更新日:2026.08.29

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請求書は、すべて電子保存しなければならないわけではありません。2026年8月現在、電子帳簿保存法で電子データのまま保存する必要があるのは、メール添付のPDFやクラウドからダウンロードした請求書など「電子取引」で授受した取引情報です。
一方、紙で受け取った請求書は、原則として紙のまま保存できます。紙をスキャンして原本に代えて保存する「スキャナ保存」は任意です。
この記事では、請求書の保存方法を「電子取引」「スキャナ保存」「紙保存」に分け、電子帳簿保存法の要件と実務対応をわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法の話では、異なる保存制度が一括して「電子保存」と呼ばれがちです。電子保存とは、請求書や領収書などの取引関係書類を電子データとして保存することを指します。ただし、単にPDFとして保存するだけでは法的に認められない場合があり、適切な要件を満たす必要があります。
請求書については、まず次の3つを区別すると判断しやすくなります。
| 区分 | 対象 | 義務・任意 |
|---|---|---|
| 電子取引データ保存 | メール、クラウド、EDI、Webサイトなどで電子的に授受した請求書等 | 保存義務あり |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った・作成した請求書等をスキャンして保存 | 任意 |
| 電子書類保存 | PC等で作成した請求書の控えなどをデータのまま保存 | 任意 |
重要なのは、「紙の請求書をスキャンすることが義務になった」のではない点です。義務化されたのは、電子取引で授受した取引情報を電子データのまま保存することです。
取引先からメールに添付されたPDFで請求書を受け取った場合は電子取引に該当します。PDFを印刷して紙だけを保存するのではなく、受け取った電子データを保存してください。
請求書発行サービス、取引先のマイページ、ECサイトなどからPDFやデータをダウンロードするケースも電子取引です。ダウンロードしたデータを保存対象として管理します。
EDI、電子請求書サービスなどを通じて請求情報を電子的に授受する場合も対象です。サービス上で要件を満たして保存される場合は、必ずしも別途PDFをローカル保存する必要があるとは限りません。利用サービスの保存機能と契約終了後の閲覧可否まで確認しましょう。
電子取引の保存義務は受け取ったデータだけに限りません。自社がメール添付やクラウドなどで電子的に交付した請求書の取引情報も保存対象です。
取引先から紙で受け取った請求書は、電子帳簿保存法によってスキャンが義務付けられているわけではありません。税法上必要な期間、紙の原本を適切に保存できます。
紙の請求書を電子化して原本の代わりに保存したい場合は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件を満たす必要があります。単にPDF化して共有フォルダへ入れただけでは、原本を廃棄できるスキャナ保存として要件を満たさない場合があります。
電子取引データは、税務調査などの際に内容を確認でき、改ざんを防ぎ、必要なデータを検索できる形で保存するのが原則です。実務では次のポイントを確認します。
改ざん防止のための措置は、タイムスタンプだけではありません。代表的には、タイムスタンプを付与する方法、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する方法、訂正・削除ができないシステムを利用する方法、訂正削除防止に関する事務処理規程を定めて運用する方法があります。
「電子請求書はすべてタイムスタンプ必須」ではありません。自社の保存方法に合った改ざん防止措置を選びます。
保存した請求書データは、ディスプレイなどで速やかに確認できる状態にしておく必要があります。保存場所が分散して担当者しか取り出せない状態は避け、税務調査時にも提示できる運用にしましょう。
原則として、取引年月日などの日付、取引金額、取引先で検索できるようにします。専用システムを使わなくても、要件に応じてファイル名や索引簿を工夫して管理する方法があります。
ファイル名の例
20260825_110000_株式会社〇〇.pdf
このように、日付・金額・取引先をファイル名へ入れて規則的に保存すると、検索しやすくなります。なお、一定の事業者や、税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられる場合には、検索要件が緩和されることがあります。
2024年1月以降も、保存要件に従って電子取引データを保存できないことについて所轄税務署長が「相当の理由」があると認め、税務調査等で電子データのダウンロードの求めと、プリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じられる場合には、保存時の要件が猶予されます。事前申請は不要です。
ただし、これは「電子データを保存しなくてよい」「紙だけ保存すればよい」という制度ではありません。元の電子取引データは保存しておく必要があります。また、単に面倒だから対応しないといった事情では、相当の理由として認められない可能性があります。
紙の請求書をスキャンし、一定の要件のもとで紙原本に代えて電子データを保存するのがスキャナ保存です。請求書は一般に重要書類に当たり、入力期限、画質、改ざん防止、検索などの要件を確認する必要があります。
| 主な要件 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 入力期間 | 受領後速やかに、または通常の業務処理期間後速やかに入力 |
| 解像度等 | 原則200dpi以上など、法令上の読み取り要件を満たす |
| 改ざん防止 | タイムスタンプまたは訂正削除履歴を確認できるシステム等を利用 |
| 検索 | 日付・金額・取引先などで検索できるようにする |
| 見読性 | ディスプレイ等で明瞭に確認・出力できる状態にする |
「国税庁が認定した専用スキャナでなければならない」というルールではありません。要件を満たせば、スキャナだけでなくスマートフォンやデジタルカメラを使った読み取りも可能です。
制度対応を安定させるには、保存ツールを先に選ぶより、請求書がどこから入ってきて、誰がどこへ保存するかを整理することが重要です。
| 手順 | 対応内容 |
|---|---|
| 1. 取引経路を洗い出す | メール、クラウド、EC、EDI、紙など請求書の受領・発行経路を一覧化 |
| 2. 電子取引と紙を分類する | 電子取引データは電子保存、紙は紙保存またはスキャナ保存へ |
| 3. 保存場所を統一する | 会計・請求書管理システム、クラウド、共有フォルダ等の保存先を決定 |
| 4. 改ざん防止方法を決める | システム機能または事務処理規程など自社に合う方法を採用 |
| 5. 検索ルールを決める | 日付・金額・取引先を検索できる命名・索引・システム運用を整備 |
| 6. 担当者へ周知する | メール受信後の保存、Webダウンロード、訂正時の処理などをマニュアル化 |
紙を補助的に保管することはできますが、電子取引で受け取った請求書について紙だけを保存する対応では足りません。元の電子データを保存してください。
必須とは限りません。電子取引データの改ざん防止措置には複数の方法があり、訂正削除履歴が残るシステムや事務処理規程による方法もあります。
いいえ。紙で受け取った請求書は、原則として紙のまま保存できます。スキャナ保存は任意です。
PDFというファイル形式だけで適法になるわけではありません。電子取引データでは、改ざん防止、見読性、検索など、自社に適用される保存要件を満たす必要があります。
いいえ。猶予措置は保存時の一部要件を緩和するもので、電子取引データそのものの保存義務をなくすものではありません。
請求書の電子保存が義務かどうかは、「紙か電子か」だけでなく、どの方法で取引情報を授受したかで判断します。メール添付PDF、クラウド、Webサイト、EDIなどで電子的に授受した請求書は、電子取引データとして電子保存が必要です。紙で受け取った請求書は紙のまま保存でき、スキャナ保存は任意です。
また、電子取引データの保存でタイムスタンプが必ず必要なわけではありません。改ざん防止措置、見読性、検索性などの要件を確認し、自社の業務フローに合う方法で保存体制を整えましょう。
電子帳簿保存法の要件は改正されることがあります。運用を変更する際は、国税庁の最新の電子帳簿保存法一問一答も確認することが大切です。