされていれば適格請求書と認められるため、振込先や支払期限、特記事項など、インボイス対応前から記載している事項も請求書に記載して問題ありません。
「〇〇工事費 一式 〇〇円」と記載する請求書の項目名・金額・税率・税額の書き方を解説します。
内容 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
A工事 |
1 |
式 |
¥1,000,000 |
|
B工事 |
1 |
式 |
¥500,000 |
|
工事費計 |
¥1,500,000 |
|||
諸経費 |
1 |
式 |
¥60,000 |
|
小計 |
¥1,560,000 |
|||
消費税 |
10%対象 |
¥,1,560,000 |
¥156,000 |
|
8%対象(※) |
¥0 |
¥0 |
||
合計金額 |
¥1,716,000 |
工事費や諸経費を「一式」として、税抜金額を記載します。
消費税は10%と8%の税率ごとに区分した記載が必要です。
消費税8%の対象がある場合は、どの項目が8%の対象なのかわかるように、内容の部分で「〇〇※」と記載し、欄外や内容を記載した下の行に「※軽減税率対象」と記載しておきましょう。
内容 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
人工費(5人×4日間) |
20 |
人工 |
¥50,000 |
¥1,000,000 |
消費税 |
10%対象 |
¥100,000 |
¥100,000 |
|
8%対象(※) |
¥0 |
¥0 |
||
合計金額 |
¥1,100,000 |
人工代(人工費)では人数と期間を乗じた数を数量として扱い、単位には「人工」と記載します。単価に記載するのは1人あたりの金額です。
人工代は消費税10%の対象なので、合計金額に10%を乗じたものを消費税額として記載しましょう。
内容 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
A工事 |
1 |
式 |
¥1,000,000 |
|
B工事 |
1 |
式 |
¥500,000 |
|
工事費計 |
¥1,500,000 |
|||
お値引き |
¥100,000 |
|||
小計 |
¥1,400,000 |
|||
消費税 |
10%対象 |
¥1,363,637 |
¥140,000 |
|
8%対象(※) |
¥0 |
¥0 |
||
合計金額 |
¥1,540,000 |
値引きする場合、工事費や人工代の税抜合計金額から、税抜の値引き金額を差し引きして小計を出します。その小計金額に対して10%の消費税を計算するのが基本です。
消費税額分を値引きしたい場合は、税抜金額に対して「0.0909090909」を乗じた金額を値引きすれば算出できますが、次の表のように計算・金額が複雑になってしまいます。
内容 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
A工事 |
1 |
式 |
¥1,000,000 |
|
B工事 |
1 |
式 |
¥500,000 |
|
工事費計 |
¥1,500,000 |
|||
お値引き |
¥-136,363 |
|||
小計 |
¥1,363,637 |
|||
消費税 |
10%対象 |
¥1,363,637 |
¥136,363 |
|
8%対象(※) |
¥0 |
¥0 |
||
合計金額 |
¥1,500,000 |
一人親方・個人事業主でも一式形式や人工代形式までの書き方は同様です。
ただし、源泉徴収がある契約の場合には、源泉徴収税額を「-」または「▲」で記載する必要があります。
内容 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
人工費(1人×4日間) |
4 |
人工 |
¥50,000 |
¥200,000 |
消費税 |
10%対象 |
¥200,000 |
¥20,000 |
|
8%対象(※) |
¥0 |
¥0 |
||
源泉徴収税 |
¥-2,042 |
|||
合計金額 |
¥217,958 |
源泉徴収の税率は100万円までは10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。
なお、源泉徴収額は工事費等の金額と消費税額を加算した金額に対して、税率を乗じて計算します。税抜金額ではないため注意しましょう。
ここでは、インボイス制度での消費税計算に関する質問に回答します。
▼ポイント
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消費税が10%の内容でしか請求しない場合でも、請求書の項目には8%の欄を用意しましょう。そのうえで、8%対象がなければ0円と記載する必要があります。
なお、軽減税率の対象は外食やケータリング、酒類以外の飲食料品です。品目名での区分ではなく用途で区分されているので、例えば工業用の塩などは対象外となります。
郵送または電子送付(メール、経理システムなど)を選択できます。
郵送の場合は三つ折りにして封入しても構いません。相手方での紛失・混入を避けるために、封筒の左下に「請求書在中」と記載するのが一般的です。
電子送付の場合はPDFをメールに添付して送信する方法や経理システムから送信する方法があります。相手方と同じ経理システムを使用していれば、授受と計上がスムーズに進むでしょう。
取引先に渡す前に発覚したミスであれば、社内のルールに従って破棄しましょう。先方に送付した後でミスが発覚した場合は、次の手順で対処します。
再発行する請求書は、発行日は変えずに請求書番号を変更するのが一般的です。
再発行した請求書を届けるときは、お詫びを兼ねて持参するケースもあります。
しかし、スピード感を求められる場合にはPDF等での送付が適しています。取引先の都合に合わせましょう。
なお、物品の取引など、その場で請求伝票を授受するケースもあるでしょう。
ミスへの対応に備えて白紙伝票を用意しておくのが理想的ですが、その場で再発行できない場合は訂正箇所に二重線を引き、訂正印を押して書き替えます。
請求伝票を取り扱うときは、訂正印を持っておくのがおすすめです。
インボイス対応後の請求書では、適格請求書発行事業者登録番号や税率ごとの税額を記載する必要があります。対応前までに使っていたフォーマットから変更する必要があるため、6つの必要事項が含まれているか注意が必要です。
対応前に使っていたフォーマットからの変更や経理業務のフローの変化などが想定されるため、ミスに対するより一層の注意が必要となるでしょう。
ミスが生じたときは再発行でも対応できますが、信頼を継続させるためには事前確認を徹底することをおすすめします。
これらの手間やコストを考えたとき、ミスが生じにくく送付も便利な経理システムを導入することも選択肢の1つです。