更新日:2024.10.24
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テレワークの普及や電子帳簿保存法の改正により請求書の電子化のため、Web請求書を導入する企業が増えています。一方で「自社に合うかどうか分からない」「取引先に迷惑がかかるのでは」といった理由で踏み切れない企業は多いのではないでしょうか?
そこで本記事ではWeb請求書の概要や発行者と受取側、それぞれのメリットや注意点について解説します。Web請求書システムの選び方についても詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください
Web請求書とは、インターネット上でやり取りを行う請求書を指します。Excel等で作成した請求書をPDF形式でメールに添付する方法や、専用のWeb請求書システムを導入する方法などがあります。従来の紙でやりとりを行う方法に比べ、印刷や郵送等の手間を省くことで大幅な業務の効率化が可能です。さらに郵送費や人件費などのコスト削減にもつながります。
近年テレワークの普及やインボイス制度の開始等で、Web請求書に切り替える企業が増えています。
Web請求書はメリットが多い一方で、電子帳簿保存法に則った保管をする必要があるなど注意点もあります。
Web請求書は、以下の3つの送付方法があります。
送付方法により、メリットやデメリットが異なるため、自社にあった適切な送付方法を選ぶことが大切です。それぞれ1つずつ解説していきます。
ExcelやWord等で作成した請求書をPDF化して、メールに添付して送付する方法です。ExcelやWordで作成できて新しくシステムを導入する必要がないため、コストをかけず手軽に請求書を発行・送付できます。デメリットとして個別でメールを作成し添付する必要があり、誤送信のリスクがあります。
クラウド上に保存場所を作成し、アップロードした請求書ファイルを取引先にダウンロードしてもらう方法です。オンラインストレージのようなクラウドサービスの他、ファイル転送サービスを利用する方法もあります。
請求書をメールに添付して送る方法に比べ、1件ずつメールに添付する必要がないため誤送信や情報漏れのリスクを軽減できます。しかし、取引先がクラウド上にアクセスするための事前説明や準備が必要です。
専用のWeb請求書システムを利用し、すべてクラウド上で発行・送付を一貫して行う方法です。仕様はシステムによって大きく異なりますが、主に以下の機能を利用できます。
システム内で取引先のデータ管理が行えるため、請求書のやり取りにおける負担が大幅に減ります。見積書から作成可能なシステムもあり請求書への自動変換が行えるため、さらなる効率化をはかれるでしょう。懸念材料として導入コストがかかる他、システムを習得するまでに時間がかかる点があげられます。
この章では、Web請求書を発行する側の5つのメリットを説明します。
各項目について詳しくお伝えします。
Web請求書を利用した場合、以下のコスト削減が可能です。
1件あたりの金額は少額でも、取引先が多く請求書の発行が多くなるほど金額は大きくなります。Web請求書を利用した場合、上記の金額はかからずコストカットが見込めるでしょう。システムを導入した場合でも、長期的に見ればコスト削減につながります。
Web請求書を利用することで、印刷から封書そして投函までの業務がなくなり、業務効率化が見込めます。1件あたりの業務におおよそ3分かかると仮定した場合、100件を処理するのに合計5時間かかる計算です。この場合はWeb請求書を導入することで、5時間分の作業時間を削減できるでしょう。
Web請求書システムを利用した場合、請求書作成や請求書の保管・入金確認まで行えるシステムもあり、さらなる業務効率化が見込めます。
Web請求書を利用することで、郵送先を間違えてしまうなどの人為的ミスを防止できます。請求ミスは取引先との信頼関係に大きく関わり、取引が継続できなくなるリスクもあります。
しかし、人の手で印刷・封入している場合、人為的ミスを0にすることは難しいです。一方でWeb請求書を利用すると作業工程が少なくなり、ミスの発生を抑制できます。
Web請求書を利用すると、紛失のリスクが軽減されセキュリティ強化につながります。紙で印刷した場合、紛失やご配送など情報漏れの可能性があります。
しかしWeb請求書は紙を発行することがないので、リスクを軽減できます。さらにWeb請求書システムを利用するとメールに添付するよりも、セキュリティが強固なサーバーに保管されるため、より高いセキュリティ強化が可能です。
Web請求書を導入すると、請求書発行のために出社する必要がなくなり、在宅ワークでも対応可能です。紙の請求書では、印刷から押印、発送手続きのために出社する必要があります。
しかしWeb請求書を利用すると、オンライン上での請求書の発行、送付まで完結します。そのため場所にとらわれない働き方が可能となり、人材確保にも効果的でしょう。
ここではWeb請求書を受け取る側のメリットを説明します。Web請求書を導入するにあたり、取引先の協力が不可欠です。受け取り側のメリットも説明できるようにすることで、導入が進めやすくなります。
Web請求書であれば、発行当日の受け取りが可能になります。紙の請求書を郵送でおくる場合は最低でも1日、場合によっては数日かかります。祝日や休日をまたぐ場合は、さらに日数がかかるでしょう。
当日に請求書を受け取ることで、問題や疑問点があればすぐに確認でき業務が円滑に進行できます。さらに請求書の内容に変更があった場合などでもすぐに対応してもらえるなど、即日に受け取れるメリットは大きくなります。
発行者と同じように、請求書の保管・検索の手間を省き業務の効率化が可能です。また過去に受け取った請求書を確認する際、簡単に検索できて速やかに確認を行うことができます。
請求書は原則として7年間、適切に保管する義務があります。紙の請求書の場合、企業によっては膨大な量の書類を保管しなければなりません。Web請求書であれば保管スペースを縮小できて、書類を探す手間を省けることで効率化が図れるでしょう。
メリットの多いWeb請求書ですが、導入の際には以下のような注意点があります。
1つずつ詳しく解説していきます。
請求書をメールやクラウド上などの電子データでやり取りを行う場合、電子帳簿保存法で定められた条件で保存しなければなりません。従来は電子データの請求書を紙に印刷し、紙を原本として保管を行えば電子データは不要でした。
しかし2024年1月以降は税務署が相当の理由と判断する場合を除いて、インターネット上で発行・受理した請求書は電子データを原本として保存することが義務化されます。
電子帳簿保存法に対応したWeb請求書システムを利用すれば、法律に則った方法で保管できます。
Web請求書を利用する際、取引先への説明や案内が不可欠です。急な発行方法の変更は取引先に負担をかけてしまうこともあり、事前の周知は必ず行うようにします。取引先にWeb請求書を受け取る側のメリットを丁寧に伝え、相手の要望に応えるよう配慮しましょう。
取引先が指定する請求書のひな形がある場合は、合わせなければならないケースがあります。Web請求書をカスタマイズできるシステムを選ぶことで、同意を得やすくなります。
また、法律上では請求書の押印は義務ではありませんが、会社印のない請求書は受け取ってもらえない可能性があります。電子印鑑やスタンプ機能を利用することで、取引先の了承を得られるケースが多いです。
Web請求書を導入する際は、あらかじめ紙の請求書と併用する際のルールを定めておくと良いでしょう。Web請求書を利用する際、取引先が従来どおりの郵送やFAXでの送付を希望されるケースも少なくありません。取引先ごとに使用する形式を明確にし、印刷時の発行と保管方法をルール化することで発行漏れや二重発行の防止につながります。
請求書システムを利用する際は、導入コストとランニングコストも考慮しましょう。請求書システムは通常、月額数千円から数万円のランニングコストがかかります。システムで行える範囲が広くなるほど料金は高くなり、多くの場合は月額基本料金に「請求書1枚あたりの金額」が加算されます。
一方で、請求書50通まで無料で利用できるサービスもあるため、導入前に必要なコストを把握するようにしましょう。
Web請求書システムを選ぶポイントは、以下の4つです。
Web請求書システムは多くの企業が提供しており、さまざまな商品が存在します。選ぶポイントを1つずつ詳しく紹介します。
自社の事業に対して「どのような業務を効率化させたいのか」を明確にし、必要な機能が備わっているか確認しましょう。請求書システムは搭載されている機能によって、価格が大きく変わります。
「自社が郵送にかかる手間やコストを減らしたいのか」それとも「過去の請求書を探す手間を減らしたいのか」業務やコストの効率化させたい内容を明確にし、改善につながるシステムを選択することが大切です。取引先が比較的少なく請求書の作成のみを効率化させたい場合は、搭載されている機能をしぼってコストを下げられます。
取引先が多く、企業ごとに郵送やメールを使い分ける業務の煩わしさを解消したい場合は、メールや郵送作業をシステム上で運営会社に依頼できるサービスもあります。取引先の要望に応えながら、自社の業務を効率化できるでしょう。
Web請求書システムを選ぶ際は「JIIMA認証」を受けているシステムを選ぶようにしましょう。JIIMA認証とは公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会が管理する認証制度で、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトウェアに対して付与されます。
電子帳簿保存法に準じた検索機能やタイムスタンプ機能など、電子取引要件を満たしておりスムーズに請求書を電子化できます。
請求書には機密性の高い情報が記載されているため、高度なセキュリティ機能が備わっているかチェックしましょう。具体的には、以下のポイントがあります。
自社だけでなく取引先のためにも、しっかりと対策しているシステムを選択する必要があります。
トラブルや疑問が発生した際、的確に早く対応してもらえるか確認しておくことも大切です。具体的には、以下のポイントがあります。
トラブルが発生した際は、早急に対応しないと取引先にも迷惑をかけてしまいます。導入前の段階でトラブルの対応について、確認しておくようにしましょう。
Web請求書に対応している無料ソフトは、中小企業や個人事業主にとって非常に有用なツールです。ここでは、特に注目される2つのソフトウェアを紹介します。
株式会社invoxが提供するinvox発行請求書は、クラウドベースの請求書作成ソフトウェアです。シンプルな操作性と豊富な機能を兼ね備え、小規模事業者から中堅企業まで幅広く利用されています。
項目 | 内容 |
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提供形態 | クラウドサービス |
対応デバイス | PC、スマートフォン、タブレット |
主な機能 | 請求書作成、見積書作成、入金管理 |
料金プラン | 基本機能無料、有料プランあり |
インボイス制度対応 | 対応済み |
freee株式会社が提供するfreee請求書は、クラウド会計ソフトfreeeと連携可能な請求書作成ソフトウェアです。インボイス制度に対応しており、中小企業や個人事業主の業務効率化に貢献しています。
項目 | 内容 |
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提供形態 | クラウドサービス |
対応デバイス | PC、スマートフォン、タブレット |
主な機能 | 請求書作成、見積書作成、入金管理、会計連携 |
料金プラン | 基本機能無料、有料プランあり |
インボイス制度対応 | 対応済み |
これらのソフトウェアは、
Web請求書を発行する側のメリットは以下の5点です。
また、受取側のメリットは以下の2点です
請求書システムを利用する際は、自社の業務に合っていて法改正に対応しているか、セキュリティやサポート体制もチェックしておく必要があるでしょう。
電子帳簿保存法が改正され今後ますますペーパーレス化が進み、Web請求書の導入による効率化とコストカットが見込まれます。法改正を機にWeb請求を検討してみてはいかがでしょうか?