更新日:2025.05.01
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電子インボイスの国際基準「Peppol(ペポル)」をご存じでしょうか?2020年12月電子インボイス推進協議会より、国内向け電子インボイス(電子請求書)の標準仕様をPeppolに準拠すると発表がありました。Peppolは、電子インボイスをネットワーク上でやり取りするための規格です。欧州をはじめとする世界30ヶ国以上で利用されています。
本記事では、国際規格Peppolについて解説します。
出典:内閣官房IT総合戦略室「電子インボイスに係る 取組状況について」
2020年12月に電子インボイス協議会は、デジタル請求書である「電子インボイス」の標準仕様ついて、国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠した日本標準仕様を策定すると発表しました。電子インボイスとは従来の紙ではなく、電子化されたデータでやり取りをする請求書のことをいいます。電子インボイス推進協議会は、この電子インボイスの標準仕様を策定して普及を目指す組織です。国内の有力会計ソフトウェアベンダー10社が発起人となり設立されました。
電子インボイスを「Peppol」に準拠させることで、請求書の受領者は統一されたフォーマットの電子インボイスを受領できるようになり、経理担当者の負担軽減につながる事が期待できます。
そのため、電子インボイスの標準仕様策定は、電子インボイス推進協議会の喫緊の課題です。
海外で採用実績の高い「Peppol」を標準仕様のベースにすることは、日本の電子インボイスを牽引する起爆剤として期待されます。
「電子インボイス推進協議会」基本情報
団体名 |
電子インボイス推進協議会(EIPA:E-Invoice Promotion Association) |
設立 |
2020年7月29日 |
設立発起人 |
|
会員数 |
146社・8名(正会員138社、特別会員(団体)8社、特別会員(個人)8名) ※2021年11月22日現在 |
Peppol(Pan-European Public Procurement OnLine:汎欧州オンライン公的調達)とは、電子インボイスや製品の注文書、認定書などの電子文書を独自のオンラインネットワーク上でやり取りするための国際規格です。具体的な規約内容は、文書仕様やネットワーク、運用ルールといった包括的なものです。
当初は、欧州連合における政府調達システムでしたが、その後は企業間取引のシーンでも利用可能になり、現在では利便性の高さから世界各国に採用されています。
同規格は「Open Peppol(オープンペポル)」という非営利団体が管理していますが、実質的には採用国の行政機関に設置された「Peppol Authority(ペポルオーソリティ)という管理局によって管理されます。なぜなら、国や地域ごとに法律や商習慣などが異なるため、各国の事情に合わせた標準仕様を策定する必要があるからです。
Peppolに則った電子文書を送受信するには、アクセス・ポイントを経由して接続するPeppol独自の「PEPPOL eDelivery Network(ペポルデリバリーネットワーク)」と名付けられたネットワークを利用します。アクセス・ポイントは欧州以外に米国やカナダ、オーストラリアなど世界31ヶ国に295ヶ所が設置されています。
Peppolネットワークの運用により、国内外の取引相手と電子文書のやり取りをオンライン上で完結できます。
参考:電子インボイス推進協議会 「電子インボイスの普及に向けて、国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠した『日本標準仕様』策定を決定」
日本における電子インボイスの標準仕様「Peppol(ペポル)」は、2023年10月1日に開始されたインボイス制度に合わせて導入されました。これにより、適格請求書(インボイス)の電子化が進み、事業者間での請求書のやり取りがデジタルで行えるようになっています。
Peppolは、国際的な電子インボイスの標準仕様であり、日本ではデジタル庁が「Japan Peppol Authority」として、国内向けにカスタマイズされた「JP PINT(Japan Peppol Invoice)」を策定・管理しています。この仕様により、国内の商習慣や法制度に対応した形で、Peppolネットワークを通じた電子インボイスの送受信が可能となっています。
現在、多くの企業がPeppol対応のシステムやサービスを導入し、経理業務の効率化や法令遵守の強化を図っています。特に、請求書の発行・受領・保存といったプロセスが自動化されることで、業務の迅速化やコスト削減が期待されています。
今後、Peppolを活用した電子インボイスの普及がさらに進むことで、企業間取引のデジタル化が加速し、より効率的なビジネス環境が整備されていくでしょう。
標準仕様の電子インボイスによって次のような経理業務にもプラスの効果をもたらすことが考えられます。
電子インボイスを活用することで、事務作業の効率化につながります。たとえば買掛データの突合せや仕入税額控除の申請など照合作業が多数あります。処理件数が多ければ膨大な手間がかかります。また、人手による照合作業はミスにつながりやすいものです。ミスが重なれば作業効率が落ちることも考えられます。電子インボイスは不必要な事務的労力を減らせる可能性を大いに期待できます。
さらに、電子インボイスの標準化をすることで、インボイス制度に適応する請求フォーマットを国を利用することが可能となる予定です。つまり、インボイス制度後の経理業務において困りごととされる請求フォーマットの準備について事業者が考える必要がありません。このことは、事務作業の効率化に一役買うことになるでしょう。
電子インボイスを活用すれば、コンピュータを使って場所を問わずにアクセスできます。リモートワークは昨今話題となりつつある、働き方問題にもつながるため、メリットの一つです。
2020年10月に改正された「電子帳簿保存法」も後押しして、電子インボイスがより利用しやすくなるでしょう。
参考:財務省「税制改正の大綱の概要」
その他にも以下のようなメリットがあります。
Peppolに対応した電子インボイスでは、請求書情報があらかじめ標準化されたデータ形式でやり取りされるため、受領側での手入力作業が不要になります。これにより、従来発生していた入力ミスやデータ確認作業の手間を大幅に削減でき、経理担当者の負担が軽減されます。特に件数の多い取引先からの請求データ処理において、業務効率に直結する効果が期待できます。
Peppolを活用することで、請求書の受領から支払いまでの一連のプロセスが自動化され、処理時間が大幅に短縮されます。受領データはそのまま基幹システムや会計ソフトに連携できるため、手作業による確認や転記作業が不要になります。これにより、月末月初の繁忙期でも迅速な対応が可能となり、キャッシュフロー管理や経営判断のスピードも向上します。
Peppol電子インボイスは、インボイス制度(適格請求書保存方式)や電子帳簿保存法(電帳法)の要件を満たす設計になっています。適格請求書発行事業者番号などの必要情報が標準で含まれているため、制度対応のために個別にシステム改修を行ったり、データ形式を確認したりする手間が減ります。これにより、法令遵守への対応コストやリスクも大幅に低減できます。
Peppolによる電子インボイス導入は、紙の請求書発行・郵送コスト、データ入力にかかる人件費、保管スペースなど、これまで発生していた間接コストを大幅に削減します。さらに、ミスによる再処理コストや、法令違反リスクに対する対応コストも低減できるため、長期的には経理部門全体のコスト構造を最適化できる効果が期待できます。
2022年秋を目処に電子インボイス推進協議会は、事業者が電子インボイス対応ソフトウェアの使用を開始できるように計画しているようです。
電子インボイスの実現に向けて社会的環境が整いつつある中、経理担当者は自社においても電子インボイスの恩恵が受けられるように準備しておくことが大切です。電子インボイスに対応する会計ソフトの準備の検討だけでなく、インボイス制度や電子インボイスそのものの理解と得られるメリット・デメリットについて整理しておきましょう。
まずは現在の請求業務全体の流れを洗い出し、どこで手作業が発生しているか、どの段階でデータを取り扱っているかを明確にします。請求書の発行から受領、支払い処理、データ保存まで、一連のプロセスを可視化することで、電子インボイス導入により効率化できるポイントや、逆に変更が必要な部分を把握できます。この棚卸し作業は、適切なシステム選定や運用ルール策定にも直結します。
次に、自社で利用している会計ソフトやERPシステムが、Peppol電子インボイスに対応しているかを確認します。対応していない場合は、アップデートや新しいシステム導入を検討する必要があります。また、電子インボイス受領後に自動で仕訳処理ができるか、訂正・削除履歴の管理機能が備わっているかなど、電子帳簿保存法の要件を満たすかどうかも重要なチェックポイントです。
電子インボイスを本格的に導入するにあたっては、社内規定や業務運用ルールの整備も欠かせません。例えば、電子データの保存期間、訂正・削除ルール、担当者の役割分担などを文書化し、全社で共有しておく必要があります。これにより、実際の運用開始後に混乱することなく、スムーズに電子請求書への移行が可能になります。
電子インボイスは自社だけでなく取引先との連携が不可欠です。取引先がPeppol仕様に対応していない場合、双方でデータ受け渡し方法を調整する必要があります。導入予定時期や運用ルールについて早めに情報共有し、必要に応じてサポートや説明会を実施することが重要です。特に主要取引先とは密に連携し、電子インボイス運用に向けた準備を共同で進めることがスムーズな導入につながります。
Peppolに準拠する電子インボイスが利用できると国内外の取引先とスピーディーかつ正確にやりとりができます。請求書の要件確認や膨大な手間を電子インボイスのシステムによって効率的に対応できるのです。事務的労力の負担を削減できるのではないでしょうか。
電子インボイス推進協議会は、2022年秋には、事業者がインボイス制度に対応するソフトウェア使用できる状態にし、2023年10月にインボイス制度への対応を進めています。
Peppolの採択を皮切りに、電子インボイスの導入に向けた動きは今後さらに活発になっていきます。インボイス制度開始も間近に迫ってきています。そのためにも今から心構えと準備をしておくことが大切です。