更新日:2025.12.01

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再三の催促にもかかわらず、売掛金や未払い代金が支払われず、お困りではありませんか?そんな時に有効な手段が「内容証明郵便」による請求書の送付です。この記事では、内容証明郵便とは何か、その法的効力と効果、送るべきタイミングといった基本から、コピペで使える請求書(督促状)の文例、郵便局での具体的な送り方までわかりやすく解説します。この記事を読めば、未払い金回収に向けた次の一歩を踏み出せるようになります。
この章では、内容証明で請求書を送る前に知っておきたい基本的な知識について解説します。
内容証明郵便は、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を日本郵便が証明してくれる仕組みです。つまり、「そんな手紙は届いていない」「内容が違う」といったトラブルを防ぐことができます。
ただし、内容証明郵便で証明できるのは送付の事実までで、文書の内容が正しいかどうかまでは証明されません。また、相手に支払いを強制する法的な力もありません。
それでも内容証明が有効とされるのは、まず心理的なプレッシャーを与えられるからです。正式な書面が届くことで、相手が「これは本気の請求だ」と受け止めやすくなります。
もうひとつは、時効の進行を止められることです。内容証明で請求を送ると、その時点から6か月間は時効が一時的に止まり、法的手続きを進める猶予を確保できます。
内容証明郵便は強力な効果を持つ反面、相手に強いプレッシャーを与えるため、送るタイミングは慎重に判断する必要があります。
取引関係を継続したい相手に対し、安易に送付すると信頼関係を損なう原因にもなりかねません。まずは電話やメール、通常の郵便での督促状送付といった穏便な方法を試みるのが基本です。それでも状況が改善しない場合に、内容証明郵便の送付を検討しましょう。
具体的な判断基準としては、以下のようなケースが挙げられます。
これらの状況に加え、相手との今後の取引関係を継続したいかどうか、未払いとなっている金額の大きさなどを総合的に考慮し、最終的な手段として内容証明郵便を利用するかどうかを見極めましょう。
内容証明郵便で送付する請求書は、単なる支払いの依頼ではなく、法的な手続きを視野に入れた重要な通知となります。そのため、記載内容には細心の注意が必要です。
ここでは、督促状として送る請求書の必須項目から、そのまま使える文例までを具体的に解説します。
内容証明で送る請求書(督促状)には、後々のトラブルを防ぎ、法的手続きへ移行した場合の証拠として通用するよう、以下の項目を正確に記載する必要があります。
通常の請求書に加えるべき項目もありますので、漏れがないか確認しましょう。
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項目 |
記載内容とポイント |
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タイトル |
「督促状」「催告書」「最終催告書」など、支払いを催促する書類であることが明確にわかるように記載します。 |
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宛名(相手方の氏名・住所) |
個人であれば氏名、法人であれば会社名と代表者名を正確に記載します。住所も省略せずに記載してください。 |
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差出人(自社の氏名・住所・連絡先) |
自社の名称、住所、電話番号、担当者名などを記載します。押印も忘れずに行いましょう。 |
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発行日 |
この書類を作成し、送付する日付を記載します。 |
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請求番号 |
どの取引に関する請求かを特定するため、元の請求書番号などを記載すると分かりやすいです。 |
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請求内容の特定 |
いつ、どのような商品・サービスを提供したことによる代金なのかを具体的に記載します。(例:令和〇年〇月〇日付契約の〇〇代金) |
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請求金額 |
未払いの元金、消費税、発生している場合は遅延損害金などを明確に分けて記載し、合計金額を明記します。 |
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支払期限 |
「本書面到着後〇日以内」など、支払いをお願いする最終的な期限を明確に設定します。 |
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振込先口座 |
金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義を正確に記載します。 |
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期限内に支払いがない場合の措置 |
「万一、お支払いいただけない場合は、誠に不本意ながら法的手続きに移行せざるを得ません」といった文言を記載します。 |
以下に、未払い代金の請求に使える督促状の文例テンプレートをご紹介します。ご自身の状況に合わせて適宜修正してご活用ください。
督促状
令和〇年〇月〇日
(相手方の郵便番号)
(相手方の住所)
(相手方の会社名)
(相手方の代表者名または氏名)様
(自社の郵便番号)
(自社の住所)
(自社の会社名)
(自社の代表者名) 印
(電話番号)
件名:未払い代金のお支払いに関する催告
拝啓
貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、早速ではございますが、下記契約に基づきご請求いたしました代金につきまして、本日現在、未だご入金の確認が取れておりません。
つきましては、下記の請求内容をご確認の上、本書面到着後7日以内にお支払いいただきますよう、お願い申し上げます。
万一、上記期限内にお支払いいただけない場合は、誠に不本意ながら、遅延損害金の加算や、支払督促、訴訟等の法的手続きに移行せざるを得ませんので、ご承知おきください。
敬具
記
以上
内容証明郵便の文書には、文字数と行数に厳格なルールが定められています。この規定を守らないと受理されないため、作成段階で必ず確認しましょう。主な規定は以下の通りです。
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書き方 |
文字数 |
行数 |
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縦書き |
1行20字以内 |
1枚26行以内 |
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横書き |
1行20字以内 |
1枚26行以内 |
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横書き |
1行26字以内 |
1枚20行以内 |
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横書き |
1行13字以内 |
1枚40行以内 |
代金が支払われず感情的になる気持ちは分かりますが、督促状に脅迫的な文言や相手を侮辱するような表現を用いることは絶対に避けてください。行き過ぎた表現は、脅迫罪や恐喝未遂罪に問われるリスクがあります。
督促状を作成する際は、以下の点に注意しましょう。
督促状は、あくまで未払い代金の支払いを促すための正式な通知です。冷静かつ事務的に、しかし支払わなければ次の段階へ進むという意思を明確に伝えることが重要です。
内容証明郵便の送り方には特有のルールがあるため、初めて利用する方は戸惑うかもしれません。
ここでは、内容証明郵便を発送するための準備から具体的な手順、かかる費用までを分かりやすく解説します。
内容証明郵便を郵便局の窓口から送る際には、以下のものを準備しましょう。特に、送付する文書は3通必要になる点が重要です。
文書は3通とも同じ内容である必要があります。手書きの場合はコピーでも問題ありませんが、パソコンで作成して3部印刷するのが最も確実です。
準備が整ったら、郵便局の窓口で発送手続きを行います。すべての郵便局で内容証明を扱っているわけではないため、事前に集配郵便局などの大きな郵便局に問い合わせておくとスムーズです。
手続きの流れは以下の通りです。
内容証明郵便の送付には、通常の郵便料金に加えて、いくつかの加算料金が必要です。特に「一般書留」と「配達証明」はセットで利用するのが一般的です。配達証明を付けることで、相手に文書が配達された事実を証明できます。
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料金の種類 |
金額 |
備考 |
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基本料金(定形郵便物) |
84円〜 |
郵便物の重量によって変動します(25gまで84円)。 |
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一般書留料 |
480円〜 |
損害要償額によって変動します。 |
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内容証明料 |
480円(1枚目) 290円(2枚目以降) |
文書が2枚以上になる場合は、1枚増えるごとに290円が加算されます。 |
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配達証明料 |
350円 |
相手に配達されたことを証明するハガキが届きます。任意ですが、付けることを強く推奨します。 |
例えば、文書が1枚で配達証明を付けた場合、合計料金は「84円 + 480円 + 480円 + 350円 = 1,394円」が最低でも必要となります。
郵便局の窓口へ行く時間がない方や、手続きをより手軽に済ませたい方には、「e内容証明(電子内容証明)」というサービスが便利です。これは、インターネットを通じて24時間いつでも内容証明郵便を発送できるサービスです。
e内容証明の主なメリット
利用には会員登録が必要ですが、自宅やオフィスからすべての手続きが完了するため、非常に効率的です。初めて内容証明を送る方でも、画面の指示に従って進められるため安心して利用できます。
内容証明郵便で請求書(督促状)を送付しても、それだけで問題が解決するわけではありません。相手の反応に応じて、適切に対応することが債権回収の鍵となります。ここでは、内容証明を送った後の状況別の対応方法と、その後の流れについて詳しく解説します。
内容証明郵便の送付後、相手から指定の口座に未払い代金の入金があった場合は、まず入金額が請求額と一致しているかを確認しましょう。遅延損害金を請求している場合は、その金額も含まれているかを確認します。
入金が確認できたら、速やかに領収書を発行し、相手方に送付します。領収書を送付することで、支払いが完了したことを双方で確認でき、後のトラブルを防ぐことにも繋がります。可能であれば、入金確認の旨を電話やメールで一報入れると、より丁寧な対応となります。
相手から支払いについて電話やメールで連絡があった場合、それは交渉の機会です。相手にも支払う意思があるものの、何らかの事情で支払いが困難な状況にある可能性が考えられます。感情的にならず、冷静に話し合いを進めましょう。
交渉のポイントは以下の通りです。
内容証明郵便を送付しても、相手からの支払いや連絡が一切なく、完全に無視されてしまうケースもあります。この場合、残念ながら当事者間での解決は困難であるため、裁判所を介した法的な手続きへ移行することを検討する必要があります。主な法的手段として、「支払督促」「少額訴訟」「民事調停」の3つが挙げられます。
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手続きの種類 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
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支払督促 |
裁判所から相手方に金銭の支払いを命じてもらう手続き |
書類審査のみで迅速。費用が安い。 |
相手から異議申し立てがあると通常訴訟に移行する。 |
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少額訴訟 |
60万円以下の金銭請求に限定された特別な訴訟手続き |
原則1回の期日で判決が出るため解決が早い。 |
相手が希望すれば通常訴訟に移行する場合がある。 |
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民事調停 |
裁判所の調停委員を介して話し合いで解決を目指す手続き |
訴訟よりも柔軟な解決が可能。費用が安い。 |
相手が出頭しない、または合意に至らないと不成立になる。 |
支払督促は、裁判所の書記官が書類審査のみで相手方に支払いを命じる「督促状」を送付する手続きです。相手が異議を申し立てなければ、仮執行宣言を得て強制執行(財産の差し押さえなど)が可能になります。手続きが比較的簡単で、費用も安いため、最初に検討しやすい法的手段です。
少額訴訟は、請求金額が60万円以下の場合に利用できる、簡易的な訴訟手続きです。原則として審理は1回で終了し、その日のうちに判決が言い渡されるため、迅速な解決が期待できます。ただし、相手方が望めば通常の民事訴訟に移行することもあります。
民事調停は、裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員が仲介役となり、当事者間の話し合いによる円満な解決を目指す手続きです。訴訟のように勝ち負けを決めるのではなく、双方が納得できる解決策を探る場であるため、相手との関係性を維持したい場合に適しています。
法的手段を自分一人で進めることに不安を感じる場合や、請求金額が高額な場合、相手との交渉が複雑化しそうな場合は、早期に専門家へ相談することをおすすめします。
債権回収に関する相談先としては、弁護士や司法書士が挙げられます。特に弁護士は、代理人として相手との交渉から訴訟手続きまで一任できるため、心強い味方となります。司法書士も、請求額が140万円以下であれば、相談や書類作成、簡易裁判所での代理業務が可能です。多くの法律事務所では初回無料相談を実施しているため、まずは一度、専門家の意見を聞いてみてはいかがでしょうか。
内容証明郵便は、送付した文書の内容を郵便局が証明してくれるため、相手に支払いを促す心理的効果が期待できるだけでなく、将来的な法的措置における重要な証拠となり得ます。請求書(督促状)を作成する際は、必須項目を漏れなく記載し、脅迫的と受け取られるような表現は避けましょう。送付方法は、郵便局の窓口のほか、24時間いつでも手続き可能な「e内容証明」も便利なので、ご自身の状況に合わせて選択してください。内容証明を送っても相手が支払いに応じない、一人で対応が難しいと感じた際は法律の専門家へ相談しましょう。