更新日:2025.11.28

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請求書をヤマト運輸や佐川急便で送っても大丈夫なのか、迷ったことはありませんか?実は、請求書は「信書」にあたるため、宅配便で送ると郵便法違反になるおそれがあります。
本記事では、信書とは何か、そしてなぜ請求書が信書に該当するのか、違反しない安全な送り方までわかりやすく解説します。最後まで読めば、請求書を安心して送付するための正しい方法がしっかり理解できます。
ビジネスシーンで「請求書は信書だから宅配便では送れない」と聞いたことはありませんか?そもそも「信書(しんしょ)」とは何なのでしょうか。なんとなく理解しているつもりでも、誤った方法で送付すると法律違反になる可能性があるため、正確な知識を身につけておくことが重要です。
ここでは、信書の定義についてわかりやすく解説します。
信書とは、郵便法第4条で「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定められています。簡単に言うと、「誰から誰に宛てたものか」が明確で、「差出人の考えや、伝えたい事柄」が記載されている文書のことです。
以下のすべてを満たすものが信書にあたります。
この3つの要件を満たす信書の送達(送り届けること)は、郵便法および信書便法により、原則として日本郵便株式会社と国から許可を得た「特定信書便事業者」のみが行えると定められています。
まず結論からお伝えしますと、ヤマト運輸では信書を送付することはできません。ですが佐川急便では特定のサービスでは送れるため次の章で解説します。
信書の送達は、郵便法によって日本郵便の独占事業と定められているのがその理由です。ここでは、なぜ請求書が信書にあたるのか、そして法律に違反した場合の罰則について詳しく解説します。
請求書が信書にあたるのは、総務省の定義である「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書」に該当するためです。
請求書は宛名で特定の相手を示し、「この金額を支払ってください」という意思表示と「商品やサービスを提供しました」という事実の通知を兼ねています。
このように信書の条件を満たしているため、法律上は信書として扱われ、送付方法も郵便法によって制限されているのです。
もし、郵便法に違反して信書を送ってしまった場合、送った側(差出人)と、それを知って運送した事業者側の両方が罰則の対象となります。これは郵便法第76条で定められており、意図せず送ってしまった場合でも罰せられる可能性があるため注意が必要です。
具体的な罰則内容は以下の通りです。
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対象者 |
罰則内容 |
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差出人(信書の送付を依頼した人) |
3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
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運送事業者(信書と知って運送した会社や個人) |
「知らなかった」では済まされない重い罰則が科される可能性があります。取引先との信頼関係にも関わるため、請求書を送る際は必ず法律で認められた正しい方法を選択しましょう。
ここでは安全かつ適法に信書(請求書)を送るための4つの方法を具体的に解説します。
信書の送付は、原則として日本郵便のサービスを利用するのが最も一般的で確実な方法です。請求書のような信書を送れる主なサービスには、普通郵便やレターパックなどがあります。それぞれの特徴を理解し、用途に合わせて選びましょう。
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サービス名 |
特徴 |
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普通郵便(定形・定形外) |
最も基本的な送付方法。切手を貼ってポストに投函できます。 |
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レターパック |
A4サイズ・4kgまで全国一律料金で送れます。対面手渡しの「プラス」と郵便受け配達の「ライト」があります。 |
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スマートレター |
A5サイズ・1kgまで全国一律料金で送れます。信書の送付も可能です。 |
注意点として、同じ日本郵便のサービスでも「ゆうパック」「ゆうメール」「クリックポスト」は、原則として信書を送ることはできません。ただし、後述する「添え状」としてであれば、ゆうパックに請求書を同梱することは可能です。
日本郵便以外にも、総務大臣の許可を得た「特定信書便事業者」であれば信書を送付できます。これは、国が認めた民間事業者による信書送達サービスです。
代表的なサービスとして佐川急便の「飛脚特定信書便」などがありますが、利用には条件(3辺合計73cm超の荷物など)が定められていることが多く、主に法人向けのサービスとなります。個人や小規模な事業者が請求書1枚を送るために利用するのは現実的ではないかもしれません。
ヤマト運輸の「宅急便」や佐川急便の「飛脚宅配便」などの宅配サービスでは、信書だけを送ることはできません。ただし、荷物を送る場合に限り、その内容を補足する「添え状」として請求書を同封することは法律で認められています。
添え状とは、送る荷物に関する説明や案内を添える簡単な文書のことです。たとえば、商品を発送するときにその商品の請求書を同封するケースがこれにあたります。
ただし、荷物と無関係な内容の文書は添え状とはみなされません。あくまで主役は荷物であり、請求書はその付属物として扱われる点に注意が必要です。
郵送にこだわらないなら、請求書を電子化して送るのが最も簡単で効率的です。PDFにしてメールで送ったり、クラウド型の請求書発行システムを使えば、郵便法を気にせずすぐに相手へ届けられます。
電子化には、郵送費や印刷コストの削減、発行から送付までの時間短縮、データ管理の効率化など多くのメリットがあります。さらに、2024年1月から電子帳簿保存法で電子取引データの保存が義務化されたこともあり、今後は請求書のデジタル化がより現実的で有効な選択肢になっています。
「この書類は信書にあたるのだろうか?」と迷う方は少なくありません。ここでは、総務省が公表しているガイドラインに基づき、信書に該当する文書と該当しない文書の具体的な例を一覧でご紹介します。
ご自身の送りたい書類がどちらに分類されるかを確認してみましょう。
信書とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と定義されています。具体的には、以下のようなものが該当します。
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文書の種類 |
具体例 |
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書状 |
手紙、年賀状、暑中見舞い、業務連絡書 |
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請求書の類 |
請求書、納品書、領収書、見積書、契約書、注文書、督促状 |
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会議招集通知の類 |
結婚式の招待状、株主総会の招集通知、同窓会の案内状 |
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許可書の類 |
免許証、認定書、表彰状、合格通知書、採用通知書 |
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証明書の類 |
印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し、健康保険証、履歴書 |
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ダイレクトメール |
特定の受取人向けに内容がカスタマイズされた文書(例:会員様限定セールの案内) |
一方で、客観的な事実を伝えるだけで、差出人の意思表示や事実の通知を含まない文書は信書に該当しません。宅配便やメール便で送付できるのは、主に以下のような文書です。
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文書の種類 |
具体例 |
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書籍の類 |
新聞、雑誌、書籍、会報、カタログ、小冊子 |
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小切手・手形の類 |
為替手形、約束手形、小切手 |
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有価証券の類 |
株主優待券、商品券、図書カード、プリペイドカード |
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その他 |
会員カード、ポイントカード、クレジットカード、名刺、説明書、市販のアンケート用紙 |
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ダイレクトメール |
街頭で配布されるような、受取人が特定されないチラシやパンフレット |
ただし、これらの信書に該当しない文書であっても、手書きのメッセージを添えるなどして差出人の意思表示が加わると「信書」と判断される場合がありますので注意が必要です。
請求書以外にも、ビジネスシーンで扱う書類が信書に該当するかどうか、迷う場面は少なくありません。ここでは、請求書と信書に関して特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
はい、納品書や領収書も一般的に「信書」に該当します。
総務省が示す信書の定義は「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」です。納品書は「商品を確かに納品した」という事実を、領収書は「代金を正しく受領した」という事実を特定の相手に通知する文書です。したがって、どちらも信書の条件を満たすため、請求書と同様にヤマト運輸の宅急便や佐川急便の飛脚宅配便などで送ることはできません。
はい、契約書も信書に該当します。
契約書は、当事者間の権利や義務に関する合意という、極めて重要な意思を表示する文書です。これは信書の典型例であり、送付の際には郵便法に則った方法を選ぶ必要があります。相手方に署名・捺印を依頼するために送る場合や、署名・捺印後に返送する場合も同様の扱いとなりますのでご注意ください。
いいえ、海外へ請求書を送る場合、日本の郵便法における信書のルールは適用されません。
郵便法は日本の国内法であり、その効力は日本国内に限定されます。そのため、海外の取引先に請求書を送る際は、国際スピード郵便(EMS)や、民間の国際クーリエサービス(DHL、FedExなど)を利用して送付することが可能です。
請求書は、特定の相手に支払いを依頼する意思を伝える文書であるため、「信書」に該当します。そのため、ヤマト運輸や佐川急便の宅配便で送ると郵便法に違反するおそれがあります。安全に送るには、日本郵便のサービス(レターパックなど)や、特定信書便事業者を利用しましょう。また、荷物に「添え状」として同梱する方法や、電子請求書として送付するのも有効です。本記事を参考に、法律を守った正しい方法で請求書を送付してください。