更新日:2026.09.29

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請求書の消費税の記載方法は、慣れている人ほど自己流のまま固まりやすい部分です。しかもインボイス制度の開始で、それまで問題なかった書き方が要件を満たさなくなったケースがあります。
とくに多いのが、明細の行ごとに消費税を計算しているケースです。長年その方法で運用していても、適格請求書としては認められません。
この記事では、請求書の消費税の記載でよくある8つの誤りを、正しい記載例と対比しながら整理します。自社の請求書を横に置いて、1つずつ確認してみてください。
先に一覧でお見せします。心当たりのある項目から読んでください。
| 誤り | 正しい書き方 |
|---|---|
| ①明細行ごとに消費税を端数処理している | 税率ごとの合計額に税率を掛け、1回だけ端数処理する |
| ②端数処理のルールは自社で選べると思っている | 「税率ごとに1回」は法定。選べるのは切り捨てか切り上げか四捨五入かだけ |
| ③総額だけを書き、税率ごとの対価の合計額を分けていない | 10%対象と8%対象の合計額をそれぞれ書く |
| ④内税で請求書を作り、税率ごとの消費税額を記載していない | 税込表示でも、税率ごとの消費税額等は別途記載する |
| ⑤1枚の請求書に内税(税込)と外税(税抜)が混在している | どちらかに統一する |
| ⑥軽減税率の対象である旨を書いていない | ※印などで軽減税率対象を明示し、記号の意味を欄外に書く |
| ⑦免税事業者からの請求書を「非課税」で処理している | 課税仕入れとして、経過措置の対象の税区分で処理する |
| ⑧免税事業者は消費税を請求できないと思い込んでいる | 消費税相当額の上乗せ請求は問題ない |
なお、登録番号の記載漏れや宛名の書き方など、消費税以外も含めた記載事項の全体像を確認したい場合は、上の記事をご覧ください。この記事では消費税の書き方に絞って解説します。
最も多い誤りです。商品ごとに消費税を計算して端数を処理し、それを合計して請求額としている請求書は、適格請求書の要件を満たしません。
適格請求書の消費税額等の端数処理は、一の適格請求書につき税率ごとに1回と決まっています。明細行ごとに端数処理して合算する方法は認められていません。
実際にどれだけ差が出るのか、10%対象の3品目で比べてみます。
| 品目 | 税抜金額 | 行ごとに計算した場合の消費税 |
|---|---|---|
| 商品A | 1,234円 | 123円(123.4を切り捨て) |
| 商品B | 2,345円 | 234円(234.5を切り捨て) |
| 商品C | 3,456円 | 345円(345.6を切り捨て) |
| 合計 | 7,035円 | 702円 |
これに対し、税率ごとの合計額から1回で計算すると次のようになります。
| 計算 | 結果 |
|---|---|
| 10%対象の合計(税抜) | 7,035円 |
| 7,035円 × 10% | 703.5円 |
| 端数処理後の消費税額 | 703円(切り捨て) |
1円の差が生じました。金額としては小さくても、要件を満たさない請求書は仕入税額控除の対象にならないおそれがあるため、取引先に迷惑がかかります。
明細の各行に参考として税額を表示すること自体は禁止されていません。要件になるのは、税率ごとに区分して合計した対価の額と、そこから1回で算出した消費税額等が記載されていることです。
なお、キリのよい金額にするための値引きによる端数調整は、これとは別の話です。値引きは消費税を計算する前の対価の額を調整するものなので、混同しないようにしてください。
「端数処理の方法は社内で統一しておきましょう」という説明をよく見かけますが、これは半分しか正しくありません。
自社で選べるのは、切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを使うかだけです。「税率ごとに1回」というルール自体は法令で定められており、選択の余地はありません。
| 項目 | 自社で決められるか |
|---|---|
| 端数処理を行う回数(税率ごとに1回) | 決められない(法定) |
| 端数処理の方法(切り捨て・切り上げ・四捨五入) | 決められる |
| 税抜価額で書くか税込価額で書くか | 決められる(1枚の中では統一) |
端数処理の方法は任意ですが、請求書ごとに変えると取引先との照合が煩雑になるため、一度決めたら継続して適用してください。
もう1つ混同されやすいのが、「積上げ計算」と「割戻し計算」という用語です。これらは消費税の申告時に売上税額・仕入税額を計算する方法の名称であり、請求書の端数処理とは別のレイヤーの話です。
| 用語 | 何の話か |
|---|---|
| 税率ごとに1回の端数処理 | 請求書を作成するときのルール |
| 積上げ計算・割戻し計算 | 確定申告で納税額を計算するときの方法 |
請求書の書き方を調べているときに「積上げ」という言葉が出てきたら、それは申告の話なので、いま知りたいこととは別だと切り分けてください。
請求金額の総額だけを記載した請求書は、適格請求書の要件を満たしません。税率ごとに区分して合計した対価の額を記載する必要があります。
| 誤った書き方 | 正しい書き方 |
|---|---|
| ご請求金額 110,000円(税込) のみを記載 |
10%対象 100,000円 消費税 10,000円 合計 110,000円 |
軽減税率の対象品目が混ざる場合は、8%対象の合計額も分けて書きます。
| 区分 | 対価の額(税抜) | 消費税額 |
|---|---|---|
| 10%対象 | 100,000円 | 10,000円 |
| 8%対象 | 50,000円 | 4,000円 |
| 合計 | 150,000円 | 14,000円 |
なお、対象となる税率の品目がない場合、あえて「0円」と書く必要はありません。10%対象しかない請求書なら、8%の欄そのものを省略できます。
税込価額で請求書を作ること自体は問題ありません。適格請求書は税抜価額でも税込価額でも作成できます。
問題になるのは、税込の金額だけを書いて消費税額を示していないケースです。税込価額で書く場合でも、税率ごとに区分した消費税額等の記載は必要です。
| 誤った書き方 | 正しい書き方 |
|---|---|
| 10%対象 110,000円(税込) 消費税額の記載なし |
10%対象 110,000円(税込) (うち消費税 10,000円) |
税込価額から消費税額を求めるときは、税込金額に10/110(軽減税率は8/108)を掛けて計算し、税率ごとに1回だけ端数処理します。
ちなみに、消費税法63条が定める総額表示義務は、不特定多数の消費者に向けて価格を表示する場合が対象です。事業者間でやりとりする請求書や見積書には適用されません。請求書を税抜で作るか税込で作るかは、発行者が決めて構いません。
商品ごとに税抜で書いたり税込で書いたりが混ざっている請求書は、税率ごとの合計額を正しく算出しにくくなります。
1枚の請求書の中では、税抜価額か税込価額のどちらかに統一してください。そのうえで、統一した基準で税率ごとの合計額を出し、そこから消費税額等を算出します。
仕入れ値が税抜で管理されている商品と、税込で仕入れている商品が混在する場合でも、請求書の上ではどちらかに揃える必要があります。会計ソフトの設定で、明細の入力単位を税抜か税込かに固定しておくと防げます。
適格請求書には、取引内容とあわせて、軽減税率の対象である場合はその旨を記載する必要があります。税率が8%と書いてあるだけでは不十分です。
実務では、品目名の横に「※」を付け、欄外に記号の意味を書く方法が一般的です。
| 品目 | 税抜金額 |
|---|---|
| お弁当 ※ | 3,240円 |
| コピー用紙 | 7,035円 |
| ※は軽減税率(8%)対象 |
飲食料品を扱う場合は、テイクアウトと店内飲食で税率が分かれる点にも注意してください。テイクアウトの弁当は8%、店内で飲食する場合は10%です。同じ商品名でも提供方法によって税率が変わるため、請求書の段階で区別しておく必要があります。
また、酒類は飲食料品であっても軽減税率の対象になりません。飲料を扱う事業者は、酒類とそれ以外を分けて集計してください。
受け取る側の処理でよくある誤りです。免税事業者から受け取った請求書について、税区分を「非課税」や「対象外」にしてしまうケースがあります。
免税事業者からの仕入れは課税仕入れです。非課税取引ではありません。売り手が免税事業者であることと、その取引が非課税であることは別の話です。
正しくは、経過措置の対象となる課税仕入れとして処理します。適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れであっても、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できます。
| 期間 | 控除割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日〜 | 控除不可 |
この経過措置は令和8年度税制改正で見直され、2031年9月30日まで延長されました。改正前は2029年9月30日で終了する予定だったため、古い解説を参照している場合は数字が変わっている点にご注意ください。
なお、経過措置には相手方ごとの上限があります。一の適格請求書発行事業者以外の者からの経過措置対象の課税仕入れが、その年または事業年度で税込10億円を超える場合、超えた部分は対象外です。さらに令和8年度税制改正により、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、この上限が1億円に引き下げられます。
適用を受けるには、帳簿に経過措置の適用を受ける旨(「80%控除対象」など)を記載し、区分記載請求書等と同様の記載事項を満たした書類を保存する必要があります。非課税で処理してしまうと、控除できるはずの分を取りこぼすことになります。
免税事業者は適格請求書を発行できませんが、消費税相当額を取引価格に上乗せして請求すること自体は問題ありません。仕入れの際に負担した消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することも可能です。
請求書に消費税相当額を記載することも、適格請求書と誤認されるおそれのあるものでなければ、罰則の対象にはなりません。
禁止されているのは、適格請求書発行事業者以外の者が、適格請求書や適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある書類を交付することです。具体的には次のようなケースが該当します。
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 登録番号(T+13桁の数字)に類似した英数字を記載する | 適格請求書と誤認されるおそれがある |
| 自身のものではない登録番号を記載する | 同上 |
違反した場合は罰則の対象となります(消費税法57条の5、65条)。
表記の工夫として、「消費税」ではなく「消費税相当額」と書く方法があります。義務ではありませんが、適格請求書ではないことが伝わりやすくなります。
発行前に、消費税まわりを次の順で確認してください。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 税抜か税込かが統一されているか | 1枚の中で混在していないか |
| 税率ごとに対価の合計額を分けているか | 10%対象と8%対象がそれぞれ集計されているか |
| 税率ごとの消費税額等を書いているか | 総額だけになっていないか |
| 端数処理は税率ごとに1回か | 明細行ごとに処理していないか |
| 軽減税率の対象である旨を書いているか | ※印などの記号と、その意味の説明があるか |
| 端数処理の方法が前回と同じか | 切り捨て・切り上げ・四捨五入が請求書ごとに変わっていないか |
会計ソフトや請求書作成ソフトを使っている場合は、端数処理の設定が「明細行ごと」になっていないかを一度確認しておくと安心です。制度開始前から使い続けている設定がそのまま残っていることがあります。
どれでも構いません。事業者が任意に選べます。ただし請求書ごとに変えると取引先との照合が煩雑になるため、一度決めたら継続して適用してください。
ありません。消費税法63条の総額表示義務は、不特定多数の消費者に向けて価格を表示する場合が対象です。事業者間の請求書や見積書には適用されません。
端数処理の方法の違いで生じる差です。仕入税額控除を行う際は、請求書に記載された消費税額を基準に処理してください。買い手が請求書の記載を勝手に修正することはできません。
参考として表示すること自体は禁止されていません。要件になるのは、税率ごとに区分した対価の合計額と、そこから1回で算出した消費税額等が記載されていることです。行ごとの表示があっても、合計の算出方法が正しければ問題ありません。
免税事業者などからの仕入れに対する経過措置の控除割合が、80%から70%に下がります。請求書の書き方そのものは変わりませんが、受け取った請求書の税区分の設定を見直す必要があります。
変わりました。最も大きいのは端数処理です。制度開始前は明細行ごとの処理も認められていましたが、適格請求書では税率ごとに1回に統一されました。あわせて、税率ごとに区分した対価の額と消費税額等の記載が必要になっています。
どちらでも構いません。税抜価額で書く場合は税率ごとの合計額に税率を掛け、税込価額で書く場合は税込の合計額に10/110(軽減税率は8/108)を掛けます。1枚の請求書の中ではどちらかに統一してください。
適格請求書の要件を満たさないため、受け取った側は仕入税額控除ができません。修正した請求書を再交付する必要があります。登録番号を含めた記載事項の全体像は「インボイス(適格請求書)とは?6つの記載要件と書き方を記載例つきで解説」をご覧ください。
6項目です。この記事では消費税に関する部分に絞って解説しているため、登録番号や宛名を含めた全体像は「インボイス(適格請求書)とは?6つの記載要件と書き方を記載例つきで解説」をご覧ください。
請求書の消費税の記載でつまずくポイントは、大きく分けると端数処理、税率ごとの区分、そして免税事業者の扱いの3つに集約されます。
とくに端数処理は、制度開始前から使っている運用や会計ソフトの設定がそのまま残っていることが多い箇所です。明細行ごとに消費税を計算していないか、一度確認してみてください。
受け取る側では、免税事業者からの請求書を「非課税」で処理していないかが要注意です。これは課税仕入れであり、2026年9月末までは80%、10月からは70%を控除できます。誤って非課税にすると、控除できるはずの分を取りこぼします。
この記事のチェックリストを発行フローに組み込んでおけば、大半の誤りは防げます。