更新日:2025.06.26
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2023年10月1日にインボイス制度が開始されたことで、美容室も少なからず影響を受ける可能性があります。
美容室にインボイス制度は関係ないという話もありますが、顧客に事業者がいる場合はインボイス制度への登録が必要になるかもしれません。
インボイス制度への登録が必要かどうかを判断するために、制度に関する基本的な理解を深めることが重要です。インボイス制度の概要や美容室への影響を理解していれば、登録が必要な場合でも対応しやすくなります。
本記事では、インボイス制度が美容室や美容師に与える影響や取るべき対応について解説します。
一般的に、インボイス制度の影響を受けるのは、事業者を相手にする業種です。美容室は基本的に消費者を対象としたサービスのため、インボイス制度の影響は少ないと考えられます。
顧客が一般の消費者だけである場合はインボイス(適格請求書)を発行する必要がなく、インボイス制度は関係ないといえます。
また、美容室で使用する消耗品の仕入に関しては、取引先からインボイスを発行してもらえば仕入税額控除を適用できるため、美容室がインボイス制度に登録する必要性は低いでしょう。
インボイス制度とは、インボイス(適格請求書)の発行・保存を求める制度です。インボイス制度の開始後は、原則としてインボイスを保存していなければ、仕入税額控除の適用が認められません。
複数税率の導入により、日本には8%と10%の消費税率が存在しており、従来の区分請求書では経理処理にミスが起こりやすいといわれています。そこで、取引の透明性を向上させるためにインボイス制度が導入されました。
インボイス制度に登録する事業者は、インボイス制度の開始前である2023年9月30日までの取引に対して従来の区分記載請求書を発行します。そして、2023年10月1日以降はインボイスを発行しなければなりません。
インボイス制度の導入によって、仕入税額控除を適用するためにはインボイス(適格請求書)の発行・保存が必要です。そのため、取引先からインボイスを発行してもらえなければ、税負担が増加する可能性があります。
また、業務委託の美容師は、取引先からインボイス制度への登録を求められるかもしれません。美容室の経営者だけでなく美容師個人にも影響があるため、インボイス制度について理解することが重要です。
ここでは、美容室や美容師にインボイス制度が与える2つの影響を解説します。
インボイス制度の導入前は、免税事業者から仕入をおこなった場合でも仕入税額控除を適用できました。
しかし、インボイス制度の導入後、免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行できないため、免税事業者に支払った消費税分の負担が増加します。
たとえば、美容室で使用するシャンプーやカラー剤の仕入、また業務委託契約のフリーランス美容師への報酬に対して、仕入税額控除を適用できなくなるのです。
そのため、インボイス制度の導入後も免税事業者との取引を続ける場合、税負担が増加してしまうことに注意しましょう。
インボイス制度の導入によって、業務委託の美容師は適格請求書発行事業者への登録を求められる可能性があります。美容室は免税事業者の業務委託美容師への支払について仕入控除税額を適用できず、税負担が増加することが理由です。
そのため、フリーランスの美容師が美容室からインボイス(適格請求書)の発行を求められた場合は、インボイス制度への登録を検討しなければなりません。
インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者として登録すると同時に課税事業者への転換が必要です。
インボイス制度に対応しない場合、契約を維持するために契約金額の引き下げを検討しなければならない可能性もあります。
年間の売上高が1,000万円以上の1人美容室は少なく、ほとんどの場合は免税事業者として取引をおこなっています。
しかし、年間の売上高が1,000万円未満であっても、俳優やモデルなどの事業者が顧客である場合は、インボイス(適格請求書)の発行を求められる可能性があります。
免税事業者のままではインボイスを発行できず、顧客が施術代に対して仕入控除税額を適用できないため、インボイス制度への登録を検討すべきでしょう。
ただし、顧客のほとんどが一般消費者の場合、免税事業者のままでも事業への影響は少ないと考えられます。
インボイス制度にスムーズに対応するためには、できるだけ早く準備をおこなうことが重要です。
とくに、顧客に俳優やモデルなどの事業者が多い場合は、インボイス制度に登録しないと今後の取引や収益に影響を与える可能性があります。また、フリーランスの美容師に業務委託をおこなっている場合も、インボイス制度への対応を話し合わなければなりません。
ここでは、インボイス制度に対して美容室や美容師がおこなうべき準備を解説します。
インボイス制度の開始後は、仕入税額控除を適用するためにインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要があります。そのため、まずは、仕入先・業務委託先が適格請求書発行事業者であるかを確認しなければなりません。
適格請求書発行事業者でない場合は、インボイス制度への登録を促してみましょう。
また、場合によっては別の取引先を探したり、業務委託から直接雇用に変更したりする必要もあります。
免税事業者の美容室や美容師は、インボイス(適格請求書)の発行を求められても対応できません。そのため、適格請求書発行事業者になるかの検討が必要です。
免税事業者のままでは取引先が仕入税額控除を適用できず、取引の継続に影響が出る可能性があります。
ただし、適格請求書発行事業者になると、消費税の納付義務が発生するため自身の収入が減少する点には注意しなければなりません。
適格請求書発行事業者に登録すべきかは、取引先にインボイスの発行を求める事業者がどの程度いるのかによって判断できます。今後の展望を考慮したうえで、適格請求書発行事業者になるかを決定しましょう。
フリーランスの美容師は、業務委託元の美容室からインボイス制度への登録を求められる可能性が高いといえます。そのため、美容室と話し合って交渉・調整をおこなわなければなりません。
美容室との関係性によって対応が異なるため、美容室の方針を確認したうえで自身が取るべき選択を判断しましょう。
また、現在の業務委託から直接雇用への変更を打診することも1つの方法です。美容室と雇用契約を結べば、美容師はインボイス制度に登録する必要がなくなります。
本記事では、インボイス制度が美容室や美容師に与える影響や取るべき対応について解説しました。
美容室の顧客は一般消費者がほとんどであり、インボイス制度の影響は少ないと考えられます。そのため、一般消費者をメインに取引しているなら、インボイス制度に登録する必要はありません。
ただし、仕入先や業務委託先が免税事業者の場合は、インボイス(適格請求書)を発行できず、仕入税額控除を適用できないため注意が必要です。
また、フリーランスの美容師はインボイス制度への登録だけでなく、直接雇用への変更も検討してみてください。
インボイス制度は少なからず美容室や美容師に影響を与えるため、概要や影響を正しく理解して対応しましょう。