更新日:2025.04.30
ー 目次 ー
本記事では、病院におけるインボイス制度の概要や適用範囲、発行・登録番号の要否、例外ケース、実務の注意点などを分かりやすく解説します。結論として、通常の医療行為は非課税のため原則インボイス発行は不要ですが、一部例外には注意が必要です。最新の制度やよくある質問も網羅しており、医療機関の経営者や経理担当、医療従事者の皆様が具体的な対応方法を把握できます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日より導入された消費税の仕入税額控除の新しい仕組みです。医療機関にもこのインボイス制度が導入されている一方、医療機関に特有の「非課税取引」といった扱いも多く、他業種とは異なる運用となる部分が存在します。
病院やクリニックなどの医療機関の収入や取引は、一般的な商取引と異なり、消費税の課税関係が複雑です。主に次の3つの税区分に分けられます。
取引内容 |
税区分 |
具体例 |
インボイスの要否 |
保険診療・健康保険適用の医療行為 |
非課税 |
外来診察、入院医療、調剤薬局の保険処方など |
不要 |
自由診療・保険適用外のサービス |
課税 |
美容医療、人間ドック、健康診断(個人向け)など |
必要(場合による) |
附帯業務・その他サービス |
課税 |
駐車場の利用料、医療機関内の売店収入、賃貸収入など |
必要 |
このように、病院の収入には消費税が課される「課税取引」と、消費税が非課税となる「非課税取引」が混在しています。そのため、インボイス制度の下で病院が適切に制度へ対応するためには、各業務の税区分を正確に理解し、対応範囲を明確にすることが重要です。
日本の医療機関で提供される多くの診療行為や処方、入院医療などは、消費税法に基づき「非課税取引」とされています。これは、国民の健康を守るという公的な役割を持つ病院や診療所が、消費税の負担を患者や保険組合などに転嫁しないための措置です。健康保険法や医療法、国民健康保険法などの法令に基づく治療、処方薬の提供は全て非課税となっており、これらの取引についてはインボイス(適格請求書)の発行義務がありません。
取引内容 |
非課税理由 |
インボイス発行義務 |
健康保険適用の外来診療・入院 |
社会保険制度による保険診療のため |
なし |
処方薬(院内処方、院外処方せんによる院外薬局調剤) |
非課税対象の医薬品の提供 |
なし |
リハビリテーション・検査 |
医師の指示による保険診療 |
なし |
入院費(食事療養費含む) |
医療機関での保険治療に伴う費用 |
なし |
病院の一般的な医療行為は消費税の「非課税取引」となり、原則インボイス発行の必要はありません。しかし、一定の収入やサービス提供については「課税取引」となり、インボイス(適格請求書)の発行が求められる場合があります。この章では、病院で例外的にインボイス発行が必要となるケースについて具体的に解説します。
医療機関が提供する"保険診療"や"医師法で定める医療行為"は消費税非課税ですが、以下のようなサービスは課税対象となり、インボイスの交付が必要です。
サービス・収入項目 |
非課税/課税区分 |
インボイス発行要否 |
具体的な例 |
診断書・証明書の交付手数料 |
課税 |
発行必要 |
医師による各種診断書(就職、保険会社提出用、障害年金用 など) |
自由診療 |
課税 |
発行必要 |
美容外科、インプラント(歯科)、レーシック、がん免疫療法 など |
予防接種(自治体依頼分を除く) |
課税 |
発行必要 |
会社負担のインフルエンザ・A型肝炎ワクチン など |
健康診断(会社等の意向によるもの) |
課税 |
発行必要 |
企業法定健診、人間ドック など |
医療機関が上記のような「対価を受けておこなう課税取引」を行った場合、取引先(個人・法人)がインボイスの発行を求めた際には、適格請求書の発行義務が生じます。
病院が本業の医療提供以外に営む付帯サービス(医療外収入)は、その大半が課税取引に該当します。収入の種類ごとの税区分およびインボイス対応の要否について、以下の通りまとめます。
付帯業務 |
収入の内容 |
課税/非課税区分 |
インボイス対応 |
駐車場運営 |
駐車料金収入 |
課税 |
必要 |
売店運営 |
物販・飲食販売 |
課税 |
必要 |
テナント賃貸 |
土地以外の貸付 |
課税 |
必要 |
自販機収入 |
飲料・食品販売 |
課税 |
必要 |
医療機器リース |
リース料 |
課税 |
必要 |
コピー代金等 |
資料・コピー提供 |
課税 |
必要 |
注意点:土地の貸付については、一定期間(1カ月を超える契約等)の場合は非課税となりますが、建物の賃貸収入は消費税課税対象です。医療機関が共用部に賃貸しているコンビニ・カフェ・薬局には発行義務があります。
企業や団体が従業員の健康診断や予防接種費用を負担する場合、病院が取引対象となるのは「法人」や「事業者」となります。この場合は消費税法上の課税取引となり、以下のようなポイントに注意が必要です。
一般の診療報酬とは異なり、法人・団体向けの請求には正確な区分記載請求書・適格請求書(インボイス)が求められるため、請求書の様式や記載内容に十分な注意が必要です。
このように、診断書作成料、自由診療、医療外収入、法人向けサービス等は「課税取引」となり、顧客からインボイス発行の要請があった場合、適切に対応する体制づくりが重要です。会計部門・経営管理担当者・経理責任者は、各取り扱いごとに課税・非課税判断を明確にし、適格請求書等保存方式へ万全の準備を行う必要があります。
インボイス制度において、医療機関である病院がインボイス登録番号(適格請求書発行事業者登録番号)を取得すべきかどうかは、病院の収入の性質や事業形態、税務上の扱いによって判断が必要です。以下では、取得の判断基準や取得した場合の実務対応について網羅的に解説します。
インボイス制度下では、課税取引に対して適格請求書(インボイス)の発行が求められます。多くの病院において主な収入源は「診療報酬」や「医療行為」に該当し、これは消費税非課税取引となっています。しかし、例外的に課税対象となる収入(例:診断書作成、自由診療、予防接種(法定外)、健診・人間ドック、医療外収入など)が一定規模ある場合、登録番号取得を検討する必要があります。
収入区分 |
消費税区分 |
インボイス登録番号の取得必要性 |
主な具体例 |
外来・入院診療報酬 |
非課税 |
不要 |
保険診療、診察料、入院料 |
自由診療・契約健診 |
課税 |
必要(取引先が法人・事業者の場合 特に要検討) |
人間ドック、企業健診、自費手術 |
各種証明書・診断書 |
課税 |
必要 |
診断書、証明書、死亡診断書(公的義務を除く) |
予防接種(任意・渡航等) |
課税 |
必要 |
インフルエンザ、海外渡航のワクチン |
医療外収入 |
課税 |
必要 |
売店、駐車場、賃貸(テナント) |
受託検診・委託業務 |
課税 |
必要 |
企業健康診断、委託研究、産業医報酬等 |
上記のとおり、病院の事業全体が医療非課税で完結していれば基本的にインボイス登録番号は不要です。しかし実態としては、法人向けの健診や委託検診、証明書発行、テナント賃貸料など課税取引収入が一定程度発生するのが一般的であり、特に企業や法人から「インボイスがないと仕入税額控除できない」と求められるケースも増えています。そのため、年間売上高の消費税課税取引(非課税以外)が一定金額以上ある場合や、複数の法人と継続的な契約がある場合には登録が推奨されます。
インボイス登録番号を取得し、「適格請求書発行事業者」となった場合、以下の対応が病院経営や事務部門に求められます。
特に、課税売上と非課税売上の混在がある場合、税理士や税務担当者と連携し、課税区分の誤り防止や正確な消費税申告が求められます。
適格請求書発行事業者となることで、病院は課税取引に関し、取引先から要請があった場合にはインボイスを発行する法的義務があります。また、自院が経費等の支払でインボイスを受け取る立場となる場合も増加します。実際の会計処理や税務対応では以下のポイントに留意しましょう。
会計処理全体の流れや事務作業を整備することで、制度違反やトラブルの防止につながります。医療法人や大規模病院では、会計システムベンダーや税理士法人と連携し、早期のシステム対応・職員教育体制を整えておくことが重要です。
対応項目 |
具体的内容 |
留意点 |
インボイス発行 |
記載要件遵守、取引先への迅速な発行 |
フォーマット統一とシステム連携 |
会計処理 |
課税・非課税の区分経理、帳票管理 |
消費税申告の誤り防止、税理士との連携 |
保存義務 |
インボイス・帳票の7年保存 |
電子データ保存にも対応 |
職員教育 |
制度理解、実務対応を周知 |
経理・事務部門に加え現場職員まで徹底 |
このように、病院がインボイス登録番号を取得するかどうかの判断には、現状の取引構造や今後の事業展開も踏まえた検討が求められます。現場としては、制度開始後も実務に即した対応が漏れなく行われるよう、経営層・会計責任者・現場職員が一丸となって準備することが不可欠です。
病院におけるインボイス制度導入では、職員や会計部門への研修・周知活動が極めて重要です。特に受付担当や会計担当者は、患者や取引先からインボイス(適格請求書)に関する問い合わせを受けることが想定されます。具体的には、非課税医療行為と課税取引の違い、インボイスの発行義務の有無、患者からの要望時の正しい対応フローなどを明確に周知する必要があります。
会計システムの設定見直しや、領収書・請求書発行時の業務手順についてもマニュアル整備やOJTによる実践的な指導が望まれます。また、看護師や医療事務職員などにも、分かりやすい周知資料を提供し、混乱を防ぐ対応が不可欠です。
インボイス制度対応においては、医療法人や大規模病院の場合、税理士や行政書士など外部専門家との連携が効果的です。消費税法やインボイス制度の解釈、実際の会計処理、対象外収入の正確な区分作業など、専門的な判断が求められる領域においては、税理士の意見を積極的に取り入れるべきです。
とくに、予防接種や診断書発行、健康診断など課税対象となる収入や医療外収益に関しては、その扱いについて最新情報をもとにした運用方法・実務指針をもらい、法令遵守かつ実務の効率化に努めましょう。行政書士には、インボイス登録番号取得や各種届出書類の作成・提出に関するサポートを依頼すると円滑です。
業務内容 |
税理士 |
行政書士 |
消費税の区分判定 |
◎ |
△ |
インボイス発行・保存対応 |
◎ |
△ |
登録番号取得手続き |
○ |
◎ |
ガイドライン作成支援 |
○ |
◎ |
法令遵守チェック |
◎ |
○ |
法律上、健康保険診療や労災・自賠責などの保険診療等は消費税の非課税取引とされているため、インボイス(適格請求書)は必要ありません。
保険診療のみを行っている場合は非課税売上となるためインボイス発行の必要性はありません。一方で、自由診療(美容医療、健診、予防接種など)や、診断書・証明書発行など課税取引が一定以上ある場合、インボイス発行事業者に登録することで、取引先からの仕入税額控除にも対応できます。
病院や医療機関が地方自治体や企業などから委託を受けて行う健康診断、産業医業務、研究協力などは、「課税取引」に該当する場合があります。
病院では、健康保険適用の医療行為は消費税非課税取引となるため、原則としてインボイス発行や登録番号の取得は不要です。ただし、診断書・自由診療・駐車場収入など一部課税取引には留意し、必要に応じて制度対応・会計処理を行いましょう。不明点は税理士や行政書士へ相談することが重要です。
本記事では、病院におけるインボイス制度の概要や適用範囲、発行・登録番号の要否、例外ケース、実務の注意点などを分かりやすく解説します。結論として、通常の医療行為は非課税のため原則インボイス発行は不要ですが、一部例外には注意が必要です。最新の制度やよくある質問も網羅しており、医療機関の経営者や経理担当、医療従事者の皆様が具体的な対応方法を把握できます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日より導入された消費税の仕入税額控除の新しい仕組みです。医療機関にもこのインボイス制度が導入されている一方、医療機関に特有の「非課税取引」といった扱いも多く、他業種とは異なる運用となる部分が存在します。
病院やクリニックなどの医療機関の収入や取引は、一般的な商取引と異なり、消費税の課税関係が複雑です。主に次の3つの税区分に分けられます。
取引内容 |
税区分 |
具体例 |
インボイスの要否 |
保険診療・健康保険適用の医療行為 |
非課税 |
外来診察、入院医療、調剤薬局の保険処方など |
不要 |
自由診療・保険適用外のサービス |
課税 |
美容医療、人間ドック、健康診断(個人向け)など |
必要(場合による) |
附帯業務・その他サービス |
課税 |
駐車場の利用料、医療機関内の売店収入、賃貸収入など |
必要 |
このように、病院の収入には消費税が課される「課税取引」と、消費税が非課税となる「非課税取引」が混在しています。そのため、インボイス制度の下で病院が適切に制度へ対応するためには、各業務の税区分を正確に理解し、対応範囲を明確にすることが重要です。
日本の医療機関で提供される多くの診療行為や処方、入院医療などは、消費税法に基づき「非課税取引」とされています。これは、国民の健康を守るという公的な役割を持つ病院や診療所が、消費税の負担を患者や保険組合などに転嫁しないための措置です。健康保険法や医療法、国民健康保険法などの法令に基づく治療、処方薬の提供は全て非課税となっており、これらの取引についてはインボイス(適格請求書)の発行義務がありません。
取引内容 |
非課税理由 |
インボイス発行義務 |
健康保険適用の外来診療・入院 |
社会保険制度による保険診療のため |
なし |
処方薬(院内処方、院外処方せんによる院外薬局調剤) |
非課税対象の医薬品の提供 |
なし |
リハビリテーション・検査 |
医師の指示による保険診療 |
なし |
入院費(食事療養費含む) |
医療機関での保険治療に伴う費用 |
なし |
病院の一般的な医療行為は消費税の「非課税取引」となり、原則インボイス発行の必要はありません。しかし、一定の収入やサービス提供については「課税取引」となり、インボイス(適格請求書)の発行が求められる場合があります。この章では、病院で例外的にインボイス発行が必要となるケースについて具体的に解説します。
医療機関が提供する"保険診療"や"医師法で定める医療行為"は消費税非課税ですが、以下のようなサービスは課税対象となり、インボイスの交付が必要です。
サービス・収入項目 |
非課税/課税区分 |
インボイス発行要否 |
具体的な例 |
診断書・証明書の交付手数料 |
課税 |
発行必要 |
医師による各種診断書(就職、保険会社提出用、障害年金用 など) |
自由診療 |
課税 |
発行必要 |
美容外科、インプラント(歯科)、レーシック、がん免疫療法 など |
予防接種(自治体依頼分を除く) |
課税 |
発行必要 |
会社負担のインフルエンザ・A型肝炎ワクチン など |
健康診断(会社等の意向によるもの) |
課税 |
発行必要 |
企業法定健診、人間ドック など |
医療機関が上記のような「対価を受けておこなう課税取引」を行った場合、取引先(個人・法人)がインボイスの発行を求めた際には、適格請求書の発行義務が生じます。
病院が本業の医療提供以外に営む付帯サービス(医療外収入)は、その大半が課税取引に該当します。収入の種類ごとの税区分およびインボイス対応の要否について、以下の通りまとめます。
付帯業務 |
収入の内容 |
課税/非課税区分 |
インボイス対応 |
駐車場運営 |
駐車料金収入 |
課税 |
必要 |
売店運営 |
物販・飲食販売 |
課税 |
必要 |
テナント賃貸 |
土地以外の貸付 |
課税 |
必要 |
自販機収入 |
飲料・食品販売 |
課税 |
必要 |
医療機器リース |
リース料 |
課税 |
必要 |
コピー代金等 |
資料・コピー提供 |
課税 |
必要 |
注意点:土地の貸付については、一定期間(1カ月を超える契約等)の場合は非課税となりますが、建物の賃貸収入は消費税課税対象です。医療機関が共用部に賃貸しているコンビニ・カフェ・薬局には発行義務があります。
企業や団体が従業員の健康診断や予防接種費用を負担する場合、病院が取引対象となるのは「法人」や「事業者」となります。この場合は消費税法上の課税取引となり、以下のようなポイントに注意が必要です。
一般の診療報酬とは異なり、法人・団体向けの請求には正確な区分記載請求書・適格請求書(インボイス)が求められるため、請求書の様式や記載内容に十分な注意が必要です。
このように、診断書作成料、自由診療、医療外収入、法人向けサービス等は「課税取引」となり、顧客からインボイス発行の要請があった場合、適切に対応する体制づくりが重要です。会計部門・経営管理担当者・経理責任者は、各取り扱いごとに課税・非課税判断を明確にし、適格請求書等保存方式へ万全の準備を行う必要があります。
インボイス制度において、医療機関である病院がインボイス登録番号(適格請求書発行事業者登録番号)を取得すべきかどうかは、病院の収入の性質や事業形態、税務上の扱いによって判断が必要です。以下では、取得の判断基準や取得した場合の実務対応について網羅的に解説します。
インボイス制度下では、課税取引に対して適格請求書(インボイス)の発行が求められます。多くの病院において主な収入源は「診療報酬」や「医療行為」に該当し、これは消費税非課税取引となっています。しかし、例外的に課税対象となる収入(例:診断書作成、自由診療、予防接種(法定外)、健診・人間ドック、医療外収入など)が一定規模ある場合、登録番号取得を検討する必要があります。
収入区分 |
消費税区分 |
インボイス登録番号の取得必要性 |
主な具体例 |
外来・入院診療報酬 |
非課税 |
不要 |
保険診療、診察料、入院料 |
自由診療・契約健診 |
課税 |
必要(取引先が法人・事業者の場合 特に要検討) |
人間ドック、企業健診、自費手術 |
各種証明書・診断書 |
課税 |
必要 |
診断書、証明書、死亡診断書(公的義務を除く) |
予防接種(任意・渡航等) |
課税 |
必要 |
インフルエンザ、海外渡航のワクチン |
医療外収入 |
課税 |
必要 |
売店、駐車場、賃貸(テナント) |
受託検診・委託業務 |
課税 |
必要 |
企業健康診断、委託研究、産業医報酬等 |
上記のとおり、病院の事業全体が医療非課税で完結していれば基本的にインボイス登録番号は不要です。しかし実態としては、法人向けの健診や委託検診、証明書発行、テナント賃貸料など課税取引収入が一定程度発生するのが一般的であり、特に企業や法人から「インボイスがないと仕入税額控除できない」と求められるケースも増えています。そのため、年間売上高の消費税課税取引(非課税以外)が一定金額以上ある場合や、複数の法人と継続的な契約がある場合には登録が推奨されます。
インボイス登録番号を取得し、「適格請求書発行事業者」となった場合、以下の対応が病院経営や事務部門に求められます。
特に、課税売上と非課税売上の混在がある場合、税理士や税務担当者と連携し、課税区分の誤り防止や正確な消費税申告が求められます。
適格請求書発行事業者となることで、病院は課税取引に関し、取引先から要請があった場合にはインボイスを発行する法的義務があります。また、自院が経費等の支払でインボイスを受け取る立場となる場合も増加します。実際の会計処理や税務対応では以下のポイントに留意しましょう。
会計処理全体の流れや事務作業を整備することで、制度違反やトラブルの防止につながります。医療法人や大規模病院では、会計システムベンダーや税理士法人と連携し、早期のシステム対応・職員教育体制を整えておくことが重要です。
対応項目 |
具体的内容 |
留意点 |
インボイス発行 |
記載要件遵守、取引先への迅速な発行 |
フォーマット統一とシステム連携 |
会計処理 |
課税・非課税の区分経理、帳票管理 |
消費税申告の誤り防止、税理士との連携 |
保存義務 |
インボイス・帳票の7年保存 |
電子データ保存にも対応 |
職員教育 |
制度理解、実務対応を周知 |
経理・事務部門に加え現場職員まで徹底 |
このように、病院がインボイス登録番号を取得するかどうかの判断には、現状の取引構造や今後の事業展開も踏まえた検討が求められます。現場としては、制度開始後も実務に即した対応が漏れなく行われるよう、経営層・会計責任者・現場職員が一丸となって準備することが不可欠です。
病院におけるインボイス制度導入では、職員や会計部門への研修・周知活動が極めて重要です。特に受付担当や会計担当者は、患者や取引先からインボイス(適格請求書)に関する問い合わせを受けることが想定されます。具体的には、非課税医療行為と課税取引の違い、インボイスの発行義務の有無、患者からの要望時の正しい対応フローなどを明確に周知する必要があります。
会計システムの設定見直しや、領収書・請求書発行時の業務手順についてもマニュアル整備やOJTによる実践的な指導が望まれます。また、看護師や医療事務職員などにも、分かりやすい周知資料を提供し、混乱を防ぐ対応が不可欠です。
インボイス制度対応においては、医療法人や大規模病院の場合、税理士や行政書士など外部専門家との連携が効果的です。消費税法やインボイス制度の解釈、実際の会計処理、対象外収入の正確な区分作業など、専門的な判断が求められる領域においては、税理士の意見を積極的に取り入れるべきです。
とくに、予防接種や診断書発行、健康診断など課税対象となる収入や医療外収益に関しては、その扱いについて最新情報をもとにした運用方法・実務指針をもらい、法令遵守かつ実務の効率化に努めましょう。行政書士には、インボイス登録番号取得や各種届出書類の作成・提出に関するサポートを依頼すると円滑です。
業務内容 |
税理士 |
行政書士 |
消費税の区分判定 |
◎ |
△ |
インボイス発行・保存対応 |
◎ |
△ |
登録番号取得手続き |
○ |
◎ |
ガイドライン作成支援 |
○ |
◎ |
法令遵守チェック |
◎ |
○ |
法律上、健康保険診療や労災・自賠責などの保険診療等は消費税の非課税取引とされているため、インボイス(適格請求書)は必要ありません。
保険診療のみを行っている場合は非課税売上となるためインボイス発行の必要性はありません。一方で、自由診療(美容医療、健診、予防接種など)や、診断書・証明書発行など課税取引が一定以上ある場合、インボイス発行事業者に登録することで、取引先からの仕入税額控除にも対応できます。
病院や医療機関が地方自治体や企業などから委託を受けて行う健康診断、産業医業務、研究協力などは、「課税取引」に該当する場合があります。
病院では、健康保険適用の医療行為は消費税非課税取引となるため、原則としてインボイス発行や登録番号の取得は不要です。ただし、診断書・自由診療・駐車場収入など一部課税取引には留意し、必要に応じて制度対応・会計処理を行いましょう。不明点は税理士や行政書士へ相談することが重要です。