更新日:2023.09.15
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2023年10月より適用される適格請求書等保存方式(インボイス制度)に備え、企業にはさまざまな対応が求められます。適格請求書の発行に必要な事業者登録の申請の他、社内システムの見直しも進めておきましょう。
本記事では適格請求書の運用に向けた企業の対応や、インボイス制度適用までに行っておくべきことを解説します。
適格請求書(インボイス)とは、取引内容を明瞭にするために税率ごとの税額や合計金額等を記載した請求書のことです。ここでは適格請求書の概要について解説します。
日本では2023年10月1日より適格請求書等保存方式、通称インボイス制度がスタートします。(※)売り手から交付された適格請求書を保存しておく一連の流れのことです。原則として、売り手は買い手(課税事業者)の求めに応じて適格請求書を発行する義務があります。(※)
インボイス制度が採用された背景にあるのは日本の消費税の複数税率です。2023年現在、日本では品目によって複数の消費税が適用されており、正しい税務処理のためには取引の中身をより細かい情報で記録する必要性が生じました。インボイス制度の目的は、税率ごとの税額や合計金額を請求書に表示して取引の透明性を確保し、正確な税務処理に結び付けることです。
なお、インボイス制度の適用に先立ち、日本では既に売り手に対して税率ごとの合計金額を記載する区分記載請求書が導入されています。区分記載請求書の発行は義務ではなく、発行するための申請等も不要です。しかし、インボイス制度において適格請求書を発行するためには、事前に適格請求書発行事業者の登録をする必要があります。
※出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
※出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」P5.10.,(入手日付2023-08-31).
適格請求書等保存方式では、売り手が発行する請求書に対して以下の6項目の表示が義務付けられます。(※)
上記の9項目の内、1~7の項目は現行の区分請求書等保存方式と共通です。適格請求書等保存方式では新たに、税率ごとに区分した消費税額等および適格請求書発行事業者の登録番号の記載が義務化されます。
なお、適格請求書の記載事項について詳しく知りたい場合は以下の記事もご参照ください。
「適格請求書(インボイス)に必要な記載事項!書き方や留意点についてわかりやすく解説」
※出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」P5.10.,(入手日付2023-08-31).
適格請求書を発行するためには、事前に適格請求書発行事業者の登録が必要です。ここでは適格請求書発行事業者の登録方法を解説します。
適格請求書には、書類を発行する事業者の登録番号を記載する必要があります。この番号は適格請求書発行事業者に登録されていることを証明するものであり、番号を取得するためには税務署への登録申請をしなければなりません。インボイス制度の適用後は、適格請求書発行事業者が発行した請求書でなければ適格請求書と認められないため、登録は早期に済ませておきましょう。
適格請求書発行事業者へ登録するには以下2つの申請方法があります。(※)
いずれの方法でも記載(入力)が必要な項目はそれほど多くないため、申請自体は難しくないでしょう。申請用紙を用いて手続きをする場合は、本人確認書類としてマイナンバーカードや通知カード、運転免許証などの提示、もしくは写しが必要です。
※出典:国税庁「[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」
インボイス制度が適用されると、適格請求書に該当しない請求書では確定申告時の仕入税額控除が受けられなくなります。税控除が受けられなければ企業の税負担は増すため、インボイス制度適用後は適請求書を用いた取引が基本になるでしょう。
適格請求書発行事業者に未登録だった場合、取引先の仕入税額控除に必要な適格請求書を発行することができません。適格請求書が発行できなければ、以降の取引の継続を見直されるケースも考えられます。取引先との関係を維持するためにも、適格請求書発行事業者に登録するようにしましょう。
適格請求書発行事業者の登録方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
企業が発行・受領する請求書は法令に従って適切に管理・運用する必要があります。特に、適格請求書等保存方式では請求書の記載項目が増えるため、従来よりも慎重に扱わねばなりません。ここでは企業が適格請求書の運用で注意すべきポイントを解説します。
インボイス制度の適用後は、日々の取引についての情報を正確に記録することが重要です。請求書の表示項目が増える適格請求書等保存方式では、品目ごとの税率や税額等も細かく記載する必要があります。取引情報の記録にミスがあれば、発行する請求書の正確性が担保できません。
請求書は企業の税務処理において重要な書類です。経営や会計の質を高めるためにも、1件1件の取引情報を正確に記録し、適切な内容の請求書を発行するようにしましょう。取引情報の正確な記録は取引の透明性を確保するためにも不可欠であり、将来的なトラブル回避にもつながります。
インボイス制度では、取引先から受領した請求書の妥当性をチェックすることも大切です。仮に、受領した請求書が適格請求書の要件を満たしていなかった場合、仕入税額控除を受けられなくなってしまいます。受領した請求書を適格請求書の要件と照らし合わせ、必要な情報が不足なく記載されていることを確認する必要があります。
特にインボイス制度のスタート直後は、請求書の記載ミス等が多く発生することが予想されます。受領した請求書の品目名や数量、合計金額等の確認はもちろん、税率ごとの税額、事業者番号など適格請求書で新たに表示が必要となる項目について確認するようにしましょう。
請求書は法律によって企業に保存が義務付けられる書類の一つです。法人税法では企業が発行、もしくは受領した請求書について最低7年間の保存期間を設けるよう定めています。(※)
なお、適格請求書等保存方式の開始に伴う書類の保存方法の変更はありませんが、適格請求書への対応として電子請求書への切り替えを実施する企業が増えることも予想されます。電子データで受領した請求書を保存する際は、電子帳簿保存法の規定を遵守しましょう。
※出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
インボイス制度がスタートするにあたり企業がすべきことは、事業者登録だけではありません。必要な準備をしっかりとしておくことで、新制度への移行もスムーズに進められるでしょう。ここではインボイス制度が適用される前に企業がやるべき対応を解説します。
インボイス制度の適用に先立ち、取引先の適格請求書発行事業者への登録状況を確認しておきましょう。特に、自社が請求書を受領する側である場合、取引先の事業者登録の確認が必須です。
何かしらの理由で適格請求書発行事業者への登録を見送っている取引先があった場合、取引を継続するか検討する必要もあるでしょう。特に、フリーランスの個人事業主や小規模な事業者など免税事業者となっている事業者は、事業者登録を見送るケースも多くなることが予想されます。自社の業務を停滞させないためにも、取引先の適格請求書への対応状況を把握しておくことが重要です。
インボイス制度の適用に伴い、電子取引システムや文書管理システムなど請求書の発行・管理に関わる社内システムも新制度への対応が必要になります。既存の社内システムで適格請求書の発行・管理に対応できるのかを確認し、新制度に対応できない場合は新たな社内システムへの切り替えを検討しましょう。
なお、適格請求書等保存方式の適用に伴って新たなITツールやサービスも登場しています。新制度の開始を機に、あらためて自社の業務内容を見直し、業務改善に有用な新たなサービスの導入を検討してみるのもよいでしょう。いずれにせよ、2023年10月までに適格請求書に対応したシステムが運用できる体制を整えておくことが重要です。
株式会社インボイスでは、企業の適格請求書への対応をサポートする請求書の一括請求サービスを提供しています。適格請求書への対応にお悩みであれば、ぜひサービスの導入をご検討ください。ここでは一括請求サービスが選ばれる3つの理由を紹介します。
一括請求サービスが選ばれる1つ目の理由は、一括請求で煩雑な請求書管理をひとまとめできることです。株式会社インボイスの一括請求サービスでは、お客様に代わって請求書の受取や支払、データ入力などの業務を代行します。企業には毎月何十通もの請求書が届き、それらは支払先も支払い期日もバラバラです。請求書の管理に頭を抱えていらっしゃる方も多いでしょう。
一括請求サービスを利用すれば、複数の請求内容をまとめた請求書を月1回受け取るだけです。煩雑だった請求書管理が効率化でき、業務改善につながります。
2つ目は請求書のペーパーレス化を実現できることです。一括請求サービスでは、請求書管理のペーパーレス化を実現します。紙媒体で送付された請求書でも、メールに添付された請求書でも、全て電子化して一括管理するので紙の請求書を保存する必要はありません。必要な請求書や請求データは専用のポータルサイトから取得できます。
3つ目はシステム導入不要ですぐに開始できるところです。システム導入不要ですぐに利用開始できることも株式会社インボイスの一括請求サービスが選ばれる理由です。一括請求を希望される請求書のコピーをお預けいただければ、移行手続きは全て株式会社インボイスが代行するため煩雑な作業も発生しません。ご契約後、最短1カ月でのサービス運用開始も可能です。
適格請求書は2023年10月のインボイス制度適用に伴い、多くの企業で運用が必要となる新たな請求書のフォーマットです。適格請求書を発行するための事業者登録に加え、取引先の事業者登録状況の確認や、自社のシステムの見直しなどを進めていきましょう。
なお、株式会社インボイスではお客様の適格請求書対応をサポートする二つの一括請求サービス(Gi通信サービス、OneVoice公共)をご用意しています。インボイス制度への対応や請求書の管理にお悩みであれば、ぜひ株式会社インボイスにご相談ください。